2025年の上海モーターショーで発表された新型レクサスESは、単なるフルモデルチェンジにとどまらず、レクサスブランドの次世代EV戦略を象徴するモデルとなっています。
引用 : TOYOTA HP (https://global.toyota/jp/newsroom/lexus/42650642.html)
トヨタとの違いを明確に打ち出しつつ、インテリアの質感や先進機能、安全性の向上まで含めて大幅な進化を遂げた新型ES。
その内容から、今後のレクサスEV戦略の方向性が見えてきました。
記事のポイント
- 新型レクサスESに採用された次世代デザインとインテリアの進化
- ステアリング操作系の刷新と先進的なドライバー支援
- レクサス独自の“おもてなし技術”と他社との差異
- トヨタとのEV戦略の差別化と今後の展望
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次世代レクサスのEV戦略|外装・内装デザイン
次世代レクサスEV戦略|インテリアで体感する次世代のラグジュアリー
新型ESは、全長を165mm(旧型比で約3.3%増)、ホイールベースを80mm(約2.8%増)延長し、セダンでありながらSUV的な広々とした空間と開放感を提供しています。
これにより後席のニールームや足元空間が大きく改善され、さらに荷室容量も増加。特に足元空間の拡大は後席重視のユーザー層やショーファードリブン需要にも応える形となっており、LSに匹敵する快適性を目指したレイアウトが注目されています。
ボディサイズ比較表
モデル | 全長(mm) | ホイールベース(mm) |
---|---|---|
旧型ES | 4,975 | 2,870 |
新型ES | 5,140 | 2,950 |
シートやトリムは薄型化され、ガラスエリアを拡大することで見晴らしの良さを実現。着座位置は従来よりも高く設計され、ドライバーの視界確保に寄与しています。SUVから乗り換えるユーザーにも親しみやすいパッケージングと言えるでしょう。
次世代レクサスEV戦略|ステアリングホイールの刷新
従来のLマークから横文字の“LEXUS”ロゴに変更されたステアリングデザインは、ZCコンセプトからのフィードバックを受けた象徴的な変化です。

引用 : TOYOTA HP (https://global.toyota/jp/newsroom/lexus/42650642.html)
現行のNXやRXに採用されているステアリングは角張ったホーンパッドが特徴ですが、新型ESではより薄型かつ水平基調を意識したデザインとなっており、手元の視認性と上質感の両立を図っています。
また、ボタン配置も見直されており、操作の直感性を高めるために左右対称設計を導入。デザイン性と実用性の両面でレクサスらしい進化を遂げたステアリングホイールです。
ステアリングデザイン比較表
モデル | 中央ロゴ | 操作方式 | 特徴 |
旧型ES/NX等 | Lマーク | タッチトレーサー | ボタンカスタマイズに制限あり |
新型ES | LEXUS文字 | 十字キー+物理ボタン | OKボタン搭載、操作性向上 |
次世代レクサスEV戦略|フル液晶メーターの質感向上
12.3インチのフル液晶メーターは異形デザインで進化。運転支援の情報やCGモデルの表示により、直感的で美しいインターフェースを実現しています。従来のような単調なアイコン表示ではなく、車両の3D CGや周辺環境をリアルタイムで表示することで、直感的に状況を把握できるようになっています。
また、バックライトの調整やメーターグラフィックの可変性にも対応しており、スポーツモード・ノーマルモード・エコモードなどに応じて、背景色や表示スタイルがダイナミックに変化する仕様です。
さらに、昼夜で輝度やコントラストを自動調整する機能も搭載されており、視認性を常に最適化する工夫が施されています。これにより、視線の移動を最小限に抑えながら、必要な情報に瞬時にアクセスできる「視線誘導型コックピット」としての完成度が高められています。
次世代レクサスEV戦略|デュアルモニターとエアコンUIの進化
デュアルモニターは14インチ×2枚の構成が可能で、ナビゲーションやマルチメディア情報を個別に表示可能。運転席と助手席で異なる情報を同時に確認できることで、ドライバーはナビゲーション、助手席側はエンタメや車両設定といった役割分担が可能になっています。

引用 : TOYOTA HP (https://global.toyota/jp/newsroom/lexus/42650642.html)
従来のようにナビ画面と空調UIが競合するストレスがなくなったことで、空調設定やメディア切り替えの際も操作が直感的かつスムーズになり、視認性とユーザビリティが飛躍的に向上しました。
さらに、画面のグラフィックもHDRに対応し、直射日光下でも高コントラストを保つため、外的環境に左右されにくいという実用性の高さも際立っています。
モニター構成と利便性
構成 | サイズ(インチ) | 特徴 |
シングル | 14 | 標準構成、画面下部にエアコンUIあり |
デュアル | 14×2 | 情報分離表示、ナビ・メディア独立操作可 |
次世代レクサスEV戦略|世界初の物理スイッチ「レスポンシブヒルンスイッチ」
操作に応じて物理スイッチが浮き上がる設計は、近未来的な演出と実用性を両立。センターコンソールに配置されたこのスイッチは、通常はフラットで目立たないが、手を近づけると感知して物理的に立ち上がる仕組みになっています。
これにより、不意の誤操作を防ぐだけでなく、視覚的にも操作的にも新鮮な体験を提供します。光と触覚の融合は、ドライバーに安心感と高級感をもたらし、従来のタッチパネルにありがちな“押した感のなさ”を解消。
さらに、この機能は暗所でも確実に操作できるようLEDガイドが点灯する仕様となっており、安全性にも貢献しています。
次世代レクサスEV戦略|シフトスイッチ化と後席リラクゼーション
新型ESではシフトレバーが排除され、ボタン式のシフトスイッチを採用。センターコンソールをよりフラットに設計できるようになり、前席の解放感と利便性が向上しました。
このスイッチはコンパクトで誤操作防止機能も内蔵しており、操作の確実性も担保されています。後席では、助手席の大前倒し機構と連動することで、足元空間が広がる設計となっています。
特にリラックスモードでは、後席左側に座る乗員が助手席を前倒しすることで最大限のスペースを確保でき、レッグレストやリラクゼーション機能と組み合わせて、まさにビジネスクラスのような快適性を提供します。
リラクゼーション装備の有無
装備名称 | 標準搭載 | 対象グレード |
後席オットマン | ○ | 上位グレードのみ |
リラクゼーション機能 | ○ | 上位グレードのみ |
助手席前倒し機構 | ○ | 上位・中間グレード |
次世代レクサスEV戦略|フレグランスとアンビエントライトの革新
レクサス初の純正フレグランス機能は、最大3種類の香りをカートリッジで切り替え可能。各フレグランスには、それぞれに合った音楽、映像、アンビエントライトが連動し、五感を刺激するインテリア演出を実現しています。
これにより車内空間が単なる移動の場ではなく、没入感ある“体験型ラグジュアリー空間”へと昇華。さらに、フレグランスの拡散方式は空調ダクトと連動しており、香りが均等かつ自然に車内に広がるよう設計されています。
香りの選択はモニター操作で直感的に変更でき、時間帯や気分に応じたカスタマイズが可能です。
香りのバリエーション一覧
香り名称 | テイスト |
天候 | ウッディー系 |
西洋 | ホワイトフローラル |
新明 | シトラス・ムスク |
般夜 | スモーキー・グリーン |
系風 | アロマティック |
次世代レクサスのEV戦略|トヨタとの差別化
トヨタとの差別化|プラットフォームと内装思想の差別化
トヨタ車と共通のプラットフォームを採用しつつも、内装設計や素材感では大きな差異があります。たとえば、同一プラットフォームを用いたトヨタのクラウンと比較しても、新型ESではシート素材に本革や竹素材のオーナメントを積極的に採用し、質感の面で格段の差を設けています。

引用 : TOYOTA HP (https://global.toyota/jp/newsroom/lexus/42650642.html)
また、レクサスは“TAZUNA(タズナ)”思想を軸に、人と車の直感的なつながりを重視しています。これは馬と騎手が手綱で意思疎通するように、最小限の視線移動と操作で最大限の情報取得や車両制御ができるよう設計するという考え方です。
ドライバー視点での操作性や視認性に徹底して配慮されており、この思想に基づいたインテリア設計により、手の動き・視線・操作がシームレスにつながるユーザー体験を可能にしているのが特徴です。
トヨタとの差別化|操作系の思想に現れる独自性
パネルレスな操作性とフィードバック感のある物理スイッチの共存は、まさにレクサス流。その背景には、視覚的なノイズを排除しつつも、直感的に手が届き、確実に操作できるインターフェースを目指す設計思想があります。
UX(ユーザーエクスペリエンス)の一貫性と、押した時の“確かさ”を感じられる触覚的な安心感の両立は、操作ミスを防ぐ安全性にもつながり、他ブランドのフラットで没個性なタッチパネル主体の操作系と一線を画しています。特に走行中のブラインド操作において、この物理スイッチの存在は極めて大きな意味を持つのです。
トヨタとの差別化|フレグランス・ヒーター・イルミの融合体験
センサリーコンシェルジュは、香り・光・音・温度を統合制御し、車内空間全体を乗員の感情やシーンに応じて動的に調整する先進システムです。
3つのテーマ(リバイタライズ、ラディエンス、インスパイア)に基づき、車内の照明や香り、音楽、マッサージ機能までが連動。例えば、ストレスを軽減したいときには穏やかな自然光とアロマ、リラックスミュージックで包み込まれ、集中力を高めたいときにはシャープな照明演出とテンポの良いBGMが空間を支配します。
これはトヨタ車では未搭載のシステムであり、ラグジュアリークラスにおける“感性への訴求”を重視したアプローチとして、次世代レクサスの方向性を象徴しています。
トヨタとの差別化|ZCコンセプトを体現する車内装備
新ステアリング、レスポンシブヒルンスイッチ、デュアルモニターなどZCコンセプトで提示された未来像が、新型ESに初搭載された点は象徴的です。これにより、従来のラグジュアリーの定義を単なる素材や装飾ではなく、インタラクティブ性や感性価値といった“体験”に軸足を移していくレクサスの方向性が明確になりました。
今後、NXやRXといった人気SUVへのフィードバックが行われる可能性も高く、次世代のインテリアデザインとユーザー体験の新基準として、ESの先進性がどのように標準化されていくのか注目されます。
トヨタとの差別化|今後のEVラインナップへの波及
ESで先行導入された技術は、今後のEVモデル(RZ、LBX、LS)へ順次展開される予定です。これにはステアリングの操作系、レスポンシブヒルンスイッチ、センサリーコンシェルジュ、デュアルモニター構成などのインターフェース技術に加え、香りや照明といった感性領域への訴求要素が含まれます。
特にEV専用プラットフォームを採用するRZシリーズでは、従来の“無音・無振動”といったEVらしさに加え、空間全体を包み込むような演出が新たな付加価値として求められるため、ESで培われた技術群の応用が重要視されると予測されます。
トヨタとの差別化|EV時代の高級車に求められる価値観
走行性能以上に、室内で過ごす価値の最大化こそがEV高級車の本質であり、車内での“時間消費価値”の向上が最重要視されています。
レクサスは、静粛性・快適性・香り・照明・音響・触感といった五感すべてに働きかけるパッケージを徹底的に追求しており、単なる機能性ではなく“感情に響く設計”を実現しています。
こうした要素は、移動中であっても仕事・リラックス・エンタメといったさまざまなモードに適応し、トヨタブランドとの差別化をより強く印象づける核となっています。
まとめ
新型レクサスESに込められた数々の新技術と内装設計思想は、単なるモデルチェンジではなく、レクサスがEV時代にどう差別化していくかを示す象徴でした。
トヨタと差別化することで、ラグジュアリーな体験を追求し、“移動空間=感動空間”へと昇華しようとする姿勢が鮮明に現れています。特に五感に訴えるセンサリーコンシェルジュや、香り・照明・音響を統合した車内演出は、レクサスの“人間中心のラグジュアリー”を具現化したものです。
今後、RZ、UX、LSといったレクサスEVラインにも、このESの技術と思想がどう波及していくかに注目が集まります。さらに、EV専用車においては、従来の静粛性や加速性能にとどまらず、感性価値を提供する新たなUXが求められており、その先駆けとして新型ESが果たす役割は非常に大きいと言えるでしょう。