モータージャーナリスト兼コラムニストの二階堂仁です。今回も多く寄せられている質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、40系アルファードのターボモデル(正確にはヴェルファイアに設定されている2.4Lターボ、あるいはアルファードの今後のラインナップ拡充で注目されるパワートレイン)の燃費が気になっていると思います。私も実際にターボモデルを所有し、日々都内や高速道路を走り込んでいるので、カタログ値と現実のギャップに驚く気持ちは痛いほどよくわかります。

引用 : TOYOTA HP
この記事を読み終える頃には、ターボモデルを選んで後悔しないための判断基準や、実燃費のシビアな現実、そしてそれでもこのモデルを選ぶ価値がどこにあるのかという疑問がすべて解決しているはずです。
1 カタログ燃費と実燃費には大きな乖離がある
2 都市部の渋滞路ではリッター5キロを切ることもある
3 ハイオク指定のため毎月のガソリン代が想像以上に嵩む
4 燃費の悪さを補って余りある加速性能という魅力も存在する
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アルファードターボの燃費の実態と後悔のポイント
40系アルファード(およびヴェルファイア)に搭載された2.4Lターボエンジン「T24A-FTS」は、先代の3.5L V6エンジンに代わる高出力ユニットとして登場しました。しかし、実際に購入したオーナーから「燃費が想像以上に悪い」という悲鳴に近い声が上がっているのも事実です。なぜこれほどまでに「後悔」という言葉が飛び交うのか、ジャーナリストの視点からその核心に迫ります。
引用 : TOYOTA HP
ターボエンジンのカタログ燃費と実燃費の乖離
まず直視しなければならないのは、スペック上の数字と公道での数字の差です。40系の2.4Lターボモデルのカタログ燃費(WLTCモード)は、2WD車でおよそ10.3km/L、4WD車で10.2km/Lとされています。これだけ見ると「ミニバンならこんなものか」と思えるかもしれません。
しかし、私が実際に所有し、さまざまなシーンで計測した実燃費の平均は、およそ7.0〜8.5km/L程度に留まっています。高速道路で時速80〜90kmで巡航すれば11km/Lを超えることもありますが、一度アクセルを踏み込めば、燃費計の針は目に見えて下がっていきます。
| 走行シチュエーション | カタログ値(WLTC) | 実燃費(目安) |
| 市街地モード | 7.2km/L | 4.5〜6.5km/L |
| 郊外モード | 10.5km/L | 8.0〜9.5km/L |
| 高速道路モード | 12.6km/L | 10.0〜11.5km/L |
この乖離は、特に低回転域から過給をかけるターボエンジンの特性によるものです。
市街地走行での極端な悪化とその理由
ターボモデルを街乗りメインで使おうと考えている方は、特に注意が必要です。信号待ちが多く、ストップ&ゴーが繰り返される都市部では、燃費はリッター5km前後まで落ち込むことが珍しくありません。
その最大の理由は「車両重量」です。40系アルファードのターボモデルは、車両重量が2,100kgを超えます。この巨大な鉄の塊を停止状態から動かす際、ターボエンジンは大きなトルクを発生させるために大量の燃料を噴射します。ハイブリッド車のようにモーターの力でスッと動き出すことができないため、発進のたびにエネルギーを浪費してしまうのです。
ターボラグとアクセルワークの関係
また、わずかなターボラグ(アクセルを踏んでからパワーが出るまでの遅延)を嫌って、無意識にアクセルを深く踏み込んでしまう癖がある人は、さらに燃費を悪化させます。この「巨体を動かすストレス」が、結果的に燃料消費量として跳ね返ってくるわけです。
ハイブリッドモデルとの圧倒的な維持費の差
「燃費が悪いだけなら我慢できる」と思うかもしれませんが、月々の出費として計算するとその差は歴然です。40系のハイブリッドモデル(WLTC 17.5〜19.0km/L)と比較した場合、燃料代はほぼ2倍近い差が開きます。
年間10,000km走行すると仮定した場合、ガソリン代の差額は年間で10万円を優に超えます。これを5年、10年と維持していくとなると、車両本体価格の差額を埋めるどころか、トータルの維持費で逆転してしまう可能性が極めて高いのです。
ハイオク指定が家計に与える意外なダメージ
さらに追い打ちをかけるのが「燃料の種類」です。2.5Lのガソリン車(自然吸気)やハイブリッド車がレギュラーガソリン仕様であるのに対し、2.4Lターボエンジンは「無鉛プレミアムガソリン(ハイオク)」が指定されています。
レギュラーとハイオクの価格差は1リットルあたり約10〜12円程度ですが、燃費自体が悪い車において、単価まで高いというのは精神的なダメージが大きいです。「満タンにしたら1万円札が飛んでいった」という経験を頻繁にすることになるため、家計を管理するパートナーからの理解を得るのが難しいモデルとも言えます。
燃料タンク容量と航続距離の不満点
40系アルファードの燃料タンク容量は、ガソリン車で75リットル、ハイブリッド車で60リットルです。一見、ガソリン車の方が容量が大きく有利に見えますが、実燃費がリッター6〜7km程度だと、航続距離は450km〜500km程度になります。
ハイブリッド車なら余裕で800km以上無給油で走れるケースもあり、長距離ドライブでの給油回数の多さは、オーナーにとって「隠れたストレス」になります。特に家族旅行などで、高速道路のサービスエリアで何度も給油に立ち寄らなければならないのは、地味に不便を感じるポイントです。
アイドリングストップ非採用の影響
最近のトヨタ車、特にTNGA以降のモデルでは、アイドリングストップ機能が非採用となるケースが増えています。40系の2.4Lターボもその例に漏れず、アイドリングストップが装備されていません。
トヨタ側の意図としては「再始動時の振動や騒音による高級感の阻害を避ける」「バッテリーへの負荷を減らす」といった側面があるのでしょうが、燃費重視のユーザーにとってはマイナス要素です。渋滞で停車している間も、2.4Lのターボエンジンは着々とハイオクガソリンを消費し続けます。これが市街地燃費を極端に押し下げている要因の一つでもあります。
信号待ちの多い都市部でのストレス
高級ミニバンであるアルファードは、ゆったりとした時間を過ごすための空間です。しかし、燃費計の平均燃費がどんどん下がっていくのを目の当たりにすると、心理的な余裕が削がれます。
「今、加速したらガソリンがいくら分消えたか」といった邪念が入り込むと、せっかくの最高級の内装や乗り心地を100%楽しめなくなります。特にストップ&ゴーの多い日本の都市部において、大排気量NA(自然吸気)のような余裕ではなく、ターボを回して加速する感覚は、燃費の観点からは常に「代償」を払っている感覚に近いのです。
重量級ボディがターボエンジンに強いる過酷な負荷
開発現場の視点から言わせてもらえば、2.4Lという排気量は、2.1トンを超えるアルファードにとって「ターボの力があって初めて成立する」サイズです。
確かに最大トルク430N・mという数値は強力ですが、それはターボが効いている状態の話。極低回転域や過給が不安定な領域では、エンジンの余力はそれほど大きくありません。重い車体を常にターボの過給圧で押し出すという設計思想そのものが、高効率な燃費走行とは対極にあるのです。
冷却系と燃費のジレンマ
また、高出力を維持するためにはエンジンの冷却も重要になります。ターボエンジンは熱を持ちやすく、冷却のために燃料を濃く吹く(燃料冷却)シーンもあります。これが、負荷のかかる上り坂や高速域でのさらなる燃費悪化を招く要因となっています。
ターボモデルを選ぶべき人と避けるべき人の境界線
燃費の悪さを散々語ってきましたが、それでも私はターボモデルを所有しています。なぜなら、燃費という「コスト」を支払ってでも手に入れたい「ベネフィット」がこの車には存在するからです。ここでは、あなたが後悔する側になるのか、それとも満足する側になるのかを見極めるための基準を解説します。
引用 : TOYOTA HP
圧倒的な加速性能が生む走りの余裕
燃費の悪さと引き換えに手に入るのが、他のミニバンを圧倒する「動力性能」です。信号待ちからの発進、高速道路の本線合流、そして追い越し車線への加速。2.4Lターボエンジンと、ダイレクト感に優れる8速AT(Direct Shift-8AT)の組み合わせは、もはやスポーツカーに近いレスポンスを見せることがあります。
先代の3.5L V6エンジンは官能的な音と伸びやかさが魅力でしたが、40系のターボは「低回転からグイッと押し出すトルクの厚み」が際立っています。この走りの余裕こそが、ドライバーとしての満足度を最大化してくれるのです。
ヴェルファイアとのパワートレイン共通化の罠
40系において、ターボエンジンは当初「ヴェルファイア専用」のパワートレインとして位置づけられました。アルファードが「王道・快適」を目指すのに対し、ヴェルファイアは「こだわり・走り」を強調したモデルです。
もしあなたが「アルファード」という名前の響きや、穏やかな乗り心地を重視してターボを選ぼうとしているなら、少し立ち止まるべきかもしれません。ターボモデルは足回りもやや硬めにセッティングされており(特にヴェルファイアの場合)、ラグジュアリー一辺倒ではない「硬派な一面」を持っています。このキャラクターの違いを理解していないと、納車後に「もっとふわっとした乗り心地が良かった」と後悔することになります。
高速道路を頻繁に利用するならアリな選択
ターボモデルの燃費が唯一「納得できる範囲」に収まるのが、高速道路での巡航です。時速100km巡航であれば、回転数を低く抑えられる8速ATの恩恵もあり、リッター11〜12km程度は安定して出せます。
長距離の移動が多く、なおかつ「追い越しでのストレスをゼロにしたい」と願うエグゼクティブやアクティブな層にとって、ハイブリッドのCVT(無段変速機)特有のエンジン回転数だけが先行するフィーリングよりも、有段ギアで力強く加速するターボの方が相性は良いはずです。
納期の早さがターボを選ぶ最大の動機か
皮肉な話ですが、多くのユーザーがターボ(あるいはガソリン車)を選ぶ最大の理由は「納期」にありました。発売当初、ハイブリッドモデルは人気が集中しすぎて受注停止や2年待ちという事態に陥りましたが、ターボモデル(ヴェルファイア)や2.5Lガソリン(アルファードZ)は、比較的納期が早い傾向にありました。
「早く乗りたいから」という理由でターボを選んだ場合、その後のガソリン代の洗礼を受けて「やっぱり待ってでもハイブリッドにすればよかった」と後悔するパターンが非常に多いです。納期は一時の問題ですが、燃費は所有している間ずっと続く問題であることを忘れてはいけません。
静粛性の違いがもたらす車内空間の変化
意外かもしれませんが、静粛性の面ではハイブリッドに軍配が上がるシーンと、ターボに軍配が上がるシーンがあります。
低速走行時は当然モーター走行のハイブリッドが静かですが、急加速時や登坂路ではハイブリッドの4気筒エンジンが「唸る」ような音を立てます。対してターボモデルは、低回転からトルクが出るため、エンジンをそれほど回さずとも余裕を持って加速できます。また、エンジンの透過音自体も力強く調整されているため、車好きにとってはターボの作動音の方が心地よく感じる場合もあります。
ロードノイズとのバランス
ただし、ターボモデル(ヴェルファイア)は19インチタイヤを標準装着していることが多いため、路面状況によってはタイヤのノイズが目立つことがあります。燃費だけでなく、耳から入る情報も含めて「高級車としてどちらが好みか」を考える必要があります。
リセールバリューから見るターボの立ち位置
アルファード/ヴェルファイアといえば、驚異的なリセールバリュー(売却価格)が有名です。これまでは「海外輸出に強い2.5Lガソリン車」が最強のリセールを誇ってきましたが、40系ではそのパワーバランスが少し変わる可能性があります。
引用 : TOYOTA HP
ターボモデルは、その希少性と「走りを楽しみたい」という一定層の需要があるため、暴落するリスクは低いでしょう。しかし、世界的な電動化の流れを考えると、将来的な中古車市場ではハイブリッドの方がより高く評価される傾向が強まるかもしれません。燃費の悪さをリセールで相殺しようと考えているなら、少し慎重に市場動向を見る必要があります。
カスタム派にとってのターボの魅力
もしあなたが、車高調を入れたり、インチアップした大きなホイールを履かせたりといったカスタムを前提にしているなら、ターボモデルは最高のベース車両になります。
カスタムによって車両重量が増えたり、走行抵抗が増したりしても、強力なトルクを持つターボエンジンなら「走りのもっさり感」を感じさせません。逆に2.5Lの自然吸気モデルでカスタムをやりすぎると、非力さが目立ってしまうことがあります。燃費が悪くなることを承知で、自分だけの一台を作り上げたいという情熱があるなら、ターボは後悔しない選択肢になります。
自動車税や環境性能割の優遇の差
最後に、税金面についても触れておきましょう。
ハイブリッド車は「エコカー減税」や「環境性能割」で大きな優遇を受けられますが、2.4Lターボは基本的に優遇がほぼありません。
| 項目 | 2.4L ターボ | 2.5L ハイブリッド |
| 自動車税(種別割) | 43,500円/年 | 43,500円/年 |
| 重量税(購入時) | 優遇なし(高額) | 免税または減税 |
| 環境性能割 | 非課税対象外 | 非課税または軽減 |
排気量が2.4Lと2.5Lで区分が同じため、毎年の自動車税こそ変わりませんが、購入時の諸費用で数十万円の差が出ます。「予算ギリギリでターボを買う」と、この初期費用の差と、その後の燃費負担がボディブローのように効いてくることになります。
まとめ
40系アルファード/ヴェルファイアのターボモデルは、まさに「諸刃の剣」です。
燃費の悪さ、ハイオク指定による燃料代の高さ、そして都市部での効率の低さは、経済性を重視するユーザーにとっては「後悔」の決定打になり得ます。特に「ハイブリッドが欲しかったけれど、納期が早いからターボにした」という消極的な選択をした方は、日々の給油のたびにその決断を悔やむことになるでしょう。
一方で、この車には数値化できない「高揚感」があります。アクセルを軽く踏んだ瞬間に、2トン超えの巨体が軽々と加速していく快感。そして、8速ATが奏でるリズム感のあるシフトチェンジ。これらはハイブリッド車では決して味わえない、内燃機関(エンジン車)としての最後の輝きでもあります。
ターボモデルを選んで良い人:
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燃料代よりも「走りのストレスのなさ」を優先したい人
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年間の走行距離が5,000km未満と少なく、燃費の影響が軽微な人
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高速道路を使った長距離移動がメインの人
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車のカスタムが好きで、パワー不足を感じたくない人
ターボモデルを避けるべき人:
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毎月のガソリン代を1円でも安く抑えたい人
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街中(都心部)の渋滞路を走行する機会が圧倒的に多い人
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静かで穏やかな「王道の高級車」を求めている人
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家計の管理を厳しく行っており、ハイオクガソリンへの抵抗がある人
もし、あなたが燃費の実態を知り、「それでもこのパワーが欲しい」と思えるのであれば、ターボモデルはあなたにとって最高のパートナーになるはずです。しかし、少しでも不安が残るなら、2.5L自然吸気モデルや、中古の30系ハイブリッド、あるいは納期待ちを覚悟してでも40系ハイブリッドを検討することを強くおすすめします。
車の購入は、スペック表だけでは見えない「日々の暮らし」とのマッチングです。この記事が、あなたの後悔しない車選びの一助となれば幸いです。
筆者情報
二階堂 仁(にかいどう じん)
モータージャーナリスト兼コラムニストとして活動。慶應義塾大学卒業後、大手自動車メーカーに就職し、車両開発や走行テストの最前線に携わる。その後、自動車の魅力をより多角的に伝えるべく出版業界へ転身。現場仕込みのメカニズム解説と、ユーザー目線に立った鋭い試乗レビューに定評がある。現在は独立し、国内外の新型車を網羅。愛車はレクサスLFA、日産スカイラインGT-R(R34)など。最新の40系アルファード・ヴェルファイアもガソリン、ハイブリッドともに所有・テスト済み。

