モータージャーナリスト兼コラムニストの二階堂仁です。 今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、2025年9月8日に発表されたレクサスISのビッグマイナーチェンジで、具体的にどこがどう変わったのか、そのメリット・デメリットが気になっていると思います。 私もISオーナーとして今回の変更点には大いに注目しており、その気になる気持ちはよくわかります。

引用 : TOYOTA HP (https://lexus.jp/)
この記事を読み終える頃には、新型ISを購入すべきかどうかの判断材料が揃い、あなたの疑問が解決しているはずです。
記事のポイント
- エクステリアの大幅な刷新とデザイン性の向上
- タズナコンセプトに基づくインテリアの近代化
- 最新の運転支援システムと先進装備の採用
- プラットフォームとパワートレインのキャリーオーバー

新しい車に乗り換える際、今乗っている愛車をどれだけ高く売却できるかは、次の車の選択肢にも大きく影響します。
私自身、一括見積もりサイトを活用したことで、ホンダヴェゼルからレクサスRXに乗り換えることができました。
新型レクサスIS ビッグマイナーチェンジで進化した8つのポイント
2013年のデビューから熟成を重ねてきたレクサスISが、2020年のビッグマイナーチェンジに続き、再び大幅な改良を受けました。 今回の変更は、単なる延命措置ではなく、レクサスが誇るFRスポーツセダンとしての価値を現代のレベルに引き上げるという強い意志が感じられるものです。
私自身、過去に2台のISを所有してきたからこそ、その進化の度合いには驚かされるばかりです。 まずは、今回のビッグマイナーチェンジで特に注目すべき「良い点」、つまり進化した8つのポイントから詳しく解説していきましょう。

引用 : TOYOTA HP (https://lexus.jp/)
エクステリアデザインのさらなる進化と洗練
まず誰もが目を見張るのは、そのエクステリアデザインの劇的な変化でしょう。 もともと2020年の改良で完成の域に達したと感じていたISのデザインが、今回の変更でさらなる高みへと到達しました。
新世代レクサスの顔「ユニファイドスピンドル」への昇華
最大の変化点はフロントマスクです。 従来の糸巻き形状のスピンドルグリルから、最新のレクサス車(例えばLBXや新型RX)に採用されている「ユニファイドスピンドル」を彷彿とさせるデザインへと生まれ変わりました。 ボディとグリルの境界線を曖昧にすることで、より一体感のあるダイナミックな表情を生み出しています。 特に、グリルの下部のみをメッシュタイプとし、ボディ同色の部分を増やすことで、低くワイドなスタンスを強調しているのが特徴です。
また、レクサスのエンブレムがグリル内部からボンネットフード先端に移設されたことも見逃せません。 これにより、フロントエンドがより低く見える視覚効果が生まれ、スポーツセダンとしての精悍さが一層際立っています。
伝統と革新が融合したランプデザイン
ヘッドランプのユニット自体は、レクサスのアイデンティティでもあるL字型のアローヘッド形状デイライトと、シャープな三眼LEDヘッドランプが踏襲されました。 個人的にはこのデザインは非常に完成度が高いと感じているため、良い部分を残してくれたことに好感を持ちます。
リアに目を移すと、2020年モデルで採用された一文字につながるコンビネーションランプは健在ですが、中央のエンブレムが「Lマーク」から新世代モデル同様の「LEXUS」のロゴタイプに変更されました。 これだけで、リアビューの印象がぐっとモダンになります。 まさに「最新のレクサス」であることを雄弁に物語るディテールです。
インテリアの大幅刷新と質感の飛躍的向上
ドアを開けた瞬間に広がる光景も、従来モデルとは別物です。 運転に集中できる環境を目指したというインテリアは、デザインと質感が大幅に向上しています。

引用 : TOYOTA HP (https://lexus.jp/)
Tazuna Conceptに基づくコクピット
今回の改良で、レクサスが推進する「Tazuna Concept(タズナコンセプト)」がISにも導入されました。 これは、手綱一本で馬と意思疎通を図るように、ドライバーが運転に集中しながら直感的に操作できる空間を目指す思想です。 その思想に基づき、インパネからセンターコンソール、ドアトリムに至るまでデザインが一新されています。
特にエアコンの吹き出し口は、従来の丸型から水平基調のシャープなデザインに変更され、ダッシュボード全体がワイドに見えるようになりました。 助手席前のダッシュボードにもステッチが施され、ソフトパッドの使用範囲も拡大されているようで、触れた際の質感にも期待が持てます。
スイッチ類の質感向上と操作性の改善
旧型オーナーとして少し不満だったのが、一部のスイッチ類の質感でした。 特にエアコン操作パネル周りは、正直なところ価格に見合わないと感じる部分もありましたが、新型ではそのスイッチ類が全面的に改められています。 ピアノブラックと金属調の加飾が効果的に使われ、操作時のクリック感なども含めて、質感が大幅に向上していることが写真からも見て取れます。
待望のアンビエントライト採用で華やかな室内空間へ
近年の高級車では必須装備となりつつあるアンビエントライトが、ついにISにも採用されました。 これは非常に歓迎すべき進化です。 助手席前のダッシュボードやセンターコンソールの一部、ドアトリムなどがライン状に光り、夜間のドライブをムーディーに演出します。

引用 : TOYOTA HP (https://lexus.jp/)
64色の多彩なカラーバリエーション
設定できるカラーは、14色のテーマカラーと、好みに合わせて選べる50色のカスタムカラーを合わせて、合計64色。 メルセデス・ベンツなど、この分野をリードしてきた欧州車に引けを取らない多彩なバリエーションが用意されており、気分や好みに合わせて室内空間の雰囲気を自在に変えることができます。 これまではアフターパーツで対応するしかなかった部分だけに、純正でこのクオリティが手に入るのは大きな魅力です。
最新デジタルインターフェースの導入による近代化
インテリアの印象を古く見せていた最大の要因であるディスプレイとメーターも、ついに最新世代のものへとアップデートされました。
12.3インチの大型タッチディスプレイ
まず、センターディスプレイが従来の10.3インチから12.3インチへと大型化されました。 サイズが大きくなっただけでなく、タッチ操作に対応し、ナビゲーションやオーディオの操作性が格段に向上しています。 表示される地図や情報も格段に見やすくなり、見た目の先進性も一気に高まりました。
12.3インチフル液晶メーターの採用
そして、メーターパネルもアナログメーターと小型液晶の組み合わせから、12.3インチのフル液晶メーターへと刷新されました。 これにより、表示できる情報量が飛躍的に増加。 ナビ画面と連携したルート案内や、運転支援システムの作動状況などをグラフィカルに表示できるようになり、視認性と利便性が大幅に向上しています。 F SPORTでは、ステアリングスイッチ操作でメーターリングがスライドするギミックも継承されていることでしょう。
項目 | マイナーチェンジ前 | 新型(ビッグマイナーチェンジ後) |
---|---|---|
センターディスプレイ | 10.3インチ | 12.3インチ(タッチ対応) |
メーター | アナログ+液晶 | 12.3インチフル液晶 |
運転支援システム「Lexus Safety System +」の進化
安全性能も現代の最高水準へとアップデートされています。 最新の「Lexus Safety System +」が採用され、これまでISの弱点とされていた部分が一気に解消されました。

引用 : TOYOTA HP (https://lexus.jp/)
プロアクティブドライビングアシスト(PDA)
特に注目すべきは「プロアクティブドライビングアシスト(PDA)」の追加です。 これは「リスクの先読み」を行うシステムで、例えば前方のカーブに対して自車の速度が速いと判断した場合、ドライバーのブレーキ操作を待たずに穏やかに減速をアシストしたり、前を走るクルマに近づきすぎた際に減速を支援したりします。 また、道路を横断しようとする歩行者や自転車を検知すると、衝突の危険を察知してブレーキと操舵の両方で回避を支援してくれます。 これにより、ドライバーのうっかりミスをカバーし、事故を未然に防ぐ効果が期待できます。
アドバンストドライブ(渋滞時支援)
さらに、高速道路などの渋滞時(時速0km/h~約40km/h)において、一定の条件下で手放し運転を可能にする「アドバンストドライブ(渋滞時支援)」も搭載されました。 ドライバーが前を向いているなど、システムが監視を続けていることが条件ですが、渋滞中のステアリング、アクセル、ブレーキ操作から解放されるため、長距離移動時の疲労を大幅に軽減してくれます。
「走り」の熟成と深化にかけるレクサスの意地
見た目や装備だけでなく、ISの根幹である「走り」も着実に進化を遂げています。 プラットフォームはキャリーオーバーですが、その中身は大きく手が加えられました。
ステアリングフィールの劇的な改善へ
旧型オーナーとして、私が最も改善を期待していたのがステアリングフィールです。 今回の改良で、電動パワーステアリングが従来のコラム式から、よりダイレクトな操舵感が得られる「ラックパラレル式(ラック式)」に変更されました。 さらに、ステアリングの切れ角に応じてギア比を変化させる「バリアブルギアレシオステアリング(VGRS)」も採用されています。 これにより、低速域では取り回しやすく、高速域では安定したリニアな操舵感が得られるはずです。 近年のトヨタ・レクサス車が持つ、スッキリとして気持ちの良いステアフィールにどれだけ近づいているか、試乗が非常に楽しみなポイントです。
新世代の電子制御サスペンションAVS
足回りには、リニアソレノイド式の「アダプティブバリアブルサスペンション(AVS)」が採用されました。 これは、従来のAVSよりも減衰力の可変範囲が広く、応答性も速いのが特徴です。 路面状況や運転操作に応じて、瞬時にサスペンションの硬さを最適に制御することで、しなやかな乗り心地と、コーナリング時の安定した姿勢を高い次元で両立します。 プラットフォームのハンデを、最新の電子制御技術でどこまでカバーできているのか、レクサスのエンジニアの腕の見せ所です。
細部に宿る利便性の向上
日常の使い勝手を向上させる細かなアップデートも多数行われています。
- USB Type-Cポートの設置: センターコンソールには、急速充電に対応したUSB Type-Cポートが2口設置され、現代のデジタルデバイス事情に対応しました。
- ワイヤレス充電(Qi): スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電器も引き続き装備されます。
- リモートタッチの廃止: 従来のモデルに搭載されていたリモートタッチパッドは廃止されました。そのスペースにはシートヒーター/ベンチレーションのスイッチやボリュームノブが機能的に配置され、より直感的な操作が可能になっています。
新規ボディカラーと魅力的なオプション設定
最後に、視覚的な魅力を高める新しい選択肢にも触れておきましょう。
- 新色「ニュートリノグレー」: 最新のレクサス車で人気のボディカラー「ニュートリノグレー」が新たに追加されました。ソリッドな質感でありながら、光の当たり方で表情を変える深みのあるカラーは、ISのシャープなスタイリングを一層引き立てます。
- F SPORT専用装備: F SPORTには、空力性能を考慮したブラックのトランクリッドスポイラーや、新デザインの軽量19インチアルミホイールが標準装備されます。
- メーカーオプション: メーカーオプションとして、レクサスのロゴが入ったレッドブレーキキャリパーが設定されるようです。足元のスポーティなアクセントとして、ぜひ選びたいアイテムです。
新型レクサスIS 購入前に知っておきたい4つの懸念点
ここまで良い点を数多く挙げてきましたが、もちろん完璧なクルマというわけではありません。 デビューから12年が経過したモデルのビッグマイナーチェンジであるがゆえの、いくつかの「懸念点」や「注意点」も存在します。 購入を検討する上では、これらの点を冷静に理解しておくことが非常に重要です。

引用 : TOYOTA HP (https://lexus.jp/)
基本骨格(プラットフォーム)はキャリーオーバー
最大の懸念点は、やはり基本骨格であるプラットフォームがキャリーオーバーであることです。 このプラットフォームは、トヨタのTNGA(Toyota New Global Architecture)思想が導入される以前の設計であり、デビューから12年以上が経過しています。
最新世代との根本的な違い
もちろん、レクサスもただ古いプラットフォームを使い続けているわけではありません。 2020年の改良時にも、スポット溶接の打点追加や構造用接着剤の使用範囲拡大など、ボディ剛性を高めるための地道な努力が続けられてきました。 今回もハブボルト締結の採用など、走りの質感を高める改良は行われています。
しかし、プラットフォームの基本設計そのものが持つポテンシャルには限界があります。 最新のTNGAプラットフォームを採用したクラウンやRXと比較した場合、静粛性、乗り心地のフラット感、そして衝突安全性といった、クルマの根源的な性能において、どうしても見劣りする部分が出てくる可能性は否定できません。 ステアリングやサスペンションといった部分的な改良で、どこまで最新モデルに迫る走りを実現できているのかが、評価の分かれ目となるでしょう。
パワートレインに目新しさはなく、選択肢も減少
もう一つの大きな懸念点は、パワートレインが従来型から変更されていないことです。 見た目や内装が劇的に進化した一方で、心臓部には変化がありませんでした。
2世代以上前のハイブリッドシステム
まず、国内の主力となるであろう「IS300h」に搭載される2.5Lハイブリッドシステム(THSⅡ)は、基本設計が非常に古いものです。 エンジンは最新の「ダイナミックフォースエンジン」ではなく、バッテリーもリチウムイオンではなく、バイポーラ型でもない従来のニッケル水素バッテリーが引き続き使用されると思われます。 これは、最新のクラウンやプリウスに搭載されている第5世代ハイブリッドシステムと比較すると、2世代以上前の技術です。 燃費性能や、アクセル操作に対するレスポンスのダイレクト感において、現代のレベルでは物足りなさを感じる場面があるかもしれません。
人気だったターボモデル(IS300)の廃止
さらに残念なのは、2.0Lターボエンジンを搭載していた「IS300」が今回のラインナップから消滅してしまったことです。 軽快な走りと税制面でのメリットから人気の高かったグレードだけに、この選択肢がなくなったことを惜しむ声は多いでしょう。 また、5.0L V8エンジンを搭載するハイパフォーマンスモデル「IS500」も、現時点では新型に関するアナウンスはありません。
これにより、新型ISのパワートレインは実質的に2.5Lハイブリッドの「IS300h」と、3.5L V6自然吸気エンジンの「IS350」の2種類に絞られることになります。
パワートレイン | マイナーチェンジ前 | 新型(ビッグマイナーチェンジ後) |
---|---|---|
2.0L ターボ | IS300(設定あり) | 廃止 |
2.5L ハイブリッド | IS300h(設定あり) | IS300h(継続) |
3.5L V6 NA | IS350(設定あり) | IS350(継続) |
5.0L V8 NA | IS500(設定あり) | 設定なし(現時点) |
国内モデルはハイブリッドのみになる可能性
情報によっては、日本国内で販売される新型ISは「IS300h」のみとなり、「IS350」は海外専売になる可能性があるとされています。 もしこれが事実であれば、国内のユーザーにとっては選択の幅がさらに狭まることになります。 大排気量FRセダンの官能的な走りを楽しみたいと考えていた方にとっては、非常に残念なニュースです。 この点については、正式な国内発売発表を待つ必要がありますが、購入計画を立てる上で注意しておくべき重要なポイントです。
発売時期は2026年以降と少し先
今回の発表はあくまで「世界初公開」であり、実際の発売は2026年以降とアナウンスされています。 つまり、今すぐ手に入るわけではなく、まだ1年以上待つ必要があるということです。 この間に、競合となるBMW 3シリーズやメルセデス・ベンツ Cクラスがさらなる改良を加えてくる可能性も十分に考えられます。 最新のデザインと装備を手に入れるためには、少しの忍耐が必要となりそうです。
まとめ
さて、新型レクサスISのビッグマイナーチェンジについて、良い点と懸念点の両面から詳しく解説してきました。 今回の改良を総括すると、「骨格と心臓部はそのままに、見た目と頭脳、そして作法を徹底的に現代化したモデル」と言えるでしょう。
この新型ISが「買い」なのは、こんな人です。
- 何よりもまず、この新しくなったエクステリアとインテリアのデザインに惚れ込んだ人。
- 最新の運転支援システムやデジタル装備を、FRレイアウトのセダンで楽しみたい人。
- プラットフォームやパワートレインの古さよりも、熟成された信頼性や内外装の質感を重視する人。
一方で、購入を慎重に検討すべき「待ち」なのは、こんな人です。
- TNGA世代の最新プラットフォームがもたらす走りの質感を求める人。
- 燃費やレスポンスに優れた最新のパワートレインを必須と考える人。
- 完全なフルモデルチェンジまで待つことができる、時間的な余裕がある人。
私個人の見解としては、今回のビッグマイナーチェンジは「驚くべき延命措置であり、レクサスの意地とプライドが詰まった一台」だと評価しています。 パワートレインなどの根本的な部分に古さが残るのは事実ですが、それを補って余りあるほどの魅力が内外装と先進装備にあります。 特に、このスタイリングはFRスポーツセダンとして一つの理想形に近づいたのではないでしょうか。
最終的に重要なのは、あなたがクルマに何を求めるかです。 最新のメカニズムを追い求めるのも一つの正解ですし、熟成されたデザインと安心感を愛でるのもまた、素晴らしいカーライフの形です。 ぜひこのレビューを参考に、ご自身の価値観と照らし合わせながら、じっくりと検討してみてください。 そして、チャンスがあればぜひ実車に触れ、試乗してみることを強くお勧めします。 きっと、写真だけではわからない新たな発見があるはずです。