モータージャーナリスト兼コラムニストの二階堂仁です。 今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、ロールスロイスとメルセデスマイバッハ、究極の2台を前にして「一体どちらが自分の価値観に合うのだろうか」と深く思案されていることと思います。

引用 : ロールスロイスHP
私も実際に両方のブランドの複数モデルを所有し、その歴史を紐解き、ステアリングを握り、後席でくつろいできましたので、そのお気持ちは痛いほどよくわかります。 特に、「周囲からどう見られるか」という視点は、このクラスの車を選ぶ上で無視できない重要な要素ですよね。
この記事を読み終える頃には、両ブランドの真の価値と、ご自身がどちらの哲学に共鳴するのか、その疑問が解決しているはずです。
記事のポイント
- 結論として格式はロールスロイスが圧倒的に上
- ブランドの歴史と継続性が格式を決定づける
- メルセデスマイバッハの独自の価値と魅力
- オーナー層や世間からのイメージの違い

結論:格式で言えばロールスロイスが圧倒的に格上
さて、いきなり結論から申し上げましょう。 「上流階級から見た際の格式」という一点において評価するならば、答えは明確に「ロールスロイス」です。 これは単なる価格の差や知名度の問題ではありません。 両者が歩んできた歴史の重み、ブランドとして守り続けてきた哲学、そして何よりもその「継続性」に決定的な違いがあるからです。

引用 : ロールスロイスHP
もちろん、これはメルセデスマイバッハが劣っているという意味では決してありません。 現代のテクノロジー、快適性、洗練性において、マイバッハは世界最高峰の一台であることに疑いの余地はありません。 しかし、「格式」というものは、一朝一夕に築けるものではないのです。 なぜロールスロイスがそう評価されるのか、その理由を歴史的背景から深く掘り下げていきましょう。
なぜロールスロイスが格上と言えるのか?3つの根拠
ロールスロイスが揺るぎない地位を築いているのには、主に3つの歴史的根拠があります。
1. 創業以来続く「世界最高の自動車」という哲学
ロールスロイスの共同創業者であるヘンリー・ロイスの有名な言葉に、「完璧への追求(Strive for perfection in everything you do.)」があります。 彼は「価格は忘れられても品質は残る」という信念のもと、採算を度外視してでも当時考えうる最高の素材と技術で車を作り続けました。 1906年に発表された「シルバーゴースト」は、その静粛性と信頼性で世界に衝撃を与え、「世界最高の車」という称号を不動のものにしました。 この「最高か、無か(Best or Nothing)」という哲学は、120年近く経った今でもブランドの根幹に息づいており、一度もその座から降りることなく歴史を紡いできたのです。 この一貫した姿勢こそが、格式の源泉となっています。
2. 英国王室御用達という揺るぎない権威
ロールスロイスは、長きにわたり英国王室の公式車両として採用されてきました。 これは単に「王族が乗る高級車」という意味合いに留まりません。 王室御用達(ロイヤルワラント)の称号は、その製品が最高品質であり、かつ英国を代表するにふさわしいという国家からのお墨付きを意味します。 国の歴史と伝統、権威そのものを象徴する存在として、他のどの自動車ブランドも持ち得ない特別な箔をつけているのです。 世界中のVIPが公式の場でロールスロイスを選ぶのは、この背景があるからに他なりません。
3. 完全オーダーメイド「ビスポーク」による唯一無二の価値
ロールスロイスの顧客は、単に車を買うのではありません。 「自分だけの一台を創る」のです。 「ビスポーク」と呼ばれるオーダーメイドプログラムでは、ボディカラーや内装の素材はもちろんのこと、刺繍のデザイン、木材の選定、さらには顧客の思い出の木を内装に使用するなど、文字通り無限のカスタマイズが可能です。 天井に星空を再現する「スターライトヘッドライナー」はその象徴的な例でしょう。 これにより、一台一台が単なる工業製品ではなく、オーナーの人生や哲学を反映した芸術作品となります。 このパーソナライゼーションの極致が、ロールスロイスを「特別な存在」たらしめているのです。
ロールスロイスの歴史:航空機エンジンから始まった栄光の物語
ロールスロイスの歴史は、貴族であり探検家、そしてカーレーサーでもあったチャールズ・ロールスと、完璧主義のエンジニア、ヘンリー・ロイスという二人の天才の出会いから始まります。 1904年のことです。
彼らが送り出したシルバーゴーストは、当時の車とは比較にならないほどの静粛性と耐久性を誇り、ロンドンからグラスゴーまで27回もの連続走行(約14,000マイル)を無故障で走りきるという偉業を成し遂げました。 この伝説が、ロールスロイスの名声を決定的なものにしたのです。
また、ロールスロイスは自動車だけでなく、航空機エンジンの分野でも歴史に名を刻んでいます。 第一次世界大戦、そして第二次世界大戦では、戦闘機「スピットファイア」に搭載された「マーリンエンジン」などを製造し、国の防衛に大きく貢献しました。 「空のロールスロイス」という異名は、この歴史に由来します。 自動車製造においても、この航空機レベルの精密な技術と思想が注ぎ込まれているのです。
その後、経営的な変遷を経て、現在はBMWグループの傘下に入っていますが、ブランドの独立性は固く守られています。 英国グッドウッドの工場では、伝統的な職人技とBMWの最新技術が見事に融合し、新生ロールスロイスとしてさらなる進化を遂げているのです。
メルセデス・マイバッハの歴史:一度消滅した幻のブランド
一方、メルセデスマイバッハの歴史は、ロールスロイスとは対照的に、断絶と復活の物語です。

引用 : メルセデスベンツHP
そのルーツは、「デザイナーの王様」と称された天才技術者、ヴィルヘルム・マイバッハに遡ります。 彼はゴットリープ・ダイムラーの右腕として、世界初の自動車「メルセデス」の開発に大きく貢献した人物です。 1909年に息子カールと共に自身の会社を設立し、当初は飛行船ツェッペリン号のエンジンを手掛けていました。
1921年から自動車製造を開始し、戦前のドイツにおいて、マイバッハは王侯貴族や大富豪に愛される最高級車ブランドとしての地位を確立しました。 特にV型12気筒エンジンを搭載した「ツェッペリンDS8」は、当時の技術の粋を集めた傑作として知られています。
しかし、第二次世界大戦によってその歴史は一度途絶えてしまいます。 戦後、ブランドが復活することはなく、マイバッハの名は伝説の中にのみ存在する「幻のブランド」となったのです。
長い沈黙を破り、マイバッハが復活したのは2002年のことでした。 当時のダイムラー・クライスラーが、ロールスロイスやベントレーに対抗するブランドとして、独立したモデル「マイバッハ57/62」を引っ提げて鳴り物入りで市場に再登場させました。 しかし、販売は振るわず、2012年に再びブランドの廃止が決定されます。
そして2015年、3度目の復活を果たします。 今度は独立したブランドではなく、メルセデス・ベンツのサブブランド「メルセデス・マイバッハ」として、Sクラスをベースとしたモデルで再出発したのです。 この戦略が功を奏し、現在ではメルセデスの持つ信頼性と先進技術を基盤とした「究極のメルセデス」として、富裕層から高い支持を得ています。
ブランドの継続性という決定的な違い
ここまで両者の歴史を振り返ると、その決定的な違いが見えてきます。 それは「ブランドの継続性」です。

引用 :Lesury Motors Journal イメージ
ロールスロイスは、創業から一度も途切れることなく「世界最高の車」を作り続けてきました。 戦争や経済危機、経営母体の変更といった荒波を乗り越えながらも、そのブランド哲学を守り抜き、進化させてきたのです。 この揺るぎない継続性こそが、絶対的な信頼と尊敬を生み、「格式」の土台となっています。
対してマイバッハは、戦前に輝かしい歴史を持ちながらも、半世紀以上もの長い断絶期間があります。 そして現代においては、メルセデス・ベンツという偉大なブランドの力を借りて復活を遂げました。 これは賢明な戦略であり、製品として素晴らしいものであることは間違いありません。 しかし、「格式」という観点では、この断絶の歴史と、メルセデス・ベンツのサブブランドという立ち位置が、独立したブランドとして継続してきたロールスロイスと比較された際に、どうしても一段下に見られてしまう要因となっているのです。
富裕層から見たブランドイメージの比較
では、実際にこの車を購入する層からは、どのように見られているのでしょうか。
ロールスロイスのイメージ
- 成功の絶対的な象徴: 事業や人生で頂点を極めた人物が、その証として手にする車。
- 伝統と権威: 歴史と文化を重んじる「オールドマネー」層からの評価が特に高い。
- 究極のパーソナルステートメント: ビスポークによって自分自身を表現する芸術品。
- 静かで控えめな威厳: 派手さを競うのではなく、その存在感だけで周囲を圧倒する。
メルセデス・マイバッハのイメージ
- 洗練された最高の道具: メルセデス・ベンツが持つ先進技術と信頼性を究極まで高めた、最も賢い選択。
- 現代的なラグジュアリー: 伝統に縛られず、最新の快適性とテクノロジーを享受したい「ニューマネー」層にも人気。
- スマートな選択: ロールスロイスほどの威圧感はなく、ビジネスシーンでもスマートに乗りこなせる。
- コストパフォーマンス: ロールスロイスと比較すれば、ですが、価格に対して得られる性能や装備の満足度は非常に高い。
ペルソナの方が懸念されていた「マイバッハが普通のメルセデスと思われる」という点ですが、これは半分正しく、半分間違いです。 車に詳しくない一般の方から見れば、その違いは分かりにくいかもしれません。 しかし、このクラスの車が関係するコミュニティや上流階級の社交場では、メルセデス・ベンツとメルセデス・マイバッハは明確に区別されます。 むしろ、「違いがわかる」者同士の世界では、そのスマートな選択が高く評価されることも少なくありません。
それぞれのモデルと特徴を徹底比較
歴史や格式だけでなく、具体的な車両としての魅力も比較してみましょう。 ここでは、両ブランドのフラッグシップセダンである「ロールスロイス ファントム」と「メルセデス・マイバッハ Sクラス」を中心に比較します。

引用 :Lesury Motors Journal イメージ
比較表:ファントム vs メルセデス・マイバッハ Sクラス
項目 | ロールスロイス ファントム EWB | メルセデス・マイバッハ S 680 4MATIC |
---|---|---|
価格 | 約7,000万円~ | 約3,500万円~ |
全長 | 5,982 mm | 5,469 mm |
全幅 | 2,018 mm | 1,921 mm |
全高 | 1,656 mm | 1,503 mm |
エンジン | 6.75L V型12気筒ツインターボ | 6.0L V型12気筒ツインターボ |
最高出力 | 571 ps | 612 ps |
最大トルク | 900 Nm | 900 Nm |
駆動方式 | FR | 4WD (4MATIC) |
特徴 | ビスポークによる無限のカスタマイズ、魔法の絨毯のような乗り心地、コーチドア(観音開き) | 最新の運転支援システム、リア・アクスルステアリング、MBUXインテリア・アシスタント |
(※価格や仕様は年式やオプションにより変動します)
表からもわかるように、価格とサイズにおいてはファントムがマイバッハを大きく上回ります。 これは、車両のコンセプトが根本的に異なることを示唆しています。 ファントムは、まさに移動する宮殿であり、その存在感自体が価値となっています。 一方、マイバッハ Sクラスは、あくまでSクラスの延長線上にある究極の形であり、現実的なサイズ感の中に最高の技術と快適性を凝縮しています。
ロールスロイスのラインナップ:究極の選択肢
ロールスロイスは、単一のフラッグシップだけでなく、多様なニーズに応えるラインナップを揃えています。
- ファントム: ブランドの頂点に君臨するショーファードリブン。後席の乗員に最大限の敬意を払った設計。
- ゴースト: ファントムより少しコンパクトで、自ら運転を楽しむオーナーにも向けられたモデル。よりモダンでミニマルなデザインが特徴。
- カリナン: SUV市場に投入された「SUVの王様」。悪路走破性とロールスロイスならではの快適性を両立。
- スペクター: ブランド初の完全電気自動車。静粛性を極めたロールスロイスと電動化の相性の良さを示した未来の象徴。
これらのモデルはすべて、ロールスロイスの核となる「アーキテクチャー・オブ・ラグジュアリー」という専用プラットフォームを共有しており、どのモデルを選んでも妥協のないロールスロイス体験が約束されています。
メルセデス・マイバッハのラインナップ:SクラスとGLS
メルセデス・マイバッハのラインナップは、メルセデス・ベンツのフラッグシップモデルをベースとしています。
- Sクラス: メルセデスが誇る最高のセダンSクラスをベースに、ホイールベースを延長し、後席空間を大幅に拡充。内装もより豪華な素材で仕立てられている。
- GLS: メルセデス最大のSUVであるGLSをベースにしたモデル。広大な室内空間と豪華な装備で、究極のファミリーカーとしても機能する。
ベースモデルとの最大の違いは、後席の快適性への徹底的なこだわりにあります。 マイバッハを選ぶということは、メルセデス・ベンツが提供する最高の安全性能と先進技術に加えて、さらにその上のレベルの快適性と特別感を手に入れることを意味します。
内装と乗り心地:静寂性と快適性の頂上決戦
この2つのブランドを語る上で、内装と乗り心地は避けて通れません。
ロールスロイスの「魔法の絨毯」
ロールスロイスの乗り心地は、昔から「魔法の絨毯(マジック・カーペット・ライド)」と称されます。 路面の凹凸をほとんど感じさせず、まるで滑るように進む感覚は、他のどの車でも味わうことができません。 これは、エアサスペンションと、前方の路面状況をカメラでスキャンしてダンパーを最適化する「フラッグベアラー」システムによるものです。 また、約130kgもの遮音材を使用することで実現した圧倒的な静粛性は、車内を外界から完全に隔離されたプライベートな空間に変えます。 内装は、最高級のレザーやウッドパネルが職人の手作業で丹念に仕上げられ、ビスポークによってオーナーの個性を反映した世界に一つだけの空間となります。
マイバッハの「ハイテクな快適性」
メルセデス・マイバッハの快適性は、テクノロジーによって構築されています。 ベースとなるSクラスの時点で世界最高レベルの乗り心地を誇りますが、マイバッハでは後席の快適性をさらに高めるための専用モード「MAYBACH」が用意されています。 また、「アクティブ・ロードノイズ・キャンセレーション」は、オーディオシステムから逆位相の音波を出すことで、タイヤから伝わる騒音を打ち消し、静粛性を高めます。 後席はリクライニング角度が深く、オットマンやマッサージ機能も備わり、まるで飛行機のファーストクラスのようです。 ロールスロイスが伝統的な職人技による「アナログな心地よさ」を追求するのに対し、マイバッハは最新技術を駆使した「デジタルな快適性」を提供してくれると言えるでしょう。
ドライビングプレジャー:運転する喜びはどちらにあるか?
ショーファードリブンとしてのイメージが強い両車ですが、自らステアリングを握った際の印象はどうでしょうか。
ロールスロイスは、どのモデルも巨大なボディを感じさせない軽快さを持ち合わせていますが、その本質はドライバーを興奮させることにはありません。 有り余るパワーを静かに、そしてスムーズに路面に伝え、あくまで優雅に目的地まで到達することを目的としています。 運転する喜びは、その圧倒的な余裕と静けさ、そして周囲からの視線を感じることにあります。
一方のマイバッハは、メルセデス・ベンツ由来のスポーティな側面も持ち合わせています。 特に4WDシステム「4MATIC」や、後輪が操舵する「リア・アクスルステアリング」の恩恵は大きく、大きな車体ながら驚くほど意のままに操ることができます。 ショーファーに運転を任せるだけでなく、時には自らステアリングを握り、パワフルな走りを楽しみたいというオーナーには、マイバッハの方が向いているかもしれません。
購入前に知っておきたい庶民からの視点とオーナーの現実
最後に、ペルソナの方が最も気にされているであろう、周囲からの視点や現実的な側面について、私の経験からお話しします。

引用 : ロールスロイスHP
知名度の問題:「マイバッハは普通のベンツ?」という誤解
先にも述べましたが、この懸念は確かに存在します。 特に車に興味のない人にとっては、スリーポインテッドスターのエンブレムはすべて「ベンツ」であり、その中にマイバッハという特別な存在があることは知られていません。 もしあなたが、「誰が見ても一目で最高級車とわかる」ことを最優先するのであれば、この点はデメリットに感じるかもしれません。
しかし、視点を変えれば、これは「わかる人にだけわかる、控えめなステータス」とも言えます。 過度に注目を集めることなく、しかし本質を知る人からは深く尊敬される。 そうした奥ゆかしい価値観を好む方にとっては、むしろマイバッハの立ち位置は魅力的に映るはずです。
ロールスロイスの知名度:意外と知られていない?
では、ロールスロイスなら誰でも知っているかというと、これもまた少し違います。 もちろん、その名前と「超高級車」というイメージは広く浸透しています。 しかし、その具体的なモデル名や歴史、価値までを正確に理解している人はごく少数です。
ただし、ロールスロイスには誰の目にも明らかな象徴があります。 それは、ボンネットの先端に輝く女神像「スピリット・オブ・エクスタシー」と、ギリシャの神殿をモチーフにした「パルテノングリル」です。 この2つのアイコンは、たとえ車名を知らなくても、見る者に「これは特別な車だ」と瞬時に理解させる力を持っています。 「一目でわかる威厳」を求めるのであれば、ロールスロイスに勝るものはないでしょう。
維持費はどちらが高い?
車両価格もさることながら、維持費もこのクラスの車を所有する上で重要な要素です。 結論から言うと、あらゆる面でロールスロイスの方が高額になります。
- 自動車税: 排気量が大きいため、両車とも最高額の区分になります。
- 任意保険: 車両保険金額が非常に高額になるため、保険料も高くなります。特にロールスロイスは、その希少性や修理費の高さから、引き受けてくれる保険会社が限られる場合もあります。
- メンテナンス費用: ここで大きな差が出ます。メルセデス・マイバッハは、基本的にはメルセデス・ベンツのネットワークでメンテナンスが可能です。一方、ロールスロイスの整備は専門のトレーニングを受けた技術者が専用の設備で行う必要があり、部品代も工賃も桁違いに高価です。
ただし、このクラスの車を購入する方にとって、維持費の多寡が購入の決め手になることは少ないでしょう。 むしろ、ディーラーから受けられるサービスの質や、ブランドの世界観を体験できるイベントへの招待など、金銭では測れない価値を重視する傾向があります。
リセールバリューの比較
一般的に、超高級車のリセールバリューはあまり良くないと言われます。 しかし、この2ブランドに関しては、モデルや仕様によって大きく異なります。
ロールスロイスは、ビスポークで個性的な仕様にすると、中古車市場では好みが分かれるためリセールが不利になる可能性があります。 一方で、定番のカラーリングや人気の仕様であれば、驚くほど高い価格で取引されることもあります。
メルセデス・マイバッハは、ベースとなるSクラスの相場に影響を受けますが、限定モデルなどは高い価値を維持する傾向があります。 メルセデス・ベンツというブランドの信頼性が、中古車市場での安定感にも繋がっています。
どちらのブランドも、新車で購入して数年で売却する、という乗り方にはあまり向いていません。 気に入った一台を長く所有し、その価値をじっくりと味わうのが、このクラスの車との正しい付き合い方だと私は考えています。
オーナー同士のコミュニティと社会的評価
最後に、車を通じて得られる経験について触れておきます。
ロールスロイスには、「RROC(Rolls-Royce Owners’ Club)」という世界最大級のオーナーズクラブが存在します。 その歴史は古く、世界中の様々な業界のトップが集う、極めて格式の高いコミュニティです。 こうしたクラブへの参加を通じて得られる人脈や経験は、車そのものの価値を遥かに超えるものになる可能性があります。
メルセデス・マイバッハのオーナーも、もちろん富裕層が中心ですが、ロールスロイスほど閉鎖的で伝統的なコミュニティというよりは、より現代的でオープンな交流が多い印象です。
社会的評価としては、ロールスロイスは「伝統的な成功者」、マイバッハは「現代的な成功者」という見方をされることが多いように感じます。 どちらが良いというわけではなく、ご自身のビジネススタイルやライフスタイルにどちらがフィットするか、という視点で選ぶのが良いでしょう。
まとめ

引用 : ロールスロイスHP
長いレビューになりましたが、最後に要点をまとめます。
- 歴史と伝統に裏打ちされた「格式」を最優先するならば、答えは明確にロールスロイスです。 120年間途切れることなく「世界最高の車」であり続けた歴史と、英国王室御用達の権威は、他の追随を許しません。
- 一方で、メルセデスマイバッハは、現代における最も賢く、洗練されたラグジュアリーカーの選択肢です。 メルセデス・ベンツの最新技術と信頼性を基盤に、最高の快適性を実現しており、その価値は決してロールスロイスに劣るものではありません。「わかる人にだけわかる」という控えめなステータスは、大きな魅力です。
結局のところ、どちらの車を選ぶべきかという問いの答えは、あなた自身の価値観の中にしかありません。
あなたが車に求めるのは、絶対的な威厳と歴史の物語でしょうか。 それとも、最先端の技術に裏打ちされた合理的な快適性でしょうか。
ぜひ、実際に両方の車に触れ、その空間に身を置いてみてください。 ステアリングを握り、後席で深くくつろいだ時に、どちらの車の哲学がご自身の心に響くか。 その直感こそが、あなたにとっての正解です。
私のガレージにも、彼らはそれぞれの個性で静かに佇んでいます。 ある日はロールスロイスの静寂の中で思索にふけり、またある日はマイバッハの快適な移動空間で次のビジネスへと向かう。 どちらもかけがえのない、素晴らしいパートナーです。
このレビューが、あなたの最高の選択の一助となれば幸いです。