モータージャーナリスト兼コンサルタントの二階堂仁です。今回も多く寄せられている質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、メルセデス・ベンツの購入を検討中で、特にレクサスオーナーズラウンジのような特別な空間がベンツディーラーにもあるのか、また、購入先として候補に挙がる直営店とヤナセではサービスにどのような違いがあるのか、気になっていることでしょう。
私も国内外の様々なブランドの車を所有し、ディーラーとお付き合いしてきた経験から、そのお気持ちはよくわかります。ブランドごとにオーナー体験の演出方法は異なり、それが車選びの重要な要素になることもありますからね。

引用 : メルセデスベンツ日本 (https://media.mercedes-benz.jp/)
この記事を読み終える頃には、ベンツディーラーにおけるオーナー向けサービスの実態、そしてあなたに最適なディーラー選びに関する疑問がスッキリ解決しているはずです。
記事のポイント
- ベンツのオーナーズラウンジの実態
- 直営店とヤナセのサービス比較
- 正規オーナー限定の特典詳細
- 後悔しないディーラー選びのコツ

新しい車に乗り換える際、今乗っている愛車をどれだけ高く売却できるかは、次の車の選択肢にも大きく影響します。
私自身、一括見積もりサイトを活用したことで、ホンダヴェゼルからレクサスRXに乗り換えることができました。
ベンツディーラーのオーナーズラウンジの実態
新しい愛車と共に始まるカーライフ。点検や相談で訪れるディーラーが、ただの「お店」ではなく、心地よい時間を過ごせる「特別な場所」であってほしいと願うのは当然のことです。

引用 : レクサス HP (https://lexus.jp/lexus-dealer/dc/info/24756.html)
特に、レクサスの「オーナーズラウンジ」が提供する上質なおもてなしは、多くの人の心を掴んでおり、ベンツを検討する方が同様のサービスを期待するのも無理はありません。では、実際のところベンツディーラーのラウンジはどのようになっているのでしょうか。
結論:ベンツに「レクサスのような」統一されたオーナーズラウンジは無い
まず結論からお伝えすると、全国のどの店舗でも共通のサービスを受けられるレクサスのようなコンセプトの「オーナーズラウンジ」は、メルセデス・ベンツには存在しません。
これは、ブランドとしての戦略の違いが大きく影響しています。レクサスは、ブランド創設時から「おもてなし」を中核に据え、車両の品質だけでなく、オーナーになった後の体験価値を徹底的に追求してきました。その象徴が、どの店舗を訪れても一定水準以上のサービスが保証されたオーナーズラウンジなのです。
一方、メルセデス・ベンツは130年以上にわたる歴史の中で培われた「製品そのものの魅力」「革新的な技術」「揺るぎないブランド力」で顧客にアピールしてきました。もちろん、顧客へのホスピタリティを軽視しているわけではありませんが、その表現方法がレクサスとは異なるのです。
ベンツディーラーにも、点検や商談の待ち時間に利用できるラウンジスペース(待合スペース)は必ず設けられています。しかし、その設えや提供されるサービスは、店舗を運営する法人や各店舗の方針によって大きく異なります。ある店舗はホテルのロビーのように豪華絢爛かもしれませんし、別の店舗は機能的でモダンな空間かもしれません。この「店舗ごとの個性」こそが、ベンツディーラーの特徴と言えるでしょう。
ベンツディーラーのラウンジ(待合スペース)で受けられるサービス
では、具体的にベンツディーラーのラウンジではどのようなサービスが提供されているのでしょうか。これも店舗によって差がありますが、一般的に期待できるサービスと、店舗ごとの特徴的なサービスをいくつかご紹介します。
一般的なサービス
- ドリンクサービス: コーヒー、紅茶、ジュースなどが提供されます。店舗によっては、オリジナルのハーブティーや季節限定のドリンクを用意しているところもあります。
- Wi-Fi環境: 待ち時間に仕事やインターネットを楽しむことができます。
- 雑誌・新聞: 最新の雑誌や新聞が用意されています。
- テレビ: 大型スクリーンで映像が流れていることが一般的です。
- メルセデス・ベンツ コレクションの展示: キーホルダーやモデルカー、ゴルフグッズなど、ベンツのオリジナルグッズが展示・販売されており、待ち時間に眺めるのも楽しいひと時です。
店舗ごとの特徴的なサービス
- オリジナルスイーツの提供: 地元の有名パティスリーと提携したケーキや焼き菓子が提供される店舗もあります。
- キッズスペース: お子様連れでも安心して過ごせるよう、おもちゃや絵本が置かれたキッズスペースが充実している店舗が増えています。
- マッサージチェア: 本格的なマッサージチェアが設置されており、点検の待ち時間に日頃の疲れを癒すことができます。
- ネイルサービス: 女性オーナー向けに、専門スタッフによるネイルケアサービスを提供している店舗も過去にはありました。(現在は実施店舗が限られます)
- ゴルフシミュレーター: ゴルフ好きのオーナーのために、シミュレーションゴルフが楽しめる設備を持つ店舗も存在します。
このように、ベンツディーラーのラウンジは「おもてなしの画一化」ではなく「店舗ごとの創意工夫」が光る場所なのです。購入を検討しているディーラーがあれば、一度訪れてみて、その店舗の雰囲気を肌で感じてみることをお勧めします。
ラウンジ以上の価値?「メルセデス・ミー」という体験拠点
店舗内のラウンジとは別に、メルセデス・ベンツがブランド体験の場として提供しているのが「メルセデス・ミー」です。これは、オーナーでなくても誰でも気軽に立ち寄れるブランド情報発信拠点で、東京(六本木)や大阪(グランフロント大阪)などに展開されています。
メルセデス・ミーでは、以下のような体験が可能です。
- カフェ・レストラン: 気軽に利用できるカフェや、本格的な食事が楽しめるレストランが併設されています。
- 車両展示・試乗: 最新モデルが展示されており、気軽に乗り込んだり、試乗(要予約)したりすることができます。
- グッズ販売: メルセデス・ベンツ コレクションや、ここでしか手に入らない限定グッズも販売されています。
- イベント: 新型車の発表会や、様々なブランドとのコラボレーションイベントなどが開催されます。
ディーラーのラウンジが「オーナーのためのプライベートな空間」であるのに対し、メルセデス・ミーは「ブランドのファンと繋がるオープンな空間」と言えるでしょう。購入前にブランドの世界観を深く知りたい方や、オーナーになった後もブランドとの接点を持ち続けたい方にとって、非常に価値のある場所です。
ベンツ正規オーナーが受けられる特別なサービス|直営店とヤナセを徹底比較
さて、オーナーズラウンジの次に気になるのが、「どこで買うか」という問題でしょう。ベンツの正規ディーラーは、大きく分けてメルセデス・ベンツ日本が直接資本参加する「直営店」と、ヤナセに代表される「正規販売店」の2種類があります。基本的な保証やメンテナンスプログラムは共通ですが、運営母体が違うため、サービス内容や店舗の雰囲気に違いが生まれます。ここでは、両者の違いを詳しく比較検討していきましょう。
まずは基本から|ベンツ正規ディーラーの種類と特徴
両者の違いを理解するために、まずはそれぞれの成り立ちと特徴を簡単に整理します。
メーカー直営ディーラー
メルセデス・ベンツ日本(MBJ)の資本が入った販売会社です。代表的なのは「メルセデス・ベンツ〇〇」といった屋号の店舗で、シュテルン系ディーラーの一部も含まれます。
- 特徴:
- メーカーの方針が直接反映されやすい。
- 最新のCI(コーポレートアイデンティティ)に基づいた店舗デザイン。
- 新型車の情報や試乗車の配備が早い傾向にある。
- メーカー主導のキャンペーンやイベントが豊富。
正規販売店(ヤナセなど)
メルセデス・ベンツと正規販売契約を結んだ独立資本の企業です。ヤナセのほか、シュテルン系のディーラーの多くがこれにあたります。特にヤナセは、100年以上にわたり日本の輸入車市場を牽引してきた歴史と実績があります。
- 特徴:
- 独自の歴史と文化を持ち、地域に根差した経営を行っている。
- 長年の経験を持つベテランスタッフが比較的多い。
- 全国に広がる強固なネットワーク。
- 独自のサービスやイベントを展開している場合がある。
【比較表】直営店 vs ヤナセ サービス内容の違い

引用 : ヤナセ (https://www.yanase.co.jp/mercedes-benz/)
両者のサービス内容について、様々な角度から比較してみましょう。
サービス項目 | 直営ディーラー | ヤナセ | 補足 |
---|---|---|---|
新車保証 | ◎ メルセデス・ケア | ◎ メルセデス・ケア | 3年間。内容は完全に共通。 |
メンテナンス | ◎ 共通プログラム | ◎ 共通プログラム | メンテナンスプラス等の有償プログラムも内容は共通。 |
店舗ネットワーク | 〇(都市部中心) | ◎(全国を網羅) | 引越しや旅先でのトラブル時にはヤナセの店舗数が強みになることも。 |
試乗車・展示車 | ◎(最新モデルが早い) | 〇(多様な在庫) | 直営店は話題の新型車がいち早く配備される傾向。 |
認定中古車 | 〇 | ◎(在庫が豊富) | ヤナセは独自の「ヤナセ認定中古車」制度も持つ。在庫量は圧倒的。 |
接客スタイル | スマート・モダン | 重厚・コンサバティブ | あくまで一般的な傾向。店舗や担当者による個人差が大きい。 |
店舗の雰囲気 | 最新CI準拠・統一感 | 店舗ごとに個性あり | ヤナセは歴史ある店舗も多く、重厚な雰囲気の場合も。 |
独自サービス | 〇(メーカー連携) | ◎(歴史に根差す) | ヤナセ独自のオーナー向けサービスやサポート体制がある。 |
新車購入時のサービスと保証内容
新車を購入した際に付帯する保証**「メルセデス・ケア」**は、直営店、ヤナセのどちらで購入しても完全に同じ内容です。これは、3年間(走行距離無制限)の一般保証、メンテナンス、24時間ツーリングサポートなどがパッケージになったメルセデス・ベンツ日本の公式プログラムだからです。
- 一般保証: 車両を構成する部品(消耗品などを除く)の不具合を無償で修理。
- メンテナンス: 法令で定められた1年点検、2年点検を含むメンテナンスを無料で実施。
- 24時間ツーリングサポート: 故障や事故の際に、現場での応急処置やレッカー手配、交通手段や宿泊施設の手配などを24時間365日サポート。
保証内容に差はないため、購入時の決め手となるのは、担当セールスとの相性、店舗の雰囲気、納車式の演出といったソフト面の違いになります。直営店はスマートで現代的な接客、ヤナセは長年の歴史に裏打ちされた重厚で丁寧な接客、というイメージを持つ方が多いようですが、これも店舗や人によります。実際に複数の店舗を訪れ、話を聞いてみるのが一番です。
点検・車検時のメンテナンスプログラム
メルセデス・ケアが終了する3年目以降も、安心して乗り続けるための有償プログラム**「メンテナンスプラス」や「保証プラス」**も、提供元はメルセデス・ベンツ日本なので、どちらのディーラーでも同じ内容で加入できます。
- メンテナンスプラス: 3年目以降のメンテナンス(法定点検、メーカー指定の交換部品など)をパッケージ化したもの。
- 保証プラス: 3年間のメルセデス・ケア終了後、保証期間を1年または2年延長できるプログラム。
ここでの違いも、入庫時の対応の柔軟性などに現れます。例えば、代車のラインナップや、自宅までの車両引取・納車サービスの有無や料金体系などは、ディーラー(店舗)ごとに異なります。特にヤナセは「ヤナセカーライフサポート」といった独自の会員制サービスを提供しており、アフターサービスの充実度をアピールしています。
認定中古車「サーティファイドカー」の品質と保証
ベンツの認定中古車制度「サーティファイドカー」も、最大100項目にも及ぶ点検・整備基準や、1年または2年の走行距離無制限保証など、基本的な内容は直営店とヤナセで共通です。
大きな違いは在庫の量と多様性です。ヤナセは全国に広がる販売網を活かし、圧倒的な中古車在庫を誇ります。そのため、特定のモデルやグレード、ボディカラーを探している場合、ヤナセの方が見つけやすい可能性があります。また、ヤナセは独自の基準を設けた「ヤナセ認定中古車」も扱っており、選択肢が豊富です。
一方、直営店の認定中古車は、比較的高年式で走行距離の少ない、状態の良い車両が集まりやすいという傾向が見られます。最新モデルに近い中古車を探している場合は、直営店を覗いてみる価値があるでしょう。
結局どっちで買うのがおすすめ?ディーラー選びのポイント
ここまで直営店とヤナセの違いを解説してきましたが、「では、結局どちらが良いのか?」という問いに対する絶対的な答えはありません。なぜなら、最適なディーラーは、あなたが何を重視するかによって変わるからです。
以下に、それぞれのメリット・デメリットをまとめましたので、ご自身の価値観と照らし合わせてみてください。
直営ディーラーを選ぶメリット
- メーカーの最新情報が手に入りやすい。
- 試乗車や展示車に最新モデルがいち早く導入される。
- メーカー直結という安心感がある。
- 全国の店舗で統一感のあるサービスを期待できる。
ヤナセを選ぶメリット
- 全国を網羅する店舗ネットワークによる利便性と安心感。
- 100年以上の歴史と実績に裏打ちされた信頼性。
- 豊富な中古車在庫から希望の一台を探しやすい。
- 地域密着型で、長年にわたる付き合いを期待できる。
最終的に最も重要なのは、**「信頼できる担当者」と「心地よいと感じる店舗」**を見つけることです。車は購入して終わりではなく、そこから何年にもわたる長い付き合いが始まります。点検や万が一のトラブルの際に、親身になって相談に乗ってくれる担当者の存在は、何物にも代えがたい価値があります。
面倒に思われるかもしれませんが、ぜひ近隣の直営店とヤナセの両方に足を運び、実際に話を聞いて、店舗の雰囲気を感じてみてください。見積もりを取るだけでなく、サービス工場の様子を見せてもらうのも良いでしょう。その上で、あなたが「この人から買いたい」「このお店と付き合っていきたい」と思える場所を選ぶことが、後悔のないベンツライフを送るための最良の選択と言えます。
まとめ
今回は、メルセデス・ベンツのディーラーサービス、特にオーナーズラウンジの有無と、直営店・ヤナセの違いについて詳しく解説しました。
- オーナーズラウンジ: レクサスのような全国統一基準のラウンジは無い。しかし、各ディーラーが創意工夫を凝らした質の高い待合スペースを提供している。
- 直営店とヤナセ: 新車保証やメンテナンスプログラムといった基本サービスは共通。違いは、店舗ネットワーク、中古車在庫、そして店舗の雰囲気や接客スタイルといったソフト面に現れる。
- ディーラー選び: どちらが良いという絶対的な正解はない。自身の価値観を明確にし、実際に店舗を訪れて、信頼できる担当者を見つけることが最も重要。
メルセデス・ベンツを手に入れるということは、単に移動手段を得るだけでなく、その歴史と哲学、そして卓越したブランド体験の扉を開くということです。ラウンジの有無やディーラーの違いは確かに気になるところですが、それ以上に、あなたがこれから始まるメルセデスとの生活に心から満足できるかどうかが大切です。
ぜひ、ご自身の目で確かめ、最高のパートナーとなる一台と、それを支えてくれる最高のディーラーを見つけてください。