モータージャーナリスト兼コラムニストの二階堂仁です。 今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、ロールスロイスの購入を検討しつつも、実際に所有してからの後悔、特に維持費や故障といった現実的な問題が気になっているのではないでしょうか。
私もオーナーとして、そしてジャーナリストとして数々の高級車を乗り継いできましたが、その頂点に立つロールスロイスの所有には、確かに特別な覚悟が必要だと感じています。 ネットや漫画で語られる「後悔」の話、気になる気持ちはよくわかります。

引用 : ロールスロイスHP
この記事を読み終える頃には、あなたが抱えるロールスロイス購入後の後悔に関する疑問が解決しているはずです。
記事のポイント
- 想像を絶する高額な維持費の実態
- 巨大なボディがもたらす日常での苦労
- 故障時の精神的・金銭的ダメージ
- 所有者ならではの周囲への過剰な気遣い

ロールスロイス購入後に後悔する8つのリアルなポイント
誰もが一度は憧れる自動車界の頂点、ロールスロイス。 しかし、その輝かしいエンブレムの裏側には、オーナーだけが知る現実的な悩み、つまり「後悔」の種が隠されています。 私自身もオーナーとして、そして多くのオーナー仲間から話を聞く中で、共通する後悔のポイントが見えてきました。

引用 : ロールスロイスHP
ここでは、あなたが購入後に「こんなはずじゃなかった」と頭を抱えることのないよう、具体的な8つのポイントに絞って、その実態を包み隠さずレビューしていきましょう。 これらは決して脅し文句ではなく、最高のカーライフを送るための「心構え」として受け取ってください。
1. 維持費の後悔:タイヤ1本で数十万円?想像を絶するコスト
まず、誰もが最初に直面する最大の後悔ポイントが「維持費」です。 車両本体価格が数千万円から億を超えるのですから、維持費も相応にかかることは想像に難くないでしょう。 しかし、その「相応」という言葉の尺度が、一般的な高級車とは全く異なります。
税金・保険料
自動車税は排気量に応じて課税されます。 例えば、現行モデルのゴーストやファントムに搭載されている6.75リッターV12エンジンであれば、自動車税は年間111,000円です。 これは他の大排気量車と大差ないように思えるかもしれません。 しかし、問題は任意保険です。 車両保険を付帯させると、その保険料は驚くべき金額に跳ね上がります。 車両価格が非常に高額なため、保険会社のリスクも高く、年間で50万円から100万円、あるいはそれ以上になることも珍しくありません。 等級や年齢条件によって変動はしますが、一般的な感覚とはかけ離れていることだけは確かです。
燃費
ロールスロイスのオーナーで燃費を気にする人は少ない、とはよく言われますが、現実問題として給油の頻度と金額は無視できません。 車重が2.5トンを超え、大排気量のエンジンを搭載しているため、燃費が良いはずもありません。 私の経験やオーナー仲間からの情報を総合すると、街乗りでの実燃費はリッターあたり3km~5km程度。 高速道路をゆったりとクルージングして、ようやく7km/Lに届くかどうか、といったところです。
ハイオクガソリンの価格が高騰している昨今、満タン(約80L~100L)にすれば2万円近くかかることもあり、これが日常的に続くと精神的な負担になる可能性は否定できません。
消耗品、特にタイヤの価格
ここが最も後悔しやすいポイントかもしれません。 ロールスロイスのタイヤは、その静粛性と乗り心地を支えるために専用設計された特殊なものが多く、交換費用が桁違いに高額です。 タイヤの内部に特殊なスポンジが組み込まれ、ロードノイズを極限まで低減する工夫が凝らされています。 そのため、タイヤ4本を交換すると、安くても50万円、銘柄やサイズによっては100万円を超えるケースもざらにあります。
パンク修理も簡単にはできず、基本的には交換となるため、たった1本のパンクで数十万円が飛んでいく覚悟が必要です。 ブレーキパッドやローターなどの消耗品も同様に高価で、定期的な交換が求められます。
維持費項目 | 年間費用の目安(一例) | 備考 |
---|---|---|
自動車税 | 111,000円 | 6.0L超クラス |
任意保険料 | 500,000円 ~ 1,500,000円 | 年齢、等級、車両保険の有無で大きく変動 |
燃料代 | 600,000円 ~ | 年間1万km走行、燃費4km/L、ハイオク180円/Lで計算 |
駐車場代 | 600,000円 ~ | 都心部月極駐車場の場合 |
メンテナンス費用 | 300,000円 ~ | 定期点検、オイル交換など |
合計 | 2,111,000円 ~ | これに加えて車検費用、消耗品交換費用が発生 |
2. メンテナンス・故障の後悔:部品一つが高級腕時計並み
「壊れないロールスロイス」というのは、あくまで神話です。 現代のモデルはBMWの技術が投入され、信頼性は格段に向上しましたが、それでも精密機械である以上、故障のリスクはゼロではありません。 そして、一度トラブルが発生した際の精神的、金銭的ダメージは計り知れません。
正規ディーラーでの修理費用は、私たちの想像を遥かに超えてきます。 例えば、ドアミラー一つの交換で数十万円、複雑な電子制御システムの修理となれば数百万円の見積もりが出ることもあります。 部品は本国からの取り寄せになることが多く、修理期間が数ヶ月に及ぶことも覚悟しなければなりません。
ボルト1本が数千円、エンブレムの格納モーターが故障すれば数十万円という世界です。 中古車で安く購入した場合、この修理費用の問題が重くのしかかり、「安物買いの銭失い」の典型的なパターンに陥る危険性が非常に高いのです。 予防整備という考え方が基本で、車検時には「まだ使える部品」も、故障のリスクを考えて早めに交換することが推奨されます。 結果として、車検費用が100万円、200万円を超えることも日常茶飯事です。
3. 駐車場・サイズの大きな後悔:「どこにも停められない」ストレス
ロールスロイスのボディサイズは、日本の道路環境において最大のネックとなり得ます。 全長5.5m超、全幅2m超という巨体は、まさに「走る応接室」。 その圧倒的な存在感は魅力ですが、日常使いでは多大なストレスを生みます。
まず、駐車場問題です。 自宅に屋根付きの広大なガレージがあることは大前提ですが、問題は外出先です。 都心部の一般的なコインパーキングや商業施設の駐車場では、サイズ制限で入庫を断られることが頻繁にあります。 特に、機械式駐車場はほぼ全滅と言っていいでしょう。 運良く平置きの駐車場を見つけても、隣の車との間隔が狭すぎてドアの開閉に神経を使いますし、ドアパンチのリスクにも常に怯えることになります。 結果として、外出前には必ず「停められる駐車場があるか」をリサーチする必要があり、行動が著しく制限されてしまうのです。
4. 周囲の視線による後悔:良くも悪くも注目の的
ロールスロイスを所有するということは、良くも悪くも常に周囲の視線に晒されるということです。 最初は優越感に浸れるかもしれませんが、次第にそれが重荷に感じられるようになるオーナーは少なくありません。

引用 :Lesury Motors Journal イメージ
サービスエリアや商業施設に停めれば、多くの人が足を止めて眺め、写真を撮っていくこともあります。 一方で、その威圧感からか、時には妬みや嫉妬の対象となることも覚悟しなければなりません。 幅寄せされたり、心ない言葉を浴びせられたりといった経験を持つオーナーもいます。
また、「ロールスロイスに乗っているのだから」という無言のプレッシャーを感じる場面も増えるでしょう。 服装や立ち居振る舞いにも気を遣うようになり、純粋にリラックスして車との時間を楽しめなくなる、という皮肉な状況に陥ることもあります。 友人や知人を乗せる際にも、「傷をつけないか」「汚さないか」と相手に過剰な気遣いをさせてしまうことも、後悔のポイントとして挙げられます。
5. 日常使いでの後悔:スーパーへの買い物は決死の覚悟?
「ロールスロイスで近所のスーパーへ」というのは、多くの人が思い描く非日常的な光景ですが、これを実行するには相当な覚悟が必要です。 前述の駐車場問題に加え、狭い路地や商店街の走行はまさに苦行。 車両感覚を掴むまでは、対向車とのすれ違いや左折時の内輪差に肝を冷やす場面が何度もあるでしょう。
最小回転半径も大きいため、一度道を間違えればUターンできる場所を探すだけで一苦労です。 せっかくの「魔法の絨毯」と称される乗り心地も、こうしたストレスの中では十分に味わうことができません。 結果として、日常の足としては全く使えず、特別な日にしか乗らない「ガレージの飾り」になってしまい、何のために購入したのか分からなくなる、という後悔につながります。
6. ドライビングプレジャーの後悔:運転は楽しいのか?
ロールスロイスは、後部座席に乗る「ショーファードリブン」のイメージが強いですが、ゴーストやレイス、カリナンのように、オーナー自らがハンドルを握ることを想定したモデルも多数存在します。 しかし、そのドライビングフィールは、スポーツカーのような刺激的なものではありません。 あくまでも快適性、静粛性、滑らかさを追求したものであり、運転の楽しさは「穏やかで満ち足りた時間」という側面に集約されます。 コーナーを攻めるような走りには全く向いておらず、その巨体を持て余すばかりです。 もしあなたがポルシェやフェラーリのような、車との一体感や刺激的な走りを求めているのであれば、ロールスロイスの運転は退屈に感じてしまうかもしれません。 「運転する喜び」の価値観が、一般的なスポーツカーとは全く異なることを理解しておく必要があります。
7. オプション選択の後悔:「自分だけの一台」が沼の入り口
ロールスロイスの魅力の一つに、無限に近いカスタマイズ性、すなわち「ビスポーク」プログラムがあります。 ボディカラーや内装のレザー、ウッドパネルの種類はもちろん、天井をプラネタリウムのように演出する「スターライト・ヘッドライナー」など、自分だけの唯一無二の一台を作り上げることができます。 しかし、これが大きな後悔の種になることも。 一つ一つのオプションが非常に高額で、気づけばオプションだけで高級車一台分の価格になっていた、ということも珍しくありません。

引用 :Lesury Motors Journal イメージ
また、発注時に選択しなかったオプションを後から追加することは基本的に不可能です。 「あの時、スターライト・ヘッドライナーを付けておけばよかった…」という後悔は、数千万円の買い物であるがゆえに、長く心に影を落とすことになります。
8. リセールバリューの後悔:永遠の価値ではない現実
「ロールスロイスは価値が落ちない」という話を聞いたことがあるかもしれませんが、それは一部の限定モデルや希少なクラシックカーに限った話です。 一般的な量産モデルの場合、他の高級車と同様に、あるいはそれ以上に大きく価値が下落します。
特に、最初の3年から5年での下落率は顕著です。 購入時に数千万円を支払っても、数年後にはその半値以下になることも覚悟しなければなりません。 もちろん、一般的な車に比べれば高値で取引される傾向にはありますが、「資産」として考えて購入すると、手放す際に大きな失望を味わうことになるでしょう。 維持費という名のキャッシュアウトが続く一方で、資産価値は目減りしていくという現実は、精神的に大きな負担となり得ます。
後悔を乗り越える!ロールスロイスを心から楽しむための秘訣
さて、ここまでロールスロイスを所有することで起こりうる「後悔」のポイントを赤裸々にお話ししてきました。 これだけの話を聞くと、「やはり自分には無理だ」と感じてしまったかもしれません。 しかし、ご安心ください。 これらの後悔は、事前準備と心構え次第で、十分に乗り越えることが可能です。

引用 : ロールスロイスHP
むしろ、これらのハードルを理解し、受け入れた上でオーナーになることで、何物にも代えがたい真の満足感を得ることができるのです。 ここでは、後悔を「歓び」に変えるための具体的な秘訣を、私なりの視点でお伝えします。
1. 経済的な準備:年収はいくら必要?「もしも」への備え
最も重要なのが、経済的な準備です。 車両本体価格を支払えることはもちろんですが、それはスタートラインに立ったに過ぎません。 前述した高額な維持費を、毎年コンスタントに支払い続けることができるかどうかが問われます。
よく「ロールスロイスを買うには年収はいくら必要か?」という質問を受けますが、一概には言えません。 しかし、私個人の見解としては、車両価格の10%~20%を年間の維持費として無理なく捻出できるくらいの余裕は欲しいところです。 つまり、4,000万円のゴーストであれば、年間400万円から800万円程度の維持費を見込んでおくべきでしょう。
これには、税金や保険、燃料代といった固定費に加え、予期せぬ故障や消耗品の交換に備えるための「特別予算」も含まれます。 この予算を確保しておくことで、いざという時に慌てることなく、精神的な余裕を持って対応できます。 「購入資金」と「維持・修理資金」は、全く別の財布で考える。 これが鉄則です。
2. 環境の準備:ガレージと主治医を確保せよ
次に重要なのが、物理的な環境の準備です。 まず、愛車を保管するガレージ。 雨風を凌げるシャッター付きのガレージは必須です。 理想を言えば、セキュリティシステムが完備され、空調管理ができるビルトインガレージが望ましいでしょう。 そして、そのガレージは、車の出し入れが容易にできる十分な広さとアプローチを持っている必要があります。
もう一つ、非常に重要なのが「主治医」の確保です。 もちろん、正規ディーラーが最も安心できる選択肢ではありますが、費用面や立地的な問題で、常にディーラーに頼れるとは限りません。 ロールスロイスのような特殊な車を、深い知識と情熱を持って整備してくれる、信頼できる専門ショップやメカニックを見つけておくことは、あなたのカーライフを大きく左右します。 こうしたショップは、ディーラーでは対応してくれないような細かな相談に乗ってくれたり、時にはリビルド品や優良な中古パーツを探してくれたりと、費用を抑えるための知恵を貸してくれることもあります。 購入前に、お住まいの地域でそうした存在を探しておくことを強くお勧めします。
3. 精神的な準備:周囲の目を「楽しむ」マインドセット
ロールスロイスは、単なる移動手段ではありません。 それは「文化」であり、「ステータス」であり、時には「嫉妬の対象」でもあります。 周囲からの視線をストレスに感じるのではなく、「この車の価値を理解してくれる人がいる」「注目されるのもオーナーの務め」と、ある種のエンターテインメントとして楽しむくらいの気概が必要です。
もちろん、TPOをわきまえることは重要です。 冠婚葬祭や格式ある場へ乗り付ける際には、この車は最高のパートナーとなります。 しかし、日常の買い物や子供の送り迎えなど、過度に目立つことが好ましくない場面では、あえて別の車を使うという使い分けも、賢明なオーナーの選択です。 ロールスロイスを所有することは、ライフスタイルの中に新たな「使い分け」という概念をもたらします。 この車が全てのシーンで万能ではないことを受け入れ、その特別な存在感を活かせる場面で存分に輝かせる。 そうしたマインドセットが、後悔を避ける鍵となります。
4. モデル選びの重要性:あなたのライフスタイルに合う一台は?
「ロールスロイス」と一括りに言っても、そのキャラクターはモデルによって大きく異なります。 自分のライフスタイルや車に求めるものを明確にし、最適な一台を選ぶことが、購入後の満足度を大きく左右します。
- ファントム (Phantom): まさに王道。後部座席での移動がメインで、究極のラグジュアリーとステータスを求める方向け。自分で運転するには少し大きすぎると感じるかもしれません。
- ゴースト (Ghost): ファントムよりも少しコンパクトで、よりドライバーオリエンテッドなモデル。ショーファードリブンとしても、自分で運転する歓びも両立したいという方に最適です。
- カリナン (Cullinan): ロールスロイス初のSUV。圧倒的な走破性と実用性を兼ね備え、アクティブなライフスタイルを持つ方に。後部座席の快適性は他のセダンに引けを取りません。
- レイス (Wraith) / ドーン (Dawn): スポーティーなクーペと優雅なコンバーチブル。運転すること自体を楽しみたい、よりパーソナルな空間を求める方に。
それぞれのモデルに試乗し、サイズ感や運転フィール、そして何よりも「自分の心に響くか」を確かめることが非常に重要です。
5. それでも余りある所有する歓び:後悔を上回る究極の体験
ここまで様々な「後悔」や「準備」について語ってきましたが、最後に最もお伝えしたいのは、それらを遥かに凌駕する「所有する歓び」が存在するということです。
静寂に包まれた室内で、まるで魔法の絨毯のように滑らかに進むあの感覚。 信号待ちで隣に並んだ誰もが、畏敬の念を持って見つめてくる視線。 最高級のレザーとウッドに包まれ、自分だけのビスポーク空間で過ごす時間。 これらは、ロールスロイスのオーナーだけが味わうことのできる、まさに究極の体験です。
単なる「良い車」という次元を超え、人生の価値観や風景さえも変えてしまうほどの力を持っています。 一つ一つの所作が優雅になり、訪れる場所のグレードが上がり、出会う人々も変わってくるかもしれません。 ロールスロイスを所有することは、自分自身を次のステージへと引き上げてくれる、最高の自己投資でもあるのです。 これまで語ってきた数々のハードルは、この頂へと至るための試練なのかもしれません。
まとめ
今回は、ロールスロイスを購入した後に後悔する可能性のあるポイントと、それを乗り越えるための秘訣について、私の実体験を交えながら詳しくレビューしてきました。
確かに、ロールスロイスの所有には、高額な維持費、巨大なボディサイズ、故障のリスク、そして周囲の視線といった、数々の覚悟が必要です。 これらを軽視して憧れだけで手を出せば、待っているのは「こんなはずじゃなかった」という厳しい現実でしょう。
しかし、これらの課題を事前に理解し、経済的、環境的、そして精神的な準備を万全に整えることで、後悔は最高の歓びへと昇華されます。 ロールスロイスは、単なる工業製品ではなく、オーナーの人生に寄り添い、豊かにしてくれる唯一無二のパートナーとなり得る存在です。
購入はゴールではなく、素晴らしいカーライフの始まりに過ぎません。 この記事が、あなたのその第一歩を、確かなものにするための一助となれば幸いです。