モータージャーナリスト兼コラムニストの二階堂仁です。今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、街で見かける特定のナンバープレート、特に「ざ」ナンバーの車が「残価設定クレジット(残クレ)」で購入されたものではないか、という噂が気になっていると思います。

私もジャーナリストとして、また一人の車好きとしてこの手の噂は耳にしますし、実際に自分のマンションの駐車場で新型アルファードを見かけるたびに、その支払い方法まで想像してしまう気持ちはよくわかります。この記事を読み終える頃には、ナンバープレートと車の購入方法にまつわる疑問がスッキリ解決しているはずです。
記事のポイント
- 「ざ」ナンバーと残クレは完全無関係
- ナンバープレートのひらがなは用途を示し選択は不可能
- 残クレの仕組みとメリット・デメリットを徹底解剖
- 新型アルファードで残クレが人気の本当の理由

新しい車に乗り換える際、今乗っている愛車をどれだけ高く売却できるかは、次の車の選択肢にも大きく影響します。
私自身、一括見積もりサイトを活用したことで、ホンダヴェゼルからレクサスRXに乗り換えることができました。
「ざ」ナンバーと残クレの噂、その真相に迫る
最近、特にお客様からの相談やSNSで話題になるのが、「『ざ』ナンバーは残クレで購入した車の専用ナンバー」というものです。特に、リセールバリューが高く、残クレでの購入者が多いとされる新型アルファードと関連付けて語られることが多いようです。果たして、この噂は本当なのでしょうか。まずは核心からお話しします。
引用 : TOYOTA HP (https://toyota.jp/alphard/)
結論:「ざ」ナンバーは残クレ専用ではない
結論から申し上げますと、「ざ」ナンバーが残クレ専用であるという事実は一切ありません。 これは完全な都市伝説、あるいは何らかの誤解から生まれた噂と言っていいでしょう。
ナンバープレートの管轄は国土交通省であり、その交付ルールは道路運送車両法によって厳格に定められています。そのルールの中に、個人の支払い方法(現金一括、銀行ローン、残クレ、リースなど)によってナンバープレートの文字を区別するという規定は存在しません。考えてみれば当然で、支払い方法という極めてプライベートな情報が、公道を走る車のナンバープレートから第三者に判別できてしまうような制度であるはずがないのです。
私自身もこれまで数多くの車を所有し、さまざまな購入方法を経験してきましたが、支払い方法がナンバープレートに影響したことは一度もありません。これは断言できます。
ナンバープレートの「ひらがな」が持つ本当の意味
では、ナンバープレートの左下に記載されている「ひらがな」には、一体どのような意味があるのでしょうか。これは、その車両の「用途」を区別するために使われています。希望ナンバー制度で4桁の数字は選べても、このひらがなは原則として選ぶことができず、登録順に割り当てられていきます。
用途で分類されるひらがな
ナンバープレートのひらがなは、大きく分けて以下の4つのカテゴリに分類されます。
カテゴリ | 対象 | 使用されるひらがな(普通車) | 備考 |
---|---|---|---|
自家用 | 個人の所有する車、法人が所有する自家用車など | さすせそ たちつてと なにぬねの はひふほ まみむめも やゆ らりるろ | 一般的に見かける白いナンバープレート(白ナンバー)の車がこれに該当します。 |
事業用 | タクシー、バス、運送トラックなど、運賃をもらって人や物を運ぶ車 | あいうえ かきくけこ を | 緑色のナンバープレート(緑ナンバー)が特徴です。 |
貸渡(レンタカー)用 | レンタカーとして貸し出される車 | わ れ | 「わ」が基本で、払い出しが枯渇した場合に「れ」が使用されます。旅行先などでよく見かけます。 |
駐留軍人用車両 | 日本に駐留する米軍関係者が所有する車 | よ E H K M T Y | 「よ」はひらがなですが、その他アルファベットが使われるのが特徴です。基地の周辺地域以外ではあまり見かけません。 |
このように、「ざ」というひらがなは、自家用車のカテゴリに含まれる数ある文字の中の一つに過ぎません。特定の購入方法と結びつく理由はどこにもないのです。
使用されない「お・し・へ・ん」の理由
ちなみに、ひらがなの中にはナンバープレートに使用されない文字があります。「お」「し」「へ」「ん」の4文字です。これには諸説ありますが、一般的に以下のような理由が挙げられています。
- 「お」:「あ」や「す」「む」と形が似ていて見間違いやすいため。また、「を」と発音が同じであるため。
- 「し」:「死」を連想させ、縁起が悪いため。
- 「へ」:「屁」を連想させ、イメージが良くないため。
- 「ん」:単体での発音がしづらく、伝達に不向きなため。
こうした豆知識を知っておくと、よりナンバープレートへの理解が深まるでしょう。
希望ナンバー制度でも「ひらがな」は選べない
1999年から始まった希望ナンバー制度により、私たちは4桁の一連指定番号を自由に選べるようになりました。誕生日や記念日、好きな語呂合わせなど、思い思いの番号を愛車につけることができます。
しかし、この制度で選べるのはあくまで4桁の数字の部分だけです。地名(例:「品川」「横浜」)はその車の使用の本拠の位置を管轄する運輸支局によって決まりますし、3桁の分類番号も車両の種別によって決まっています。そして、今回のテーマである「ひらがな」も、前述の通り用途によってカテゴリが決められた上で、登録の順番に機械的に割り振られていくだけなのです。「さ」の次は「す」、その次は「せ」というように進んでいき、「ろ」まで行くと、次のひらがな、例えば「たちつてと」の順に進む、といった具合です。(※実際の払い出し順は地域によって異なります)
つまり、「『ざ』ナンバーがいい」と願っても、その希望が叶うことはなく、すべては登録のタイミング次第ということになります。
では、なぜ「ざ」ナンバー=残クレの噂が生まれたのか?
では、科学的根拠が全くないにもかかわらず、なぜこのような噂がまことしやかに語られるようになったのでしょうか。ジャーナリストとして、いくつかの可能性を推測してみました。
仮説①:特定の地域やディーラーでの偶然の一致
最も有力な仮説は、**「特定の地域で、特定の時期に、偶然が重なった」**というものです。
例えば、ある地域のトヨタディーラーで、新型アルファードが発売された直後に残クレでの契約が集中したとします。ディーラーは納車準備ができた車両をまとめて陸運局に持ち込み、登録手続きを行います。その際に、登録のタイミングで割り当てられたひらがなが、偶然にも「ざ」だった、というケースが考えられます。
その結果、その地域では「新型アルファードの『ざ』ナンバー」が一時期に複数台まとめて街を走り始めることになります。それを見た人たちが「最近、アルファードの『ざ』ナンバーをよく見るな。そういえばアルファードは残クレで買う人が多いらしい。もしかして…?」と憶測し、それが噂として広まっていったのではないでしょうか。
仮説②:SNSでの憶測が拡散
現代ならではの理由として、SNSが噂の拡散を加速させた可能性も大いに考えられます。
仮説①のような状況を目撃した誰かが、X(旧Twitter)やInstagramで「近所のアルファード、ざナンバーばっかり。みんな残クレなのかな?」と何気なく投稿したとします。この投稿に尾ひれがつき、「『ざ』ナンバーは残クレの印らしい」という断定的な情報に変化し、瞬く間に拡散されてしまうことは容易に想像できます。一度ネット上で「事実」として広まってしまうと、それを信じる人が増え、都市伝説として定着してしまうのです。
仮説③:語感からの連想ゲーム
少し穿った見方かもしれませんが、「残クレ(Zankure)」の「ざ(Za)」という音から、無意識に「ざ」ナンバーと結びつけてしまった、という可能性もゼロではないかもしれません。人間は意外と単純な語感の響きや連想で物事を記憶することがあります。科学的根拠は全くありませんが、噂が生まれる一つのきっかけとしては考えられます。
いずれにせよ、これらの仮説はすべて状況証拠や推測の域を出ません。繰り返しになりますが、「ざ」ナンバーと残クレに関連性はなく、ナンバープレートから支払い方法を特定することは不可能です。
残価設定クレジット(残クレ)の仕組みと賢い使い方
引用 : TOYOTA HP (https://toyota.jp/alphard/)
「ざ」ナンバーの謎が解けたところで、多くの人が利用し、噂の元にもなっている「残価設定クレジット(残クレ)」について、改めて詳しく解説していきましょう。私自身も、短期で乗り換えることを前提とした車両の購入で利用した経験があります。メリットとデメリットを正しく理解すれば、非常に有効な購入方法の一つです。
そもそも残価設定クレジット(残クレ)とは?

引用 : 日産ファイナンス HP (https://www.nissan-fs.co.jp/credit/bvc/)
残価設定クレジットとは、自動車ローンの一種です。その最大の特徴は、車両本体価格から、あらかじめ数年後(例:3年後、5年後)の買取保証額(=残価)を差し引いて、残りの金額を分割で支払うという点にあります。
例えば、500万円の車を5年間の残クレで購入し、5年後の残価が200万円に設定されたとします。この場合、購入者はまず車両価格500万円から残価200万円を差し引いた300万円を、5年間(60回)の分割で支払っていくことになります。そして、契約満了の5年後には、以下の3つの選択肢から将来を決めることになります。
- 新しい車に乗り換える:乗っていた車をディーラーに返却し、それを頭金の一部として新しい車の残クレやローンを組む。
- 車を返却する:乗っていた車をディーラーに返却して、契約を終了する。
- 車を買い取る:設定されていた残価200万円を支払って、その車を完全に自分のものにする。(一括払い、または再ローン)
この仕組みにより、購入者は月々の支払い負担を軽減できるというわけです。
なぜ新型アルファードで人気?残クレのメリット
特に新型アルファードのような高級ミニバンで残クレが人気なのは、この仕組みと車両の特性が絶妙にマッチしているからです。
月々の支払いを抑えられる
最大のメリットは、何と言っても月々の支払い額を大幅に抑えられることです。アルファードはグレードによっては700万円、800万円を超える高級車です。これを通常のフルローンで組むと、月々の支払いはかなり高額になります。
【シミュレーション】車両価格600万円のアルファードを5年ローンで購入した場合 (金利は仮に年率4%として計算)
購入方法 | ローン対象額 | 5年間の総支払額(概算) | 月々の支払額(概算) |
---|---|---|---|
通常ローン | 600万円 | 約650万円 | 約10.8万円 |
残クレ(残価率50%と仮定) | 300万円 | 約365万円(※) | 約5.5万円 + 最終回支払 |
※残クレの金利は、差し引いたはずの残価部分にもかかる場合が多く、最終的に買い取る場合は総支払額が通常ローンより高くなる傾向があります。上の表はあくまで月々の負担感の違いを示すためのものです。
このように、月々の支払いが半分近くになるため、「ワンランク上のグレードに手が届く」「家計への負担を抑えながら憧れの車に乗れる」という大きな魅力があります。
最新モデルに乗り換えやすい
残クレは3年や5年といった比較的短い期間で契約が満了し、そのタイミングで乗り換えを促す仕組みになっています。これは、常に最新の車に乗り続けたいというニーズを持つユーザーにとって大きなメリットです。
アルファードのような人気車種は、数年ごとにマイナーチェンジやフルモデルチェンジが行われ、デザインや性能、安全装備が進化します。残クレを利用すれば、ちょうど車の価値が大きく下がる前、そして新しいモデルが登場する絶好のタイミングで、スムーズに次の新車へ乗り換えることが可能です。
将来の買取価格が保証される安心感
中古車市場は、景気や流行、モデルチェンジなど様々な要因で価格が変動します。通常であれば、「5年後に自分の車がいくらで売れるか」は誰にも分かりません。
しかし残クレでは、契約時に**「5年後には最低でもこの金額で買い取ります」という残価が保証**されます。これにより、将来的な市場価格の下落リスクを購入者が負う必要がなくなります。特にアルファードは、国内だけでなく海外でも絶大な人気を誇り、リセールバリュー(再販価値)が非常に高い車種です。そのため、メーカーも強気な高い残価を設定することができ、それが月々の支払額の低さにも繋がっているのです。
見落としがちな残クレのデメリットと注意点
ここまで聞くと良いことずくめのように思える残クレですが、ジャーナリストとしてはデメリットや注意点もしっかりとお伝えしなければなりません。契約してから「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために、以下の点を必ず理解しておきましょう。
金利の仕組みと総支払額
先ほどのシミュレーションでも少し触れましたが、残クレの金利計算は少し特殊です。多くの場合、月々の支払いの対象になっていないはずの「残価」部分にも金利がかかります。
つまり、ローン対象額が300万円でも、金利は車両価格600万円全体に対して計算されることがあるのです。そのため、最終的に車を買い取る選択をした場合、通常のフルローンを組むよりも総支払額が高くなってしまうケースがほとんどです。月々の安さの裏には、こうした金利のカラクリがあることを認識しておく必要があります。
走行距離制限と原状回復の義務
残価は「契約満了時に、これくらいの価値が残っているであろう」という予測に基づいて設定されています。その価値を担保するために、契約にはいくつかの制約が課せられます。
- 走行距離制限:年間10,000km〜12,000km(月々1,000km程度)が一般的です。契約満了時にこの距離を超過していると、1kmあたり5円〜10円程度の超過料金を請求されます。通勤やレジャーで長距離を走る人には不向きです。
- 原状回復の義務:内外装に大きな傷や凹み、タバコの焦げ跡などがあると、査定時に減点され、修理費用相当額を請求されることがあります。また、社外パーツへの交換など、車の改造は原則として禁止です。返却時にはすべて純正の状態に戻す必要があります。
アルファードのようなファミリーカーは、子供が内装を汚したり傷つけたりするリスクも高いため、特に注意が必要です。
所有権は自分のものではない
残クレの契約期間中、その車の車検証上の「所有者」はディーラーや信販会社になります。購入者はあくまで「使用者」です。
これは、ローンが完済されるまで車が担保になっていることを意味します。したがって、契約期間中に車を勝手に売却したり、他人に譲ったりすることはできません。完全に自分の所有物になるのは、最終回に残価を支払って買い取り、名義変更手続き(所有権解除)を終えた後になります。
残クレが向いている人・向いていない人
これらのメリット・デメリットを踏まえると、残クレがどのような人に適しているかが見えてきます。
残クレが向いている人 | 残クレが向いていない人 |
---|---|
ライフスタイルの変化に合わせて3〜5年で車を乗り換えたい人 | 1台の車を長く(7年以上)大切に乗り続けたい人 |
月々の支払い負担をできるだけ軽くしたい人 | 車の総支払額を少しでも安く抑えたい人 |
常に最新モデルの車に乗っていたい人 | 年間の走行距離が15,000kmを超えるなど、長距離を走る人 |
車の将来的な下取り価格の変動リスクを避けたい人 | 自分好みに車をカスタマイズ(改造)したい人 |
法人や個人事業主で、短期的な経費処理をしたい人 | いずれは完全に自分の所有物にしたいという気持ちが強い人 |
ご自身のカーライフや価値観と照らし合わせて、最適な選択をすることが重要です。
残クレ以外の賢い購入方法
もちろん、車の購入方法は残クレだけではありません。比較検討のために、他の選択肢についても簡単に触れておきましょう。
購入方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
銀行マイカーローン | ・金利がディーラーローンより低い傾向にある ・最初から所有権が自分になる | ・審査がディーラーローンより厳しい場合がある ・手続きに手間と時間がかかる |
ディーラーローン(通常) | ・審査が比較的通りやすく、手続きがスピーディー ・車の購入と同時に申し込める | ・金利が銀行ローンより高い傾向にある ・完済まで所有権はディーラーになることが多い |
カーリース | ・頭金不要、税金やメンテナンス費用もコミコミで月々の支払いが完全に一定 ・法人での経費処理がしやすい | ・原則として中途解約ができない ・契約満了後は基本的に車を返却する必要がある(もらえるプランもある) |
現金一括 | ・金利がかからず、総支払額が最も安い ・当然、最初から自分の所有物になる | ・手元からまとまった資金がなくなる ・購入時の資金繰りが大変 |
それぞれに一長一短があります。ディーラーのセールスマンに勧められるまま契約するのではなく、ご自身で情報を集め、場合によっては銀行などに相談してみることをお勧めします。
まとめ
今回は、「『ざ』ナンバーは残クレ専用」という噂の真相から、残価設定クレジットの詳しい仕組みまでを深掘りしてきました。
最後に、今回のレビューの要点をもう一度おさらいしましょう。
- 「ざ」ナンバーと残クレには何の関係もない。ナンバープレートから支払い方法は絶対に分からない。
- ナンバープレートのひらがなは「用途」を示すもので、希望で選ぶことはできない。
- 残クレは、月々の支払いを抑えて新車に乗りやすくするメリットがある一方、金利や走行距離制限といったデメリットも存在する。
- アルファードで残クレが人気なのは、高いリセールバリュー(=高い残価設定が可能)と、月々の負担を軽減したいというユーザーニーズが合致しているため。
街で見かける車のナンバープレートにまつわる噂は、興味深くはありますが、そのほとんどは根拠のない都市伝説です。それよりも、ご自身のライフスタイルや将来設計に本当に合った車の購入方法は何なのかをじっくりと考えることの方が、何倍も重要です。
この記事が、あなたの賢いカーライフ選択の一助となれば幸いです。