モータージャーナリスト兼コラムニストの二階堂仁です。今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、レンジローバーの購入を検討しているものの、維持費、特にタイヤ交換費用やメンテナンス費用が高額で後悔するという噂が気になっているのではないでしょうか。
引用 : ランドローバー公式HP (https://www.rangerover.com/ja-jp/range-rover-sport/index.html)
私も実際にレンジローバーを所有し、その維持にかかる費用や手間を経験してきたので、気になる気持ちはよくわかります。
憧れのレンジローバーを手に入れたものの、「こんなはずじゃなかった…」と後悔するオーナーがいるのも事実です。しかし、事前にその実態を正確に把握しておけば、後悔を避け、素晴らしいカーライフを送ることができます。
この記事を読み終える頃には、レンジローバーの維持に関するあなたの疑問や不安が解決しているはずです。
記事のポイント
- 高額なタイヤ交換費用とその実態
- 予想以上に嵩むメンテナンスと修理費用
- 日常使いで直面する車体サイズの課題
- 後悔しないための賢いモデル選びと維持方法

新しい車に乗り換える際、今乗っている愛車をどれだけ高く売却できるかは、次の車の選択肢にも大きく影響します。
私自身、一括見積もりサイトを活用したことで、ホンダヴェゼルからレクサスRXに乗り換えることができました。
レンジローバーで後悔するポイント【維持費・メンテナンス編】
レンジローバーのオーナーが後悔するポイントとして、最も多く声が挙がるのが「維持費」の問題です。購入時の車両価格だけでなく、所有し続けることで発生するランニングコストが予想以上にかかるケースが少なくありません。私自身の経験も踏まえ、具体的な項目ごとに詳しく解説していきます。
引用 : ランドローバー公式HP (https://www.rangerover.com/ja-jp/range-rover-sport/index.html)
タイヤ交換費用が高額
レンジローバーは、モデルチェンジのたびにデザイン性や走行性能を追求し、タイヤサイズが大型化する傾向にあります。特に現行モデルでは22インチや23インチといった大径ホイールが標準装備されることも珍しくありません。この大径タイヤが、交換費用の高騰を招く最大の要因です。
モデル別タイヤサイズと交換費用の目安
モデル世代 | 主なタイヤサイズ | タイヤ4本交換費用(目安) |
---|---|---|
3rdレンジローバー (L322) | 255/55R19, 255/50R20 | 15万円~30万円 |
4thレンジローバー (L405) | 275/45R21, 275/40R22 | 25万円~50万円 |
5thレンジローバー (L460) | 285/45R22, 285/40R23 | 40万円~70万円以上 |
※上記はタイヤ本体の価格であり、交換工賃や廃タイヤ処理費用は別途かかります。
23インチにもなると、選択できるタイヤメーカーも限られ、ピレリやコンチネンタルといったハイパフォーマンスタイヤが中心となります。1本あたり10万円を超えることもザラで、4本交換すればあっという間に50万円以上の出費となるのです。
私自身、22インチのタイヤを交換した際には、複数の店舗で見積もりを取りましたが、最終的に40万円近い費用がかかりました。これを3〜4年に一度のペースで交換する必要があるため、長期的な維持費の計画に必ず組み込んでおくべき項目です。
費用を少しでも抑えるためには、正規ディーラーだけでなく、タイヤ専門店やインターネットでの購入を検討するのも一つの手です。ただし、持ち込み交換に対応してくれるか、大径タイヤの交換作業に慣れているかなどを事前に確認することが重要です.
故障が多く修理費用が嵩む
「英国車は壊れやすい」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。残念ながら、特に一昔前のレンジローバーに関しては、その噂はあながち間違いではありませんでした。近年は品質が大幅に向上していますが、それでもドイツ車や日本車と比較すると、細かなトラブルが発生しやすい傾向は否めません。
よくある故障箇所と修理費用の目安
- エアサスペンションの故障: レンジローバーの代名詞とも言えるエアサスですが、経年劣化によるエア漏れやコンプレッサーの故障は定番のトラブルです。修理には片側15万円~、コンプレッサー交換で20万円以上かかることもあります。
- 電子機器系のトラブル: ナビゲーションやメーターパネルの不具合、各種センサーの故障など、電子制御が多い現代の車ならではのトラブルも散見されます。原因の特定が難しく、修理費用が高額になるケースもあります。
- オイル漏れ・水漏れ: エンジンやトランスミッションからのオイル漏れ、ラジエーターからの水漏れも注意が必要です。軽微なものであれば数万円で済みますが、放置すると重大なエンジントラブルに繋がりかねません。
これらの修理をすべて正規ディーラーで行うと、費用はさらに嵩みます。後悔しないためには、新車購入時の延長保証や、認定中古車に付帯する保証を最大限活用することが賢明です。また、レンジローバーに精通した信頼できる専門工場を見つけておくことも、維持費をコントロールする上で非常に重要になります。
正規ディーラーでのメンテナンス費用
レンジローバーの性能を維持するためには、定期的なメンテナンスが不可欠です。正規ディーラーでのメンテナンスは、安心感が高い反面、費用もそれなりにかかります。
- エンジンオイル交換: 約3万円~5万円
- オイルフィルター交換: 約1万円~2万円
- ブレーキパッド交換(前後): 約10万円~15万円
- 12ヶ月点検: 約5万円~8万円
特に、メーカー指定の高品質なオイルや純正部品を使用するため、一般的な国産車と比較すると割高になります。サービスパッケージに加入することで、数年間のメンテナンス費用をある程度定額にすることも可能ですが、それでも基本的なランニングコストとして認識しておく必要があります。
自動車税・重量税の負担
レンジローバーは、その多くが大排気量エンジンを搭載し、車両重量も重いため、税金面の負担も大きくなります。
年間自動車税(排気量別)
排気量 | 税額 |
---|---|
2,501cc~3,000cc | 50,000円 |
3,001cc~3,500cc | 57,000円 |
3,501cc~4,000cc | 65,500円 |
4,001cc~4,500cc | 75,500円 |
4,501cc~6,000cc | 87,000円 |
※新車登録時期により税額は異なります。
車検時重量税(車両重量別・2年分)
車両重量 | 税額(エコカー減税非適用) |
---|---|
~2,000kg | 32,800円 |
~2,500kg | 41,000円 |
~3,000kg | 49,200円 |
多くのモデルが2.5トンを超えるため、重量税も最高クラスになります。これらの税金は毎年、または車検ごとに必ず発生する固定費として計算に入れておきましょう。
燃費の悪さ
優雅な走りと引き換えに、燃費性能は決して良いとは言えません。特にV8ガソリンモデルなどは、街乗りではリッターあたり5kmを切ることも珍しくありません。
- ガソリンモデル(V8): 4~6km/L
- ディーゼルモデル: 8~12km/L
- PHEV(プラグインハイブリッド): 10~15km/L(エンジン走行時)
年間1万km走行すると仮定し、ハイオクガソリンを180円/Lで計算すると、V8モデルの場合は年間36万円~54万円のガソリン代がかかる計算になります。長距離移動が多い方や、日々の通勤で利用する方は、燃費の良いディーゼルモデルやPHEVを検討するのも一つの選択肢です。
車検費用
2年に一度の車検も、レンジローバーオーナーにとっては大きな出費の一つです。法定費用(重量税、自賠責保険料、印紙代)だけでも約7万円~8万円かかります。
これに加えて、24ヶ月点検整備費用や部品交換費用が発生します。特に大きなトラブルがなくても、消耗品の交換などで総額20万円~30万円程度になるのが一般的です。もし、前述したようなエアサスやオイル漏れなどの修理が重なると、50万円、場合によっては100万円近い費用がかかる可能性もゼロではありません。
任意保険料
車両保険の料率クラスが高く設定されているため、任意保険料も高額になりがちです。車両価格が高いため、車両保険を付帯すると保険料はさらに跳ね上がります。
年齢や等級、運転者限定の条件によって大きく異なりますが、年間で15万円~30万円程度の保険料を想定しておくのが現実的です。複数の保険会社から見積もりを取り、自分に合ったプランを比較検討することをおすすめします。
リセールバリューの注意点
レンジローバーは、一部の限定モデルや人気グレードを除き、リセールバリューが大きく下落する傾向があります。特に新車で購入した場合、3年後の下取り価格が購入価格の半分以下になることも珍しくありません。
これは、高額な維持費や故障リスクを懸念して、中古車市場での需要が供給を上回らないことが一因です。購入前に、数年後の資産価値も考慮に入れておくことが、トータルでの後悔を避けるポイントになります。リセールを意識するなら、ボディカラーは白や黒、人気のオプション(スライディングパノラミックルーフなど)が装着された車両を選ぶと良いでしょう。
レンジローバーで後悔するポイント【日常使い・シチュエーション編】
維持費の問題をクリアしても、日常的な使い勝手の面で「思っていたのと違った」と感じるオーナーもいます。レンジローバーの持つ独特のキャラクターを理解せずに購入すると、日々の運転がストレスになってしまう可能性もあります。
引用 : ランドローバー公式HP (https://www.rangerover.com/ja-jp/range-rover-sport/index.html)
車体サイズが大きく運転しづらい
レンジローバーの圧倒的な存在感は魅力ですが、それは大きな車体サイズと表裏一体です。
- 全長: 約5,000mm~5,200mm
- 全幅: 約2,000mm
- 全高: 約1,870mm
特に全幅2mというサイズは、日本の道路事情ではかなり気を使います。都内の裏道や昔ながらの商店街など、道幅の狭い場所でのすれ違いは非常に困難です。私自身も、初めてレンジローバーで住宅街に入った時は、対向車が来るたびに冷や汗をかいたものです。
360°カメラや各種センサーといった運転支援システムは充実していますが、物理的な大きさはどうにもなりません。購入前には必ず試乗を行い、自宅周辺やよく利用する道を実際に走行してみて、サイズ感に慣れることができるかを確認することが不可欠です。
狭い駐車場での苦労
車体サイズの問題は、駐車場でさらに顕著になります。特に都市部のコインパーキングや商業施設の立体駐車場では、駐車を断られたり、停められたとしてもドアの開閉が困難だったりするケースが頻繁に起こります。
多くの機械式駐車場は全幅1,850mmや1,900mmが上限となっており、レンジローバーはまず利用できません。平面駐車場であっても、隣の車との間隔が狭く、乗り降りの際にドアをぶつけないように細心の注意を払う必要があります。
日常的に利用する駐車場のサイズを事前に確認しておくことはもちろん、外出先でも駐車場探しに苦労する可能性があることを覚悟しておく必要があります。
洗車の手間
大きなボディは、洗車も一苦労です。全長5m、全高1.9m近いボディを手洗いするのは、かなりの時間と労力を要します。特にルーフの中央部分は、脚立を使わないと手が届きません。
洗車機を利用するにしても、サイズ制限で断られることがあります。結果的に、ガソリンスタンドの手洗い洗車サービスなどを利用する機会が増え、維持費が地味に嵩んでいくことになります。
美しいボディを維持するためには、購入時に高品質なボディコーティングを施工しておくことを強くお勧めします。汚れが付きにくく、落としやすくなるため、日々のメンテナンスが格段に楽になります。
電子機器系のトラブル
前述の通り、電子機器系のトラブルはレンジローバーのウィークポイントの一つです。走行に直接影響しない部分、例えばナビゲーションのフリーズやBluetoothの接続不良、パワーウィンドウの不動といった細かな不具合が、オーナーのストレスになることがあります。
突然警告灯が点灯し、ディーラーに持ち込んでも原因が特定できず、「様子を見てください」と言われるケースも耳にします。こうした「いつ壊れるか分からない」という不安感が、所有する喜びを削いでしまう可能性も考慮しておくべきでしょう。
独特の乗り心地
エアサスペンションがもたらす、まるで船に乗っているかのようなフワフワとした乗り心地は、レンジローバーの真骨頂です。路面の凹凸を滑らかにいなし、長距離移動でも疲れにくいという大きなメリットがあります。
しかし、この独特の乗り心地が好みに合わない人もいます。スポーティで引き締まった足回りを好む方にとっては、コーナーでのロール(車体の傾き)が大きく感じられ、不安に思うかもしれません。こればかりは個人の感覚による部分が大きいので、試乗の際には高速道路やワインディングロードなど、様々なシチュエーションで乗り心地を確かめてみることをお勧めします。
周囲からの視線
レンジローバーは良くも悪くも目立つ車です。その存在感から、周囲からの視線を感じる機会も多くなります。優越感に浸れる一方で、運転マナーには一層の注意が必要です。少しでも強引な運転をすれば、すぐに悪い意味で記憶されてしまうでしょう。
また、高級車であるがゆえに、妬みの対象になったり、いたずらのリスクが高まったりすることも念頭に置いておく必要があります。セキュリティが万全な駐車環境を確保することも、安心して所有するための重要な要素です.
アウトドアでの利用シーンと注意点
「砂漠のロールスロイス」の異名を持つ通り、レンジローバーは圧倒的な悪路走破性を誇ります。キャンプやスキー、オフロード走行といったアウトドアアクティビティでは、その真価を存分に発揮してくれるでしょう。
しかし、注意点もあります。高価な車体や大径ホイールを、オフロードで傷つけてしまうリスクです。岩場や林道でボディを擦ったり、ホイールをガリ傷だらけにしてしまっては、精神的なダメージも修理費用も甚大です。
また、万が一オフロードでスタック(動けなくなること)してしまった場合、その巨体を牽引するのは容易ではありません。本格的なオフロード走行を楽しむのであれば、相応の知識と準備、そして「傷は覚悟の上」という割り切りが必要になります。多くの場合、その性能はオーバースペックであり、実際には雪道やキャンプ場の未舗装路を走る程度に留まるオーナーがほとんどです。
まとめ
今回は、レンジローバーを購入した後に後悔しがちなポイントを、維持費と日常使いの両面から詳しく解説しました。
高額なタイヤ交換費用やメンテナンス費用、税金、そして大きな車体サイズがもたらすネガティブな側面は、確かに存在します。これらの事実を知らずに憧れだけで購入してしまうと、「こんなはずではなかった」と後悔につながる可能性は高いでしょう。
しかし、これらのデメリットを事前に理解し、対策を講じた上で所有するのであれば、レンジローバーは唯一無二の素晴らしいパートナーとなってくれます。圧倒的な存在感、豪華で快適な室内空間、そしてどんな道でも突き進める走破性は、他のどの車にも代えがたい魅力です。
後悔しないための最大のポイントは、「見栄や憧れだけで購入せず、自身のライフスタイルや経済状況と照らし合わせて、現実的な維持計画を立てること」に尽きます。
この記事が、あなたの賢い車選びの一助となれば幸いです。