モータージャーナリスト兼コンサルタントの二階堂仁です。今回も多く寄せられている質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、新しい車の候補としてボルボを検討中で、特にゴルフ場などで他の高級車と並んだ際の「格付け」や「ポジション」が気になっているのではないでしょうか。

私もドイツ車やイギリス車、そしてボルボも複数台所有し、実際にゴルフへ行く際の駐車場の独特な雰囲気を経験しているので、その気になる気持ちはよくわかります。
メルセデス・ベンツやBMW、ランドローバーといった威風堂々とした車が並ぶ中で、ボルボがどう見られるのか、その答えを求めていることでしょう。この記事を読み終える頃には、ボルボの立ち位置に関するあなたの疑問が解決し、自信を持ってボルボという選択肢を評価できるようになっているはずです。
記事のポイント
- 自動車業界におけるボルボの明確な格付け
- ドイツ御三家と比較したボルボの独自のポジション
- ランドローバーやレクサスとは異なるボルボの魅力
- ゴルフ場という特殊な環境でこそ輝くボルボの価値

新しい車に乗り換える際、今乗っている愛車をどれだけ高く売却できるかは、次の車の選択肢にも大きく影響します。
私自身、一括見積もりサイトを活用したことで、ホンダヴェゼルからレクサスRXに乗り換えることができました。
ボルボの格付けとブランドイメージの現在地
まず、ボルボが自動車業界全体でどのようなポジションにいるのか、その「格付け」から解説していきましょう。ブランドの立ち位置を理解することは、車選びの重要な指標となります。
自動車ブランドにおける「格付け」とは?
自動車メーカーは、その歴史、価格帯、技術力、ブランドイメージなどから、市場においてある種の階層(ヒエラルキー)を形成しています。これは誰かが明確に定義したものではありませんが、多くのユーザーが共通して抱いている認識のようなものです。
一般的に、頂点にはロールス・ロイスやベントレーといった「ショーファードリブン(運転手が運転する車)」が位置し、その下にフェラーリやランボルギーニなどの「スーパーカーブランド」が続きます。
そして、その次に来るのが、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ、ポルシェ、レクサス、ランドローバー、そしてボルボなどが含まれる「プレミアムブランド」と呼ばれる層です。さらにその下に、トヨタやフォルクスワーゲンのような「マス(大衆)ブランド」が位置するのが一般的なピラミッド構造です。
ボルボは「アッパープレミアムブランド」の一角
結論から言うと、ボルボは間違いなく「プレミアムブランド」に属します。

引用 : ボルボHP (https://www.volvocars.com/jp/cars/xc90/)
一昔前は「安全だけど地味」「実用性は高いが華やかさに欠ける」といったイメージを持つ方もいたかもしれません。しかし、2010年に中国の吉利控股集団(ジーリー)の傘下に入って以降、豊富な開発資金を得てブランドは劇的な進化を遂げました。
特に2015年に登場した2代目XC90以降のデザイン、質感、走行性能、先進技術は飛躍的に向上し、今ではドイツ御三家やレクサスと堂々と渡り合える、あるいはそれらを凌駕する部分さえ持つ「アッパープレミアムブランド」としての地位を確立しています。
安全性だけじゃない!ボルボが築き上げた独自のブランド価値
現代のボルボを語る上で、「安全」というキーワードだけでは不十分です。彼らは他のプレミアムブランドとは一線を画す、独自の価値観をいくつも提供しています。
スカンジナビアンデザインの洗練性
ボルボの最大の魅力の一つが、華美な装飾を排し、機能性とシンプルさを追求した「スカンジナビアンデザイン」です。トールハンマー(北欧神話の神が持つハンマー)をモチーフにしたヘッドライトや、温かみのあるウッドパネルと上質なレザーを組み合わせた内装は、まさに「走る北欧のラウンジ」。
ドイツ車のような威圧感やスポーティさの誇示ではなく、乗る人に安らぎと心地よさを与えることに重きを置いています。このミニマルで知的なデザインは、過度な自己主張を好まない、成熟した大人からの支持を集めています。
「人」と「地球」を中心にした先進技術
ボルボの安全思想は、単に事故を防ぐだけでなく、「車内とその周辺にいるすべての人を守る」という哲学に基づいています。その思想は、世界で初めて3点式シートベルトを開発し、その特許を無償公開した歴史からも明らかです。
近年では、その哲学を地球環境にまで広げ、全モデルの電動化をいち早く宣言するなど、サステナビリティ(持続可能性)においても業界をリードしています。このような倫理的な姿勢も、ブランドイメージを大きく向上させている要因の一つです。
中国・吉利汽車傘下になってからの進化
「中国資本」と聞くと、ネガティブなイメージを持つ方がいるかもしれませんが、ボルボに関しては全くの杞憂です。吉利はボルボの経営や開発に一切口出しをせず、潤沢な資金を提供するという理想的な関係を築きました。
これにより、ボルボは長年培ってきた安全技術やデザイン哲学を維持したまま、プラットフォームの刷新やパワートレインの電動化といった大規模な投資を敢行できたのです。結果として、品質やブランドイメージは向上し、販売台数も世界的に大きく伸びています。今のボルボの成功は、この戦略的なパートナーシップの賜物と言えるでしょう。
ライバルメーカーと徹底比較!ボルボの相対的ポジション
では、具体的なライバルと比較した場合、ボルボのポジションはどうなるのでしょうか。特に質問の多いドイツ御三家、ランドローバー、レクサスとの比較、そしてゴルフ場での見え方について、私の見解を詳しく解説します。

vs. ドイツ御三家(ベンツ・BMW・アウディ):ステータスの種類の違い
ゴルフ場の駐車場で最も存在感を放つのが、やはりドイツ御三家でしょう。これらのブランドとボルボは、目指す方向性、つまり「ステータスの種類」が根本的に異なります。
威圧感や派手さよりも「知性」と「品格」
メルセデス・ベンツの威厳、BMWのスポーティさ、アウディの先進性。これらは、ある種の「強さ」や「成功」を分かりやすく象徴する記号として機能します。
一方、ボルボが提供するステータスは、**「見識の高さ」や「ライフスタイルへのこだわり」**といった、より内面的で知的なものです。派手さで他を圧倒するのではなく、静かに、しかし確かな存在感を放つ。それがボルボの立ち位置です。
ドイツ御三家を選ぶことが「王道」だとすれば、ボルボを選ぶことは「自分自身の価値観を理解している」というメッセージになります。
インテリア思想の比較:ミニマリズム vs. 華やかさ
内装の思想にも大きな違いが見られます。ドイツ御三家、特にメルセデス・ベンツは、アンビエントライトや大型ディスプレイを多用し、華やかで未来的な空間を演出する傾向にあります。
対してボルボは、天然のウッドパネルや手触りの良いレザー、あるいはウールブレンドのシートなど、自然素材を活かした温かみのある空間を作り出します。スイッチ類も最小限に抑えられ、大型のセンターディスプレイに機能を集約することで、クリーンで落ち着いた印象を与えます。どちらが優れているという話ではなく、これもまた哲学の違いの表れです。
主要モデルの価格帯比較
各ブランドの主要なSUVとセダン/ステーションワゴンの価格帯を比較してみましょう。
カテゴリ | ボルボ | メルセデス・ベンツ | BMW | アウディ |
---|---|---|---|---|
ミドルサイズSUV | XC60 (約700万円〜) | GLC (約820万円〜) | X3 (約780万円〜) | Q5 (約740万円〜) |
ラージサイズSUV | XC90 (約1,000万円〜) | GLE (約1,380万円〜) | X5 (約1,200万円〜) | Q7 (約1,080万円〜) |
Dセグメント | S60/V60 (約640万円〜) | Cクラス (約670万円〜) | 3シリーズ (約600万円〜) | A4 (約550万円〜) |
※2025年8月時点のおおよその新車価格帯です。グレードやオプションにより変動します。
表を見ると、ボルボはドイツ御三家とほぼ同価格帯か、モデルによっては若干戦略的な価格設定になっていることがわかります。もはや「ドイツ車より安いから選ぶ」ブランドではなく、その価値を理解した上で同等の対価を支払うブランドへと完全にシフトしています。
vs. ランドローバー:SUVのキャラクターの違い
同じく欧州のプレミアムSUVとして、ランドローバーも強力なライバルです。特にゴルフのような趣味を持つ方には、レンジローバーやディフェンダーは憧れの対象でしょう。

オフロードの血統 vs. 都市型SUVの洗練
ランドローバーの最大の強みは、言うまでもなく圧倒的な悪路走破性です。その背景には、長年にわたる軍用車両や探検用車両の開発で培われたヘビーデューティーな技術があります。レンジローバーのような高級モデルでも、その血統は色濃く受け継がれています。
一方、ボルボのSUV(XCシリーズ)は、あくまで乗用車ベースのプラットフォームから開発された「クロスオーバーSUV」です。もちろんAWDシステムによる高い走破性を備えていますが、主戦場はオンロード。都市から高速道路、そして少し荒れたカントリーロードまでを、快適かつ安全に移動することを得意としています。
ランドローバーが「冒険」の象徴なら、ボルボは**「上質な日常」**の象徴と言えるでしょう。
vs. レクサス:異なる「おもてなし」の形
日本を代表するプレミアムブランド、レクサスも比較対象としてよく名前が挙がります。
日本の匠とスウェーデンの機能美
レクサスの魅力は、日本の「おもてなし」の精神を具現化した、きめ細やかな作り込みと圧倒的な静粛性、そして故障の少なさにあります。ディーラーでの顧客対応も世界最高レベルと評されており、購入後の安心感は絶大です。
ボルボが提供するのは、それとは少し違う種類の「おもてなし」です。例えば、人間工学に基づいて医師と共同開発されたシートは、長距離を運転しても全く疲れないと評判です。また、車内の空気を清浄に保つシステムや、直感的に操作できるインターフェースなど、乗員の心身の健康や快適性を科学的に追求するアプローチが特徴です。
どちらも乗員への配慮に満ちていますが、その表現方法が「感性的なおもてなし」のレクサスと、「論理的・機能的なおもてなし」のボルボ、という違いがあります。
ゴルフ場での見え方をシミュレーション
さて、本題であるゴルフ場での「見え方」です。様々な高級車が並ぶクラブハウスのエントランスを想像してみてください。
そこに黒塗りのベンツSクラスやBMW X7、レンジローバーが並んでいると、確かに壮観ですし、一種の「序列」のような空気感が生まれることも事実です。
その中に、例えばボルボXC90がスッと停まったらどうでしょう。
おそらく、多くの人が「お、あの人はボルボか」と少し注目するはずです。そこには「見せびらかす感じはないけれど、良いモノを知っている人なんだろうな」「きっと職業は医師か、あるいはクリエイティブな仕事をしている人かな」といった、ポジティブで知的なイメージが伴います。
ドイツ御三家が「成功の象徴」として分かりやすいアピールをするのに対し、ボルボは**「オーナーの人間性やセンスを代弁する」**という役割を担うのです。マウント合戦のような土俵からは一歩降りつつも、決して見劣りすることのない、独自の確固たるポジションを築くことができます。
また、実用面でもボルボのステーションワゴン(Vシリーズ)やSUV(XCシリーズ)は、ゴルフバッグの積載性に優れています。特にV90やXC90であれば、4人分のゴルフバッグと荷物を余裕で飲み込みます。このスマートな実用性も、ゴルフ愛好家にとって大きな魅力となるでしょう。
なぜ今、富裕層や知識人にボルボが選ばれるのか?
近年、私のクライアントでも、これまでドイツ車を乗り継いできた経営者や医師、弁護士といった方々が、次の乗り換えでボルボを指名するケースが非常に増えています。その背景には、価値観の変化があります。
「見せびらかす」価値観からの脱却
物質的な豊かさがある程度満たされた層の間で、「分かりやすい高級品」で自分を飾るのではなく、**「自分の哲学に合った本質的なモノ」**を選びたいという欲求が高まっています。
ボルボの持つ「安全」「環境」「人中心」というブレない哲学や、華美ではないが質の高いデザインは、まさにそうした成熟した価値観に完璧にマッチします。
本質的な価値を求める思考
彼らは、ブランドの知名度や世間体を気にするのではなく、「自分や家族にとって本当に快適で安全な車は何か?」という視点で車を選びます。
長時間乗っても疲れないシート、クリーンな車内空気、直感的な操作系、そして何よりも世界トップクラスの安全性能。ボルボが提供するこれらの価値は、日々の生活の質(QOL)を確実に向上させてくれます。こうした本質的な価値を理解できる人々が、最終的にボルボに行き着くのです。
私が実際にXC90を所有して感じるのも、まさにこの点です。運転している時の心穏やかな感覚、家族を乗せている時の絶対的な安心感は、他のどのブランドの車でも得難い、ボルボならではの体験だと断言できます。
まとめ
今回は、ボルボの格付けと、ライバルと比較した際のポジションについて詳しく解説しました。
結論として、ボルボはドイツ御三家やランドローバー、レクサスといった強豪ひしめくプレミアムブランド市場において、**「知的」「上品」「本質志向」**という独自のポジションを確立した、唯一無二の存在です。
ゴルフ場という社交の場においても、その選択は決して見劣りするものではなく、むしろオーナーの「見識の高さ」や「優れたバランス感覚」を雄弁に物語ってくれるでしょう。
他人の評価を気にするのではなく、ご自身の価値観に合うかどうか。その一点で車を選んだとき、ボルボはきっと最高のパートナーになってくれるはずです。