モータージャーナリスト兼コラムニストの二階堂仁です。 今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、新型クラウンエステートの欠点や気になる点が気になっていると思います。 私も実際にクラウンエステートを購入し、1年間オーナーとして実使用を続けてきたので、気になる気持ちは本当によくわかります。
引用 : メーカーHP
今回は、提灯記事では決して書かれない、オーナーだからこそ気づいたリアルな欠点や、実用上で不満に感じたポイントを忖度なしで網羅しました。 この記事を読み終える頃には、クラウンエステートに対するすべての疑問が完全に解決しているはずです。
- クラウン他モデルとの共通内装による特別感の不足
- PHEVとハイブリッドの価格差に見合わない専用装備の少なさ
- ドア閉時の高い共振音やシール製エンブレムなど一部の低質感
- 全幅1880mmによる機械式駐車場の制限と後席の固定式背もたれ
車買い替えのご検討中の方へ
新しい車に乗り換える際、今乗っている愛車をどれだけ高く売却できるかは、次の車の選択肢にも大きく影響します。
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クラウンエステートのダメな点:外装とパッケージングの気になる点
クラウンエステートのドア閉時の高い不快な共振音
パノラマルーフ装着車特有の強振現象
私が本車を所有し、納車初日から現在に至るまで最も気になっているのが、ドアを閉めた時の「音」です。
引用 : メーカーHP
フロントドアをやや強めに閉めると、キャビンの上部から「カン」「カラン」という、何かが共振しているような高く薄い金属音が車内に響き渡ります。
プレミアムSUVとしての密閉感や、重厚な遮音性を期待してドアを閉める瞬間にこの音が鳴るため、興を削がれてしまうのが正直なところです。
構造を細かく精査した結果、オプション設定されている「パノラマルーフ」の補強用センタークロスメンバー(ルーフ中央を横に貫く金属製の梁)が、ドア閉時の気圧変化と衝撃波によって強振していることが判明しました。
この高い音は、静粛性に優れた車内空間だからこそ、余計に耳障りに感じられてしまいます。
ディーラーへのフィードバックと現状の対策
この件については、懇意にしているディーラーの工場長を通じてメーカーへ正式にフィードバックを上げています。
サービス技術部門でも現象は認知しているようですが、現時点で設計変更による対策品や、サービスキャンペーンなどの具体的なアナウンスはありません。
なお、私の知り合いが所有するパノラマルーフ未装着のクラウンエステートでは、この安っぽい共振音は一切発生せず、欧州高級車のような「ドスッ」という重厚な音で閉まります。
ルーフの開放感や車内の明るさを求めてパノラマルーフを選択するユーザーは多いですが、このドア閉時の質感低下を招くトレードオフが存在することは、購入前に必ず知っておくべき盲点と言えます。
快適な移動空間を重視するならば、あえてサンルーフ系を装着しないという選択肢も十分に合理的です。
クラウンエステートの驚きのシール製フロントエンブレム
コストカットが露呈するステッカー仕様
クラウンをクラウンたらしめる最大の象徴は、フロントノーズ中央に鎮座する「王冠エンブレム」です。
引用 : メーカーHP
歴代のクラウンでは、重厚な金属製鋳造パーツや、奥行きのあるアクリル封入式の美しい立体エンブレムが奢られてきました。
しかし、新型クラウンエステートのフロントエンブレムを間近で観察し、指で触れてみると、驚くべきことに立体物ではなく、単なる高精細な「フラットなデカールシール(ステッカー)」であることが分かります。
納車時に営業担当者が苦笑いしながら説明してくれたのですが、指で強めに押し付けながらスライドさせると、わずかにグニュッと動くほどの粘着強度のものです。
質感にこだわる日本の最上級パーソナルカーとして、この仕様はあまりにチープであると言わざるを得ません。
洗車時における実用上の懸念
この仕様は、フロントグリル裏に高精度なミリ波レーダーや各種予防安全用センサーを集約するための技術的制約、あるいは歩行者保護衝突規定への適応という側面があることは理解できます。
しかし、車両価格が600万円から800万円を超える車において、最も目立つブランドの紋章が「シール」というのは、所有満足度を著しく下げます。
実用上、高圧洗浄機を用いて洗車を行う際、ノズルをフロント付近に近づけすぎると、水の勢いでシールの端が浮き上がってしまうのではないかという不安が常につきまといます。
スポンジやマイクロファイバークロスで洗う際も、爪を引っ掛けないように細心の注意を払わなければならず、日常の美観維持に余計な緊張感を強いる設計はプレミアムカーとして疑問です。
経年劣化によって粘着剤が劣化し、端から剥がれてこないかという点も、長期所有における懸念事項です。
クラウンエステートの全幅1880mmがもたらす駐車場の制限
1850mmの壁に阻まれる都市部での使い勝手
クラウンエステートのボディサイズは、全長4,930mm、全幅1,880mm、全高1,620mmという、極めて堂々とした立派な体躯を誇ります。
引用 : メーカーHP
このサイズが生み出す伸びやかで美しいスタイリングは魅力ですが、日本の都市部におけるインフラ事情とは明確にコンフリクトします。
特に頭を悩ませるのが、都市部の商業施設やマンション、コインパーキングに多く存在する機械式立体駐車場のサイズ制限です。
日本の旧来からある機械式駐車場の多くは、全幅の制限枠が「1,850mm以下」に設定されています。
クラウンエステートは全幅が1,880mmあるため、この制限にわずか30mmオーバーしてしまい、入庫を拒否されるケースが多発します。
都市部を生活拠点とするユーザーにとっては、購入の可否を左右する極めて高いハードルです。
事前の駐車場リストアップが必須となる日常
目的地周辺の駐車場を事前に徹底してリサーチし、平面駐車場、もしくはワイドサイズ対応(1,900mm幅対応)の最新の機械式駐車場がある場所をリストアップしておく必要があります。
アポの時間に追われている朝、機械式の入り口でセンサーに引っかかり、慌てて別の駐車場を周辺で探し回るストレスは、日常使いにおいて地味ながら確実なペナルティとなります。
また、一般的な平面のコインパーキングに駐車できたとしても、車幅に対して駐車枠が狭いため、隣の車との距離が非常に近くなり、ドアパンチ(隣の車のドアが自車に衝突すること)を食らうリスクが跳ね上がります。
助手席や後席の乗員が乗り降りするスペースを確保するために、わざわざ白線のギリギリに寄せて駐車する技術が求められることも、日常的な負担となります。
| 車両モデル | 全長 (mm) | 全幅 (mm) | 全高 (mm) | 一般的な標準機械式制限 |
|---|---|---|---|---|
| クラウンエステート | 4,930 | 1,880 | 1,620 | 不可(全幅1850mm超過のため) |
| クラウンスポーツ | 4,720 | 1,880 | 1,565 | 不可(全幅1850mm超過のため) |
| クラウンクロスオーバー | 4,930 | 1,840 | 1,540 | 可能(全幅・全高ともにクリア) |
クラウンエステートの開閉できないパノラマルーフの機能性
明かり取り専用に留まるガラスエリア
先述した共振音の原因でもあるオプションのパノラマルーフですが、もう一つの不満点は「開閉機能(チルト&スライド)が一切備わっていない」という点です。
ルーフ全体が巨大な一枚の固定式強化ガラスとなっており、電動のロールシェードを開けることで、頭上に広大な青空を望むことができるものの、外気を取り入れることはできません。
春秋の爽やかな季節に、ルーフを少しだけチルトさせて車内の空気を穏やかに喚起する、といったサンルーフならではの風情ある使い方は不可能です。
これほどの大型ガラスを採用しながら、機能が「明かり取りと視界の確保」だけに制限されているのは、製品としての欲張りが足りないと感じる部分です。
重量増と共振リスクを天秤にかける判断
ただの「開かない明かり取り窓」に対して、高額なオプション費用を支払い、さらに車体の最も高い位置に数十キログラムの重量物(ガラスとスライドモーター、補強部材)を載せることになります。
これは、シャシーの低重心化や、ロールモーメントの抑制という動的質感の観点からも明確にマイナスです。
前述したドアを閉めた際のカランという不快な共振音問題を含めて考えると、このパノラマルーフは無理に選ぶ必要はない、というのが1年間所有した私の結論です。
購入時のリセールバリューを意識するあまり、実用上のデメリットが大きいオプションを無理に選択するのは避けた方が賢明でしょう。
開放感は素晴らしいものの、それ以外の動的デメリットが目立つ装備です。
クラウンエステートの極端に狭いグローブボックスの収納力
車検証と説明書で限界を迎える容量
助手席のダッシュボード下に配置されているグローブボックスを開けると、その容積の狭さに落胆することになります。
インパネ全体の意匠や、内部のエアコン用エバポレーターユニット、各種制御コンピューターの配置にスペースを食われているため、グローブボックス奥行きが物理的に極めて薄く作られています。
革製の分厚いクラウン純正の車検証入れと、数百ページに及ぶ車両の取扱説明書、および電子キーの説明書などを重ねて収納した時点で、グローブボックスの中は物理的な余裕が完全に消滅します。
少し押し込むようにして蓋を閉めないと、車検証入れの角が引っかかって蓋が跳ね返ってくるほどです。
プレミアムクラスの車でありながら、この実用性の低さは設計段階の検証不足を感じさせます。
センターコンソールやドアポケットでの代替収納
車中泊や長距離ドライブの際に重宝する、市販のボックスティッシュをここに格納することは不可能です。
やむを得ず、ティッシュボックスやサングラスケース、モバイルバッテリーなどの日用小物は、センターコンソールボックスや、ドアのボトルホルダー兼ポケットに分散して押し込むことになります。
しかし、センターコンソールもそこまで深く大容量ではないため、車内は常に収納のテトリス状態を強いられます。
全長5メートルに迫るこれほど巨大なライフスタイル提案型ワゴンでありながら、最も基本的な収納スペースがこれほど貧弱であることは、日常のユーティリティ設計において大きな手落ちであると感じます。
日常的に車内をすっきりと整理整頓したいミニマリスト思考のユーザーにとっては、頭を抱えるポイントです。
クラウンエステートの4対2対4分割ではない後席の積載性
レジャー用途で露呈する6対4分割の限界
クラウンエステートは、アクティブな趣味を持つオーナーをターゲットにし、荷室の機能性を高めたモデルとしてプロモーションされています。
しかし、後部座席のシートアレンジを細かくチェックすると、プレミアムなステーションワゴンとしては決定的な弱点が浮かび上がります。
それが、後席のシート分割が一般的な「6対4分割」に留まっているという点です。
スキー板やスノーボード、ゴルフバッグ、釣竿、サイクリング用のロードバイクのフレームなど、長尺物の荷物をラゲッジスペースに積み込みたい場面を想定します。
この構造により、積載性と乗車人数のトレードオフが発生してしまいます。
競合欧州ステーションワゴンとの設計思想の差
シートの「4」側、もしくは「6」側を前方に倒して荷室を貫通させる必要がありますが、これを行うと、後部座席に大人が2名乗車することができなくなります。
つまり、4人でスノーボードやスキーに行くといった、この車のキャラクターに最も適した使い方が、車内積載では実現できず、ルーフキャリアの追加を余儀なくされるのです。
メルセデス・ベンツのCクラス/Eクラスステーションワゴンや、BMWの3シリーズ/5シリーズツーリング、さらにはレクサスの一部モデルでは、後席が「4対2対4」の3分割で可倒する設計が標準となっています。
これであれば、中央の「2」の部分だけを倒するラゲッジスルーを行うことで、左右に2名の乗員がゆったりと座ったまま、中央に長尺物を安全に積み込むことができます。
積載性を最大の売りにする「エステート」を名乗るのであれば、このシート分割方式のケチり方は非常に惜しいと言わざるを得ません。
クラウンエステートの夜間が暗すぎるアンビエントライト
プレミアムクラスにふさわしくない夜間照明
夜間に本車のキャビンに乗り込んだ瞬間、車両価格から想像するラグジュアリーな世界観とのギャップに戸惑うはずです。
夜間の車内を妖艶、あるいはモダンに演出するインテリアの関節照明(アンビエントライト)が、驚くほど省略されているため、車内全体がどんよりと暗い印象を受けます。
一応、インパネやドアトリムの一部に、間接照明が仕込まれてはいるのですが、その光量が極めて微弱であり、発光エリアも非常に細く短いものです。
最先端の欧州車のように、ダッシュボードからドアトリムにかけてシームレスに光のラインが走り、先進的なコックピットを包み込むような演出は皆無です。
夜間のドライブにおける非日常感や高揚感を期待するオーナーにとっては、物足りなさを感じる部分でしょう。
セダンと比較して省かれた演出装備
クラウンシリーズの最高峰である「クラウンセダン」には、64色から好みの色彩を選択できる鮮やかなマルチカラーアンビエントライトが備わり、夜間のキャビンを美しく彩ります。
しかし、このエステート、およびスポーツ、クロスオーバーにはその機能が非採用であり、固定の控えめな暖色・寒色系LEDが細々と灯るのみです。
乗り出し価格が800万円を超える上級グレードであっても、夜間のおもてなし演出は、実質200万〜300万円台のファミリーカーと同等レベルに留まっています。
そのため、所有者を魅了するようなプレミアムなナイトドライブの演出能力は期待できません。
助手席や後部座席に乗るゲストに対しても、視覚的なラグジュアリーさをアピールすることが難しい仕様です。
クラウンエステートの威圧感を与える大柄なボディサイズ
狭隘道路におけるすれ違いのプレッシャー
クラウンエステートは、伸びやかで車高が低めなプロポーションから、写真や遠目で見るとステーションワゴンのようにコンパクトに見える錯覚を覚えます。
しかし、実際に目の前に立つと、全長4,930mmという長さと、全幅1,880mmという幅は圧倒的な存在感、悪く言えば「威圧感」を放ちます。
この大柄なボディサイズは、日本の古くからある住宅街の路地や、センターラインのない狭い山道、すれ違いが困難な旧街道などにおいて、ドライバーに多大なプレッシャーをかけます。
特に対向車が大型のSUVやトラックだった場合、ミリ単位のミラー寄せを要求されることになり、ホイールを路肩の縁石に擦り付けないか、冷や汗をかく場面が増えます。
特に初心者や、普段あまり大きな車を運転しない家族が運転する場合には、心理的なハードルが極めて高くなります。
最小回転半径をカバーする電子制御の恩恵と限界
本車には、低速域で後輪を前輪と逆フェーズに最大4度転舵させる「DRS(ダイナミック・リア・ステアリング)」が全車に標準装備されています。
この電子制御のおかげで、Uターンや狭いT字路の右左折、スーパーの駐車場での切り返し時などは、ボディの長さを感じさせないほど「クイック」に回り込むことができ、最小回転半径は優れた数値を維持しています。
しかし、これはあくまで「小回り性能」のアシストであって、物理的な車幅や全長の絶対値そのものを小さくしてくれる魔法ではありません。
対向車とのすれ違い時や、幅の狭いドライブスルーの進入時など、物理的な車幅そのものが障害となる場面での運転の疲れは、中型SUVなどと比較して明らかに蓄積しやすいことを覚悟しておくべきです。
日本の道路環境において、1,880mmという車幅がもたらす物理的な限界は、電子制御でも完全には相殺できないのです。
クラウンエステートの気になる点:内装と走行性能のダメな点
クラウンエステートの他モデルと共通化された内装デザイン
クラウンシリーズ間で統一されたコクピット
クラウンエステートの内装に入り込んで最初に感じるのは、「既視感」です。
現在展開されている新型クラウンシリーズは、先行して登場した「クロスオーバー」、スポーツSUVの「スポーツ」、そしてこの「エステート」の3車種において、運転席まわりのインパネ、12.3インチの並列モニター構成、センターコンソール、各種スイッチ類のレイアウトが完全に同一設計となっています。
これは、トヨタによる「TNGAプラットフォーム」を用いた徹底的なグループ生産モジュール化と、開発生産コストの削減(共通化)の恩恵です。
しかし、裏を返せば、エステートならではの「高級エステートワゴンとしての固有の空気感」や「独立した意匠」が一切与えられていないことを意味します。
他モデルのオーナーが乗り換えたとしても、新鮮な感動を得にくい構成です。
車格と価格相応 of 所有満足度における課題
クラウンシリーズを1台しか所有しない一般的なユーザーにとっては、他車種と内装が共通であることは実用上の問題になりません。
しかし、車両価格で最も安価なクロスオーバーのベースグレード(400万円台〜)から、最上級であるエステートRS(810万円)まで、目の前にある景色がほぼ完全にコピペであるというのは、高額な資金を投じたオーナーからすると、寂しさを禁じ得ません。
「自分は特別な高級エステートに乗っている」という所有満足度の演出という点においては、もう一工夫、ウッドパネルの質感向上や、エステート専用のステッチ、インパネ造形の差別化があって然るべきであったと、長期間乗るほどに強く感じます。
同価格帯の競合モデルと比較した場合、インテリアの独自性と贅沢さにおいて、一歩見劣りしてしまいます。
クラウンエステートのPHEVとHEVに横たわる大きな価格差
175万円の価格差を埋める追加装備の内訳
クラウンエステートを購入する際、誰もが直面する最大のジレンマが、パワートレーン選択に伴う莫大な価格差です。
2.5Lの通常のハイブリッドモデルである「Z(HEV)」は、車両本体価格が「635万円」に設定されています。
対して、2.5Lプラグインハイブリッドモデルである「RS(PHEV)」は、本体価格が「810万円」と、その差は実に「175万円」に達します。
この175万円という極めて大きな価格差に対して、追加される主な装備は以下の表の通りです。
| 装備・スペック項目 | Z グレード (HEV) | RS グレード (PHEV) |
|---|---|---|
| 車両本体価格 | 6,350,000円 | 8,100,000円 |
| パワートレーン | 2.5Lハイブリッド(THSⅡ) | 2.5Lプラグインハイブリッド |
| システム最高出力 | 234 ps | 306 ps |
| 駆動用バッテリー容量 | 5.0 Ah (ニッケル水素) | 51 Ah / 18.1 kWh (リチウムイオン) |
| 車両重量 (kg) | 約 1,900 | 約 2,110 |
| 足回りサスペンション | スタンダード独立サス | AVS(電子制御可変ダンパー) |
| フロントブレーキ | スタンダード | 対向4ピストン赤塗装アルミキャリパー |
| 後席シートヒーター | オプション設定 | 標準装備 |
補助金を加味しても残る経済的合理性への疑問
確かにPHEVモデルには、大容量リチウムイオンバッテリー、電子制御サスペンション(AVS)、フロントの対向4ピストン赤キャリパー、後席シートヒーターなどの豪華装備がプラスされます。
しかし、一般ユーザーが「ガソリン代の節約」だけでこの175万円の初期投資差額を回収することは、計算上、10万〜15万キロメートル以上をすべて自宅充電の電気だけで走行しない限り、事実上不可能です。
国や自治体からのPHEV補助金を差し引いたとしても、数十万円規模の差額が依然として残ります。
「PHEVだから」という記号性に引きずられ、冷静な経済的合理性を見失ったままRSグレードを選択すると、費用対効果の低さに後々後悔することになるでしょう。
走行フィールや一部の装備に強いこだわりがない限り、HEVのZグレードが持つ圧倒的なコストパフォーマンスを無視することはできません。
クラウンエステートの安価なコンパクトカー並みのドアハンドル
触覚的なプレミアム感を著しく損なうパーツ
クルマの乗り降りの際、オーナーの指先が必ず触れ、引っ張ることになる車内の「インナードアハンドル(ドア内側の開閉レバー)」。
クラウンエステートのインナードアハンドルを握り、引いた瞬間、私はその「安っぽさ」に強い失望を覚えました。
素材は金属調の塗装が施されてはいるものの、本質は中空のペラペラとした薄いハードプラスチック(硬質樹脂)で作られています。
握った時の剛性感がなく、プラスチック特有の軽さと、中空構造ゆえの「ベコッ」とした安っぽい感触が、指先を通じてダイレクトに脳に伝わってきます。
このような質感のディテールが、高級車全体の評価を下げてしまうのは非常にもったいないポイントです。
毎日触れる場所だからこそ目立つコストカット
これは、同社の200万円クラスのコンパクトカー(ヤリスやアクアなど)に採用されているドアハンドルの質感と何ら変わりません。
ドアトリム自体には、しっとりとした触感の高級レザー調ソフトパッドやサドルタンのステッチが美しく奢られており、肘を置いたときの感触は極めて良好であるだけに、このドアハンドルの質感の手抜きが一際悪目立ちしています。
「神は細部に宿る」と言いますが、ドライバーや同乗者が毎回降車するたびに必ず触れる、極めて接触頻度の高いパーツにおいて、このような露骨なコストカットが平然と行われているのは、クラウンという由緒正しきプレミアムブランドの車として、非常に残念で許し難いポイントです。
乗るたびに何度も触れ、意識せざるを得ない部分だからこそ、より高いレベルでのマテリアル選定を望みたかったところです。
クラウンエステートのプリウスと同様で特別感のないシフトレバー
見慣れたトヨタ共通のシフトデバイス
センターコンソールの中央に鎮座する電子シフトレバーは、俗に「プリウスシフト」と呼ばれる、エレクトロシフトマチックシステムがそのまま採用されています。
レバーを右に引き下げて「D(ドライブ)」、右に押し上げて「R(リバース)」、ボタン式で「P(パーキング)」に入れるという、近年のトヨタ車に共通する汎用デバイスです。
このシフトレバー自体、人間工学に基づいて設計されており、手のひらへの収まりも良く、操作上のエラーが発生しにくい素晴らしい実用パーツであることは認めます。
使いやすさという面では、非の打ち所がない完成度を誇るインターフェースです。
クラウン独自の世界観を補う演出の必要性
しかし、200万円台から購入できる「プリウス」や「ハリアー」「ヴォクシー」などと、形状や手触り、果ては周囲のスイッチ類の質感までほぼ共通というのは、800万円級のプレミアムエステートのコックピットとして演出不足は否めません。
レバーの頂部にクラウンの王冠マークが刻印されているわけでもなく、本革の特殊なステッチが巻かれているわけでもありません。
せめて、シフトノブの素材にアルミ削り出しをあしらう、あるいはクリスタル調の美しいカットを施すなど、コックピットの主役となるシフトエリアには、オーナーを昂らせる独自の演出や職人魂(クラフトマンシップ)を感じさせる細工が欲しかったところです。
触覚だけでなく、視覚的にも「特別な車を操作している」という贅沢な瞬間を演出することが欠けています。
クラウンエステートの最上級グレードで選べない内装カラー
選択の自由が奪われた最上位RSグレード
クラウンエステートの不満点として、非常に理不尽かつオーナー間で物議を醸しているのが、最上級PHEV(RSグレード)における「内装カラー選択肢の制限」です。
810万円の「RSグレード」を選択した場合、用意されているインテリアカラーはモダンな「グレーッシュブルー」の1色のみに強制的に限定されてしまいます。
ブラックや、温かみのあるプレミアムなライトブラウン系カラーを選ぶことができません。
グレーッシュブルーという色は、確かに都会的で未来感のある先進的な雰囲気を漂わせる素晴らしいカラーコーディネートですが、青みがかったグレーという色彩は好みが極めて激しく分かれる色でもあります。
自分仕様のコーディネートを求める富裕層にとっては、驚くほど窮屈な選択を強いられる仕様です。
HEVのサドルタン内装が持つ高い質感
一方で、175万円も安価なHEV(Zグレード、635万円)を選択すると、落ち着きのあるクラシカルな「ブラック」と、キャメルのような極めて上品で明るい「サドルタン」の2色から、好みに応じて自由に選択が可能です。
特に「サドルタン」内装は、ドアを開けた瞬間に車内がパッと明るく華やかになり、ヨーロッパの超高級ステーションワゴンのような、お洒落で温かみのある雰囲気を醸し出すため、非常に人気の高いカラーです。
高額なトップグレード(RS)を購入する顧客こそ、パーソナライズの自由度や選択の愉悦を与えられるべきですが、それが「1色のみに強制固定」され、安価なグレードの方が魅力的なカラーを自由に選べるという逆転現象は、商品企画の設計として不条理であり、大きな不満点です。
購入金額に対して得られるはずのパーソナライズ価値を、完全に踏みにじる色制限と言えます。
クラウンエステートのPHEVモデルが抱える電動感の薄さ
期待値を下回るモーター駆動のダイナミズム
810万円のRSグレード(PHEV)は、床下に18.1kWhという巨大な駆動用リチウムイオンバッテリーを敷き詰めており、システム総出力306馬力を誇ります。
しかし、実際に車を走らせてみると、期待していた「突き抜けるような未来感ある電動感」や「圧倒的なダイナミズム」は、驚くほど希薄です。
満充電の状態であれば、システム起動時は自動的に「EVモード」となり、モーターのみのスムーズで滑らかな走りを披露しますが、その加速フィールは極めてマイルドで実用主義的なセッティングです。
日産のアリアや、三菱のアウトランダーPHEVなどのように、アクセルを踏み込んだ瞬間にシートに身体が押し付けられるような、強烈でトルキーな電気自動車(BEV)特有の感動はありません。
どこまでもマイルドで静かな、大人の移動ツールという枠組みを出ない制御となっています。
重量を引きずるハイブリッド走行時のエンジン介入
さらに、遠出のドライブの往路などで、リチウムイオンバッテリーのEV残量がゼロ(厳密にはハイブリッド用マージンを残した状態)になると、車は自動的に「HVモード」へ移行します。
こうなると、RSグレードは2.1トンを超える極めて重い「ただのハイブリッドカー」になり下がります。
車重が1.9トンのZグレード(HEV)と比較して、常に200kg以上重いバッテリーと補機類を引きずって走ることになるため、発進時や上り坂の合流などでは、エンジンがブォーンという透過音を響かせながら、頻繁かつ高回転まで始動してアシストに入ります。
結果として、「静かでパワフルなPHEV」という美点は遠のき、重苦しさを伴う普通のハイブリッド車の感覚が支配的となり、175万円の追加出費に対する技術的な驚きや走りの歓びは、速やかに気化してしまいます。
長距離グランドツアラーとしての基本性能は高いものの、PHEVという特別なパッケージに対する期待感が裏切られる瞬間です。
クラウンエステートの車中泊時に発生する荷室の微妙な段差
トヨタ初の機能に潜む惜しいフィッティング
クラウンエステートの大きな売りである、トヨタ初採用の「エクステンションボード(後席シートの背面から前方にスライドさせて隙間を埋めるフラット化ボード)」。
後席を前方に倒し、このボードを展開することで、荷室長が約2mに達する広大でフラットな空間が出現し、大人2名が余裕で並んで寝転がることができるため、車中泊を目的として購入を検討するユーザーも多いはずです。
しかし、実際にその上で一晩眠ってみると、設計上の「惜しい」ポイントに直面します。
エクステンションボードをカチッとロックして展開しても、可倒させたシート背面のわずかな傾斜角や、ボードのジョイントヒンジ、ボード自体の厚みによって、完全な「水平かつ真っ平らな一枚の板」にはならない点です。
フラット化を売りにしている機構であるだけに、この微細な段差は非常に惜しいと言わざるを得ません。
快適な車中泊環境を構築するための対策
接続部分に1〜2センチメートル程度の微妙な段差、および緩やかなスロープ状の傾斜が発生するため、この段差部分がちょうど就寝時の「腰」や「背中」の位置に重なります。
薄手のキャンプ用ウレタンマットや、寝袋を直接敷いただけでそのまま眠ってしまうと、翌朝起きた時にひどい腰痛や背中の凝りに見舞われることになります。
車中泊を本格的に、かつ快適に行うためには、この可動ボード特有の段差や傾斜を吸収して埋めるための、厚みが最低でも5〜8センチメートル以上ある極厚の高反発キャンプ用エアーマットを別途購入・配置することが必須となります。
「フラットラゲッジ」という魔法のような言葉を真に受け、何も準備せずに車中泊に挑むと、手痛いしっぺ返しを食らうことになるため注意が必要です。
ポテンシャルが非常に高いだけに、フィッティングの甘さが日常的なユーザーの手間を増やしている状態です。
クラウンエステートの後席固定式背もたれとヘッドレストの限界
調整を拒む不便な後席レイアウト
後部座席に乗車する同乗者、特に家族や長距離ドライブを共にするゲストからの評判において、避けて通れない弱点が「後部座席の固定式設計」です。
新型クラウンエステートの後席は、プレミアムセグメントの車でありながら、背もたれのリクライニング機構が一切備わっておらず、角度が完全に固定されています。
さらに、ヘッドレストについても上下の高さ調整機能が省かれた一体型の固定形状となっているため、乗員の体格に合わせた微調整ができません。
大人2名がゆったり足を組めるほどの広大なレッグスペース(足元空間)が確保されているだけに、この固定式の背もたれは非常にチープな印象を与えます。
快適な長距離移動を妨げる要素
実際に1年間、家族を乗せて何百キロメートルもの高速ドライブを行いましたが、助手席の乗員がシートを少し倒してリラックスしている横で、後席の同乗者から「もう少しだけ背もたれを寝かせたい」「首の位置が合わなくて肩が凝る」という不満の声が漏れるのは日常茶飯事でした。
長距離グランドツアラーとしての資質を大きく掲げ、レジャーやロングトリップへの対応力をアピールしているモデルだからこそ、この後席の基本設計の手抜きは納得がいきません。
足元の広さや、ドアの下端までしっかり覆うドアトリム設計(乗降時にズボンの裾が汚れない実用的で素晴らしい親切設計)などの恩恵を、この「リクライニングなし・固定ヘッドレスト」という快適性の割り切りが大きくスポイルしてしまっています。
乗る人全員が等しくプレミアムな移動体験を得られるかと言えば、後部座席の快適性においては、明確な限界があることを認識しておくべきでしょう。
まとめ
新型クラウンエステートを1年間、日常の買い物から高速道路を使った長距離グランドツーリング、さらにはキャンプ場での車中泊に至るまで、オーナーとして徹底的に実使用してきた経験から、敢えて「ダメな点」「気になる点」を限界まで深掘りして解説してきました。
ドア閉時の共振音や、ステッカー仕様のエンブレム、一部の内装パーツのコストカットなど、プレミアムカーとしては見逃せない欠点が存在することは紛れもない事実です。
また、PHEV(RSグレード)が持つ175万円の価格差に対する専用装備の少なさや、カラー選択の制限、電動感の薄さなどは、購入前に自身のライフスタイルと照らし合わせて冷静に評価すべきポイントです。
しかし、これらのネガティブな要素をすべて洗い出した上で、このクラウンエステートという車を総括するならば、それらの重箱の隅をつつくような不満点を十分に補って余りある「極上の移動空間」と「圧倒的な実用性」を兼ね備えた、極めて完成度の高いプロダクトであることもまた事実です。
DRSがもたらす大柄な車体を感じさせない取り回しの良さ、レギュラーガソリン仕様によるクラスを超えた維持費の安さ、および何時間運転しても肩や腰が全く凝らないToyota Safety Senseの優秀な運転支援システムと静粛性は、一度味わうと手放せない魅力です。
今回のレビューで指摘した16個の「ダメな点」と「気になる点」を許容できるか、あるいは社外パーツや工夫で補えると判断できるのであれば、クラウンエステートはあなたにとって、日々の移動を極上の時間に塗り替えてくれる最高の実用相棒になるはずです。
二階堂仁(筆者情報)
モータージャーナリスト兼コラムニストとして活動。
慶應義塾大学を卒業後、日本の最大手自動車メーカーに就職。
車両開発本部のシャシー・サスペンションチューニング部門に所属し、新型車の動的質感の評価や走行テスト、グローバル市場向け車両の開発に長年携わる。
その後、自らのペンと技術的知見をもって、ユーザーに忖度のない自動車の「真実」を伝えたいという情熱から自動車出版業界へ転身。
現在は完全独立し、各種メディアやコラムにて中立的な視点から精緻なクルマ批評を展開している。
現在のガレージには、自らの運転技術の原点である日産スカイラインGT-R(R34)、極限の動的質感を学ぶためのレクサスLFA、および日常のグランドツアラーとして今回紹介したクラウンエステートRSを所有し、日々その走行性能と実用性を検証し続けている。

