モータージャーナリスト兼コラムニストの二階堂仁です。今回も多く寄せられている質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、2025年に登場予定のホンダ新型ヴェゼルe:HEV RSのデザインが、マツダCX-60にそっくりだというネット上の噂が気になっているのではないでしょうか。私も実際に両方の車両を詳細に見て、そして所有する者として、そのように感じる気持ちはよくわかります。

引用 : HONDA HP
この記事を読み終える頃には、ヴェゼルe:HEV RSとCX-60のデザインに関する疑問、そして両車の本質的な違いについて明確に理解できているはずです。
記事のポイント
- ヴェゼルRSとCX-60のデザイン比較とネット上の声
- デザインが似ていると言われる背景にある自動車業界のトレンド
- スペックや走行性能から見る両車の本質的な違い
- ヴェゼルRSの詳細と「ホンダらしさ」の再定義

ヴェゼル e:HEV RSとCX-60のデザイン比較!本当に似ているのか徹底検証
2025年秋に発売が予定されているホンダの新型「ヴェゼル e:HEV RS」。その先行公開されたデザインが、マツダのラージ商品群第一弾「CX-60」と酷似していると、インターネット上やSNSで大きな話題を呼んでいます。果たして本当に両車は似ているのでしょうか。自動車ジャーナリストとして、そして両ブランドの車両を熟知する者として、細部にわたり徹底的に比較・検証していきます。

引用 : HONDA HP
フロントデザインの比較:議論を呼ぶグリルの形状とヘッドライト
最も「似ている」と指摘されるのがフロントフェイスです。特に、両車が採用する大型のフロントグリルが議論の中心となっています。
引用 : マツダ HP
- ホンダ ヴェゼル e:HEV RS
- RS専用デザインとして、これまでボディ同色が特徴的だったグリルを大型のブラックメッシュタイプへと大胆に変更。
- グリルのパターンは均一な形状のものが細かく配置されており、スポーティーかつ精悍な印象を強調しています。
- 薄くシャープなヘッドライトがグリルの両脇に配置され、ワイド&ローなスタンスを際立たせています。
- マツダ CX-60
- マツダのデザインテーマ「魂動(こどう)」を体現する、力強く存在感のあるシグネチャーウィングと、縦基調のブロックメッシュグリルが特徴。
- ヘッドライトはグリルと一体化するようにデザインされ、コの字型に光るデイタイムランニングランプが先進性を演出しています。
比較してみると、確かに「開口部の大きなブラックグリル」という共通点はあります。しかし、細部のデザイン処理は全く異なります。ヴェゼルRSが水平基調でスポーティーな軽快感を表現しているのに対し、CX-60は縦基調のデザインとメッキのシグネチャーウィングで、プレミアムな重厚感と風格を演出しています。グリルパターンの細かさやヘッドライトの造形も、両社のデザイン哲学の違いを明確に示しています。
サイドビューの比較:シルエットとキャラクターラインの哲学
次に、サイドビューを見ていきましょう。SUVのプロポーションを決定づける重要な要素です。
- ホンダ ヴェゼル e:HEV RS
- クーペSUVの流麗なルーフラインを継承しつつ、RS専用の15mmローダウンサスペンションにより、さらに重心が低く引き締まった印象を与えます。
- 水平基調のショルダーラインがボディを貫き、シンプルでありながら伸びやかなシルエットを描いています。
- ドア下部にはダーククロームメッキのガーニッシュが追加され、上質さとスポーティーさを両立しています。
- マツダ CX-60
- FR(後輪駆動)プラットフォームを活かした、ロングノーズ・ショートデッキの古典的かつ美しいプロポーションが最大の特徴。
- フロントフェンダーからリアにかけて描かれる光の移ろいを計算し尽くした、引き算の美学に基づくキャラクターライン。
- キャビンを後方に配置した「キャブバックワード」なデザインで、FRならではの躍動感を表現しています。
サイドビューの比較では、両車の目指す方向性が全く異なることがわかります。ヴェゼルRSがFF(前輪駆動)ベースのコンパクトSUVとして、軽快感とクーペのようなスタイリッシュさを追求しているのに対し、CX-60はプレミアムセグメントのFRベースSUVとして、揺るぎない存在感とエレガンスを追求しています。シルエットの根本的な成り立ちが違うため、「似ている」という印象はほとんど受けません。
リアデザインの比較:テールランプと全体の印象
リアデザインは、その車のアイデンティティを決定づける「後ろ姿」です。
- ホンダ ヴェゼル e:HEV RS
- 現行ヴェゼルの特徴である、横一文字に光るテールランプを踏襲。先進的でクリーンな印象です。
- RS専用のリアバンパーモールディング(ダーククロームメッキ)が装着され、リアビューの引き締め効果と質感向上に貢献しています。
- 全体的にシンプルでモダンな構成の中に、スポーティーなアクセントを加えたデザインです。
- マツダ CX-60
- 左右のテールランプは、ヘッドライトと同様にL字型のシグネチャーを採用し、ワイド感を強調。
- リアバンパーには大口径のマフラーフィニッシャー(ダミーの場合もある)がデザインされ、ハイパワーなFRモデルであることを示唆しています。
- 水平基調のラインで安定感と力強さを表現し、プレミアムSUVらしい堂々とした佇まいです。
リアに関しても、デザインの共通点は見当たりません。ヴェゼルRSが現代的なシンプルさと先進性を表現しているのに対し、CX-60は伝統的な力強さとプレミアム感を両立させています。
ネット・SNS上の声「似てる」派の意見まとめ
では、なぜ「似ている」という声がこれほど多く上がっているのでしょうか。ネット上の意見をまとめると、以下のような点が挙げられます。
- 「大きな黒いグリルの印象が強い」: 細部を見れば違うが、第一印象で大きな黒いグリルがCX-60を連想させる。
- 「最近のホンダらしくないデザイン」: これまでのホンダ車にはなかった顔つきで、他社、特にマツダのデザインに寄ったように見える。
- 「グリルの形状がなんとなく似ている」: グリルの輪郭やヘッドライトとの位置関係が、CX-60の雰囲気に近いと感じる。
- 「デザインのトレンドが同じ方向を向いている」: 威圧感のあるフロントフェイスという最近のトレンドに乗った結果、似てしまったのではないか。
ネット・SNS上の声「似てない」派の意見まとめ
一方で、「全く似ていない」という意見も多数存在します。
- 「プラットフォームからして全然違う」: FFとFRではプロポーションが根本的に異なる。サイドを見れば一目瞭然。
- 「デザインの哲学が真逆」: シンプル&クリーンなホンダと、彫りの深い魂動デザインのマツダでは目指すものが違う。
- 「グリル以外の共通点がない」: フロントグリルという一点だけで「似ている」と判断するのは早計。
- 「実車を見れば違いは明らか」: 写真の角度によっては似て見えるかもしれないが、実物を見れば全くの別物だとわかるはず。
自動車ジャーナリストとしての見解:デザインの類似性と独自性
私の見解としては、「第一印象で想起させる雰囲気は理解できるが、デザインとしては全くの別物」です。
「似ている」と感じる最大の要因は、やはりヴェゼルRSが採用した大型ブラックグリルにあります。従来のボディ同色グリルから一転、力強いフロントフェイスへと舵を切ったことで、同じく強いフロントフェイスを持つCX-60が引き合いに出された、というのが実情でしょう。
しかし、細部を比較すればするほど、両社のデザイン言語の違いは明確です。ホンダは「M・M思想(マン・マキシマム、メカ・ミニマム)」を根底に持つ、機能的で合理的なデザインを得意としてきました。ヴェゼルRSのデザインも、その延長線上でスポーティーさを表現したものです。
対してマツダは「魂動デザイン」のもと、生命感や躍動感をクルマに与えるという、よりアーティスティックで彫刻的なアプローチを取っています。特にCX-60はFRプラットフォームという理想的な骨格を得て、その表現をさらに深化させました。
結論として、両車は「大型グリル」という現代のデザイントレンドを共有していますが、その表現方法はそれぞれの哲学に基づいた、全く異なるアプローチと言えます。
なぜ似ていると言われるのか?デザインのトレンドと両社の哲学
ヴェゼルRSとCX-60のデザインが似ているという議論は、単に2台のクルマだけの問題ではありません。その背景には、現代の自動車デザインにおける大きな潮流と、それぞれのメーカーが持つ揺るぎないデザイン哲学の存在があります。

引用 : HONDA HP
近年のSUVデザインのトレンドとは?
ここ数年、世界のSUVデザインにはいくつかの共通したトレンドが見られます。
- フロントグリルの大型化・主張の強化: ブランドのアイデンティティを明確にし、路上での存在感を高めるため、フロントグリルは年々大型化する傾向にあります。かつては冷却性能という機能的な役割が主でしたが、現在は「クルマの顔」としての象徴的な意味合いが非常に強くなっています。ヴェゼルRSとCX-60が共に大型グリルを採用しているのは、このトレンドを反映した結果と言えるでしょう。
- クーペスタイルの流行: SUVの実用性はそのままに、クーペのような流麗なルーフラインを取り入れる「クーペSUV」が人気を博しています。ヴェゼルはこのジャンルの先駆けとも言える存在であり、そのスタイリッシュさがヒットの要因となりました。このトレンドは、SUVにスポーティーさとエレガンスを求めるユーザー層の拡大を示しています。
- キャラクターラインの簡素化: 複雑なプレスラインを多用するのではなく、シンプルで大きな面構成と、そこに映り込む光と影の変化で美しさを表現する「引き算の美学」が主流になりつつあります。これはマツダの魂動デザインが顕著ですが、現行ヴェゼルのクリーンなサイドビューにも通じる考え方です。
これらのトレンドが交錯する中で、各社が独自性を模索した結果、部分的に似た表現が生まれることは決して珍しいことではありません。
ホンダのデザイン哲学「シビック思想」の変遷
ホンダのデザインを語る上で欠かせないのが、初代シビックから続く「シビック思想」、すなわち「M・M思想(マン・マキシマム、メカ・ミニマム)」です。これは「人間のためのスペースは最大に、機械のためのスペースは最小に」という考え方で、ホンダのクルマづくりの根幹をなすものです。
この思想は、低く広い室内空間や、センタータンクレイアウトによる優れたパッケージングなど、機能面で大きな強みを発揮してきました。デザインにおいても、華美な装飾を排し、機能に基づいた合理的でクリーンなスタイルを生み出す原動力となってきました。近年のホンダ車に見られる「ソリッド・ウイング・フェイス」も、機能性とデザイン性を両立させた表現です。
マツダのデザイン哲学「魂動デザイン」の深化
一方、マツダは2012年の初代CX-5から「魂動(こどう)-SOUL of MOTION」というデザインテーマを一貫して追求しています。これは「生命が持つ力強い動きのエネルギー」を形にすることを目指したもので、チーターが獲物に飛びかかる瞬間のような、凝縮されたエネルギーをクルマで表現しようという試みです。
魂動デザインは世代を重ねるごとに深化しており、近年では不要な要素を削ぎ落とし、ボディサイドに映り込む光の動きで生命感を表現する、より洗練されたステージへと進化しています。CX-60は、FRプラットフォームという理想的な骨格を得て、この魂動デザインを新たな次元へと引き上げたモデルと言えます。
ヴェゼルRSは本当に「ホンダらしくない」のか?
「ヴェゼルRSの顔はホンダらしくない」という声もあります。確かに、これまでのクリーンなイメージからは一線を画す、アグレッシブなデザインです。しかし、私はこれを「ホンダらしさの喪失」ではなく、「ホンダらしさの再定義」だと捉えています。
ホンダはいつの時代も、スポーティーな走りを追求してきたメーカーです。「RS(ロード・サイリング)」や「タイプR」といったブランドは、その象徴です。ヴェゼルという都会的でスマートなSUVに、ホンダが持つスポーティーなDNAを注入したのが、このRSモデルです。その「走り」への意志を最も強く表現する部分がフロントフェイスであり、そのための手段として大型ブラックグリルが選ばれたのです。
手法は新しくとも、その根底にある「走る喜び」という精神は、紛れもなくホンダらしいものと言えるでしょう。
両社のブランドアイデンティティはどこに表れているか
結局のところ、両社のアイデンティティはデザインの表面的な部分ではなく、クルマ全体のプロポーションや骨格にこそ表れています。
- ホンダ・ヴェゼルRS: 優れたパッケージングによる広大な室内空間と使い勝手。その上で成立する、軽快でスタイリッシュなクーペSUVスタイル。
- マツダ・CX-60: FRプラットフォームならではの美しいプロポーションと、意のままの走り。魂動デザインがもたらす、彫刻のような造形美。
これらは、付け焼き刃では決して真似のできない、それぞれのメーカーが長年培ってきたクルマづくりの思想そのものです。
デザインだけじゃない!ヴェゼル e:HEV RSとCX-60の徹底比較
デザインの議論は尽きませんが、クルマの価値はそれだけでは決まりません。ここでは、パワートレインや走行性能、インテリアなど、より本質的な部分で両車を比較し、その違いを明らかにしていきます。

引用 : HONDA HP
比較項目 | ホンダ ヴェゼル e:HEV RS (予想) | マツダ CX-60 (代表グレード) |
---|---|---|
分類 | コンパクトSUV | ラージサイズSUV |
駆動方式 | FF / 4WD | FR / 4WD |
パワートレイン | 1.5L e:HEV (2モーターハイブリッド) | 2.5L ガソリン / 3.3L 直6ディーゼルターボ 等 |
全長 | 約4,330mm | 4,740mm |
全幅 | 約1,790mm | 1,890mm |
全高 | 約1,575mm (15mmローダウン) | 1,685mm |
車両本体価格帯 | 350万円前後? | 299万円~626万円 |
パワートレインの比較:e:HEV vs 直6エンジン
両車の心臓部は、そのキャラクターを象徴するほど対照的です。
- ヴェゼル e:HEV RS: ホンダ独自の2モーターハイブリッドシステム「e:HEV」を搭載。基本的にはモーターで走行し、エンジンは発電に徹するため、発進から非常にスムーズで静粛性が高いのが特徴です。アクセルを踏み込んだ際には、ダイレクトにモーターのトルクが立ち上がり、電気自動車のようなリニアな加速感を味わえます。RSでは、その制御がよりスポーティーにチューニングされることが予想されます。
- CX-60: マツダが新開発した3.3L直列6気筒ディーゼルターボエンジンが大きな話題を呼びました。FRレイアウトと組み合わせることで、滑らかで伸びのある加速と、大排気量ならではの力強いトルクを実現しています。エンジンの鼓動やサウンドを楽しみながら、意のままにクルマを操る「人馬一体」の感覚を追求しており、伝統的な内燃機関の魅力を最大限に引き出しています。
走行性能の比較:軽快感のヴェゼル vs 重厚感のCX-60
走りのテイストも、パワートレインや駆動方式の違いを色濃く反映しています。
- ヴェゼル e:HEV RS: コンパクトなボディとFFベースのプラットフォームによる、軽快なハンドリングが持ち味です。RS専用のローダウンサスペンションとEPS(電動パワーステアリング)の専用チューニングにより、街中の交差点を曲がるだけでもキビキビとした応答性の高さを感じられるでしょう。「アーバンスポーツ」というコンセプトの通り、日常域での運転の楽しさに焦点が当てられています。
- CX-60: FRプラットフォームと縦置きエンジンによる理想的な前後重量配分が、素直で安定したハンドリングを生み出します。ステアリングを切れば、スッとノーズがインを向き、リアがしっかりと路面を捉えながら旋回していく感覚は、FRならではのものです。高速道路での直進安定性や、ワインディングでの一体感は、ヴェゼルとはクラスの異なる重厚で上質な走りを提供します。
インテリア(内装)の比較:コンセプトと質感の違い
インテリアにも、両社のクルマづくりに対する思想が明確に表れています。
- ヴェゼル e:HEV RS: Zグレードをベースに、ブラック基調の内装にレッドステッチを施し、スポーティーな雰囲気を演出。シートには滑りにくいラックススウェードを採用し、コーナリング時の身体のホールド性を高めるなど、走りに貢献する機能性も重視されています。水平基調のインパネは視界が広く、ホンダらしい機能的でモダンな空間です。
- CX-60: 日本の「間」や「雅」といった美意識を取り入れた、上質で落ち着きのある空間が特徴です。グレードによっては、メープルウッドやナッパレザー、織物といった異素材を大胆に組み合わせ、これまでの日本車にはない独自のプレミアム感を表現しています。ドライバー中心に設計されたコクピットは、運転への集中力を高めます。
ボディサイズと価格帯の比較
上の表からもわかる通り、ヴェゼルとCX-60は属するクラスが全く異なります。CX-60はヴェゼルよりも全長で約40cm、全幅で10cmも大きく、これは軽自動車一台分に匹敵する差です。当然、価格帯も大きく異なり、直接的な競合車種とは言えません。
ターゲットユーザー層の違いはどこにあるか
これらの比較から、両車のターゲットユーザー像が浮かび上がってきます。
- ヴェゼル e:HEV RSが刺さる人:
- 主に都市部での利用が多く、キビキビとした走りを楽しみたい。
- スタイリッシュなクーペSUVのデザインが好き。
- 燃費の良さや取り回しのしやすさも重視する。
- スポーティーな内外装で、ノーマルとは違う所有感を満たしたい。
- CX-60が刺さる人:
- 長距離移動が多く、高速道路での安定性や快適性を求める。
- FRならではの質の高い走りと、エンジンのフィーリングを味わいたい。
- 内外装の質感にこだわり、プレミアムな所有体験を求めている。
- 後席やラゲッジスペースの広さなど、ファミリーユースも考慮する。
このように、デザインの第一印象は似ていると感じる人がいても、その中身やターゲットとするユーザー層は全く異なる、住み分けがされた2台であると言えます。
ヴェゼル e:HEV RS 詳細レビュー!RSならではの魅力とは
さて、ここからは今回の主役である「ヴェゼル e:HEV RS」について、先行公開された情報を基に、その魅力をさらに深く掘り下げていきましょう。私自身、フィットRSも所有していますが、それとの比較も交えながら、ホンダがこのヴェゼルRSに込めた想いを紐解いていきます。
RS専用エクステリアの解説
ヴェゼルRSは、通常モデルのZグレードをベースとしながら、数々の専用装備によって特別な一台に仕立てられています。
- フロントグリル&バンパー: 前述の通り、最も大きな特徴は専用のブラックメッシュグリルです。これは純正アクセサリーとして用意されているグリルとも異なる、RS専用設計品。バンパー下部のロアグリルも水平基調のデザインに変更され、ワイド感を強調しています。
- ダーククロームメッキ加飾: フロントバンパーモールディング、ドアロアガーニッシュ、リアバンパーモールディングには、光沢を抑えたダーククロームメッキが採用されています。これにより、通常のシルバーメッキとは一味違う、落ち着きとスポーティーさを両立した上質な雰囲気を醸し出しています。
- 専用アルミホイール: デザインはZグレードと共通ですが、カラーが「ベルリナブラック+ダーク切削クリア」という、トーンを落とした専用色になります。足元を引き締めることで、RSのスポーティーなキャラクターを完成させています。
フィットRSとの比較で見えるヴェゼルRSの個性
同じ「RS」を名乗るフィットRSと比較すると、ヴェゼルRSのキャラクターがより鮮明になります。フィットRSは、専用のテールゲートスポイラーやエキパイフィニッシャーなど、より分かりやすくアグレッシブなパーツが装着されていました。
それに対し、ヴェゼルRSは加飾パーツの変更が中心で、元のクリーンなデザインを活かしつつ、パーツの色味や質感でスポーティーさを表現する、より大人びたアプローチを取っています。これは、ヴェゼルというクルマが持つ「都会的」「上質」というイメージを崩さずに、スポーティーな価値を付加するための、熟考されたチューニングと言えるでしょう。
RS専用インテリアのこだわり
内装もRSならではの特別な仕立てです。
- レッドステッチ: ステアリングやシフトブーツ、シートなどに施されたレッドステッチが、ブラック基調のインテリアに映え、ドライバーの心を高ぶらせます。
- 専用コンビシート: 最大の注目はシートです。プライムスムース(合皮)、ファブリックに加え、ラックススウェードを組み合わせたコンビシートを採用。このラックススウェードは非常に滑りにくい素材で、ワインディングなどを走行する際に身体がズレるのを防ぎ、安定したドライビングポジションを維持するのに大きく貢献します。
- ピアノブラックパネル: 通常のZグレードではシルバー加飾だったシフト周りのパネルが、ピアノブラックに変更されています。これにより、より引き締まった統一感のあるコクピット空間を生み出しています。
面白いのは、フィットRSのシートと比較すると、滑りにくいスウェード素材が使われている箇所が逆転している点です。フィットRSでは座面や背中の中央部にウルトラスウェードが使われていましたが、ヴェゼルRSでは写真を見る限り、身体の側面を支える部分にラックススウェードが使われているようです。どちらがより効果的かは実際に座ってみないと分かりませんが、車種のキャラクターに合わせて最適な配置を試行錯誤しているホンダの姿勢が伺えます。
走りの進化点:ローダウンと専用チューニング
RSの真骨頂は、やはりその走りにあります。
- 専用ローダウンサスペンション: 全高を15mm下げることで、重心を低減。これにより、コーナリング時のロール(車体の傾き)が抑えられ、より安定した走行が可能になります。単に硬いだけでなく、街乗りでのしなやかさも両立した味付けが期待されます。
- EPS(電動パワーステアリング)の専用チューニング: ハンドル操作に対するクルマの応答性を高めるチューニングが施されます。これにより、ドライバーが思った通りにクルマが曲がる、リニアでダイレクトな操舵感を実現します。
これらのチューニングによって、ヴェゼルe:HEV RSは、単に見た目がスポーティーなだけでなく、「走り」においても明確にノーマルグレードとの違いを体感できるモデルに仕上がっているはずです。
まとめ
今回は、大きな話題となっているホンダ新型ヴェゼルe:HEV RSとマツダCX-60のデザインの類似性について、ネット上の声を交えながら多角的に徹底比較・検証しました。
結論として、両車は「大型ブラックグリル」という現代のデザイントレンドを共有している点で第一印象が似て見えるものの、そのデザイン哲学、プラットフォーム、走行性能、ターゲットユーザーに至るまで、全く異なる方向性を向いたクルマであると言えます。
ヴェゼルe:HEV RSは、定評のあるヴェゼルの優れたパッケージングとe:HEVの気持ち良い走りをベースに、ホンダのスポーティーなDNAを注入した「都会を俊敏に駆け抜けるアーバンスポーツ」です。
一方、CX-60は、マツダがプレミアムブランドへと飛躍するために作り上げた、FRプラットフォームと直6エンジンを持つ「本格志向のプレミアム・ドライビングSUV」です。
「ヴェゼルRSはホンダらしくない」という意見も、ホンダが新たな時代のニーズに応え、ブランドの持つスポーティーな側面を再定義しようとする挑戦の表れと捉えることができます。
どちらのクルマが優れているかという議論ではなく、それぞれが持つ独自の魅力と価値を正しく理解することが、クルマ選びにおいて最も重要です。このレビューが、あなたの疑問を解消し、より深いクルマ理解の一助となれば幸いです。