モータージャーナリスト兼コラムニストの二階堂仁です。 今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、ベントレーとメルセデスマイバッハ、どちらがより格式高いブランドなのか、特に上流階級の視点からどう見られるのかが気になっていると思います。 私も実際に両ブランドの車を所有し、様々なシーンで使い分ける中で、その視線の違いを経験したので、気になる気持ちはよくわかります。

引用 : ベントレーHP
この記事を読み終える頃には、両ブランドの真の価値と、あなたにとって最適な一台を選ぶための明確な基準が手に入っているはずです。
記事のポイント
- ブランドの格付けを決定づける歴史的背景
- 富裕層から見た両ブランドのリアルな評価
- モデルごとのキャラクターと選び方の違い
- 知名度とステータスの関係性についての考察

結論:格式で選ぶならベントレー、ただしシーンで使い分けるのが真の答え
早速、多くの方が最も知りたいであろう結論からお話ししましょう。 純粋な「ブランドの格式」や「歴史的権威性」という一点で評価するならば、私はベントレーに軍配を上げます。 しかし、これはあくまで一面的な見方であり、両者の価値は単純な上下関係で測れるものではありません。

引用 : ベントレーHP
本当の答えは、オーナーがどのような価値観を持ち、どのようなシーンで車を使うかによって変わってきます。 このセクションでは、なぜベントレーが格上と見なされる傾向にあるのか、そして両ブランドが持つ本質的な違いについて、深く掘り下げていきましょう。
なぜベントレーが「格上」と見なされるのか?その歴史的背景
ベントレーが持つ圧倒的な格式の根源は、その100年以上にわたる揺るぎない歴史と、ブランドが貫いてきた哲学にあります。
創業からの血統とル・マンの栄光
1919年、ウォルター・オーウェン・ベントレーによって設立されたこのブランドは、当初から「速く、そしてクラス最高の車」を造ることを目指していました。 その哲学は、伝説的な耐久レースであるル・マン24時間レースでの5度の優勝(1920年代に4連覇、そして2003年にも優勝)によって証明されています。 「ベントレー・ボーイズ」と呼ばれた裕福なレーシングドライバーたちが、自らのベントレーでレースに挑み、勝利を重ねた物語は、ブランドに「パフォーマンス」と「気品」という唯一無二の血統を与えました。
このモータースポーツのDNAは、現代のベントレーにも脈々と受け継がれており、ただ豪華なだけでなく、オーナー自らがハンドルを握り、その圧倒的なパフォーマンスを楽しむ「ドライバーズカー」としての側面を強く持っています。
英国王室が認めた品質「ロイヤルワラント」
ベントレーの権威を象徴するのが、英国王室御用達の証である「ロイヤルワラント」です。 特に、故エリザベス2世女王陛下の公務専用車として、特別に製造された「ベントレー・ステートリムジン」の存在は決定的です。 これは単に車両を献上したという話ではありません。 国家元首の命を預かる車として、安全性、信頼性、そして威厳のすべてにおいて最高水準であることが求められ、その要求に見事に応えたのです。 王室の歴史と共にあるという事実は、他のいかなるブランドも容易には手にできない、絶対的な権威性の証明と言えるでしょう。
伝統を受け継ぐクラフトマンシップ
ベントレーの車づくりは、今なお英国・クルー工場の職人たちの手作業に大きく依存しています。 選び抜かれたウッドパネル、手縫いのレザーシートなど、その製造工程はもはや「工芸品」の域に達しています。 特に、ビスポーク(オーダーメイド)部門である「マリナー」では、顧客のあらゆる要望に応え、世界に一台だけのベントレーを創り上げることが可能です。 この徹底したクラフトマンシップこそが、ベントレーに大量生産品とは一線を画す「本物」の価値を与えているのです。
メルセデスマイバッハの立ち位置とは?復活した伝説のブランド
一方のメルセデスマイバッハは、ベントレーとは異なる歴史と背景を持つブランドです。 その立ち位置を理解するには、一度消滅し、そして復活を遂げたという複雑な経緯を知る必要があります。

引用 : メルセデスベンツHP
幻の超高級車「マイバッハ」
元々のマイバッハは、20世紀初頭にヴィルヘルム・マイバッハとその息子カールによって設立され、飛行船ツェッペリン号のエンジンを製造するなど、高い技術力を誇るメーカーでした。 その後、自動車製造に乗り出し、第二次世界大戦前にはロールスロイスと並び称されるほどの超高級車を世に送り出しましたが、戦争の影響でその歴史は一度途絶えてしまいます。 「幻のブランド」として、その名は伝説となりました。
ダイムラーによる復活と再定義
その伝説を現代に蘇らせたのが、ダイムラー(現在のメルセデス・ベンツ・グループ)です。 2002年、ロールスロイスやベントレーに対抗する独立した超高級ブランドとして「マイバッハ」を復活させました。 しかし、販売は振るわず、2012年にブランドは再び休止状態となります。 そして2014年、メルセデス・ベンツのサブブランド「メルセデス・マイバッハ」として、Sクラスをベースにしたモデルとして再出発を果たします。 この戦略の転換が、現在のマイバッハのキャラクターを決定づけています。
Sクラスベースであることの功罪
現行のマイバッハは、世界最高のセダンと評されるメルセデス・ベンツSクラスのプラットフォームをベースに、ホイールベースを延長し、内外装をさらに豪華に仕立てたモデルです。 これは、Sクラスが持つ世界最高水準の安全性、快適性、先進技術を享受できるという大きなメリットをもたらしました。 一方で、独立したブランドではなく、あくまで「メルセデス・ベンツの最上級グレード」という見方をされる要因にもなっています。 これが、ペルソナの方が懸念されている「普通のメルセデスに見えるのでは?」というジレンマに繋がるのです。
富裕層・上流階級からのリアルな視線
では、実際に富裕層や上流階級の人々は、この二つのブランドをどのように見ているのでしょうか。 私の経験や、オーナー仲間との会話から感じることとして、両者は明確に評価の軸が異なります。
- ベントレーへの視線: 「伝統」「格式」「ストーリー」を重んじる層からの評価が絶大です。自分で運転を楽しみ、モータースポーツの歴史に敬意を払うような、いわゆる”オールドマネー”と呼ばれる旧来の富裕層に好まれる傾向があります。彼らにとってベントレーは、単なる移動手段ではなく、自身のライフスタイルや価値観を表現するアイコンなのです。
- マイバッハへの視線: 「先進性」「合理性」「快適性」を重視する層に支持されています。特に、ビジネスの最前線で活躍するエグゼクティブや、IT業界などで成功を収めた”ニューマネー”と呼ばれる新興の富裕層から選ばれることが多い印象です。後席の圧倒的な快適性と静粛性は、移動するオフィスやプライベートジェットの地上版として、極めて合理的な選択肢と見なされています。
「普通のメルセデス」に見える?マイバッハのジレンマを解消
ペルソナの方が懸念されている「一般の方から見て、ただのSクラスだと思われるのではないか」という点。 これは、ある意味では事実です。 車に詳しくない人であれば、その違いを見分けるのは難しいかもしれません。
しかし、”わかる人”が見れば、その差は歴然です。
- エクステリア: 縦基調の専用グリル、Cピラーに輝くマイバッハのエンブレム、専用デザインのホイール、そしてSクラスのロングボディよりもさらに長い、伸びやかなサイドビュー。これらは、紛れもなくマイバッハであることの証です。
- インテリア: ドアを開けた瞬間に広がる後席空間の広さは、Sクラスとは別次元です。最高級のナッパレザーで覆われたシート、広大なレッグスペース、リクライニング可能なエグゼクティブシートなど、その空間はまさに”ファーストクラス”です。
重要なのは、マイバッハが持つステータスは「見せびらかす」ためのものではなく、「知る人ぞ知る」という奥ゆかしさにあるということです。 違いがわかる人との間でのみ共有される特別な価値観。 それこそが、マイバッハを選ぶオーナーが求めるものなのかもしれません。
ベントレーの知名度問題:本当に知られていないのか?
一方で、ベントレーも「庶民の知名度は低い」という側面があります。 確かに、メルセデス・ベンツのように誰もが知るブランドではないかもしれません。 しかし、これもまた、ブランドの価値を測る上での一面に過ぎません。

引用 : ベントレーHP
富裕層や車好きの世界において、ベントレーの存在を知らない人はいません。 その名は、成功と洗練の象徴として確固たる地位を築いています。 むしろ、大衆的な知名度が低いことが、かえってエクスクルーシブな(排他的な)価値を高めているとさえ言えます。 ベントレーを選ぶということは、大衆の評価を気にするのではなく、自らの審美眼で「本物」を選び抜いたという自信の表れでもあるのです。
オーナーだから語れる両ブランドの決定的な違い
私が両ブランドを所有して感じる最も大きな違いは、「誰のための車か」という思想です。
- ベントレー: どこまでも「ドライバー」のための車です。後席ももちろん快適ですが、ステアリングを握り、アクセルを踏み込んだ瞬間に湧き上がるパワーと、意のままに巨体を操る感覚は、何物にも代えがたい喜びを与えてくれます。英国貴族の邸宅のリビングのような、温かみのあるウッドとレザーに囲まれて長距離を駆け抜ける。これぞグランドツアラーの真髄です。
- マイバッハ: 徹底して「パッセンジャー(後席乗員)」のための車です。運転もスムーズで快適ですが、この車の本当の価値は後席にあります。外界の喧騒を完全にシャットアウトする静粛性、飛行機のファーストクラスのようにリラックスできるシート、そして最新のインフォテインメントシステム。移動時間を、最高に贅沢なプライベートな時間へと変えてくれます。
どちらが良い悪いではなく、あなたのライフスタイルにおいて、車に何を求めるか。 その答えが、どちらのブランドを選ぶべきかを示してくれるはずです。
主要モデル徹底比較:あなたに合うのはどちらか?
ブランド全体の格式や歴史を理解したところで、次に具体的なモデルを比較し、どちらがあなたのライフスタイルに寄り添う一台なのかを検証していきましょう。 ここでは、両ブランドの主戦場である「セダン」と「SUV」の代表モデルを直接対決させてみます。

引用 : ベントレーHP
【セダン対決】フライングスパー vs Sクラス マイバッハ
ショーファードリブン(運転手が運転する車)としても、ドライバーズカーとしても最高峰に位置する2台。 しかし、そのキャラクターは似て非なるものです。
項目 | ベントレー フライングスパー (V8) | メルセデス・マイバッハ S 580 4MATIC |
---|---|---|
コンセプト | 究極のパフォーマンス・セダン | 究極のショーファー・セダン |
車両本体価格 | 約2,850万円~ | 約3,060万円~ |
全長 | 5,325 mm | 5,470 mm |
全幅 | 1,990 mm | 1,920 mm |
全高 | 1,490 mm | 1,510 mm |
エンジン | 4.0L V8ツインターボ | 4.0L V8ツインターボ + ISG |
最高出力 | 550 PS | 503 PS |
最大トルク | 770 Nm | 700 Nm |
0-100km/h加速 | 4.1秒 | 4.8秒 |
デザインと空間の思想
フライングスパーは、筋肉質で流麗なエクステリアが特徴です。 長いボンネットと短いフロントオーバーハングは、後輪駆動ベースのパワフルな走りを予感させます。 インテリアは、ウッドとレザーがふんだんに使われた伝統的かつ豪華な空間。 ドライバーズシートに座ると、航空機のコックピットのような計器類に囲まれ、これから始まるドライビングへの期待感が高まります。
一方、マイバッハSクラスは、メルセデス・ベンツSクラスのロングボディをさらに20cm近く延長した、圧倒的な存在感を放ちます。 その延長分はすべて後席スペースに充てられており、リアドアの大きさ自体が、この車が後席乗員のためにあることを物語っています。 インテリアはモダンラグジュアリーの極致。 大型ディスプレイが並ぶ先進的なダッシュボードと、アンビエントライトが織りなす空間は、まるで高級ホテルのスイートルームのようです。
乗り味の決定的な違い
実際に運転してみると、その差はさらに明確になります。 フライングスパーは、巨体を感じさせない俊敏なハンドリングと、アクセルを踏み込めば即座に猛然と加速するパワフルさが魅力です。 サスペンションはしなやかでありながら、路面のインフォメーションを適度に伝え、運転する楽しさを常に感じさせてくれます。
対してマイバッハSクラスは、まるで魔法の絨毯に乗っているかのような滑らかな乗り心地です。 ロードノイズやエンジン音は徹底的に遮断され、キャビンは驚くほどの静寂に包まれます。 運転そのものに刺激はありませんが、どこまでもストレスフリーで、長距離を移動した際の疲労度は圧倒的に少ないでしょう。
【SUV対決】ベンテイガ vs GLS マイバッハ
セダンと同様に、SUVの世界でも両者は最高峰のラグジュアリーを提供しますが、そのアプローチは異なります。
項目 | ベントレー ベンテイガ (V8) | メルセデス・マイバッハ GLS 600 4MATIC |
---|---|---|
コンセプト | 究極のパフォーマンス・SUV | 究極のラグジュアリー・SUV |
車両本体価格 | 約2,570万円~ | 約3,180万円~ |
全長 | 5,125 mm | 5,210 mm |
全幅 | 2,010 mm | 2,030 mm |
全高 | 1,755 mm | 1,840 mm |
エンジン | 4.0L V8ツインターボ | 4.0L V8ツインターボ + ISG |
最高出力 | 550 PS | 557 PS |
最大トルク | 770 Nm | 730 Nm |
0-100km/h加速 | 4.5秒 | 4.9秒 |
SUVとしての本質
ベンテイガは、ベントレーが初めて手掛けたSUVであり、「世界最速のSUV」としてデビューしました。 その成り立ちからもわかるように、オンロードでの圧倒的なパフォーマンスを最優先に設計されています。 それでいて、悪路走破性も極めて高く、どんな道でもベントレーらしい快適な走りを提供してくれる万能選手です。
GLSマイバッハは、メルセデス・ベンツの最上級SUVであるGLSをベースに、後席を2座の独立シートに変更し、広大な空間と最高の快適性を与えたモデルです。 3列シートのGLSからあえて1列減らすことで、後席乗員にセダンタイプのマイバッハと同等、あるいはそれ以上の贅沢な空間を提供することに特化しています。 乗降時には車高が下がり、電動のランニングボード(ステップ)が現れるなど、おもてなしの精神に満ち溢れています。
どちらのライフスタイルに合うか
アクティブなライフスタイルを送る方には、ベンテイガが最適でしょう。 ゴルフやスキー、家族での長距離旅行など、自らハンドルを握って出かけるあらゆるシーンで、最高のパートナーとなってくれます。 SUVでありながら、スポーツカー顔負けの走りを楽しめるのはベンテイガならではの魅力です。
一方で、ビジネスでの送迎や、後席でゆったりと移動時間を過ごしたい方には、GLSマイバッハがこの上ない選択肢となります。 セダンよりも高いアイポイントからの眺めは開放感があり、長距離移動のストレスを軽減してくれます。 特に法人での使用においては、その存在感と快適性が大きなアドバンテージとなるでしょう。
ベントレーにしか無い魅力:コンチネンタルGTとマリナー
ベントレーを語る上で欠かせないのが、究極のパーソナルクーペ「コンチネンタルGT」の存在です。 フライングスパーとプラットフォームを共有しながら、よりパーソナルでスポーティなキャラクターを持つこのモデルは、「グランドツアラー」というジャンルを象徴する一台です。 この美しいクーペの存在が、ベントレーが単なる高級セダンメーカーではない、ドライバーズブランドであることの何よりの証明です。
そして、前述したビスポーク部門「マリナー」の存在も、ベントレーの大きな魅力です。 内外装の色から素材、ステッチの一本一本に至るまで、文字通り無限の組み合わせから自分だけの一台を創り上げる喜びは、他のブランドでは味わえません。
マイバッハにしか無い魅力:静粛性と先進性
マイバッハの真骨頂は、メルセデス・ベンツが持つ最新技術を惜しみなく投入できる点にあります。 例えば、アクティブロードノイズキャンセレーション機能は、タイヤから伝わる不快なノイズを逆位相の音で打ち消し、驚異的な静粛性を実現します。 また、後席乗員がジェスチャーで様々な操作を行えるMBUXインテリア・アシスタントなど、先進的な快適装備もマイバッハならでは。 こうしたテクノロジーによる快適性の追求は、伝統的な手法を重んじるベントレーとは異なる、マイバッハ独自の強みと言えます。
購入前に知っておきたい!オーナーの世界とブランド背景
車を選ぶことは、そのブランドが持つ文化やコミュニティの一員になることでもあります。 最後に、両ブランドを取り巻く環境や、オーナーたちがどのような世界観を持っているのかについて触れておきましょう。 これは、あなたの価値観とブランドのそれが一致しているかを見極める上で、非常に重要な要素となります。

引用 : ベントレーHP
ベントレーオーナーの世界:どのような人々が選ぶのか
ベントレーのオーナーには、自身の成功を静かに、しかし確固たる自信をもって表現する人々が多いように感じます。 派手さを求めるのではなく、本質的な価値を理解し、それを楽しめるだけの教養と経験を積んだ人々です。
コミュニティとライフスタイル
世界中にはベントレーのオーナーズクラブが存在し、クラシックモデルから最新モデルまで、オーナー同士の交流が盛んです。 モータースポーツイベントへの招待や、ブランドの歴史を巡るツアーなど、ベントレーならではの特別な体験が提供されることもあります。 彼らのライフスタイルは、ゴルフやヨット、美術鑑賞といった、時間をかけて本物を楽しむ趣味と親和性が高いのが特徴です。 ベントレーは、そうした豊かな人生の良き相棒となる存在なのです。
マイバッハオーナーの世界:ビジネスシーンでの役割
マイバッハは、その成り立ちからビジネスシーンとの結びつきが非常に強い車です。 企業の経営者や役員、各界のVIPが移動車として選ぶことが多く、その背景にはメルセデス・ベンツブランドが長年培ってきた絶大な信頼感があります。
ステータスと信頼性の両立
重要な商談やフォーマルなパーティへ向かう際、マイバッハで乗り付けることは、相手に最高の敬意を払うことの表明にもなります。 それは、自社の成功と安定性を無言のうちに示す、強力なビジネスツールとなり得るのです。 また、「メルセデス・ベンツ」という看板は、万が一の際のメンテナンス体制やサービスの質においても安心感があり、多忙なエグゼクティブにとって合理的な選択と言えます。
フォルクスワーゲングループにおけるベントレー
ここで少し、両ブランドの経営母体についても触れておきましょう。 現在、ベントレーはドイツのフォルクスワーゲン(VW)グループに属しています。 このことは、ベントレーにとって大きなメリットをもたらしました。 VWグループが持つ最新のプラットフォームや電子制御技術、そして莫大な開発資金を活用できるようになったことで、ベントレーは伝統を守りながらも、品質と信頼性を飛躍的に向上させることができたのです。 ポルシェやアウディといったグループ内の他ブランドと技術を共有しつつも、ベントレー独自の世界観を保ち続けています。
メルセデス・ベンツにおけるマイバッハ
一方、マイバッハはメルセデス・ベンツのサブブランドです。 これは、メルセデスのラインナップの中で「究極のラグジュアリー」を担う役割を与えられていることを意味します。 究極のパフォーマンスを追求する「AMG」とは対極に位置し、互いにブランドイメージを高め合う関係にあります。 Sクラスの頂点に君臨し、メルセデス・ベンツというブランド全体の価値を引き上げる重要な存在なのです。
なぜ庶民の知名度が低いのか?両ブランドの広告戦略
最後に、ペルソナの方が気にされていた「知名度」の問題について、両ブランドの広告戦略の視点から考察します。 彼らがテレビCMのようなマス広告をほとんど打たないのは、明確な理由があります。
彼らのターゲット顧客は、不特定多数の一般大衆ではありません。 顧客となりうる層は極めて限定されており、その層に直接アプローチする方が遥かに効率的だからです。 具体的には、高級誌への出稿、プライベートな顧客イベントの開催、富裕層向けコンシェルジュサービスとの提携など、ターゲットを絞ったマーケティングを展開しています。 結果として、一般の知名度は低くなりますが、ターゲット層には深く、そして確実にその魅力が伝わるのです。 このエクスクルーシブな戦略こそが、ブランドの希少価値を維持し、高めている要因の一つと言えるでしょう。
まとめ
ベントレーとメルセデスマイバッハ。 どちらが格式が上かという問いに対して、歴史的背景や王室との繋がりを鑑みれば「ベントレー」に軍配が上がる傾向にある、というのが私の見解です。 しかし、レビューを通して繰り返しお伝えしてきたように、それはあくまで一つの側面に過ぎません。
- ベントレーは、モータースポーツの血統を受け継ぐ**「究極のドライバーズカー」**であり、伝統とクラフトマンシップに価値を見出す方のための車です。自らハンドルを握り、車との対話を愉しむ人生の豊かさを提供してくれます。
- メルセデスマイバッハは、メルセデス・ベンツの先進技術を結集した**「究極のショーファーカー」**であり、移動時間を最高に快適で有意義なものに変えたい方のための車です。合理性と先進性を重んじ、ビジネスシーンでのステータスを求める方に最適です。
「庶民からの知名度が低い」という懸念は、どちらのブランドにも当てはまります。 しかしそれは、大衆に迎合しないという矜持の表れであり、むしろオーナーにとっては誇るべき点です。 「わかる人にはわかる」という価値こそが、これらのブランドを選ぶ醍醐味なのです。
最終的にどちらを選ぶべきか。 その答えは、あなたの心の中にしかありません。 あなたが車と共にどのような時間を過ごし、どのような人生を歩みたいのか。 このレビューが、その答えを見つけるための一助となれば、これに勝る喜びはありません。 ぜひ、ご自身の価値観に最も響く一台を選んでください。