モータージャーナリスト兼コンサルタントの二階堂仁です。今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、「中古のフェラーリに乗りたいけど、やっぱり壊れやすいのだろうか?」という点が気になっていると思います。

引用 : フェラーリ公式HP (https://www.ferrari.com/ja-JP/auto/car-range)
私も実際に複数のフェラーリを所有し、様々なトラブルを経験してきたので、その気になる気持ちはよくわかります。輝かしいエンブレムの裏にある現実を知りたい、でも夢を諦めたくない、そんな葛藤がありますよね。
ご安心ください。この記事を読み終える頃には、中古フェラーリが本当に壊れやすいのか、その真相と賢い付き合い方についての疑問が解決しているはずです。
記事のポイント
- 中古フェラーリが壊れやすいという噂の真相
- 具体的な故障箇所と驚きの修理費用
- 後悔しないための個体選びの重要ポイント
- 購入後に待ち受ける維持費と賢い節約術

新しい車に乗り換える際、今乗っている愛車をどれだけ高く売却できるかは、次の車の選択肢にも大きく影響します。
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フェラーリの中古は本当に壊れやすいのか?噂の真相を徹底解説
「フェラーリは壊れやすい」という言葉は、まるで伝説のように語り継がれています。しかし、自動車コンサルタントとして、そして一人のオーナーとして断言できるのは、「その噂は、半分本当で半分は時代遅れの認識」だということです。ここでは、その噂の真相を深く掘り下げていきましょう。

引用 : フェラーリ公式HP (https://www.ferrari.com/ja-JP/auto/car-range)
結論:モデルの新旧で信頼性は全くの別物
まず結論から申し上げます。中古フェラーリの信頼性は、どの年代のどのモデルを選ぶかによって天と地ほどの差があります。具体的には、2000年代前半までに生産されたモデルと、それ以降のモデルでは、設計思想も品質管理も大きく異なります。
私が所有してきた経験からも、80年代の328、90年代のF355と、2010年代の458イタリアでは、まるで違うメーカーの車かと思うほど、信頼性に差がありました。F355は確かに手がかかるじゃじゃ馬でしたが、458イタリアは驚くほど現代的な車で、日常的な使用にも十分耐えうる信頼性を持っています。
なぜ「フェラーリは壊れやすい」と言われるようになったのか?
この悪評が定着した主な原因は、1980年代から1990年代にかけて生産されたモデルにあります。特に、F355や348、テスタロッサといったモデルがその代表格です。
時代背景と設計思想
当時のフェラーリは、何よりもパフォーマンスを最優先する設計思想でした。快適性や耐久性、メンテナンスの容易さといった要素は二の次、三の次。F1で培った技術を惜しみなく市販車に投入していましたが、それは同時に、非常にデリケートで専門的な知識がなければ維持できないマシンを生み出すことにも繋がりました。
- 部品の品質: 今日のようなグローバルな部品供給網や高度な品質管理基準はなく、部品一つひとつの精度や耐久性にはバラツキがありました。
- 電子制御の黎明期: エンジンマネジメントシステムなどが導入され始めましたが、まだ発展途上であり、現代の車に比べて制御が不安定で、トラブルの原因となることも少なくありませんでした。
- メンテナンスサイクルの短さ: 例えば、タイミングベルトは数万キロ、あるいは数年ごとの交換が必須でした。しかも、その交換作業はエンジンを車体から降ろさなければならない「エンジン脱着」が伴う大掛かりなもので、数百万円の費用がかかることも珍しくありませんでした。
これらの要因が重なり、「フェラーリ=すぐ壊れる、維持費が天文学的」というイメージが強固に形成されていったのです。
2000年代以降のモデルにおける信頼性の劇的な向上
フェラーリの名誉のために言っておくと、彼らもこの問題を座視していたわけではありません。2000年代に入ると、フィアットグループの傘下で品質管理体制が大幅に強化され、車の信頼性は劇的に向上します。
その転換点となったのが、360モデナであり、決定的に変わったのがF430からです。
- タイミングチェーンの採用: F430からは、それまでのタイミングベルトに代わってタイミングチェーンが採用されました。これにより、数年ごとの高額なベルト交換が不要になり、維持費の面で大きなアドバンテージが生まれました。
- F1マチックの進化: 360モデナから導入されたセミオートマチックトランスミッション「F1マチック」も、F430、そして458イタリアへと進化するにつれて、変速スピードだけでなく耐久性も大きく向上しました。
- 品質管理の徹底: ドイツ車や日本車に匹敵するレベルでの品質管理が導入され、部品の精度や組み立て品質が飛躍的に高まりました。
この結果、F430以降のモデルは、定期的なメンテナンスをきちんと行えば、大きなトラブルに見舞われる可能性は大幅に減少しました。
現代のフェラーリはもはや壊れにくい?
458イタリアやその後継モデルである488GTB、F8トリブートに至っては、「壊れやすい」という言葉はもはや過去のものと言っても過言ではありません。
もちろん、絶対的な性能が高い分、国産車と同じ感覚でノーメンテナンスというわけにはいきません。しかし、適切な知識を持って扱えば、必要以上に怖がることはないのです。私の458イタリアも、サーキット走行を含めて楽しんでいますが、油脂類の定期交換といった基本的なメンテナンス以外で、走行不能になるような大きなトラブルに見舞われたことは一度もありません。
壊れやすいと言われる中古個体の共通点
年代に関わらず、特にトラブルが多い中古フェラーリにはいくつかの共通点があります。これらは購入を避けるべき個体の特徴とも言えます。
- 不適切なメンテナンス: 最も多い原因です。フェラーリは定期的なメンテナンスが必須ですが、それを怠ったり、知識のない工場で不適切な整備を受けたりした個体は、様々なトラブルを抱えています。
- 過走行・過小走行: 年間走行距離が極端に多い個体はもちろん、逆にほとんど動かさずに放置されていた「不動期間」が長い個体も危険です。ゴム類の劣化や内部の固着など、動かさないことによるトラブルが発生しやすくなります。
- 修復歴車: フェラーリのような高性能車にとって、骨格部分の修復歴は致命的です。走行安定性に問題が出るだけでなく、思わぬ二次的トラブルの原因にもなります。
壊れにくい優良個体の見分け方
一方で、年式が古くても大切に扱われてきた個体は、驚くほどコンディションが良いものです。優良個体には以下のような特徴があります。
- 正規ディーラーまたは専門工場での整備記録簿が完備: これまでのメンテナンス履歴が明確で、誰が、いつ、どこで、どんな整備を行ったかが追えることは、信頼性の最も重要な指標です。
- 適度な走行距離: 年式相応に、定期的に動かされていたことがわかる個体が理想です。年間1,000km~3,000km程度がひとつの目安になります。
- 内外装のコンディション: 車の扱われ方は、内外装の状態に如実に表れます。大切にされてきた車は、細部に至るまで美しい状態が保たれています。
私の所有するフェラーリの実体験レビュー
ここで少し、私の実体験をお話ししましょう。私が所有するF355(1997年式)と458イタリア(2011年式)は、まさに新旧フェラーリの象徴的なモデルです。
F355は、正直に言って手がかかります。タイミングベルト交換は必須ですし、電装系の小さなトラブルは時折発生します。しかし、その官能的なエンジンサウンドと美しいスタイリングは、そうした手間を補って余りある魅力があります。これは「壊れる」のではなく「手間をかけてコンディションを維持する」という感覚に近いかもしれません。
一方の458イタリアは、現代のスーパーカーそのものです。エアコンは快適に効き、ミッションはスムーズかつ電光石火の速さで、ナビやオーディオも普通に使えます。もちろん、オイル交換などの費用は国産車とは比較になりませんが、突発的な故障で立ち往生するような不安はほとんど感じません。
このように、「フェラーリ」と一括りにせず、モデルごとの特性を理解することが、中古フェラーリと上手く付き合うための第一歩なのです。
【要注意】中古フェラーリのウィークポイントと修理費用
中古フェラーリの購入を検討する上で、最も気になるのが「どこが壊れて、修理にいくらかかるのか」という点でしょう。ここでは、具体的な故障事例と、その修理にかかる費用の目安を、私の経験とコンサルティングで得た知見から解説します。覚悟はいいですか?その金額は、時に国産車が一台買えてしまうほどです。

引用 : フェラーリ公式HP (https://www.ferrari.com/ja-JP/auto/car-range)
エンジン・駆動系でよくある故障事例と修理費用
車の心臓部であるエンジンや駆動系は、フェラーリの魅力の源泉であると同時に、最も高額な修理費用が発生しうるセクションです。
タイミングベルト交換(クラシックモデルの宿命)
360モデナ以前のモデル(F355、348、テスタロッサなど)では避けて通れないメンテナンスです。ゴム製のベルトは経年劣化するため、走行距離にかかわらず3~5年ごとの交換が推奨されます。
- 症状: 予防整備のため、自覚症状が出る前に交換するのが一般的。切れるとエンジンブローに繋がり、修理費用は数百万円に跳ね上がります。
- 修理費用:
- 360モデナ: 比較的に作業性が良く、エンジンを降ろさずに交換可能。それでも30万円~50万円が相場です。
- F355: エンジン脱着が必須となるため、工賃が高額になります。80万円~120万円は見ておく必要があります。
F1マチック(セミAT)のトラブル
360モデナから搭載されたセミオートマ。クラッチ操作を自動で行ってくれる便利な機構ですが、トラブルの発生源にもなり得ます。
- 症状: 変速ショックが大きくなる、ギアが入らなくなる、警告灯が点灯する、など。
- 主な原因:
- F1ポンプの故障: 油圧を作り出すポンプの寿命。30万円~50万円。
- アクチュエーターの故障: 実際にギアを動かす部品のトラブル。50万円~100万円以上。
- センサー類の異常: 各種センサーの不具合。数万円~。
- 修理費用: 原因によって大きく異なりますが、システム全体が絡むため高額になりがちです。
クラッチ交換
F1マチックもマニュアルトランスミッションも、クラッチは消耗品です。乗り方によって寿命は大きく変わりますが、2万km~4万kmが交換の一つの目安です。
- 症状: 発進時に滑る感じがする、加速が鈍る、F1マチックの場合は警告灯が点灯することも。
- 修理費用: 部品代と工賃を合わせて、50万円~80万円程度が相場です。これもエンジン脱着が必要かどうかで大きく変動します。
電装系でよくある故障事例と修理費用
現代の車は電子制御の塊ですが、フェラーリも例外ではありません。そして、この電装系が意外なクセモノなのです。
警告灯の点灯
メーター内に突如として点灯する見慣れない警告灯。フェラーリオーナーにとっては日常茶飯事とも言えますが、原因は様々です。
- 症状: エンジンチェックランプ、サスペンション異常、ABS異常など、様々な警告灯が点灯します。
- 原因: 単純なセンサーの故障から、ECU(エンジンコントロールユニット)本体の不具合まで多岐にわたります。
- 修理費用:
- センサー交換: 数万円~10万円程度。
- ECU修理・交換: 20万円~50万円以上。
- 原因不明: 診断だけで数万円かかることも。意外とバッテリーの電圧低下が原因だった、という笑えない話もよくあります。
スイッチ類のベタつき問題
これは90年代から2000年代のイタリア車全般に見られる持病です。パワーウィンドウのスイッチやエアコンのボタンなどが、経年劣化でネチャネチャと溶け出したようになってしまいます。
- 症状: 触ると指に黒い塗料がつき、非常に不快。
- 修理費用:
- 専門業者でのリペア: 1個あたり5,000円~2万円程度。車内全体のスイッチをリペアすると10万円~20万円になることも。
- 部品交換: 新品に交換すると非常に高価です。
パワーウィンドウの故障
これも定番のトラブルです。モーターが動かなくなる、レギュレーターが破損して窓が落ちる、といった症状が発生します。
- 症状: 窓の開閉ができない、異音がする。
- 修理費用: モーターやレギュレーターの交換で、片側5万円~10万円程度です。
内外装で注意すべきポイントとリペア費用
走行性能に直接関係なくても、車の価値や満足度を大きく左右するのが内外装のコンディションです。
ダッシュボードの革の浮き・縮み
特に360モデナやF430でよく見られる症状です。ダッシュボードに貼られた革が、熱や紫外線で収縮し、デフロスターの吹き出し口周辺から浮き上がってきてしまいます。
- 症状: 見た目が非常に悪く、一度気になると我慢できないレベルです。
- 修理費用: ダッシュボードを一度取り外し、革を張り替える大掛かりな作業になります。30万円~60万円が相場です。
塗装の状態
スーパーカーの宿命として、フロント周りには飛び石による傷がつきやすいです。また、年数が経つとクリア層が劣化し、剥がれてくることもあります。
- 修理費用:
- フロントバンパーの再塗装: 10万円~20万円。
- プロテクションフィルム施工: 飛び石対策として有効。フロントフルセットで30万円~50万円。
モデル別ウィークポイントと修理費用目安(表)
モデル | 主なウィークポイント | 修理費用目安 |
---|---|---|
F355 | タイミングベルト交換(エンジン脱着) バルブガイドの摩耗 排気マニホールドの亀裂 | 80~120万円 100万円~ 30~50万円 |
360モデナ | タイミングベルト交換 F1ポンプ・アクチュエーター故障 ダッシュボードの革浮き | 30~50万円 50~100万円 30~60万円 |
F430 | F1ポンプ・E-Diff(電子制御デフ)のトラブル 排気マニホールドの亀裂 ボールジョイントのガタ | 30~50万円 40~60万円 20~40万円 |
458イタリア | DCT(デュアルクラッチ)のセンサー故障 インフォテインメントシステムの不具合 カーボンブレーキの交換 | 20~50万円 10万円~ 200万円~ |
※上記はあくまで目安であり、個体の状態や依頼する工場によって費用は大きく変動します。
修理費用を抑えるための重要なコツ
これらの高額な修理費用を少しでも抑えるためには、信頼できる専門工場を見つけることが何よりも重要です。正規ディーラーは安心感がありますが、工賃や部品代は最も高額になる傾向があります。

引用 : フェラーリ公式HP (https://www.ferrari.com/ja-JP/auto/car-range)
一方で、フェラーリを専門に扱っている優良な整備工場は、豊富な知識と経験を持ち、リビルト品(再生部品)やOEM品(社外優良品)を活用することで、ディーラーよりもリーズナブルに修理してくれる場合があります。購入前からそうした工場との繋がりを作っておくことが、賢いフェラーリライフを送る秘訣です。
年間維持費は一体いくら?リアルなシミュレーション
故障修理費とは別に、所有しているだけでかかる維持費も忘れてはいけません。F430を例に、年間の維持費をシミュレーションしてみましょう。
項目 | 金額(年間) | 備考 |
---|---|---|
自動車税 | 88,000円 | 4.3Lエンジン |
重量税 | 45,600円 | 2年ごと(車検時) |
自賠責保険 | 約10,000円 | 2年ごと(車検時) |
任意保険 | 200,000円~ | 年齢・等級・車両保険による |
車検費用 | 300,000円~ | 交換部品により変動 |
オイル交換 | 100,000円 | 年1回 or 5,000kmごと |
ガソリン代 | 240,000円 | 年間5,000km走行、燃費5km/L、ハイオク180円/Lで計算 |
駐車場代 | 360,000円 | 月3万円で計算 |
合計 | 約1,343,600円 | 故障修理費は別途 |
いかがでしょうか。何も故障がなくても、年間で100万円以上の維持費がかかる可能性が高いのです。この現実を直視し、十分な資金計画を立てることが、夢のフェラーリライフを実現するための最低条件と言えるでしょう。
後悔しない中古フェラーリの選び方と購入後の注意点
ここまで読んで、「やっぱりフェラーリは大変そうだ」と感じたかもしれません。しかし、正しい知識を持って、最初の「個体選び」さえ間違えなければ、リスクを大幅に減らし、最高のカーライフを送ることが可能です。ここでは、数々のフェラーリを見てきたコンサルタントの視点から、後悔しないための選び方の極意をお伝えします。
引用 : Ferrari HP (https://www.ferrari.com/ja-JP/auto/ferrari-purosangue)
購入前に必ずチェックすべき7つの重要ポイント
中古車選びは一期一会ですが、舞い上がって即決するのは禁物です。以下のポイントを、冷静かつ徹底的にチェックしてください。
1. 修復歴の有無とフレームの状態
これは絶対条件です。フェラーリのような高剛性モノコックフレームを持つ車にとって、骨格部分の修復歴は致命傷です。たとえ綺麗に直っていても、本来の走行性能を発揮できないばかりか、ボディの歪みから雨漏りや異音など、様々な二次的トラブルを引き起こす可能性があります。「修復歴なし」と表示されていても、念のためプロの目でフレームの状態をチェックしてもらうのが理想です。
2. 定期点検記録簿の徹底的な確認
「記録簿は車の履歴書」です。いつ、どこで、どんな整備がされてきたのかを必ず確認しましょう。見るべきポイントは以下の通りです。
- 整備工場: 正規ディーラーや有名な専門工場で定期的に整備されているか。個人経営の小さな工場が悪いわけではありませんが、フェラーリに関する知識や設備が十分かを見極める必要があります。
- 整備内容: オイル交換などの基本的なメンテナンスはもちろん、そのモデルのウィークポイントとされる部分が対策・交換されているか。例えばF355ならタイミングベルトやバルブガイド、360モデナならF1ポンプの交換履歴などです。
- 記録の連続性: 記録が途切れている期間がないか。長期間メンテナンスされていない、あるいは記録がない期間がある個体は要注意です。
3. エンジン音・排気音のチェック
フェラーリのエンジンは精密機械です。始動時(特にコールドスタート時)に異音がないか、アイドリングは安定しているか、空ぶかしした際の吹け上がりに違和感はないか、五感を研ぎ澄ましてチェックします。
- 異音: 「カチカチ」「ガラガラ」といった異音は、エンジン内部に何らかの問題を抱えているサインかもしれません。
- 白煙・黒煙: マフラーから過度な白煙(オイル下がり・上がりの可能性)や黒煙(燃料が濃い可能性)が出ていないか確認します。
4. F1マチックの状態確認(試乗は必須)
F1マチック搭載車の場合は、試乗が必須です。低速走行時、加速時、減速時など、様々なシチュエーションで変速のスムーズさを確認します。
- 変速ショック: 過大なショックはないか。
- タイムラグ: 変速の指令を出してから実際にギアが変わるまでの時間が長すぎないか。
- 異音: 変速時に異音や振動がないか。
- リバース: バックギアにスムーズに入るかも忘れずにチェックしましょう。
5. 内装のベタつきや革の状態
前述の通り、スイッチ類のベタつきは定番のトラブルです。リペア済みか、あるいはこれからリペアが必要な状態かを確認します。また、シートやダッシュボードの革の状態も重要です。擦れや破れはもちろん、紫外線による色褪せや縮みがないか、隅々までチェックしましょう。
6. タイヤやブレーキの状態
タイヤやブレーキは安全に関わる重要な消耗品であり、交換には高額な費用がかかります。
- タイヤ: 製造年週は新しいか(ゴムの硬化)、溝は十分に残っているか、偏摩耗していないか。
- ブレーキ: ブレーキローターに傷や摩耗はないか。特にカーボンセラミックブレーキ搭載車の場合、ローターの交換費用は200万円を超えることもあるため、残量や状態のチェックは非常に重要です。
7. 各種コーションプレートの確認
車体番号やカラーコードが記載されたコーションプレートが、本来あるべき場所にきちんと付いているかを確認します。これがなかったり、不自然に付け直された形跡があったりする場合、何らかの理由で交換された(=大きな事故の可能性)ことも考えられます。
信頼できる販売店の見極め方
良い個体を見つけるためには、信頼できる販売店を選ぶことが不可欠です。以下の特徴を持つ販売店を選びましょう。
- フェラーリの専門店であること: 特定の車種やメーカーに特化しているお店は、その車に関する深い知識と経験、そして独自のネットワークを持っています。
- 自社で整備工場を完備していること: 販売だけでなく、購入後のメンテナンスや修理まで一貫して任せられる体制が整っていると安心です。
- ネガティブな情報も正直に話してくれること: 車の良い点だけでなく、その個体が持つウィークポイントや今後のメンテナンスで費用がかかりそうな部分などを、包み隠さず説明してくれる販売店は信頼できます。
- 第三者機関の鑑定書が付いていること: 修復歴の有無や走行距離などを客観的に証明する鑑定書があれば、より安心して購入できます。
初めてのフェラーリにおすすめのモデルは?
もしあなたが初めてフェラーリの購入を検討しているのであれば、個人的にはF430以降のモデルをおすすめします。タイミングチェーンの採用により維持費の大きな懸念点が一つ解消されており、現代の交通環境でもストレスなく走れる信頼性を備えているからです。
もう少し予算を抑えたい場合は、360モデナも良い選択肢ですが、その場合はタイミングベルトの交換履歴が明確で、F1マチックの状態が良い個体を厳選する必要があります。
F355以前のモデルは、非常に魅力的ですが、ある程度のトラブルは覚悟の上で、維持費にも相当な余裕を持って付き合う「趣味性の高い車」と割り切る必要があるでしょう。
購入後に必要なメンテナンスとは?
晴れてフェラーリオーナーになった後も、その輝きを維持するためには定期的なメンテナンスが欠かせません。
- エンジンオイル交換: 半年~1年に1回、または3,000km~5,000kmごと。フェラーリの高性能エンジンにとって、オイルは血液そのものです。
- 各種フルード交換: ブレーキフルード、ミッションオイル、冷却水なども、1~2年ごとの定期交換が推奨されます。
- 定期点検: 1年に1回は、フェラーリに詳しい専門工場で、テスター診断を含めた総合的な点検を受けることを強くおすすめします。トラブルの早期発見に繋がります。
フェラーリオーナーとしての心構えと最高の楽しみ方
最後に、フェラーリオーナーとしての心構えをお伝えします。フェラーリは単なる移動手段ではありません。それは五感を刺激する芸術品であり、歴史と情熱の結晶です。
時には気まぐれなトラブルであなたを悩ませることもあるかもしれません。しかし、それすらも対話の一部と捉え、手間をかけてコンディションを維持していく過程そのものを楽しむ。そんな懐の深さを持つことが、フェラーリと長く幸せに付き合う秘訣です。
そして、手に入れた暁には、ぜひその性能を解放してあげてください。時には早朝のワインディングロードへ、時にはサーキットの走行会へ。フェラーリの真価は、ガレージに飾っておくだけでは決して味わえません。エンジンが奏でるシンフォニーを聞きながら走る喜びは、何物にも代えがたい、オーナーだけに許された特権なのです。
まとめ
今回は、「中古のフェラーリは壊れやすいのか」というテーマについて、噂の真相から具体的な故障事例、そして後悔しないための選び方まで、深く掘り下げてきました。
結論として、「壊れやすい」という噂は過去のものになりつつありますが、それは適切な知識を持って、コンディションの良い個体を厳選し、購入後も愛情とコストをかけてメンテナンスを続けることが大前提となります。
フェラーリを所有することは、決して簡単なことではありません。しかし、この記事で解説したポイントをしっかりと押さえ、信頼できるパートナー(販売店や整備工場)を見つけることができれば、そのハードルは決して越えられないものではありません。
表面的なスペックや価格だけで判断せず、一台一台のコンディションを丁寧に見極めること。そして、購入後に待ち受ける維持費という現実から目を背けないこと。この二つを心に刻めば、あなたのフェラーリライフはきっと素晴らしいものになるはずです。
この記事が、あなたの夢への第一歩を後押しできれば、コンサルタントとしてこれ以上の喜びはありません。