モータージャーナリスト兼コンサルタントの二階堂仁です。今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、レクサス初のBEV(電気自動車)専用モデル「RZ」の購入を検討されていて、特にご自身がお住まいの雪国で使う際の追加費用、とりわけスタッドレスタイヤの価格がどれくらいになるのか、気になっていることと思います。私もRZオーナーとして、初めての冬を迎える際に高額な冬用タイヤの出費を経験しましたので、その気になる気持ちはよくわかります。

引用 : レクサスHP
先進的で魅力的なレクサスRZですが、特に雪国にお住まいの方が購入を検討する際には、知っておくべき重要なポイントがいくつか存在します。
このレビューを読み終える頃には、レクサスRZを雪国で所有するための具体的な費用感と、冬の実用性に関するあなたの疑問がスッキリ解決しているはずです。
記事のポイント
- レクサスRZの特殊なタイヤサイズと高額なスタッドレスタイヤの実態
- 数十万円の出費を賢く抑えるための具体的なタイヤ選びの方法
- そもそも寒冷地仕様は必要なのかという疑問と雪国必須オプション
- BEVならではの冬の航続距離や雪道でのリアルな走行性能

レクサスRZの冬支度、想定外の高額出費に要注意
レクサスRZは非常に優れた走行性能と快適性を持つBEVですが、冬を迎える準備、特にスタッドレスタイヤの選定には注意が必要です。私もオーナーとして最初に直面したのが、この「タイヤ問題」でした。多くの方が想像する以上に、RZの冬支度には費用がかかるという現実を、まずは詳しく解説していきます。

引用 : レクサスHP
驚愕のタイヤ価格!レクサスRZのスタッドレスタイヤはなぜ高い?
結論から申し上げますと、レクサスRZのスタッドレスタイヤは非常に高価です。その理由は、採用されているタイヤサイズが特殊で大径だからに他なりません。
まず、RZのグレードごとの純正タイヤサイズを確認してみましょう。
グレード | フロントタイヤ | リアタイヤ | ホイール径 |
---|---|---|---|
RZ450e “Version L” | 235/50R20 | 255/45R20 | 20インチ |
RZ300e “Version L” | 235/60R18 | 235/60R18 | 18インチ |
特に問題となるのが、AWDモデルであるRZ450eに標準装備される20インチタイヤです。このサイズ、特にリアの「255/45R20」は、まだ市場に出回っているスタッドレスタイヤの種類が非常に少なく、価格も高騰しています。
実際にタイヤ専門店の価格を調べてみると、20インチのスタッドレスタイヤは有名ブランド(ブリヂストン、ヨコハマなど)を選ぶと、タイヤ4本だけで30万円を超えるケースも珍しくありません。 これにホイール代、工賃が加わるわけですから、冬支度だけで40万円から50万円の出費になる可能性も十分に考えられます。
なぜこれほど高額になるのか、理由は主に3つです。
- 大径サイズであること 当然ながら、タイヤはインチが大きくなるほどゴムの使用量が増え、製造コストが上がるため価格は高くなります。
- 前後でサイズが異なること(前後異径) RZ450eは走行性能を高めるために、前後のタイヤサイズが異なります。これにより、タイヤの選択肢がさらに狭まります。
- 流通量の少ない特殊サイズであること まだ新しい車種であり、同じタイヤサイズを採用している車が少ないため、タイヤメーカーも大量生産できず、結果として価格が高止まりしているのが現状です。
私も最初に見積もりを取った際は、その金額に驚きを隠せませんでした。この「タイヤの現実」を知らずに購入すると、後で大きな負担になりかねません。
レクサス純正ホイール&スタッドレスセットの価格は?
もちろん、レクサス正規ディーラーでも純正ホイールとスタッドレスタイヤのセットが用意されています。デザインのマッチングや品質の安心感は大きなメリットです。
しかし、その価格はやはり高額になります。選択するタイヤの銘柄にもよりますが、20インチのセットであれば、価格は60万円から80万円程度を見ておく必要があるでしょう。品質と保証を最優先する方には良い選択ですが、コストを抑えたい方にとっては、少しハードルが高いかもしれません。
【実践】私が購入したスタッドレスタイヤと費用を公開
コンサルタントとして、また一人のオーナーとして、私自身がどのように冬支度をしたかをご紹介します。私は性能とコストのバランスを考え、以下の組み合わせを選択しました。
- タイヤ: ブリヂストン BLIZZAK DM-V3
- ホイール: 社外品の18インチアルミホイール
- サイズ: 235/60R18(前後とも)
- 総額費用: 約32万円(タイヤ・ホイール・組み付け工賃込)
私はRZ450e(20インチ標準)を所有していますが、あえて18インチへインチダウンしました。これにより、タイヤとホイールの選択肢が格段に広がり、大幅なコストダウンを実現できました。インチダウンによる乗り心地の向上という副次的なメリットもあり、非常に満足しています。
コスト削減の鍵!タイヤ費用を賢く抑える3つの方法
「冬用タイヤに50万円は出せない…」と感じた方も多いでしょう。ご安心ください。賢く選べば、費用を抑える方法は確実に存在します。私が実践した方法も含め、3つの具体的なコスト削減策をご紹介します。
1. インチダウンを検討する
最も効果的な方法が、18インチへのインチダウンです。RZ300eの純正サイズである「235/60R18」は、多くのSUVで採用されている一般的なサイズのため、タイヤの種類も豊富で価格も比較的安価です。
比較項目 | 20インチ(RZ450e標準) | 18インチ(インチダウン) |
---|---|---|
タイヤ価格 | 高価(4本で25万~40万円) | 比較的安価(4本で12万~20万円) |
選択肢 | 少ない | 豊富 |
乗り心地 | 硬め(ダイレクト感) | 柔らかめ(マイルド) |
見た目 | スタイリッシュ | 標準的 |
18インチであれば、高性能なブリヂストンのBLIZZAKシリーズでも、タイヤ4本で20万円以下に収まる場合があります。見た目の迫力は20インチに劣るかもしれませんが、雪道での実用性や乗り心地、そして何よりコスト面でのメリットは計り知れません。
2. 社外ホイールを活用する
純正ホイールにこだわらなければ、費用はさらに抑えられます。カー用品店やタイヤ専門店では、RZに装着可能な社外ホイールが数多く販売されています。信頼できる有名メーカーの製品でも、純正品よりはるかに安価に購入できます。
塩害(融雪剤)対策が施された冬用のホイールを選ぶと、サビにも強く長持ちするためおすすめです。
3. タイヤのブランドを見直す
ブリヂストンやヨコハマといったトップブランドは絶大な安心感がありますが、価格もそれなりにします。近年は、ダンロップやトーヨータイヤといった国内メーカーのセカンドブランドや、性能が向上しているアジア系ブランドのスタッドレスタイヤも増えています。
性能や耐久性をよく比較検討する必要はありますが、これらのブランドを選ぶことで、数万円単位でのコストダウンが可能です。ただし、命を預ける重要なパーツですから、信頼できるお店で専門家と相談しながら選ぶことを強く推奨します。
レクサスRZに寒冷地仕様は本当に必要か?
雪国にお住まいの方が次に気になるのが「寒冷地仕様」のオプションではないでしょうか。レクサスRZにももちろん設定があります。

引用 : レクサスHP
レクサスRZの寒冷地仕様の主な内容
- PTCヒーターの強化: BEVの暖房の熱源となるPTCヒーターをより強力なものにし、暖房の立ち上がりを早めます。
- ウインドシールドデアイサー: フロントガラス下部に熱線を入れ、ワイパーの凍結を防ぎます。
- 融雪ヒーター付き発光エンブレム: フロントのLマークエンブレムにヒーターを内蔵し、着雪や凍結を防ぎます。
- リアフォグランプ: 吹雪など視界不良時に後続車からの視認性を高めます。
結論として、**「必須ではないが、予算が許すなら装着した方が格段に快適になる」**というのが私の見解です。特に、暖房の効きが早いことと、ワイパーの凍結防止機能は、毎朝の忙しい時間帯にその恩恵を強く感じるでしょう。ちなみに、北海道地区ではこの寒冷地仕様が標準装備となっています。
これだけは付けたい!雪国で役立つ必須オプション
寒冷地仕様以外にも、雪国でのカーライフを快適かつ安全にしてくれる、私が「必須」と考えるオプションが2つあります。
1. デジタルインナーミラー
これは間違いなく装着すべきオプションNo.1です。リアガラスが雪や霜で覆われて後方が全く見えない状況でも、リアカメラのクリアな映像で後方を確認できます。また、夜間、後続車のヘッドライトが雪に反射して眩しい場面でも、防眩機能が効果を発揮します。一度使うと、もうこれなしの車には戻れないほどの便利装備です。
2. 輻射熱(放射)ヒーター
RZ450eに標準装備(RZ300eはオプション)されている、運転席・助手席の足元に設置されたヒーターです。これはエアコンの温風とは異なり、遠赤外線でじんわりと体を直接暖めてくれるため、消費電力が少なく非常に効率的です。エアコンの設定温度を少し下げてこのヒーターを使うことで、BEVの課題である冬場の電費(航続距離)の悪化を抑える効果も期待できます。
雪国のプロが本音で語る!レクサスRZの冬の実力
さて、費用面に続いて、多くの方が気になるであろう「BEVであるレクサスRZは、雪国で本当に実用的なのか?」という疑問について、オーナーとしてのリアルな視点から深掘りしていきます。

引用 : レクサスHP
BEVの宿命、冬場の航続距離はどれくらい減る?
これはBEVを検討するすべての方が直面する課題です。結論から言うと、RZも他のBEVと同様に、冬場は航続距離が減少します。
- 外気温の低下によるバッテリー性能の低下
- 暖房(特にPTCヒーター)の使用による電力消費
これら2つの要因により、夏場に比べて航続距離は約2~4割ほど短くなると考えておくのが現実的です。
グレード | カタログ航続距離(WLTCモード) | 冬場の実航続距離(推定) |
---|---|---|
RZ450e | 494km | 300km ~ 350km |
RZ300e | 599km | 380km ~ 450km |
もちろん、外気温や運転スタイル、暖房の使い方によって大きく変動しますが、このくらいの数値を想定しておけば、「思ったより走らない!」と焦る事態は避けられるでしょう。毎日の通勤距離が長い方や、週末に長距離移動をされる方は、ご自身の使い方で問題ないか、事前のシミュレーションが不可欠です。
RZならではの工夫!電費を悪化させないための機能
レクサスもBEVの冬の課題を熟知しており、RZには航続距離の減少を最小限に抑えるための工夫が凝らされています。

引用 : レクサスHP
ヒートポンプ式エアコン
RZには、少ない電力で効率的に車内を暖めることができるヒートポンプシステムが搭載されています。これは、外気の熱を汲み上げて暖房に利用する技術で、従来の熱線(PTCヒーター)のみの暖房に比べて消費電力を大幅に削減できます。このシステムの有無は、冬場の電費に大きな差となって現れます。
シートヒーター&ステアリングヒーターの積極活用
遠回りなようで最も効果的なのが、これらの快適装備の活用です。エアコンの設定温度を20度程度に抑え、シートヒーターとステアリングヒーターをONにするだけで、体感的な暖かさは十分確保できます。エアコン(温風)よりもはるかに少ない電力で体を直接暖められるため、電費向上に大きく貢献します。
圧雪路もアイスバーンも安心?DIRECT4の雪道性能
費用や航続距離といった現実的な課題はありますが、レクサスRZの雪道における走行性能は、それを補って余りあるほどの素晴らしさです。特にAWDモデルであるRZ450eに搭載された四輪駆動力システム**「DIRECT4」**の雪上性能は特筆に値します。
DIRECT4は、路面状況や運転操作に応じて、前後の駆動力配分を100:0から0:100まで瞬時に、かつ緻密に制御します。
- 発進時: 4輪に最適なトルクを配分し、空転を抑制。凍結した坂道でも驚くほどスムーズに発進します。
- コーナリング時: ステアリング操作に合わせて駆動力を制御し、車体を安定させます。滑りやすいカーブでも、まるでレールの上を走っているかのような安定感で曲がることができます。
- 制動時: 4輪の回生ブレーキを最適に制御し、安定した減速を実現します。
ガソリン4WD車とは比較にならないほど応答速度の速いモーター駆動と、このDIRECT4の緻密な制御が組み合わさることで、RZは圧雪路、アイスバーン、新雪など、あらゆる冬の悪路でドライバーに絶大な安心感を与えてくれます。この走行性能は、雪国で暮らす方にとって何よりの価値となるでしょう。
雪国での充電環境、事前に確認すべき注意点
冬場のRZ運用で最後に気をつけたいのが充電環境です。
- 低温による充電速度の低下: 外気温が低いと、バッテリーを保護するために充電速度が通常より遅くなることがあります。特に急速充電ではその傾向が顕著です。
- 充電器のトラブル: 豪雪地帯では、充電器が雪に埋もれて使えなかったり、低温で故障していたりするケースも想定されます。
これらのリスクを避けるためにも、自宅に6kW以上の普通充電設備を設置することが基本となります。夜間に満充電にしておけば、日中の行動で困ることはほとんどなくなるはずです。また、外出先で充電する場合は、目的地や経路上にある充電スポットを複数リストアップしておくなど、計画に余裕を持つことが大切です。
BEVならではの雪道でのメリットとデメリット
最後に、BEVであるRZが持つ、雪国でのメリットとデメリットをまとめます。
メリット
- 立ち往生に強い: ガソリン車と違い排気ガスが出ないため、大雪で車が埋まってしまっても一酸化炭素中毒の心配なく暖房を使い続けられます。
- 静粛性による安全性: エンジン音がないため、「ザクッ」「ゴリッ」といった雪や氷を踏む音、タイヤが滑り始める音など、路面状況の変化を音で察知しやすいです。
- 低重心による安定性: 重いバッテリーを床下に搭載しているため重心が低く、車体の安定性が非常に高いです。
デメリット
- 航続距離の減少: やはり最大のデメリットは冬場の航続距離です。
- 充電時間: 低温下では充電に通常より時間がかかる場合があります。
- 回生ブレーキの制限: 極低温下ではバッテリー保護のため、アクセルオフ時の回生ブレーキ(エンジンブレーキに相当)が弱まることがあります。
まとめ
今回は、レクサスRZを雪国で所有する上でのリアルな情報、特に費用面と実用性について詳しくレビューしてきました。
レクサスRZ、特に20インチタイヤを装着するRZ450eは、スタッドレスタイヤの費用が予想以上に高額になるという、雪国在住者にとって無視できない注意点があります。しかし、インチダウンや社外ホイールの活用といった賢い選択をすれば、その負担は大幅に軽減することが可能です。
そして、冬場の航続距離というBEV特有の課題はあるものの、それを補って余りある**「DIRECT4」による圧倒的な雪道での走行安定性**や、立ち往生時の安全性といった大きなメリットも存在します。
レクサスRZは、単なる環境に優しいだけの車ではありません。雪国の厳しい冬の道でこそ、その真価を発揮するポテンシャルを秘めた一台です。この記事で紹介したような初期投資や維持費をしっかりと計画し、ご自身の使い方に合った装備を選択すれば、レクサスRZはあなたの雪国でのカーライフを、これまで以上に安全で快適なものにしてくれるでしょう。