モータージャーナリスト兼コンサルタントの二階堂仁です。今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、中古のポルシェ ケイマンに憧れつつも、「外車、特にポルシェは壊れやすい」という噂が気になっているのではないでしょうか。

引用 : ポルシェHP (https://www.porsche.com/japan/jp/models/718/718-models/718-cayman/)
私も実際にケイマンを複数台所有し、様々なトラブルも経験したので、その不安な気持ちはよくわかります。せっかく手に入れたのに、修理費ばかりかさんで楽しめない、なんて事態は避けたいですよね。
ご安心ください。この記事を読み終える頃には、中古ケイマンの故障に関する噂の真相と、後悔しないための個体の選び方、そしてリアルな維持費についての疑問がすべて解決しているはずです。
記事のポイント
- 中古ケイマンが壊れやすいと言われる本当の理由
- 世代別の具体的な故障事例とリアルな修理費用
- 故障リスクを最小限に抑える中古車の見極め方
- 購入後に必要な年間維持費の完全シミュレーション

新しい車に乗り換える際、今乗っている愛車をどれだけ高く売却できるかは、次の車の選択肢にも大きく影響します。
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ポルシェ ケイマンの中古が「壊れやすい」と言われる噂の真相
まず、多くの方が気にされている「中古のポルシェ ケイマンは本当に壊れやすいのか?」という疑問からお答えしていきましょう。私のコンサルタントとしての経験と、オーナーとしての実感からお話しします。

引用 : ポルシェHP (https://www.porsche.com/japan/jp/models/718/718-models/718-cayman/)
結論:一概に「壊れやすい」は間違い。ただし国産車と同じ感覚はNG
結論から言えば、「中古のポルシェ ケイマン=壊れやすい」という認識は、半分正解で半分間違いです。
正確には**「国産車と同じようなメンテナンスフリーな感覚で乗れる車ではないが、ウィークポイントを理解し、適切なメンテナンスを行えば、過度に怖がる必要はない」**というのが私の見解です。
ポルシェは、F1をはじめとするモータースポーツの極限状況で技術を磨き上げてきたメーカーです。その技術がフィードバックされた市販車は、非常に高い精度で設計・製造されており、基本的には頑丈です。しかし、そのパフォーマンスを最大限に引き出すため、各部品は精密かつ繊細に作られています。そのため、定期的なメンテナンスや消耗品の交換を怠ると、途端に機嫌を損ねてしまうことがあるのです。
国産車のように「車検の時だけ点検すればOK」という感覚でいると、思わぬトラブルに見舞われ、結果的に「やっぱりポルシェは壊れやすい」という結論に至ってしまうケースが多いのです。
なぜ「壊れやすい」という噂が広まったのか?3つの理由
では、なぜこれほどまでに「ケイマンは壊れやすい」というイメージが定着してしまったのでしょうか。それには、主に3つの理由が考えられます。
理由1:スーパーカー並みの性能と精密な構造
ケイマンは、コンパクトなボディに強力なエンジンをミッドシップに搭載した、純粋なスポーツカーです。その走行性能は、一世代前のスーパーカーに匹敵するほどのポテンシャルを秘めています。
高いパフォーマンスを発揮するため、エンジンやトランスミッション、サスペンションといった主要なコンポーネントは、非常に精密な部品で構成されています。これらの部品は、国産の大衆車に比べて高い負荷がかかることを前提に設計されている反面、性能を維持するためには、よりデリケートな管理が求められます。この「高性能ゆえの繊細さ」が、故障リスクの一因となっていることは否定できません。
理由2:メンテナンス不足の個体の多さ
中古車市場には、残念ながら適切なメンテナンスを受けてこなかった個体も少なからず存在します。
ポルシェの正規ディーラーでの点検・整備には、相応の費用がかかります。そのため、特に年式が古くなり、複数のオーナーの手に渡ってきた車両の中には、コストを抑えるために専門外の工場で整備されたり、必要な部品交換が先延ばしにされたりしているケースが見受けられます。
このようなメンテナンス不足の車両が市場に出回り、購入した次のオーナーの元でトラブルが頻発することで、「ポルシェは壊れやすい」という悪評に繋がってしまうのです。
理由3:一部モデルに存在する特定の弱点
これはケイマンに限った話ではありませんが、特定の年式のモデルには、設計上の弱点、いわゆる「持病」のようなものが存在します。
特に有名なのが、初代987型前期モデルに搭載されたM96/M97エンジンの一部で懸念された**「インターミディエイトシャフト(IMS)問題」**です。この問題が大きく取り上げられたことで、「ポルシェのエンジンは壊れる」というイメージが強く植え付けられてしまいました。
しかし、これも全ての個体に当てはまるわけではなく、対策部品が組まれていたり、後期モデルでは設計が変更されていたりします。重要なのは、こうしたモデルごとの弱点を正しく理解し、対策されている個体を選ぶことです。
国産車との比較:故障率と修理費用の考え方
国産スポーツカー、例えばトヨタの86やGRスープラ、日産のフェアレディZなどと比較した場合、ケイマンの故障リスクはどうなのでしょうか。
部品の信頼性や耐久性という点では、やはり国産車に軍配が上がります。しかし、ケイマンが持つ圧倒的な走行性能やブランドイメージ、ドライビングの純粋な楽しさは、それを補って余りある魅力があります。
重要なのは、修理費用の考え方です。ケイマンの部品は、その多くがドイツ本国からの輸入品であり、部品代そのものが高価です。また、特殊な構造を持つため、整備には専門知識と専用工具が必要となり、工賃も国産車に比べて高くなる傾向があります。
「故障する確率」だけでなく、「一度故障した際の費用」が大きいことが、ケイマンの維持を難しく感じさせる要因の一つと言えるでしょう。
オーナーとしての実感:適切なメンテナンスが鍵
私自身、987型と981型のケイマンを所有してきましたが、定期的なオイル交換や専門工場での点検を欠かさなかったおかげで、出先で立ち往生するような致命的なトラブルに見舞われたことは一度もありません。
もちろん、ウォーターポンプの交換やイグニッションコイルの劣化といった、年式相応の消耗品交換は発生しました。しかし、これらは事前に交換時期を予測し、計画的に対処することが可能です。
結論として、ケイマンとの付き合い方は、人間関係に似ています。日頃からその声に耳を傾け、適切なケアをしてあげれば、最高のパートナーとして素晴らしい走りを見せてくれます。しかし、そのサインを無視し続ければ、いつか大きな問題となって返ってくるのです。
【世代別】ポルシェ ケイマンの主な故障箇所と修理費用
ここからは、より具体的に、ケイマンの世代ごとのウィークポイントと、実際にトラブルが発生した場合の修理費用について、私の経験と収集したデータに基づいて解説していきます。中古車選びの際には、特にこれらのポイントを重点的にチェックしてください。

引用 : ポルシェHP (https://www.porsche.com/japan/jp/models/718/718-models/718-cayman/)
初代ケイマン(987型 / 2005年~2012年):前期・後期で異なる注意点
中古市場で最も手頃な価格帯にあり、初めてのポルシェとして人気の高い987型。しかし、製造年から時間が経過しているため、最も注意が必要なモデルでもあります。特に、2009年モデルを境にした前期型と後期型では、エンジンやトランスミッションが大きく異なるため、弱点も変わってきます。
【前期型 987.1】インターミディエイトシャフト(IMS)問題とは?
- 症状: 最悪の場合、エンジンブローに至る可能性があります。異音などの前兆がないケースも多く、非常に厄介なトラブルです。
- 原因: クランクシャフトの回転をカムシャフトに伝えるインターミディエイトシャフト(IMS)のベアリングが破損し、エンジン内部に金属片が飛散することが原因です。
- 修理費用: 予防的に対策品のベアリングに交換する場合で約30万円~50万円。万が一エンジンブローしてしまった場合は、エンジンのオーバーホールや載せ替えが必要となり、150万円以上の高額な修理費がかかります。
- 対策: 既に対策品に交換済みの車両を選ぶのが最も安心です。整備記録簿で交換履歴を確認しましょう。
【前期型 987.1】エンジンからのオイル漏れ
- 症状: 駐車場の地面にオイルのシミができる、エンジンルームから焦げたような臭いがするなどの症状が現れます。
- 原因: クランクシャフトのリアシールや、タペットカバーのパッキンなど、ゴム製のシール類が経年劣化で硬化し、そこからオイルが滲み出てきます。
- 修理費用: 漏れている箇所によりますが、5万円~20万円程度が目安です。エンジンを降ろす必要がある場合は、さらに高額になります。
【後期型 987.2】PDKトランスミッションのトラブル
- 症状: 変速ショックが大きくなる、特定のギアに入らない、メーターにトランスミッション異常の警告灯が点灯する、といった症状が発生します。
- 原因: 後期型から採用された7速PDK(ポルシェ・ドッペルクップルング)は、非常にスムーズで素早い変速が魅力ですが、内部のセンサーやソレノイドバルブが故障することがあります。
- 修理費用: ポルシェの正規ディーラーでは、基本的にPDKはアッセンブリー(丸ごと)交換となり、150万円~200万円という驚愕の費用がかかります。しかし、近年ではPDKの修理を専門に行う工場も増えており、故障箇所によっては30万円~80万円程度で修理可能なケースもあります。
【共通】ウォーターポンプの故障
- 症状: エンジン冷却水の水温が異常に上昇する、エンジンルームから「ウィーン」という異音がする、冷却水が漏れるなどの症状が出ます。
- 原因: 冷却水を循環させるウォーターポンプのベアリングやシールが劣化・破損します。これは消耗品と考えるべき部品です。
- 修理費用: 部品代と工賃を合わせて約10万円~15万円が相場です。
【共通】エアコン関連のトラブル
- 症状: エアコンの効きが悪くなる、全く冷風が出なくなる、といった症状です。
- 原因: コンプレッサーの故障や、コンデンサーからのガス漏れが主な原因です。特にフロントバンパー内にあるコンデンサーは、飛び石などで損傷しやすい箇所です。
- 修理費用: コンプレッサー交換で約15万円~25万円、コンデンサー交換で約10万円~15万円が目安となります。
987型ケイマンの主な修理費用相場
故障箇所 | 修理内容 | 費用目安 |
---|---|---|
エンジン (前期型) | IMSベアリング対策品交換 | 30万円~50万円 |
エンジンオーバーホール | 150万円~ | |
トランスミッション (後期型) | PDK修理(専門工場) | 30万円~80万円 |
PDK交換(正規ディーラー) | 150万円~200万円 | |
冷却系 | ウォーターポンプ交換 | 10万円~15万円 |
エアコン | コンプレッサー交換 | 15万円~25万円 |
オイル漏れ | 各種シール・パッキン交換 | 5万円~20万円 |
2代目ケイマン(981型 / 2012年~2016年):信頼性は向上したが…
987型からプラットフォームを一新し、デザインも洗練された981型。エンジンも改良され、IMS問題のような致命的な弱点は解消されました。全体的に信頼性は大幅に向上しましたが、それでも注意すべき点は存在します。
PDKのセンサー故障と修理費用
- 症状: 987型後期と同様、変速異常や警告灯の点灯が発生します。
- 原因: 981型のPDKも、内部の距離センサーが故障する事例が報告されています。
- 修理費用: 987型と同様、ディーラーではアッセンブリー交換となることが多いですが、専門工場であればセンサーのみの交換で対応可能な場合があり、その際の費用は約30万円~50万円が目安です。
ダイレクトイグニッションコイルの劣化
- 症状: アイドリングが不安定になる、エンジンの吹け上がりが悪くなる、エンジンチェックランプが点灯する、といった症状が出ます。
- 原因: プラグに高電圧を送るイグニッションコイルが、エンジンの熱や振動で経年劣化し、ひび割れなどを起こします。これも消耗品の一つです。
- 修理費用: ケイマンは6気筒なので、6本すべての交換が推奨されます。部品代と工賃を合わせて約8万円~12万円程度です。
内装のベタつき問題
- 症状: センターコンソールやドアパネル、各種スイッチ類など、樹脂パーツの表面が経年で加水分解を起こし、ベタベタしてきます。
- 原因: 日本の高温多湿な気候が原因とされています。
- 修理費用: 軽度であれば専用のクリーナーで除去することも可能ですが、重度の場合は内装リペアの専門業者に依頼するか、部品交換が必要になります。修理範囲によりますが、数万円~20万円以上かかることもあります。
981型ケイマンの主な修理費用相場
故障箇所 | 修理内容 | 費用目安 |
---|---|---|
トランスミッション | PDKセンサー修理(専門工場) | 30万円~50万円 |
エンジン | イグニッションコイル交換(6本) | 8万円~12万円 |
冷却系 | ウォーターポンプ交換 | 10万円~15万円 |
内装 | 内装ベタつきリペア | 5万円~20万円 |
3代目ケイマン(718型 / 2016年~):ダウンサイジングターボの注意点
伝統の自然吸気6気筒エンジンから、4気筒ターボエンジンへと大きな転換を遂げた718型。比較的新しいモデルのため、中古車市場でのトラブル事例はまだ少ないですが、ターボエンジン特有の注意点も出てきています。
ターボチャージャー関連のトラブル
- 症状: 加速が鈍くなる、過給圧が上がらない、異音が発生する、といった症状が考えられます。
- 原因: ターボチャージャー本体や、過給圧を制御するアクチュエーターなどの部品の不具合です。高回転・高負荷がかかる部品のため、オイル管理が悪いと寿命を縮める原因になります。
- 修理費用: まだ事例は少ないですが、ターボチャージャー本体の交換となると30万円~50万円以上の高額修理になる可能性があります。
電子制御システムの不具合
- 症状: メーター内に様々な警告灯が点灯する、ナビやオーディオシステムが正常に作動しない、といった症状です。
- 原因: 近年の車は非常に多くのセンサーやコンピューターで制御されているため、センサーの故障やソフトウェアの不具合などが原因でトラブルが発生することがあります。
- 修理費用: 原因の特定が難しく、診断だけでも時間がかかることがあります。センサー交換などであれば数万円で済みますが、ECU(エンジンコントロールユニット)などの交換が必要になると20万円以上かかることもあります。
718型ケイマンの主な修理費用相場
故障箇所 | 修理内容 | 費用目安 |
---|---|---|
エンジン | ターボチャージャー交換 | 30万円~50万円以上 |
電装系 | 各種センサー交換 | 3万円~10万円 |
コントロールユニット交換 | 20万円~ |
後悔しない!中古ポルシェ ケイマン選びのチェックポイント
ここまで読んで、「やっぱり中古のケイマンは怖いな」と感じた方もいるかもしれません。しかし、ご安心ください。これからお話しするチェックポイントをしっかりと押さえれば、故障リスクの低い、いわゆる「アタリ」の個体を見つける確率を格段に高めることができます。

引用 : ポルシェHP (https://www.porsche.com/japan/jp/models/718/718-models/718-cayman/)
まずは大前提:信頼できる販売店を選ぶ
中古ケイマン選びは、車を選ぶ前に「店を選ぶ」ことから始まります。以下のポイントを満たす販売店を選びましょう。
- ポルシェの販売・整備実績が豊富か: ポルシェ専門店や、それに準ずる知識と経験を持ったスタッフがいる販売店が理想です。
- 自社で整備工場を完備しているか: 販売だけでなく、購入後のメンテナンスや修理にも対応できる体制が整っていると安心です。
- 車両の状態を正直に説明してくれるか: メリットだけでなく、その個体のウィークポイントや過去の修復歴などを隠さずに説明してくれる販売店は信頼できます。
- 保証制度が充実しているか: 最低でも3ヶ月・3,000km以上の保証が付いていることが望ましいです。保証範囲(エンジン、ミッションが含まれるかなど)もしっかりと確認しましょう。
実車確認で見るべき7つのポイント
気になる個体を見つけたら、必ず実車を確認しに行きましょう。その際にチェックすべき重要なポイントを7つにまとめました。
ポイント1:整備記録簿の有無と内容
人間でいうところの健康診断記録です。これまでの点検・整備の履歴がすべて記載されており、その車がどのように扱われてきたかを知る上で最も重要な書類です。
- 定期的な点検記録があるか: 毎年、もしくは定められた走行距離ごとに正規ディーラーや専門工場で点検されているかを確認します。
- オイル交換の頻度は適切か: 少なくとも1年に1回、または5,000km~10,000kmごとに交換されているのが理想です。
- 消耗品の交換履歴: ウォーターポンプやPDKオイル、ブレーキフルードなどが適切なタイミングで交換されているかを確認しましょう。
ポイント2:エンジンルームと下回りのオイル漏れ・滲み
エンジンをかけた状態で、エンジンルームを覗き込み、異音や異臭がないかを確認します。可能であれば、リフトアップしてもらって車体の下回りもチェックさせてもらいましょう。
- エンジンヘッドカバー周辺: オイル滲みが発生しやすい箇所です。
- エンジンとトランスミッションの繋ぎ目: ここからのオイル漏れは修理費用が高額になる可能性があります。
- ラジエーターやホース類: 冷却水(クーラント)が漏れた跡(ピンクや緑色のシミ)がないか確認します。
ポイント3:エンジン始動時の異音・白煙
コールドスタート(エンジンが完全に冷え切った状態からの始動)は、エンジンの状態を確認する絶好の機会です。
- 始動直後の異音: 「ガラガラ」「カチカチ」といった異音がないか、耳を澄ませて聞きましょう。
- マフラーからの白煙: 始動直後にマフラーから大量の白煙が出る場合、オイル下がりやオイル上がりといった、エンジン内部に問題を抱えている可能性があります。(冬場の水蒸気とは異なります)
ポイント4:PDKのシフトショックと変速のスムーズさ
試乗の際には、PDKの動作を入念にチェックします。
- 低速時のギクシャク感: Dレンジでゆっくりと発進・停止を繰り返し、不自然なショックやギクシャク感がないか確認します。
- 手動変速のテスト: マニュアルモードで1速から順番にシフトアップ、シフトダウンを行い、スムーズに変速するかを確かめます。
ポイント5:タイヤとブレーキの状態
タイヤとブレーキは安全に関わる重要なパーツであり、交換費用も高額です。
- タイヤの製造年と残り溝: タイヤの側面には製造年週が刻印されています。残り溝が十分でも、製造から5年以上経過しているタイヤはゴムが硬化しているため交換が推奨されます。
- ブレーキローターの摩耗: ローターの縁に大きな「段差」ができていないか、指で触って確認します。摩耗が激しい場合は、パッドと同時に交換が必要になります。
ポイント6:エアコンの効き具合
エンジンをかけてA/CスイッチをONにし、最低温度に設定して、冷たい風がしっかりと出てくるかを確認します。効きが弱い、または全く効かない場合は、高額な修理が必要になる可能性があります。
ポイント7:内装の状態(特に981型)
前述した内装のベタつきがないか、スイッチ類を実際に触って確認します。シートの擦れやヘタリ具合、各種装備が正常に作動するかもチェックしましょう。
試乗は必須!五感でコンディションを確かめる
カタログスペックや見た目だけではわからない車の状態を知るために、試乗は絶対に欠かせません。
- まっすぐ走るか: ハンドルを軽く握り、平坦な直線で車が左右に流れないかを確認します。
- 異音・振動: 加速時、減速時、コーナリング時など、様々な状況で不快な音や振動が出ていないかを確かめます。
- ブレーキの効き: ブレーキを踏んだ際に異音(キーキー音など)がしないか、車体がぶれることなくスムーズに停止できるかを確認します。
ポルシェ専門の整備工場に購入前診断を依頼する(PPI)
最終的な判断を下す前に、第三者の専門家に見てもらうことを強くお勧めします。これは**PPI(Pre-Purchase Inspection:購入前点検)**と呼ばれ、ポルシェ専門の整備工場に車両を持ち込み、有料で詳細なコンディションチェックをしてもらうサービスです。
費用は2万円~5万円程度かかりますが、素人では見抜けない隠れた不具合を発見できる可能性があり、将来的な高額修理のリスクを考えれば、決して高い投資ではありません。販売店がPPIを拒否する場合は、何か隠したいことがあると考え、その車両の購入は見送るべきでしょう。
【購入後のリアル】ポルシェ ケイマンの維持費は年間いくら?
最後に、晴れてケイマンのオーナーになった後、年間でどれくらいの維持費がかかるのかをシミュレーションしてみましょう。これを把握しておくことで、購入後の資金計画も立てやすくなります。
ケイマン維持費の内訳(必須項目)
これらは、車のコンディションに関わらず、所有しているだけで必ずかかる費用です。
費用項目 | 987型ケイマン (2.7L) | 981型ケイマンS (3.4L) | 718ケイマン (2.0L) | 備考 |
---|---|---|---|---|
自動車税 | 51,000円 | 58,000円 | 39,500円 | 年1回。13年超で重課。 |
自動車重量税 | 32,800円 | 32,800円 | 32,800円 | 2年ごと(車検時)。 |
自賠責保険料 | 17,650円 | 17,650円 | 17,650円 | 2年ごと(車検時)。 |
任意保険料 | 約100,000円 | 約120,000円 | 約110,000円 | 年齢・等級・車両保険で変動。 |
車検費用 | 約150,000円 | 約170,000円 | 約160,000円 | 上記税金・保険料+基本料。 |
ガソリン代 | 約180,000円 | 約216,000円 | 約162,000円 | 年間1万km、燃費10km/L、ハイオク180円/Lで計算。 |
年間合計(概算) | 約43万円 | 約51万円 | 約42万円 | 2年ごとの費用は年額換算。 |
※任意保険料は20等級、30歳以上、車両保険ありの条件で試算。 ※車検費用は部品交換がない場合の最低ライン。
メンテナンス費用:年間予算はどれくらい見ておくべきか
上記の固定費に加えて、車のコンディションを維持するためのメンテナンス費用がかかります。
オイル交換(エンジン、PDK)
- エンジンオイル: 走行距離にかかわらず、最低でも1年に1回の交換が必須です。費用は2.5万円~4万円程度。
- PDKオイル: メーカー推奨は9万kmまたは6年ごとの交換ですが、コンディション維持のためにはもう少し早めの交換が望ましいです。費用は6万円~10万円程度。
タイヤ交換
ケイマンはハイパフォーマンスなタイヤを装着しており、交換費用も高額です。銘柄にもよりますが、4本交換で15万円~30万円程度かかります。寿命は走り方によりますが、2万km~3万kmが目安です。
ブレーキパッド・ローター交換
これも走り方によって消耗度合いが大きく変わります。パッドとローターを同時に交換する場合、1台分で20万円~40万円程度かかります。
年間維持費シミュレーション(モデル別・表形式)
上記の費用を総合すると、中古ケイマンを良好なコンディションで維持するためには、年間50万円~80万円程度の予算を見ておくと安心です。もちろん、大きなトラブルがなければこれより安く済みますし、運悪く高額な修理が重なれば100万円を超えてしまう年もあるかもしれません。
最低ライン(トラブルなし) | 平均的な予算 | |
---|---|---|
年間維持費合計 | 約50万円 | 約80万円 |
内訳 | 固定費+エンジンオイル交換 | 固定費+各種オイル交換+消耗品交換積立 |
この金額を「高い」と感じるか「妥当」と感じるかは人それぞれですが、ケイマンがもたらしてくれる非日常的なドライビング体験を考えれば、決して高すぎるとは言えない、というのが多くのオーナーの意見ではないでしょうか。
まとめ
今回は、「中古のポルシェ ケイマンは壊れやすいのか?」というテーマについて、コンサルタントとして、そして一人のオーナーとしての視点から詳しく解説してきました。
この記事の要点をもう一度おさらいしましょう。
- 「ケイマン=壊れやすい」は迷信。しかし、国産車と同じ感覚では乗れない。
- 「壊れやすい」と言われる原因は、高性能ゆえの繊細さ、メンテナンス不足の個体、そして特定モデルの弱点にある。
- 世代ごとに注意すべきウィークポイントは異なる。特に987型前期のIMS問題や、各世代のPDKトラブルには注意が必要。
- 後悔しないためには、信頼できる販売店を選び、整備記録簿の確認、実車の入念なチェック、そして専門家による購入前診断(PPI)が不可欠。
- 維持費は、固定費に加えてメンテナンス費用を考慮し、年間50万円~80万円の予算を確保しておくと安心。
中古のポルシェ ケイマンは、確かに購入にも維持にも、国産車にはない知識と覚悟、そして費用が必要です。しかし、そのハードルを乗り越えた先には、言葉では言い表せないほどの運転する喜びと、所有する満足感が待っています。
正しい知識を身につけ、焦らずにじっくりと良い個体を探せば、ケイマンはあなたのカーライフを何倍にも豊かにしてくれる最高のパートナーになるはずです。
このレビューが、あなたの素晴らしいポルシェライフの第一歩となることを願っています。