モータージャーナリスト兼コラムニストの二階堂仁です。今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、「アルファードを残価設定ローン(残クレ)で購入したいけど、審査に通るか不安…」「ディーラーで審査に落ちたら恥ずかしいな…」といったことが気になっていると思います。

私も実際に様々な車のローン審査を経験してきましたので、その気になる気持ちはよくわかります。特にアルファードのような高級車となれば、なおさらですよね。
ご安心ください。この記事を読み終える頃には、残クレの審査に関するあなたの疑問や不安が解決しているはずです。
記事のポイント
- 残クレ審査で最重要視される年収と与信の関係性
- 意外と見られている外見や態度などの定性的な側面
- 審査に通りやすくなるための具体的な準備と対策
- 万が一審査に落ちてしまった場合の次の選択肢

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残クレが通らない人の特徴【年収・与信編】
まず、残クレの審査において最も重要なのが、申込者の「支払い能力」です。これを客観的に判断するために、年収や信用情報(与信)が厳しくチェックされます。ここがクリアできなければ、審査通過は難しいと言わざるを得ません。では、具体的にどのような点が審査に影響するのでしょうか。
引用 : TOYOTA HP (https://toyota.jp/alphard/)
残クレの審査で年収はどれくらい重要?
年収は、返済能力を測る上で最も基本的な指標です。当然ながら、年収が高いほど審査には有利に働きます。しかし、「年収〇〇万円以上ないと絶対に通らない」という明確な基準が存在するわけではありません。
年収と返済負担率の関係
重要なのは年収の額そのものよりも**「返済負担率(返済比率)」**です。これは、年収に占めるすべての借入の年間返済額の割合を示す数値で、以下の計算式で算出されます。
返済負担率(%) = 年間総返済額 ÷ 額面年収 × 100
一般的に、この返済負担率が**30%〜35%**以内に収まっていることが、審査通過の一つの目安とされています。
例えば、年収400万円の人の場合、年間返済額の上限目安は120万円〜140万円となります。ただし、この「年間総返済額」には、今回申し込む残クレだけでなく、住宅ローン、カードローン、スマートフォンの分割払いなど、他のすべての借入が含まれる点に注意が必要です。
額面年収 | 返済負担率30%の場合の年間返済上限額 | 返済負担率35%の場合の年間返済上限額 |
---|---|---|
300万円 | 90万円 | 105万円 |
400万円 | 120万円 | 140万円 |
500万円 | 150万円 | 175万円 |
600万円 | 180万円 | 210万円 |
700万円 | 210万円 | 245万円 |
アルファードは最も安いグレードでも500万円を超える高級車です。仮に500万円を5年(60回)の残クレで組む場合、月々の支払額や最終回の支払額も高額になります。ご自身の年収と他の借入状況を照らし合わせ、返済負担率が上限を超えていないか、事前にシミュレーションしておくことが重要です。
残クレ審査における勤続年数の重要性
年収と同じくらい重視されるのが「勤続年数」です。これは、収入の安定性を証明するための重要な指標となります。
引用 : TOYOTA HP (https://toyota.jp/alphard/)
勤続年数が長いほど、「今後も安定した収入が継続的に得られる」と判断され、審査上有利になります。一般的には、最低でも1年以上、できれば3年以上の勤続年数があることが望ましいとされています。
逆に、勤続年数が1年未満、特に転職して数ヶ月しか経っていない場合は、「収入が安定していない」と見なされ、審査が厳しくなる傾向があります。これは、新しい職場で本当に定着できるのか、試用期間中ではないか、といった懸念を持たれるためです。もし転職直後に申し込みを検討している場合は、頭金を多めに用意する、保証人を立てるなどの対策が必要になるかもしれません。
残クレ審査で最も重要な与信(信用情報)とは
年収や勤続年数が申込者の「現在の支払い能力」を示すものだとすれば、信用情報(与信)は「過去の金融取引における信頼性」を示すものです。ローン会社は、この信用情報を最も重要視すると言っても過言ではありません。
信用情報機関の役割
私たちがクレジットカードやローンを利用すると、その申込内容や契約内容、支払い状況などが「信用情報機関」に登録されます。日本には主に以下の3つの信用情報機関があり、金融機関は相互に情報を共有しています。
- CIC(株式会社シー・アイ・シー): 主にクレジット会社、信販会社、消費者金融などが加盟。
- JICC(株式会社日本信用情報機構): 主に消費者金融などが加盟。
- KSC(全国銀行個人信用情報センター): 主に銀行や信用金庫などが加盟。
ディーラーが提携している信販会社は、審査の際にこれらの信用情報機関に照会をかけ、申込者の過去の取引履歴をすべて確認します。
いわゆる「ブラックリスト」の正体
よく「ブラックリストに載る」という言葉を耳にしますが、実際にそのようなリストが存在するわけではありません。信用情報に「異動」という情報が登録されることを指す俗称です。
「異動」と登録されるのは、主に以下のようなケースです。
- 61日以上または3ヶ月以上の支払い遅延(延滞)
- 保証会社が代わりに返済した(代位弁済)
- 債務整理(自己破産、個人再生、任意整理など)を行った
この「異動」情報が登録されている期間(契約期間中および契約終了後5年以内)は、新たなローンやクレジットカードの審査に通ることは極めて困難になります。
過去の延滞や遅延が残クレ審査に与える影響
「異動」情報のような重大な金融事故だけでなく、数日程度の軽微な支払い遅延も、審査に影響を与える可能性があります。
特に注意したいのが、スマートフォンの本体代金の分割払いです。これは割賦契約にあたるため、支払いが遅れると信用情報に記録が残ります。「携帯料金の支払い遅れくらい大丈夫だろう」と安易に考えていると、思わぬところで審査に落ちる原因になりかねません。
その他、クレジットカードの引き落とし日に残高不足で支払いが遅れた、奨学金の返済をうっかり忘れていた、といったケースも同様です。たとえ数日の遅れであっても、それが何度も繰り返されていると「支払管理ができない人」という印象を与え、審査で不利に働くことがあります。
複数の借入が残クレ審査を厳しくする理由
現在、他に複数の借入がある場合も審査は厳しくなります。これは、先述した「返済負担率」が上昇するためです。
特に、カードローンやクレジットカードのリボ払いは注意が必要です。これらは手軽に利用できる反面、金利が高く、なかなか元金が減らない特性があります。借入件数が多かったり、リボ払いの残高が多かったりすると、「資金繰りに困っているのではないか」「計画的な返済ができない人ではないか」と判断され、貸し倒れリスクが高いと見なされてしまいます。
自動車ローンは、貸金業法の「総量規制(年収の3分の1までしか借入できない制度)」の対象外ではありますが、信販会社は申込者の総借入額を必ずチェックし、総合的に返済能力を判断します。残クレを申し込む前には、できる限り他の借入を整理・完済しておくことが賢明です。
自分の信用情報を確認する方法
「自分の信用情報がどうなっているか不安…」という方は、各信用情報機関に情報開示請求を行うことで、自分自身の情報を確認することができます。
手続きは、インターネットや郵送で簡単に行うことができ、手数料は1,000円程度です。開示請求を行うことで、現在の借入状況、過去の支払い履歴、延滞の有無などを正確に把握できます。もし身に覚えのない情報や誤った情報が登録されていた場合は、訂正を申し出ることも可能です。
審査に申し込む前に一度確認しておけば、安心して商談に臨むことができるでしょう。
申込時の虚偽申告が残クレ審査でバレる理由
審査に通りたい一心で、年収を多めに申告したり、他の借入を隠して申し込んだりするのは絶対にやめましょう。虚偽の申告は、ほぼ100%見抜かれます。
信販会社は、提出された源泉徴収票や確定申告書で年収を確認しますし、必要であれば勤務先に在籍確認の電話をすることもあります。また、借入状況については信用情報機関に照会すればすぐに分かります。
虚偽の申告が発覚した場合、審査に落ちるだけでなく、その信販会社のブラックリスト(社内ブラック)に登録され、将来的にその会社や系列会社のサービスが利用できなくなる可能性があります。悪質なケースでは、詐欺罪に問われるリスクすらあります。正直に、正確な情報を申告することが、信頼を得るための第一歩です。
残クレが通らない人の意外な特徴【外見・態度・その他】
年収や与信といった定量的なデータだけでなく、ディーラーでの商談における申込者の振る舞いといった定性的な側面も、間接的に審査に影響を与えることがあります。信販会社が最終的な判断を下しますが、その入口となるディーラー担当者の心証も決して無視できません。
引用 : TOYOTA HP (https://toyota.jp/alphard/)
ディーラー担当者が気にする申込者の外見や服装
「人は見た目が9割」とまでは言いませんが、第一印象が重要であることは否定できません。ディーラーの担当者も人間です。清潔感のない服装や、社会人としてふさわしくない身なりで来店すれば、「この人から高額な車を買って、本当に支払い続けていけるのだろうか?」と無意識に不安を感じてしまうかもしれません。
もちろん、ハイブランドで身を固める必要は全くありません。大切なのは清潔感です。シワのないシャツ、手入れされた靴、整えられた髪型など、基本的な身だしなみを心がけるだけで、相手に与える印象は大きく変わります。「この人なら信頼できる」という安心感を担当者に持ってもらうことが、スムーズな商談への第一歩となります。
商談時の態度が残クレ審査に与える間接的な影響
商談中の態度も非常に重要です。例えば、以下のような態度はマイナスの印象を与えかねません。
- 横柄な態度や高圧的な物言い
- 無理な値引きの強要
- 担当者の説明を全く聞かない
- 質問に対して曖昧な返答を繰り返す
ディーラーは車を売るだけでなく、その後のメンテナンスやアフターフォローを通じて、顧客と長い付き合いをしていきます。そのため、「この人と長く良好な関係を築けるか」という視点でも顧客を見ています。
担当者との信頼関係を築くことができれば、審査が少し厳しい状況でも、「なんとか通してあげたい」と親身になって動いてくれる可能性があります。逆に、信頼関係を損なうような態度を取れば、事務的に処理されてしまうかもしれません。誠実な態度で商談に臨みましょう。
短期間に複数のローン審査に申し込む「申し込みブラック」とは
審査に不安があるからといって、短期間のうちに複数のディーラーや信販会社にローンの申し込みをするのは避けるべきです。これは**「申し込みブラック」**と呼ばれる状態に陥る原因となります。
ローンを申し込んだという事実は、信用情報機関に6ヶ月間記録されます。短期間に複数の申込履歴があると、信販会社は「相当お金に困っているのではないか」「他社の審査に落ち続けているのではないか」と警戒し、貸し倒れリスクを懸念して審査を否決することがあります。
車のローン審査は、本命の1社か、多くても2社に絞って申し込むのが鉄則です。
家族構成や居住形態も残クレ審査の判断材料になる
家族構成や居住形態も、申込者の「安定性」を測るための判断材料として参考にされます。
- 居住形態: 持ち家(特に住宅ローン完済済み)は、賃貸よりも評価が高くなる傾向があります。資産を持っているという点で、支払い能力が高いと見なされます。
- 居住年数: 同じ住所に長く住んでいるほど、生活基盤が安定していると判断されます。
- 家族構成: 独身者よりも、配偶者や子供がいる方が、社会的責任から定職に就き、安定した生活を送る傾向があると見なされることがあります。
これらはあくまで参考情報であり、単体で審査の可否が決まるわけではありませんが、総合的な判断の一要素として考慮されることを覚えておきましょう。
自営業者や個人事業主が残クレ審査で注意すべき点
自営業者や個人事業主の方は、会社員に比べて収入が不安定と見なされやすく、審査が厳しくなる傾向があります。審査に通るためには、以下の点をクリアする必要があります。
- 安定した事業収入の証明: 過去2〜3期分の確定申告書の提出を求められます。安定して利益が出ていることを証明する必要があります。
- 事業の継続性: 開業してから最低でも2〜3年は経過していることが望ましいです。事業の実態を示すために、事業所の賃貸契約書やホームページなどの提出を求められることもあります。
収入に波がある場合は、収入が良かった年の確定申告書を提出する、頭金を多く用意するなどの工夫が必要です。
未成年者や学生が残クレを組む際のハードル
未成年者や学生の方は、原則として安定した収入がないため、単独で残クレを組むことは非常に困難です。申し込む場合は、親権者を連帯保証人に立てることが必須条件となります。審査の対象は、申込者本人ではなく、連帯保証人である親権者の年収や信用情報になります。
残クレ審査と保証人の関係性
申込者本人の属性(年収、勤続年数など)だけでは審査基準に満たない場合でも、安定した収入があり、信用情報に問題のない連帯保証人を立てることで、審査に通る可能性が高まります。
ただし、連帯保証人は申込者本人と全く同じ返済義務を負うことになります。万が一、申込者が返済できなくなった場合は、連帯保証人が全額を返済しなければなりません。保証人を依頼する場合は、その重い責任を十分に説明し、理解を得た上でお願いするようにしましょう。
アルファードの残クレ審査に通るための対策
では、憧れのアルファードの残クレ審査に無事通過するためには、どのような準備をしておけば良いのでしょうか。具体的な対策をいくつかご紹介します。
自分の経済状況と信用情報を正確に把握する
まずは敵を知り、己を知ることから始めましょう。現在の年収、勤続年数、そして他の借入の状況を正確に書き出してみてください。その上で、信用情報機関に情報開示請求を行い、ご自身の信用情報に問題がないかを確認します。もし延滞などの記録があれば、その解消に努めることが先決です。
頭金を多めに用意して借入額を減らす
頭金を多く入れることで、ローンの元金(借入額)を減らすことができます。借入額が減れば、月々の返済額も少なくなり、返済負担率が下がるため、審査に通りやすくなります。また、頭金を準備できるということは、計画的に貯蓄ができる証明にもなり、信販会社に良い印象を与えます。
他の借入を整理・完済しておく
もし使っていないクレジットカードがあれば解約し、カードローンやリボ払いの残債があれば、できる限り完済しておきましょう。借入件数と総額を減らすことで、返済能力に余裕があることをアピールできます。
収入に見合ったグレードやオプションを選択する
アルファードには様々なグレードやオプションがあり、価格帯も幅広いです。最上級グレードにフルオプションを付けると、車両価格は1,000万円近くになることもあります。ご自身の年収や返済能力に見合わない高額なプランで申し込むと、審査に通らない可能性が高まります。現実的な支払いプランを立て、無理のない範囲でグレードやオプションを選択することが重要です。
安定した収入のある保証人を立てる
ご自身の属性に少しでも不安がある場合は、両親や配偶者など、安定した収入のある方に連帯保証人になってもらえないか相談してみるのも一つの有効な手段です。
ディーラーの担当者と良好な関係を築く
前述の通り、ディーラーの担当者とのコミュニケーションは非常に重要です。購入したいという熱意を伝えつつ、誠実な態度で商談に臨みましょう。担当者に「この人なら信頼できる、応援したい」と思ってもらえれば、審査に関して有益なアドバイスをくれたり、信販会社にプッシュしてくれたりする可能性もゼロではありません。
まとめ
今回は、「残クレが通らない人の特徴」というテーマで、年収や与信といった客観的なデータから、商談時の態度といった意外な側面まで、様々な視点で解説してきました。
残クレの審査は、決して一つの要素だけで判断されるわけではありません。年収、勤続年数、信用情報、借入状況、そして申込者本人の人柄などを総合的に見て、「この人に融資しても、きちんと最後まで返済してくれるか」を判断しています。
この記事で挙げた特徴にいくつか当てはまってしまったからといって、すぐに諦める必要はありません。ご自身の状況を正確に把握し、できる対策を一つずつ実行していくことが、憧れのアルファードを手に入れるための最も確実な道筋です。
残クレは、月々の支払い負担を抑えつつ新車に乗れる非常に便利な仕組みですが、あくまでも借金であることに変わりはありません。計画的な資金計画と返済プランを立てた上で、賢く利用しましょう。
まずは一度、ディーラーに足を運んで、正直にご自身の状況を相談してみてはいかがでしょうか。プロの視点から、あなたに最適なプランを提案してくれるはずです。