モータージャーナリスト兼コラムニストの二階堂仁です。 今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、道ですれ違うロールスロイスの荘厳な佇まいに、「一体どんな人が乗っているのだろう?」と純粋な好奇心や憧れを抱いていることでしょう。 後部座席にゆったりと座る富豪、という漠然としたイメージはあるかもしれません。 私も実際に複数のロールスロイスを所有し、その特別な世界に身を置く一人として、皆様が抱く興味や疑問は痛いほどよくわかります。

引用 : ロールスロイスHP
この記事を読み終える頃には、ロールスロイスオーナーの実像、その年収や職業、そして彼らがなぜこの車を選ぶのか、その深層心理に至るまで、具体的な疑問が解決しているはずです。
記事のポイント
- ロールスロイスオーナーの職業と共通する人物像
- 所有に必要とされる驚きの年収と資産背景
- ショーファードリブンだけではない多様なオーナー層
- ロールスロイスを所有するということの本当の意味

ロールスロイスに乗っている人の5つの特徴
街中でロールスロイスを見かけると、誰もが「一体どんな人が乗っているのだろう」と興味を惹かれます。 その圧倒的な存在感は、単なる高級車という言葉だけでは片付けられません。

引用 : ロールスロイスHP
運転手付きで後部座席に座る人物を想像する方が多いかもしれませんが、現代のオーナー像はもっと多様性に富んでいます。 ここでは、私がこれまでに見てきた、そして実際に交流してきたオーナーたちの特徴を5つのタイプに分類して詳しく解説します。
特徴①:圧倒的な経済力を持つ事業の成功者
最も代表的なオーナー像は、やはり自らの事業を成功させ、圧倒的な経済力を手にした人々です。 これは単に年収が高いというレベルではありません。 会社の創業者、M&Aによって巨万の富を得た起業家、複数の事業を展開する実業家など、その背景は様々です。
彼らにとってロールスロイスは、成功の証であり、自らの努力と功績を形にしたトロフィーのような存在です。 何十年にもわたる厳しいビジネスの世界を戦い抜き、社会に大きな価値を提供してきた自負が、この車を選ばせます。
重要なのは、彼らが「見せるため」だけに購入しているわけではないという点です。 もちろん、ステータスシンボルとしての側面は否定しません。 しかし、それ以上に、誰にも文句を言わせない絶対的な品質、静粛性、そして乗り心地がもたらす「究極のプライベート空間」に価値を見出しているのです。 移動中の車内が、喧騒から遮断された執務室であり、唯一無二の思索の場となります。 分刻みのスケジュールをこなす彼らにとって、この静寂と快適性は、次のビジネスへの活力を生み出すための必要不可欠な投資なのです。
特徴②:社会的地位と信頼を重視する経営者・役員
企業の代表や役員クラスの方々も、ロールスロイスの主要な顧客層です。 特に、歴史ある企業のトップや、金融、不動産といった業界で重責を担う人々にとって、ロールスロイスは単なる移動手段以上の意味を持ちます。
それは「信頼の象徴」です。 重要な取引先との会食、海外からのVIPの送迎など、ビジネスの決定的な場面において、ロールスロイスで出迎えることは、相手に対する最大限の敬意と、自社の揺るぎない安定性を示す無言のメッセージとなります。
ドアを開け、相手を後部座席にエスコートする。 その一連の所作だけで、言葉を尽くす以上の説得力が生まれることがあります。 彼らが選ぶのは、ファントムやゴーストといった、威厳と品格を兼ね備えたモデルが多い傾向にあります。 法人名義で所有し、会社の「顔」として活用するケースも少なくありません。 これは、会社のブランドイメージを向上させ、取引を円滑に進めるための高度な経営戦略の一環と言えるでしょう。 彼らは、ロールスロイスが持つ歴史と伝統、そしてブランドが長年かけて築き上げてきた信頼性を、自らのビジネスに活用しているのです。
特徴③:自己表現と個性を追求するアーティスト・芸能人
ロールスロイスのもう一つの側面は、「自己表現の究極のキャンバス」であるということです。 ミュージシャン、俳優、デザイナー、スポーツ選手といった、自らの才能と個性で道を切り拓いてきた人々にとって、ロールス-ロイスは最高の表現ツールとなり得ます。
彼らが特に魅了されるのが、内外装を無限の組み合わせからオーダーメイドできる「ビスポーク」というプログラムです。 ボディカラーを自身のブランドカラーにしたり、内装のウッドパネルに特別な紋様を刻んだり、シートの革にイニシャルを刺繍したりと、その可能性は無限大です。
こうしたオーナーたちは、クーペモデルの「レイス」やコンバーチブルの「ドーン」、あるいはより先鋭的な「ブラックバッジ」シリーズを好む傾向があります。 彼らは、伝統的なロールスロイスのイメージに、自らのクリエイティビティと反骨精神を注入し、全く新しい価値観を生み出します。 SNSで発信される彼らのライフスタイルと共に、その個性的なロールスロイスは、新しい世代の憧れの対象となります。 彼らにとってロールスロイスは、富の象徴であると同時に、自らの世界観を体現したアート作品なのです。
特徴④:代々受け継がれる資産を持つ資産家
新興の成功者とは対照的に、先祖代々受け継がれてきた土地や資産を持つ、いわゆる「旧家」や資産家一族も、ロールスロイスの伝統的な顧客です。 彼らにとってロールスロイスを所有することは、特別なことではなく、ごく自然なライフスタイルの一部です。
祖父の代から、あるいはそれ以前から、常にガレージにはロールスロイスがあった。 そんな環境で育った彼らは、車にステータスを求めるというよりも、「本物」を知る者の選択としてロールスロイスを選びます。 彼らは流行に左右されません。 むしろ、ブランドが守り続ける伝統や哲学、職人技に深い敬意を払います。
その選択は、一族の歴史と品格を守り、次世代へと受け継いでいくという責任感の表れでもあります。 彼らの邸宅のガレージに佇むヴィンテージのシルバーシャドウと最新のファントムが並ぶ光景は、まさに一族の歴史そのものを物語っています。 こうしたオーナーは、メディアに登場することは稀ですが、ロールスロイスというブランドの揺るぎない地位を静かに、しかし確実に支えているのです。
特徴⑤:車を移動手段と考えない哲学を持つ人
最後に挙げるのは、特定の職業や経歴では括れない、独自の哲学を持つ人々です。 彼らは、車を単にA地点からB地点へ移動するための機械だとは考えていません。 ロールスロイスが持つエンジニアリングの極致、最高級の素材、そして熟練の職人が魂を込めて作り上げた工芸品としての側面に、純粋な価値を見出しています。
彼らは自動車愛好家であり、歴史家であり、そして美意識の高いコレクターでもあります。 V12エンジンの滑らかな回転フィール、魔法の絨毯と称される乗り心地、ドアが閉まる際の重厚な音、室内に漂うウッドとレザーの香り。 その全てを五感で味わい、堪能することに喜びを感じます。
こうしたオーナーは、必ずしもショーファードリブン(運転手付き)を好みません。 自らステアリングを握り、夜の首都高を静かにクルージングすることもあります。 彼らにとって、ロールスロイスとの対話の時間は、何物にも代えがたい至福のひとときなのです。 経済的な成功はもちろん前提としてありますが、それ以上に、モノの背景にあるストーリーや本質的な価値を深く理解できる知性と感性を備えた人々だと言えるでしょう。
ロールスロイスを所有するための年収と資産のリアル
ロールスロイスのオーナー像について理解が深まったところで、次に誰もが気になるであろう「お金」の話、つまり所有に必要な年収や資産について、より具体的に掘り下げていきます。 「年収いくらあれば買えるのか?」という疑問は、非常によく聞かれる質問です。
しかし、この問いに対する答えは、単純な数字だけでは語れません。 年収以上に重要な要素、そして車両価格以外にかかる莫大な費用について、ジャーナリストとしての視点からリアルな実情を解説します。

引用 :Lesury Motors Journal イメージ
最低でも年収5,000万円が一つの目安
まず、具体的な年収のラインについてですが、あくまで一つの目安として「継続的に年収5,000万円以上」というのが、現実的なスタートラインと言えるでしょう。 これは、車両本体価格が最も安いモデルでも4,000万円近くすることから導き出される数字です。
仮に、4,000万円の「ゴースト」を5年ローンで購入すると仮定します。 頭金を1,000万円入れたとしても、残債は3,000万円。 金利を考慮すると、月々の支払いは50万円を超えてきます。 これに加えて、後述する高額な維持費が年間数百万円単位で発生します。 これらの支払いを、生活レベルを落とすことなく、かつ事業や投資への資金を確保しながら余裕を持って行うには、やはり年収5,000万円という数字が一つのボーダーラインになると考えられます。
ただし、これはあくまで最低ラインです。 実際には、年収1億円以上のオーナーが大多数を占めるのが実情です。 特に、ビスポークで自分好みの一台を仕立てるとなると、オプション費用だけで数千万円が加算されることも珍しくなく、そうなると年収5,000万円では到底追いつきません。
年収よりも「総資産」が重要視される世界
ロールスロイスのオーナーの世界では、実は年収というフローの収入よりも、不動産や有価証券などを含めた「総資産」というストックがより重要視されます。 なぜなら、ロールスロイスの購入は、一般的な消費とは異なり、資産ポートフォリオの一部を組み替えるという側面があるからです。
例えば、総資産が数十億円ある方にとって、5,000万円の車を購入することは、資産全体の数パーセントを動かすに過ぎません。 その年の事業収益が多少変動したとしても、資産全体から見れば微々たる影響です。 このレベルの資産家は、そもそもローンを組むという発想がなく、キャッシュでの一括購入が基本となります。
彼らは、経済的な安定性が精神的な余裕を生み、その余裕がロールスロイスという車を心から楽しむための土台になることを知っています。 したがって、「年収いくら」という議論以上に、「どれだけの資産背景があるか」が、ロールスロイスのオーナーたる資格を測る上で、より本質的な指標となるのです。 目安としては、最低でも数億円、多くのオーナーは10億円以上の純資産を保有していると考えて間違いないでしょう。
車両価格だけじゃない!驚愕の維持費を徹底解説
ロールスロイスを所有する上で、本体価格と同じくらい、あるいはそれ以上に覚悟しなければならないのが「維持費」です。 この維持費こそが、多くの人をふるいにかける真のハードルと言えます。 一般的な高級車とは比較にならない、その内訳を見ていきましょう。
費目 | 年間費用の目安 | 備考 |
---|---|---|
自動車税 | 約110,000円 | 6,749ccのV12エンジンが標準のため。 |
自動車重量税 | 約25,000円〜 | 車検時に2年分(約50,000円〜)を納付。車種により変動。 |
任意保険料 | 500,000円〜2,000,000円 | 車両保険金額が非常に高額なため。年齢や等級、補償内容で大きく変動。 |
燃料代 | 500,000円〜 | 燃費は約4〜6km/L。年間1万km走行、ハイオク200円/Lで計算。 |
駐車場代 | 360,000円〜 | 都心部の一等地で屋根付き・セキュリティ完備が必須。月3万円〜。 |
正規ディーラーでの点検・整備費用 | 1,000,000円〜 | オイル交換だけでも数十万円。タイヤ交換は100万円を超えることも。 |
その他(洗車・コーティングなど) | 200,000円〜 | 特殊な塗装を守るため、専門業者による手洗い洗車や定期的なメンテナンスが必須。 |
合計 | 約2,695,000円〜 | これは最低限の概算。実際にはこれ以上かかることがほとんど。 |
表を見ていただければわかる通り、年間維持費は最低でも300万円近く、実際には500万円以上かかるケースも珍しくありません。 特に、正規ディーラーでのメンテナンス費用は高額です。 例えば、フロントガラスに飛び石で小さなヒビが入っただけでも、交換費用は数百万円に達することがあります。 これは、ガラス自体にセンサー類が組み込まれているなど、非常に高度で特殊な部品が使われているためです。
この莫大な維持費を毎年払い続けることができる経済力こそが、ロールスロイスオーナーの真の証明と言えるでしょう。
法人所有という選択肢とそのメリット・デメリット
個人で所有するにはあまりにも負担が大きいことから、多くのオーナー、特に経営者は「法人名義」でロールスロイスを所有しています。 これには、経費計上による節税という大きなメリットがあります。
役員車として使用する場合、車両の減価償却費、保険料、燃料代、駐車場代、メンテナンス費用といった維持費のほとんどを経費として計上することが可能です。 これにより、法人税の負担を軽減することができます。
しかし、デメリットも存在します。 まず、税務調査の対象となりやすいという点です。 事業での使用実態が伴わない、単なる社長の私的な利用だと判断された場合、経費として認められず、追徴課税を課されるリスクがあります。 また、会社の資産である以上、会社の業績が悪化した場合、売却を迫られる可能性もゼロではありません。
法人所有は確かに賢い選択肢の一つですが、それはあくまで事業が順調で、適切な会計処理が行われていることが大前提となります。
若くしてオーナーになる「新富裕層」の存在
近年、特に注目されているのが、20代や30代といった若さでロールスロイスのオーナーになる「新富裕層」の台頭です。 IT関連の起業家、人気YouTuber、投資家など、新しい時代に価値を生み出し、短期間で莫大な富を築いた人々です。
彼らは、伝統的な富裕層とは異なる価値観を持っています。 SNSでの発信力が高く、自らの成功とライフスタイルを積極的に公開します。 彼らが選ぶのは、カリナンのブラックバッジや、鮮やかなカラーリングを施したドーンなど、よりパーソナルでファッション性の高いモデルです。
彼らの登場は、ロールスロイスのブランドイメージをより若々しく、ダイナミックなものへと変化させています。 「成功すれば、若くてもロールスロイスに乗れる」という夢を、多くの若者に与えているのです。 これは、ブランド側にとっても、顧客層を拡大する上で非常に重要な動きと捉えられています。
ローンは組める?購入方法の現実
「ロールスロイスはローンで買えるのか?」という質問もよく受けます。 結論から言うと、購入自体は可能です。 正規ディーラーでも、残価設定ローンをはじめとする様々なファイナンスプログラムが用意されています。
しかし、現実的にはローンで購入する人は少数派です。 まず、ローンを組むためには、他の車種とは比較にならないほど厳しい与信審査をクリアする必要があります。 安定した高い収入はもちろんのこと、勤務先、資産背景まで詳細に審査されます。
そして何より、前述した通り、ロールスロイスオーナー層の多くは、キャッシュでの購入を前提としています。 金利の支払いを無駄だと考える合理性、そしてローンという負債を抱えることを好まない精神性が、彼らの共通認識として存在します。 ローンが組めるかどうか、という次元ではなく、そもそもローンを組む必要のない人々が買う車、それがロールスロイスなのです。 例外的に、手元のキャッシュフローを重視する経営者が、あえてリースやローンを選択するケースは存在します。
ショーファードリブンだけじゃない!ロールスロイスの多様な魅力
多くの人が「ロールスロイス=運転手付きの車」というイメージ、いわゆる「ショーファードリブンカー」としての側面を強く認識していることでしょう。 確かに、フラッグシップモデルである「ファントム」は、その成り立ちから後席の快適性を最優先に設計されており、そのイメージを象徴する存在です。 しかし、現代のロールスロイスのラインナップは驚くほど多様化しており、「自ら運転して楽しむ」オーナーが急増しています。 ここでは、その知られざるオーナードリブンの魅力と、それを支えるモデルたちについて、私自身の経験も交えながら解説します。
オーナードリブンの楽しさを追求したモデルたち
ロールスロイスがオーナードライバー(自ら運転する人)を強く意識し始めたのは、2000年代以降、BMWグループ傘下に入ってからのことです。 その流れを決定づけたのが、2ドアクーペの「レイス」と、そのオープンモデルである「ドーン」の存在です。
レイス (Wraith)
「レイス」は、ロールスロイス史上最もパワフルで、ドライバーズカーとしての性格を前面に押し出したモデルです。 その流麗なファストバックのシルエットは、従来のロールスロイスが持つ重厚なイメージを覆すものでした。 ひとたびアクセルを踏み込めば、6.6リッターV12ツインターボエンジンが、まるでジェット機のような滑らかさで、しかし猛烈な加速を開始します。 それでいて、室内は驚くほど静か。 この静と動のコントラストこそが、レイスを運転する最大の魅力です。 週末の早朝、空いたワインディングロードをレイスで駆け抜ける時間は、まさに大人のための贅沢と言えるでしょう。
ドーン (Dawn)
「ドーン」は、レイスをベースにした4シーターのコンバーチブルです。 ロールスロイスは、この車を「最も社交的なロールスロイス」と表現しました。 静粛性に徹底的にこだわったソフトトップを開ければ、世界は一変します。 風の音、街の喧騒、そしてV12エンジンのかすかな鼓動を感じながら走る開放感は、他の何にも代えがたいものです。 友人を乗せて海岸線をクルージングしたり、パートナーと星空を眺めに行ったりと、ドーンは人生の特別な瞬間をドラマチックに演出してくれます。 後部座席も大人が快適に座れるスペースが確保されており、決して2人乗りのおもちゃではありません。
これらのモデルの登場により、「ロールスロイスを自ら運転する」という新しい価値観が生まれ、これまでとは異なる層の顧客、特に若い世代や女性オーナーを惹きつけることに成功したのです。
カリナンが変えたロールスロイスのイメージ
ロールスロイスの歴史において、最も革命的な一台を挙げるとすれば、それは間違いなくブランド初のSUV「カリナン」でしょう。 当初は、その伝統から逸脱したスタイルに賛否両論ありました。 しかし、蓋を開けてみれば世界的な大ヒットとなり、今やロールスロイスの販売台数を支える屋台骨となっています。
カリナンがもたらした最大の功績は、「ロールスロイスの日常使い」を可能にしたことです。 圧倒的な車高と四輪駆動システムにより、天候や路面状況を一切気にすることなく、どこへでも行くことができます。 都心部のタワーパーキングにも対応できるサイズ感(場所によりますが)、広大なラゲッジスペースは、家族での旅行やゴルフ、スキーといったアクティビティにも完璧に対応します。
私もカリナンを所有していますが、その万能性には日々驚かされます。 フォーマルなパーティー会場へ乗り付けることもできれば、翌日には子供を乗せてキャンプに出かけることもできる。 まさに「究極のオールラウンダー」です。 このカリナンの登場により、ロールスロイスは特別な日に乗るハレの車から、最高のクオリティで毎日を豊かにするパートナーへと、その立ち位置を大きく変化させたのです。
静粛性だけではない!V12エンジンの圧倒的なパワーと走り
ロールスロイスの代名詞といえば、「魔法の絨毯」と形容される滑らかな乗り心地と、完璧な静粛性です。 しかし、そのボンネットの下には、とてつもないパワーを秘めたV12エンジンが搭載されていることを忘れてはなりません。

引用 :Lesury Motors Journal イメージ
現在のモデルに搭載されている6.75リッターV12ツインターボエンジンは、500馬力を優に超えるパワーと、1,000Nmに迫る強大なトルクを、アイドリングに近い極めて低い回転数から発生させます。 これは何を意味するかというと、「アクセルをほんの少し踏むだけで、2.5トンを超える巨体が、何事もなかったかのように、しかし力強く加速していく」という、他では決して味わえない唯一無二の走行フィールを生み出します。
この感覚は「有り余るパワー」のなせる技であり、ドライバーに絶対的な安心感と余裕を与えてくれます。 高速道路での合流や追い越しなど、どんな場面でもストレスを感じることは一切ありません。 必要な時に必要なだけのパワーを、常に静かに、そして滑らかに提供してくれる。 この洗練されたパワートレインこそが、オーナードライバーを虜にする、隠れた魅力なのです。
「ビスポーク」で創る世界に一台だけの芸術品
ロールスロイスを語る上で欠かせないのが、究極のオーダーメイドシステム「ビスポーク」です。 これは、顧客のあらゆる要望に応え、世界に一台だけの車を創り上げるプログラムです。 その自由度は、我々の想像を遥かに超えています。
例えば、
- ボディカラー: 愛犬の毛の色、お気に入りのドレスの色など、見本さえあればどんな色でも再現可能。
- コーチライン: 熟練の職人が、リスの毛で作られた特別な筆を使い、手描きで一本の線を引く。
- インテリア: 自宅の庭の桜の木を伐採し、それを内装のウッドパネルに使用する。
- スターライトヘッドライナー: 夜空を模した天井の光ファイバーを、自分の誕生日の星座の配置にしてもらう。
- ピクニックハンパー: トランクに、シャンパンクーラーやクリスタルグラスを備えた完璧なピクニックセットを格納する。
これらはほんの一例に過ぎません。 ビスポークを通じて、オーナーは自らの夢や物語、美意識を車に投影し、単なる工業製品を芸術品の域へと昇華させます。 このプロセス自体が、ロールスロイスを所有する大きな喜びの一つであり、オーナードリブンの満足感をさらに高めてくれるのです。 自分のこだわりが詰まった唯一無二のロールスロイスを自ら運転する。 これ以上の贅沢は、なかなかないでしょう。
私が所有して感じたロールスロイスの真価
ジャーナリストとして、そして一人のオーナーとして、私が感じるロールスロイスの真価は、「精神的な平穏をもたらしてくれること」に尽きます。 ステアリングを握っていると、不思議と心が落ち着き、穏やかな気持ちになります。 完璧な静粛性が外部のノイズを遮断し、滑らかな乗り心地が身体的なストレスを皆無にしてくれるからです。

引用 : ロールスロイスHP
この車に乗っていると、些細なことでイライラしたり、他車と競い合おうという気持ちが不思議と湧いてきません。 常に紳士的な運転を心がけるようになり、結果として、それは安全運転にも繋がります。
また、ロールスロイスから降りてくる人物は、周囲から自然と「立派な人物」として見られます。 その視線は、自分自身の立ち居振る舞いを律する良い意味でのプレッシャーとなります。 つまり、ロールスロイスは、オーナー自身を成長させてくれる車でもあるのです。
ショーファードリブンで移動する快適性も素晴らしいものですが、自らステアリングを握り、車と対話し、その哲学を肌で感じることで得られる満足感と精神的な豊かさは、オーナードライバーだけが享受できる特権だと、私は確信しています。
まとめ
今回は、ロールスロイスのオーナー像について、その特徴から必要な年収、そして多様化する魅力に至るまで、深く掘り下げてきました。
この記事を通じてお伝えしたかったのは、ロールスロイスのオーナーは、単にお金を持っているだけの「富裕層」という言葉では一括りにできない、多様な背景と深い哲学を持った人々であるということです。
自らの力で成功を掴んだ証として。 ビジネスを円滑に進めるための最高のツールとして。 そして、自己表現の究極のキャンバスとして。
彼らにとってロールスロイスは、人生における最高のパートナーであり、自らの生き様を映し出す鏡のような存在なのです。 また、ショーファードリブンのイメージが強い一方で、「カリナン」や「レイス」といったモデルの登場により、自らステアリングを握り、その唯一無二の走りを楽しむオーナードライバーが急増しているという事実も、現代のロールスロイスを語る上で欠かせない重要なポイントです。
この記事が、皆様のロールスロイスに対する理解を深め、その奥深い世界の扉を開く一助となれば、これに勝る喜びはありません。 街でロールスロイスを見かけた時、そのステアリングの奥にいるオーナーの人生に、少しだけ思いを馳せてみるのも面白いかもしれません。