モータージャーナリスト兼コラムニストの二階堂仁です。今回も多く寄せられている質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、愛車のBMW X4の車検が近づき、特に安心と信頼を重視してディーラーでの車検を検討しているものの、その具体的な費用や日数について気になっていることでしょう。
私も自身のX4でディーラー車検を経験したので、その気になる気持ちはよくわかります。高価な買い物だっただけに、メンテナンスもしっかり行いたい、でも費用は賢く抑えたい、というのが本音ですよね。

引用 : BMW HP
この記事を読み終える頃には、BMW X4のディーラー車検に関する費用の内訳から、日数の目安、代車の事情、そして賢い費用抑制術まで、あなたの疑問がすべて解決しているはずです。
記事のポイント
- ディーラー車検費用の詳細な内訳
- 車検にかかる日数と代車の最新事情
- 賢く費用を抑えるための交渉テクニック
- ディーラー以外の車検業者とのメリット・デメリット比較

BMW X4のディーラー車検にかかる費用
まず、皆さんが最も気になるであろう費用について、私の経験と取材で得た情報を基に徹底的に解説していきます。一言で「車検費用」と言っても、その内訳は大きく3つに分かれています。総額だけを見て高いと判断するのではなく、何にどれくらいの費用がかかっているのかを理解することが、賢い車検選びの第一歩です。

引用 : BMW HP
【総額】BMW X4のディーラー車検費用の目安
BMW X4のディーラー車検費用は、車両の状態や年式、走行距離によって大きく変動しますが、一般的には15万円~30万円程度を見ておくとよいでしょう。特に、エンジンオイルやブレーキパッドなどの消耗品交換が必要になると、費用は高くなる傾向にあります。
私のX4(G02モデル xDrive30i M Sport)の初回車検(3年目)では、基本的な整備と法定費用で約18万円でした。しかし、友人の同モデルの2回目車検(5年目)では、バッテリーやタイヤ交換が加わり、総額が35万円を超えたというケースもあります。
年式や走行距離が進むにつれて交換が必要な部品が増えるため、車検費用は高額になる可能性を考慮しておく必要があります。
車検費用の内訳①:法定費用
法定費用は、車検を受ける際に法律で定められている費用のことで、ディーラーで受けても、他の整備工場で受けても金額は変わりません。内訳は以下の通りです。
費用項目 | 金額(目安) | 概要 |
---|---|---|
自動車重量税 | 32,800円 | 車両重量に応じて課税される税金。X4は多くが1.5t超~2.0t以下の区分に該当します。(エコカー減税対象外、初年度登録から13年未満の場合) |
自賠責保険料 | 17,650円 | 法律で加入が義務付けられている強制保険。次の車検までの24ヶ月分を支払います。 |
印紙代 | 2,300円 | 検査手数料や登録手数料で、国や自動車技術総合機構に支払う費用です。 |
合計 | 52,750円 | – |
この法定費用が、車検の最低限必要なコストとなります。
車検費用の内訳②:整備費用(車検基本料)
ディーラー車検の費用を構成するもう一つの大きな要素が、この整備費用です。これには、ディーラーが独自に設定する料金が含まれており、店舗によって多少の違いがあります。
主な内訳は以下の通りです。
- 24ヶ月定期点検料: 法定で定められた項目を点検するための技術料。
- 測定検査料: テスターを使い、ブレーキ性能や排気ガス濃度などを測定する費用。
- 車検代行手数料: 車両を運輸支局に持ち込み、検査ラインを通す手続きを代行する手数料。
これらの合計である車検基本料は、ディーラーによって異なりますが、おおよそ6万円~10万円程度が相場です。BMWの専門知識を持つメカニックによる点検や、最新の専用診断機を使用するための費用もここに含まれており、安心料と考えることもできるでしょう。
車検費用の内訳③:部品交換・追加整備費用
車検費用が大きく変動する最大の要因が、この「部品交換・追加整備費用」です。法定点検の結果、交換が必要と判断された部品の代金と、その交換作業にかかる工賃(技術料)が加算されます。
BMW X4で交換頻度が高い代表的な部品と費用の目安は以下の通りです。
交換部品 | 部品代・工賃の目安 | 交換時期の目安 |
---|---|---|
エンジンオイル・フィルター | 25,000円~40,000円 | 1年または15,000km |
ブレーキフルード | 10,000円~15,000円 | 2年ごと(車検ごと) |
ワイパーブレード | 10,000円~15,000円 | 1年~2年 |
エアコンフィルター | 15,000円~25,000円 | 1年~2年 |
ブレーキパッド・センサー | 40,000円~70,000円(片側) | 30,000km~50,000km |
バッテリー(AGMバッテリー) | 60,000円~90,000円 | 3年~5年 |
タイヤ(4本) | 150,000円~300,000円 | 3年~5年または残溝による |
特にブレーキパッドやバッテリー、タイヤなどは高額になりがちです。ディーラーでは基本的に高品質な純正部品を使用するため、部品代はカー用品店などで販売されている社外品に比べて高価になります。
BMWのメンテナンスパッケージ「BSI」と車検の関係
新車購入時に加入できる「BMWサービス・インクルーシブ(BSI)」は、車検費用を考える上で非常に重要な要素です。これは、新車登録から3年間または5年間、指定されたメンテナンス(エンジンオイル交換、フィルター類交換、ブレーキ液交換など)を無料で受けられるプログラムです。
初回(3年目)の車検では、BSIの対象となる整備項目が多く含まれるため、部品交換費用を大幅に抑えることができます。 私のX4もBSIのおかげで、初回の車検ではオイル交換などの費用がかかりませんでした。
ただし、BSIはブレーキパッドやディスク、ワイパーブレードなどは対象外のプランが多いため注意が必要です。また、BSIの期間が終了する2回目以降の車検では、これらの整備がすべて有償となるため、費用が跳ね上がることを覚悟しておく必要があります。
ディーラー車検の見積もり事例
車両の状態によって費用がどう変わるか、2つの仮想見積もり事例を作成しました。
事例1:初回車検(3年目/走行距離25,000km) | 項目 | 費用 | 備考 | | :— | :— | :— | | 法定費用 | 52,750円 | | | 車検基本料 | 80,000円 | | | エンジンオイル・フィルター交換 | 0円 | BSI適用 | | ブレーキフルード交換 | 0円 | BSI適用 | | ワイパーブレード交換 | 12,000円 | 消耗のため交換 | | 合計 | 144,750円 | |
事例2:3回目車検(7年目/走行距離70,000km) | 項目 | 費用 | 備考 | | :— | :— | :— | | 法定費用 | 52,750円 | | | 車検基本料 | 80,000円 | | | エンジンオイル・フィルター交換 | 30,000円 | | | ブレーキフルード交換 | 12,000円 | | | フロントブレーキパッド・センサー交換 | 60,000円 | | | バッテリー交換 | 70,000円 | | | 発煙筒交換 | 1,500円 | 期限切れのため | | 合計 | 306,250円 | |
このように、年数と走行距離が増えることで交換部品が増え、総額が大きく変わることがお分かりいただけると思います。
なぜディーラー車検は高いと言われるのか?
ディーラー車検が高いと言われるのには、明確な理由があります。
予防整備という考え方
ディーラーでは、「今すぐ交換が必要な部品」だけでなく、「次の車検までに不具合が出る可能性が高い部品」も交換を推奨します。これを予防整備と呼びます。これは、ユーザーが常に安全で快適な状態で車に乗れるようにするための考え方であり、結果として整備項目が増え、費用が高くなる一因となります。
純正部品の使用と専門メカニックによる整備
ディーラーでは、メーカーが品質を保証する純正部品を使用します。これは信頼性が高い反面、価格も高価です。また、BMWの複雑な電子システムを熟知した専門のメカニックが、**専用の診断機(ISTA)**を用いて隅々までチェックを行います。この質の高いサービスが、価格に反映されているのです。
ディーラー車検の費用を抑える交渉テクニック
安心のディーラー車検ですが、少しでも費用を抑えたいと思うのは当然です。以下のテクニックを試してみてください。

Lexury Motors Journal イメージ
見積もり内容を精査する
まず、提示された見積もりをよく確認し、「車検を通すために最低限必要な整備」と「推奨されている整備(予防整備)」をサービスアドバイザーに分けて説明してもらいましょう。
不要な推奨項目を見送る
その上で、緊急性の低い推奨項目については、「今回は予算の都合で、必須の項目だけでお願いします」と伝え、見送る判断をするのも一つの手です。例えば、ブレーキパッドの残量がまだ十分にある場合や、バッテリーの性能がまだ低下していない場合などがこれに当たります。ただし、安全に関わる重要な部品の見送りは慎重に判断してください。
消耗品を事前に安く交換しておく
タイヤやバッテリー、ワイパーなどは、ディーラーで交換すると高額になりがちです。車検前にカー用品店やタイヤ専門店で、同等性能の社外品に交換しておくことで、トータルの費用を大幅に削減できます。特にタイヤは価格差が大きいので効果的です。私もタイヤは専門店のセールを狙って交換しています。
BMW X4のディーラー車検に関する総合ガイド
費用面以外にも、車検を受ける上で知っておきたいことはたくさんあります。ここでは、日数や代車、そしてディーラー以外の選択肢について詳しく解説します。

引用 : BMW HP
ディーラー車検に必要な日数と流れ
ご友人がレクサスで3時間車検を経験されたとのことですが、BMWのディーラー車検では、通常1泊2日~3日程度の日数を見込むのが一般的です。
なぜ時間がかかるのか?
BMWディーラーでは、単に検査ラインを通すだけでなく、24ヶ月点検で定められた数十項目にわたる詳細なチェックを専用診断機も用いて行います。点検の結果、部品交換が必要になった場合、国内に在庫がなければドイツ本国から取り寄せるケースもあり、さらに日数がかかることもあります。この丁寧な点検作業が、BMWの品質を維持するために必要な時間なのです。
車検の基本的な流れ
- 予約: 車検満了日の1ヶ月前くらいから予約を入れます。
- 入庫・見積もり: 車をディーラーに預け、点検後に交換部品を含めた正式な見積もりが提示されます。
- 整備: 見積もりに同意後、専門メカニックが整備作業を行います。
- 完成検査: 整備が完了したら、保安基準に適合しているか最終的な検査を行います。
- 引き渡し・精算: 車検証が新しくなり、車両が引き渡されます。
ディーラー車検のメリット【安心・安全を最優先するなら】
費用や時間はかかりますが、ディーラー車検にはそれを上回るメリットがあります。
- 圧倒的な専門知識と技術力: BMWを知り尽くしたメカニックが整備を担当するため、安心感が違います。
- 専用診断機の使用: 現代の車に不可欠な電子制御システムの異常を正確に発見し、対処できます。
- 高品質な純正部品: メーカー保証付きの純正部品を使用するため、信頼性が高いです。
- 整備記録の保持: 正規ディーラーでの整備記録は、将来車を売却する際の査定額にも有利に働くことがあります。
- ソフトウェア・アップデート: 車両の制御プログラムを最新の状態にアップデートしてもらえます。これはディーラーでしかできない重要なサービスです。
ディーラー車検のデメリット【費用と時間の観点から】
メリットの裏返しになりますが、デメリットも理解しておく必要があります。
- 費用が高額になりがち: 前述の通り、予防整備や純正部品の使用により、費用は他の業者に比べて高くなります。
- 時間がかかる: 丁寧な点検のため、即日完了は難しく、数日間車を預ける必要があります。
- 柔軟性の低さ: コスト削減のために社外品のパーツを使いたい、といった要望には基本的に応えてもらえません。
ディーラー車検の代車は無料?車種は選べる?
車を預けている間の移動手段である代車は、非常に重要なポイントです。
代車は無料で借りられる?
多くのBMWディーラーでは、代車を無料で貸し出しています。 ただし、店舗の方針によっては、保険料として1日あたり1,000円~2,000円程度の負担が必要な場合もありますので、予約時に確認しましょう。
代車の車種は選べるのか?
ご友人の話にあったように、代車の車種は「空き状況次第で選べる」 ことが多いです。ディーラーは試乗車を代車として活用しているケースも多く、運が良ければ気になっていた最新モデルに乗れる可能性があります。 私も車検の際に、普段乗らないX1や3シリーズのセダンを借りたことがありますが、これは新しい発見があり、車好きにとっては楽しみの一つとも言えます。希望の車種がある場合は、早めに予約をしてサービスアドバイザーに相談してみることをお勧めします。
ディーラー以外の車検業者という選択肢
「やはりディーラー車検は予算的に厳しい」と感じる場合は、ディーラー以外の業者に依頼するという選択肢もあります。
- 輸入車専門の整備工場: BMWに関する知識が豊富で、専用診断機を持っている工場も多いです。ディーラーより安価で柔軟な対応が期待できます。
- 車検フランチャイズ店: 全国展開しているチェーン店で、比較的料金が安く、作業スピードも速いのが特徴です。
- カー用品店: タイヤやオイル交換など、消耗品の購入と同時に車検を受けられる手軽さが魅力です。
- ガソリンスタンド: 給油のついでに見積もりや予約ができる利便性がありますが、整備の質にはばらつきがある可能性があります。
ディーラー以外で車検を受けるメリット・デメリット
ディーラー以外の業者を選ぶ際には、メリットとデメリットを正しく理解することが重要です。
メリット
- 費用が安い: 最大のメリットです。工賃が安く設定されているほか、純正品より安価な社外品やリビルト品(再生部品)を使用することで、費用を大幅に抑えられます。
- 作業スピードが速い: 「60分車検」など、短時間での完了を売りにしている業者もあります。
- 柔軟な対応: ユーザーの予算や要望に応じて、整備内容を相談しやすい傾向があります。
デメリット
- 技術力・知識のばらつき: 特に輸入車に関する知識や経験は、工場によって大きく異なります。
- 専用診断機がない場合がある: 複雑な電子系のトラブルに対応できない可能性があります。
- ソフトウェア・アップデートができない: これはディーラーの専売特許です。
- リセールバリューへの影響: 正規の整備記録がないことで、将来の査定額が下がる可能性もゼロではありません。
結局、BMW X4の車検はどこで受けるのがベスト?
最終的にどこで車検を受けるべきか、判断のポイントをまとめました。
ディーラー車検がおすすめな人
- 安心と品質を最優先し、車のコンディションを常にベストに保ちたい人。
- 新車保証やBSI、延長保証の期間が残っている人。
- 将来的に高値での売却を考えている人。
- 車のことは専門家にすべて任せたい人。
ディーラー以外の車検がおすすめな人
- とにかく費用を第一に考えたい人。
- 車の知識があり、信頼できる整備工場を知っている人。
- 保証も切れ、走行距離も伸びてきた年式の古い車に乗っている人。
まとめ
今回は、BMW X4のディーラー車検について、費用から日数、代車の事情、そして費用を抑えるコツまで、包括的に解説しました。
BMW X4のような高性能で複雑な車にとって、ディーラーでの車検は、その性能を維持し、長く安全に乗り続けるための最も確実な方法と言えるでしょう。費用は決して安くはありませんが、専門家による質の高い整備と、万が一の時の保証という大きな安心感が得られます。
一方で、見積もりの内容をしっかり吟味し、賢く交渉することで費用を抑える余地は十分にあります。また、ご自身のカーライフや予算に合わせて、信頼できる輸入車専門工場などを選択肢に入れるのも一つの賢い判断です。
この記事が、あなたの愛車にとって最適な車検選びの一助となれば幸いです。納得のいく車検を受けて、素晴らしいBMWライフを続けてください。