モータージャーナリスト兼コラムニストの二階堂仁です。今回も多く寄せられている質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、「中古のデリカD:5が欲しいけれど、買ってから後悔しないか」「故障が多いという噂は本当なのか」といった点が気になっていることでしょう。私も長年デリカD:5を所有し、その魅力と、付き合っていく上での注意点の両方を経験してきましたので、その気になる気持ちはよくわかります。

引用 : 三菱自動車HP
中古車市場には様々な状態のデリカD:5が出回っており、知識なく選んでしまうと、残念ながら「後悔」に繋がる可能性があるのも事実です。しかし、ポイントさえ押さえれば、これほど頼りになり、カーライフを豊かにしてくれる車もありません。
この記事を読み終える頃には、中古の三菱デリカD:5に関する疑問や不安が解決しているはずです。
記事のポイント
- 中古デリカD:5で後悔する具体的な理由の解明
- 年式やエンジンによる特徴と故障リスクの違い
- 購入前に確認すべき8つの重要チェックポイント
- 購入後にかかるリアルな維持費とカスタムの知識

中古の三菱デリカD:5で後悔する?噂の真相を徹底解説
唯一無二の「オールラウンダーミニバン」として、登場から15年以上経った今なお絶大な人気を誇る三菱デリカD:5。その人気は中古車市場でも健在で、多くのファンを魅了し続けています。しかし、その一方で「中古のデリカD:5は後悔する」というネガティブな声が聞かれるのも事実です。

引用 : 三菱自動車HP
私自身もオーナーとして、またジャーナリストとして多くの個体を見てきましたが、確かに購入後にトラブルを抱えてしまうケースは存在します。では、なぜそのような声が上がるのでしょうか。まずはその理由と、デリカD:5が本当に故障しやすい車なのか、その真相に迫っていきます。
なぜ「後悔する」と言われるのか?3つの主な理由
中古のデリカD:5を購入して後悔するパターンには、いくつかの共通点があります。その中でも特に多い3つの理由を掘り下げてみましょう。これらを事前に理解しておくことが、失敗しない中古車選びの第一歩です。
理由1:想定以上の維持費(特に燃費と税金)
デリカD:5は、その堅牢なボディと本格的な4WDシステムを持つがゆえに、車両重量が重いという特徴があります。特に初期の2.4Lガソリンモデルは、現代のミニバンと比較すると燃費性能で見劣りする点は否めません。
- 街乗りでの燃費: 都市部でのストップ&ゴーが多い環境では、実燃費がリッターあたり6〜8km程度まで落ち込むことも珍しくありません。アルファードやセレナといった他社のミニバンから乗り換えた場合、給油の頻度と金額に驚く可能性があります。
- 自動車税: 排気量が2.4L(ガソリン)または2.2L(ディーゼル)のため、自動車税も決して安くはありません。さらに、初期モデルは新規登録から13年が経過し、自動車税および重量税の重課対象となっている個体も多く、年間維持費を押し上げる要因となります。
これらの維持費を把握せずに購入し、「思ったよりお金がかかる」と感じてしまうのが後悔の典型的なパターンです。
理由2:メンテナンス不足の車両との遭遇
デリカD:5のタフなイメージから、「メンテナンスフリーでも大丈夫」と誤解されているケースが散見されます。しかし、どんなに頑丈な車でも定期的なメンテナンスは不可欠です。
中古車市場には、残念ながらオイル交換などの基本的なメンテナンスを怠られてきた車両も紛れ込んでいます。特にディーゼルエンジンは、適切なメンテナンスの有無がコンディションを大きく左右します。メンテナンス不足の車両は、購入直後にエンジントラブルや駆動系の不具合といった高額な修理が必要になるリスクを抱えています。
理由3:過酷な使用環境によるダメージの蓄積
デリカD:5の真価は、舗装路だけでなく悪路や雪道で発揮されます。そのため、前オーナーがアウトドアやオフロード走行を趣味にしていたケースも少なくありません。
もちろん、それがデリカD:5の正しい使い方なのですが、オフロード走行が多い車両は、見えない部分にダメージが蓄積している可能性があります。
- 下回りの傷や錆: 河原や林道を走行した際に、ボディ下部や足回りの部品に石や流木がヒットし、傷や凹み、そこからの錆が発生していることがあります。
- サスペンションのへたり: 未舗装路からの突き上げを繰り返し受けることで、ショックアブソーバーやブッシュ類が早期に劣化している場合があります。
これらのダメージは、通常の街乗りで使われていた車両に比べて進行が早い傾向にあり、購入後の乗り心地の悪化や異音の原因となります。
デリカD:5は本当に故障しやすいのか?所有者が語る実態
「デリカは壊れやすい」という噂は本当なのでしょうか。結論から言うと、**「基本的な設計は非常に頑丈で壊れにくいが、特定の箇所にウィークポイントが存在する」**というのが私の見解です。
デリカD:5の骨格には、三菱が「リブボーンフレーム」と呼ぶ環状骨格構造が採用されており、ボディ剛性はミニバントップクラスです。エンジンや駆動系も、長年熟成された信頼性の高いものが使われています。
しかし、それはあくまで「致命的な故障が少ない」という意味です。走行距離や年数が重なれば、当然ながら消耗部品は劣化しますし、定期的な交換が必要なパーツも出てきます。特に、現代の車に不可欠な電子制御部品や、環境性能を高めるための装置には、経年劣化によるトラブル事例が報告されています。
重要なのは、「どこが壊れやすいのか」を事前に把握し、中古車選びの際にその部分を重点的にチェックすること、そして購入後のメンテナンス計画を立てておくことです。
後悔しないために知っておくべきデリカD:5の「弱点」
ここでは、中古のデリカD:5で特に注意すべき「ウィークポイント」とされる箇所を具体的に解説します。これらの症状や修理費用を頭に入れておくだけで、中古車を見る目が格段に変わるはずです。
ディーゼルエンジン特有の注意点
2012年に追加されたクリーンディーゼルエンジンは、力強い走りと経済性で人気ですが、ガソリンエンジンにはない特有のメンテナンスが必要です。
- EGRバルブの煤詰まり: 排気ガスの一部を再循環させて燃焼温度を下げ、NOx(窒素酸化物)の発生を抑えるEGRシステム。このシステムの要であるEGRバルブに煤が溜まると、バルブが正常に作動しなくなり、アイドリング不調や加速不良、エンジン警告灯の点灯といった症状を引き起こします。
- 症状: 発進時のもたつき、黒煙の増加、警告灯の点灯
- 修理費用の目安: 清掃で済む場合は2〜5万円、交換になると10万円以上かかることもあります。
- インジェクターの不具合: 燃料をシリンダー内に噴射するインジェクターは、ディーゼルエンジンの心臓部です。経年劣化や燃料の質により先端にカーボンが堆積すると、正常な噴射ができなくなります。
- 症状: エンジンの振動(カラカラ音)、始動性の悪化、燃費の低下
- 修理費用の目安: 1本あたり5〜8万円程度。4本すべて交換すると30万円を超える高額修理となります。定期的なインジェクター洗浄剤の使用で予防することも有効です。
- DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)の詰まり: 排気ガス中のPM(粒子状物質)を捕集するフィルターです。捕集したPMは自動再生(燃焼)されますが、短距離走行が多いと再生がうまく行われず、フィルターが詰まってしまうことがあります。
- 症状: DPF警告灯の点灯、エンジン出力の低下
- 修理費用の目安: 強制再生で1〜3万円、洗浄で5〜10万円、交換となると20万円以上かかります。
ガソリン・ディーゼル共通の注意点
エンジンタイプに関わらず、年式や走行距離に応じてチェックしておきたいポイントです。
- オルタネーター(発電機)の故障: 走行中にバッテリーを充電する重要な部品です。寿命はおおよそ10万km〜15万kmと言われていますが、個体差があります。故障するとバッテリーが充電されなくなり、最終的にはエンジンが停止してしまいます。
- 症状: 異音(ウィーンという音)、バッテリー警告灯の点灯
- 修理費用の目安: 5〜10万円程度(リビルト品を使用するかどうかで変動)。
- 電動スライドドアの不具合: ファミリー層には欠かせない装備ですが、ワイヤーの劣化やモーターの故障事例が報告されています。特にドアを開閉する際に異音がしたり、動きが渋い場合は要注意です。
- 症状: 開閉時の異音、途中で止まる、動かない
- 修理費用の目安: ワイヤー交換で3〜5万円、モーター交換になるとそれ以上かかる場合があります。
- 足回り(サスペンション)の劣化: 車重があるため、サスペンションへの負担は大きめです。ショックアブソーバーやブッシュ類が劣化すると、乗り心地の悪化や異音の原因になります。
- 症状: 段差を乗り越えた際の揺れの収まりが悪い、コトコト・ギシギシといった異音
- 修理費用の目安: ショックアブソーバー4本交換で10〜15万円、ブッシュ類の交換も加わるとさらに費用がかかります。
後悔しない中古デリカD:5の選び方|注意すべきチェックポイント
デリカD:5のウィークポイントを理解した上で、いよいよ具体的な車両選びのステップに進みます。数多くの中古車の中から「当たり」の個体を見つけ出すために、必ず確認すべきポイントを8つにまとめました。

引用 : 三菱自動車HP
【最重要】エンジンタイプの選び方(ディーゼル vs ガソリン)
デリカD:5選びで最も重要なのが、ディーゼルとガソリン、どちらのエンジンを選ぶかです。それぞれの特性は大きく異なり、あなたのカーライフに合うかどうかが満足度を左右します。
項目 | 2.2L クリーンディーゼル | 2.4L / 2.0L ガソリン |
---|---|---|
メリット | ・力強いトルク(特に坂道や高速)<br>・燃費が良い<br>・軽油が安い | ・エンジン音が静か<br>・車両価格が比較的安い<br>・メンテナンスが比較的容易 |
デメリット | ・エンジン音が大きい<br>・車両価格が高め<br>・煤詰まりなど特有のトラブルリスク | ・燃費が悪い<br>・トルクが細く、加速が穏やか<br>・自動車税がやや高い(2.4L) |
実燃費(目安) | 10〜13km/L | 7〜10km/L |
おすすめな人 | ・年間走行距離が多い<br>・高速道路をよく利用する<br>・アウトドアや積載量が多い | ・年間走行距離が少ない<br>・静粛性を重視する<br>・初期費用を抑えたい |
私個人の意見としては、デリカD:5のキャラクターを最大限に楽しむなら、やはりディーゼルエンジンがおすすめです。あの重いボディを軽々と加速させる大トルクは、一度味わうと病みつきになります。ただし、短距離のちょい乗りが多い方は、DPF詰まりのリスクがあるため慎重な検討が必要です。
年式で比較!前期・中期・後期の違いとおすすめモデル
デリカD:5は2007年の登場から現在まで、大きく分けて3つのモデルに分類できます。それぞれデザインや性能、中古車相場が異なります。
前期モデル(2007年〜2012年)
- 特徴: 登場初期のモデル。エンジンは2.4Lガソリンのみ。内外装のデザインが最もシンプル。
- 中古車相場: 50万円〜150万円程度と非常にリーズナブル。
- 注意点: 走行距離が多い個体が中心。年式相応の劣化は覚悟が必要。税金の重課対象になる年式も多い。
- おすすめな人: とにかく安く手に入れて、カスタムベースにしたい人。
中期モデル(2012年〜2019年)
- 特徴: 2012年に待望のクリーンディーゼルエンジンが追加。内外装の質感も向上し、安全装備も徐々に充実。
- 中古車相場: 150万円〜280万円程度と、価格と程度のバランスが良い。
- 注意点: ディーゼル初期型は、EGRなどのトラブル事例が比較的多い傾向にあります。高年式になるほど対策が進んでいます。
- おすすめな人: コストパフォーマンスを重視し、ディーゼルモデルに乗りたい人。
後期モデル(2019年〜現在)
- 特徴: 「ダイナミックシールド」と呼ばれる斬新なフロントデザインへ大幅変更。エンジンはディーゼルに一本化され、8速ATが採用されたことで、走りの質感が大幅に向上。先進安全装備も標準装備に。
- 中古車相場: 280万円〜450万円程度と高値で推移。
- 注意点: 中古車市場でのタマ数はまだ少なめ。デザインの好みが大きく分かれる。
- おすすめな人: 最新の安全装備と、より洗練された走りを求める人。予算に余裕がある人。
個人的なおすすめは、2015年以降の中期ディーゼルモデルです。トラブルがある程度出尽くし対策も進んでおり、価格もこなれてきています。内外装のデザインも普遍的で飽きがこないのが魅力です。
走行距離はどこまで許容できる?判断基準を解説
中古車選びの指標として走行距離を気にする方は多いでしょう。一般的に「1年1万km」が目安とされますが、デリカD:5の場合は少し考え方が異なります。
「10万km超え=NG」ではない
デリカD:5は元々の作りが頑丈なため、10万kmを超えても全く問題なく走れる個体がほとんどです。重要なのは**「距離」そのものよりも「どのような使われ方をしてきたか」**です。
例えば、
- A車: 走行距離5万km。街中のちょい乗りがメインで、オイル交換は2年に1回。
- B車: 走行距離12万km。高速道路での長距離移動がメインで、半年に1回は必ずディーラーで点検・オイル交換。
この場合、長期的な視点で見ればB車の方がエンジンのコンディションが良い可能性があります。
許容範囲の目安とチェックポイント
あくまで目安ですが、15万kmあたりまでを一つの区切りとして考えると良いでしょう。10万kmを超えた車両を選ぶ際は、以下の部品の交換履歴があるかを確認すると、より安心です。
- オルタネーター
- ウォーターポンプ
- サスペンション(ショックアブソーバー)
- ブレーキ関連(ディスクローター、キャリパー)
これらの交換には高額な費用がかかるため、購入前に交換済みであれば、その後の出費を大きく抑えることができます。
修復歴ありの車両は避けるべき?見分け方のポイント
「修復歴あり」の車両は、相場より安く販売されているため魅力的に見えるかもしれません。しかし、基本的には避けるのが賢明です。

引用 : 三菱自動車HP
修復歴とは、自動車の骨格(フレーム)部分を修正・交換した経歴があることを指します。骨格部分のダメージは、走行安定性の低下や、雨漏り、ボディの歪みといった様々な不具合を引き起こす可能性があります。
簡単な見分け方のポイント
- パネルの隙間: ボンネット、ドア、トランクなどの隙間が左右で均一かチェックします。
- 塗装の状態: 特定のパネルだけ色味が違ったり、塗装面にブツブツやザラつきがないか確認します。
- ボルトの塗装剥がれ: フェンダーやボンネットを固定しているボルトの頭に、工具をかけた跡(塗装剥がれ)がないか見ます。交換されている可能性があります。
少しでも違和感を覚えたら、販売店のスタッフにためらわずに質問しましょう。誠実な店舗であれば、修復の箇所や程度を詳しく説明してくれるはずです。
必ずチェックしたい!内外装と装備の状態
実車を確認する際は、以下のポイントを重点的にチェックしてください。前オーナーの車の使い方を推測するヒントが隠されています。
外装のチェック
- 下回り: 最も重要なポイントです。可能であれば覗き込み、フレームやマフラー、足回りに大きな傷や凹み、過度な錆がないか確認します。オフロードでのヒット跡がないかを見つけましょう。
- ボディ全体: 小さな傷や凹みは中古車なのである程度は仕方ありませんが、大きな錆や塗装の剥がれがないか確認します。
- タイヤ: タイヤの製造年(側面に4桁の数字で記載)と残り溝をチェック。溝が少なく、ひび割れが多い場合は、購入後すぐに交換が必要になります。
内装のチェック
- シートの状態: 特に運転席シートのへたりやスレ、破れがないか確認します。
- 汚れと臭い: アウトドアで使われた車両は、泥汚れがシート下やフロアカーペットの奥に残っていることがあります。また、タバコやペット、芳香剤の臭いが染み付いていないかも重要なポイントです。
- 電装品の動作確認: エアコン(冷暖房)、ナビ、オーディオ、パワーウィンドウ、そして電動スライドドアなど、スイッチ類はすべて実際に操作して正常に動くか確認しましょう。
記録簿(メンテナンスノート)の重要性と確認方法
記録簿は、その車の「健康診断書」のようなものです。これまでの整備履歴が詳細に記載されており、車両の状態を判断する上で非常に重要な書類です。

引用 : 三菱自動車HP
- 確認するポイント:
- 定期点検(12ヶ月点検、24ヶ月点検)がきちんと実施されているか。
- エンジンオイルやオイルフィルターの交換が、適切な時期・距離で行われているか。(ディーゼルなら5,000km〜10,000km毎が理想)
- 大きな部品の交換履歴があるか。
- 「記録簿なし」の車両は要注意:
- よほど車両の状態に自信があり、自分で判断できる場合を除き、記録簿がない車両は避けた方が無難です。どのようなメンテナンスを受けてきたか全くわからないため、リスクが高まります。
信頼できる中古車販売店の選び方
最後に、どんなに良い車両でも、それを販売するお店が信頼できなければ意味がありません。
- デリカ専門店・SUV専門店: 特定の車種に特化したお店は、その車の長所も短所も熟知しています。デリカD:5特有のウィークポイントを事前に整備してくれていたり、購入後の相談にも的確に対応してくれたりする可能性が高いです。
- 保証制度の充実: 購入後のトラブルに備え、保証制度があるお店を選びましょう。保証期間だけでなく、保証される範囲(エンジンやミッションだけでなく、エアコンや電装品も含まれるかなど)を詳しく確認することが重要です。
- スタッフの対応: 車両に関する質問に丁寧に答えてくれるか、メリットだけでなくデメリットも正直に話してくれるかなど、スタッフの誠実さも判断基準になります。試乗を快く受け入れてくれるかもポイントです。
まとめ
「中古の三菱デリカD:5は後悔する」という噂は、**「知識なく状態の悪い個体を選んでしまうと後悔に繋がる可能性がある」**というのが真相です。しかし、その逆もまた真なり。デリカD:5という車の特性やウィークポイントを正しく理解し、今回紹介したチェックポイントを一つひとつ確認しながら慎重に選べば、これほどまでに頼もしく、家族や友人との時間を彩ってくれる相棒は他にありません。
私自身、この車と共に数え切れないほどの場所へ出かけ、多くの思い出を作ってきました。舗装路の快適性と、いざという時の悪路走破性を高次元で両立したデリカD:5は、あなたの行動範囲を確実に広げてくれるはずです。
この記事が、あなたの素晴らしいデリカD:5との出会いの一助となれば幸いです。焦らず、じっくりと、最高の1台を見つけてください。