モータージャーナリスト兼コンサルタントの二階堂仁です。今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、「地方のベンツ正規ディーラーは混みやすいって聞くけど、実際どうなんだろう?」という点が気になっていると思います。私も複数のベンツを所有し、都市部と地方、両方のディーラーを利用してきましたが、確かに地方ならではの事情があるのは事実です。

引用 : メルセデスベンツ日本 (https://media.mercedes-benz.jp/)
すぐにメンテナンスが受けられなかったり、そもそも店舗が遠かったり…気になる気持ちはよくわかります。
しかし、事前にその特性を理解し、賢く付き合うことで、デメリットを上回る満足感を得られるのもまた事実です。この記事を読み終える頃には、地方のベンツディーラーに関するあなたの疑問が解決しているはずです。
記事のポイント
- 地方ディーラーの混雑状況とその背景
- 都市部と地方におけるサービス内容の比較
- 混雑を回避し快適に利用するための具体的な方法
- 正規ディーラー以外の賢い選択肢と注意点

新しい車に乗り換える際、今乗っている愛車をどれだけ高く売却できるかは、次の車の選択肢にも大きく影響します。
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地方のベンツ正規ディーラーは本当に混みやすいのか?その実態を徹底解説
「地方のベンツディーラーは予約が取りにくい」「土日はいつも混んでいる」といった声を耳にすることがあります。これは一部事実であり、その背景にはいくつかの構造的な理由が存在します。なぜ混雑するのか、そして実際の状況はどうなのか、私の経験と収集した情報を基に深掘りしていきましょう。

Lexury Motors Journal イメージ
なぜ「地方ディーラーは混む」と言われるのか?その背景
地方のディーラーが混雑する傾向にある理由は、決してスタッフの怠慢やサービスの質の低さが原因ではありません。主に、店舗数と顧客数のアンバランスに起因します。
圧倒的に少ない店舗数
最大の理由は、人口に対するディーラーの店舗数が都市部に比べて圧倒的に少ないことです。例えば、東京都内にはメルセデス・ベンツの正規ディーラー(ヤナセ、シュテルンなど)が50店舗以上存在するのに対し、地方の県では県内に1店舗、あるいは2〜3店舗しかないというケースがほとんどです。中には、正規ディーラーが1店舗も存在しない県さえあります。
このため、一台の車を販売したり、メンテナンスを行ったりする際に、一つの店舗がカバーしなければならないエリアが非常に広くなります。隣町どころか、隣の市、場合によっては県内の広範囲から顧客が集中するため、結果として一店舗あたりの負担が大きくなり、混雑につながるのです。
富裕層の地方移住と需要の増加
近年、リモートワークの普及やライフスタイルの変化により、都市部から地方へ移住する富裕層が増加傾向にあります。それに伴い、地方における高級輸入車の需要も高まっています。私のクライアントにも、都心から自然豊かな郊外へ移り住み、そこで新たにメルセデスを購入したという方が少なくありません。
しかし、ディーラーの店舗数はその需要の増加に追いついていないのが現状です。結果として、限られた店舗に顧客が殺到し、特に週末は商談やメンテナンスの予約でいっぱいになってしまうのです。
【地域別】ベンツ正規ディーラーの店舗数と分布
ここで、都市部と地方の店舗数にどれほどの差があるのか、具体的な数字で見てみましょう。
地域ブロック | 主要都府県 | 正規ディーラー店舗数(概算) | 備考 |
---|---|---|---|
首都圏 | 東京都 | 約55店舗 | 人口に対して店舗数が最も多い |
神奈川県 | 約30店舗 | 横浜、川崎エリアに集中 | |
埼玉県 | 約20店舗 | ||
千葉県 | 約18店舗 | ||
近畿圏 | 大阪府 | 約30店舗 | |
兵庫県 | 約20店舗 | 神戸、阪神エリアに集中 | |
中京圏 | 愛知県 | 約25店舗 | 名古屋市内に集中 |
地方(例) | 北海道 | 約10店舗 | 広大な面積に対し店舗は札幌中心 |
東北6県 | 約15店舗 | 各県に2〜3店舗が基本 | |
四国4県 | 約5店舗 | 各県に1〜2店舗 | |
沖縄県 | 2店舗 |
※上記はヤナセ、シュテルン等の主要ディーラーの合計店舗数であり、概算値です。
この表からもわかるように、地方では1県あたりの店舗数が1〜3店舗というのが平均的な数字です。これは、その県内に住むすべてのベンツオーナー、そして購入希望者が、その数少ない店舗を利用することを意味します。これでは混雑が発生しやすいのも無理はありません。
実際の混雑状況は?SNSや口コミから見るリアルな声
では、実際のユーザーはどのように感じているのでしょうか。SNSや自動車関連のレビューサイトを調査すると、地方ディーラーに関する様々な「生の声」が見つかりました。
【ネガティブな意見】
- 「オイル交換の予約をお願いしたら、最短で1ヶ月半後と言われた。さすがに待てない…」(東北地方・40代男性)
- 「土日にふらっと立ち寄ったら、セールス担当が全員接客中で、まともに話を聞けなかった。商談も予約必須らしい」(北陸地方・30代男性)
- 「警告灯が点灯して緊急で見てほしかったが、『予約でいっぱいです』の一点張り。結局、レッカーで別の整備工場に運んだ」(九州地方・50代女性)
- 「納車まで半年待ちと言われた。都市部の友人は3ヶ月だったのに、この差は何なんだろう」(中国地方・40代男性)
【ポジティブな意見】
- 「確かに土日は混むけど、平日の午前中を狙えばスムーズに対応してもらえる。予約も取りやすい」(甲信越地方・50代男性)
- 「担当のセールスさんが親身になってくれて、点検時期が近づくと早めに連絡をくれるので助かる。関係性次第かも」(四国地方・60代男性)
- 「店舗は少ないけど、その分スタッフさんとの距離が近い気がする。アットホームな雰囲気で相談しやすい」(北海道・30代女性)
これらの声から、**「地方ディーラーは確かに混雑する傾向にあるが、曜日や時間帯を選んだり、スタッフと良好な関係を築いたりすることで、その不便さはある程度解消できる」**という実態が浮かび上がってきます。
特に混雑しやすい時期と時間帯
ディーラーが特に混雑するには、一定の傾向があります。これを避けるだけでも、ストレスは大幅に軽減されるでしょう。
- 週末(土曜日・日曜日)と祝日: やはり最も混雑するのが週末です。特に午前10時〜午後3時頃がピークタイムとなります。
- 長期休暇前: 年末年始、ゴールデンウィーク、お盆休みの前は、帰省や旅行に備えてメンテナンスを行うユーザーが増えるため、予約が殺到します。
- 決算期(3月・9月): 新車販売のキャンペーンなどが活発になるため、商談の顧客でショールームが賑わいます。
- 新型車や限定車の発表直後: 注目モデルの発表後は、実車を見たい、試乗したいという顧客で混み合います。
これらの時期に利用を考えている場合は、通常よりもさらに早めの予約を心がけることが重要です。
混雑がもたらす具体的なデメリットとは
では、ディーラーが混雑していると、具体的にどのようなデメリットが生じるのでしょうか。
- 希望日時にメンテナンス予約が取れない: 最も大きなデメリットです。定期点検やオイル交換など、計画的なメンテナンスであっても、数週間〜1ヶ月以上先まで予約が埋まっていることがあります。
- 緊急時の対応が遅れる可能性: 突然のエンジン不調や警告灯の点灯といった緊急事態が発生しても、すぐにピットに入庫させられない可能性があります。「代車もすべて出払っている」と言われるケースも少なくありません。
- 商談や試乗に十分な時間をかけられない: 購入を検討している場合でも、担当者が他のお客様とのアポイントで忙しく、ゆっくりと話を聞いたり、心ゆくまで試乗したりすることが難しい場合があります。
- サービスの質の低下(の可能性): これは一概には言えませんが、あまりにも多忙な状況が続くと、スタッフ一人ひとりの対応が流れ作業的になったり、細かな気配りが疎かになったりする可能性は否定できません。もちろん、プロとして高い水準を保っているディーラーがほとんどですが、物理的なキャパシティの問題は無視できないのです。
これらのデメリットを理解した上で、次章では、どうすれば地方ディーラーと賢く付き合っていけるのか、具体的な対策と代替案について詳しく解説していきます。
デメリットだけじゃない!地方のベンツディーラーとの賢い付き合い方と代替案
地方ディーラーの混雑という現実は、受け入れなければなりません。しかし、悲観する必要は全くありません。いくつかのコツを押さえ、視野を広げることで、むしろ都市部にはないメリットを享受しながら、快適なメルセデスライフを送ることが可能です。

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事前予約は必須!スムーズなディーラー利用のコツ
基本中の基本ですが、地方のディーラーを利用する際は「事前予約」が絶対条件です。飛び込みでの訪問は、長時間待たされるか、あるいは対応を断られる可能性が高いと考えましょう。
予約のベストタイミング
- 定期点検・車検: 時期が確定しているものは、2〜3ヶ月前から予約の連絡を入れるのが理想です。遅くとも1ヶ月前には連絡しましょう。
- オイル交換など: 時期がある程度予測できるメンテナンスは、1ヶ月前を目安に予約します。
- 商談・試乗: 購入検討の際は、少なくとも1週間前には希望日時と車種を伝えて予約しましょう。これにより、担当者がじっくりと時間を確保してくれるだけでなく、希望の試乗車も用意してもらえます。
平日の利用を積極的に検討する
可能であれば、平日の利用を強くお勧めします。特に火曜日〜木曜日の午前中は比較的空いていることが多く、予約も取りやすい傾向にあります。ピットもショールームも落ち着いているため、メカニックやセールス担当者と密なコミュニケーションを取ることが可能です。
担当セールスとの良好な関係構築が鍵
地方ディーラーは顧客との距離が近い傾向にあります。これを最大限に活かし、担当のセールススタッフやサービスアドバイザーと良好な関係を築くことが、快適なカーライフを送る上で非常に重要になります。
私自身も、地方のディーラーでは担当者と定期的に連絡を取り合い、車のコンディションだけでなく、世間話や趣味の話をすることもあります。こうした人間関係が構築できていると、
- 点検予約の際に融通を利かせてくれる
- 緊急のトラブル時に優先的に対応してくれる
- 有益なキャンペーン情報などをいち早く教えてくれる
といったメリットが生まれることがあります。これは、顧客数が多く、関係が希薄になりがちな都市部の大型ディーラーでは得難い、地方ならではの利点と言えるでしょう。車を「買う」「直す」だけの場所ではなく、「人と人との付き合い」の場として捉えることが、結果的に自分自身の利益につながるのです。
「メルセデス・ケア」を最大限に活用する方法
新車で購入した場合、3年間(走行距離無制限)は「メルセデス・ケア」という保証プログラムが付帯します。これは、定期メンテナンスや修理、24時間対応のツーリングサポートなどが無料で受けられる非常に手厚いサービスです。
計画的なメンテナンスの実施
メルセデス・ケア期間中は、基本的に正規ディーラーでのメンテナンスが必須となります。保証を有効に活用するためにも、点検時期が近づいたらディーラーから案内が来るのを待つのではなく、自分から早めに予約を入れるようにしましょう。
24時間ツーリングサポートの重要性
地方では、ディーラーの営業時間外や定休日にトラブルが発生すると、途方に暮れてしまうことがあります。そんな時に心強いのが「24時間ツーリングサポート」です。専用のコールセンターに電話すれば、現場での応急処置やレッカーの手配、代替交通手段の確保などを24時間365日サポートしてくれます。このサービスの存在を知っておくだけで、精神的な安心感が大きく異なります。
正規ディーラー以外の選択肢①:認定中古車センター
新車にこだわらないのであれば、「認定中古車センター」も有力な選択肢です。これらは正規ディーラーによって運営されており、厳しい基準をクリアした高品質な中古車のみを取り扱っています。
認定中古車センターのメリット
- 比較的空いている可能性: 新車ディーラーに併設されている場合もありますが、独立した店舗の場合、新車のショールームほどの混雑はないことが多いです。
- 購入後のメンテナンスも可能: もちろん、購入した車両のメンテナンスや修理も受け付けています。
- 手厚い保証: 「サーティファイドカー保証」など、新車に準ずる手厚い保証が付帯しており、安心して乗ることができます。
地方では、新車ディーラーよりも認定中古車センターの方が自宅から近いというケースもあります。購入の選択肢として、またメンテナンスの拠点として、検討する価値は十分にあります。
正規ディーラー以外の選択肢②:ベンツ専門の整備工場
メルセデス・ケアの保証期間が終了した後のメンテナンスについては、正規ディーラー以外の選択肢も視野に入ってきます。特に、「ベンツ(輸入車)専門」を謳う民間の整備工場は、地方においても頼れる存在です。
専門整備工場のメリット
- 予約の取りやすさ: ディーラーに比べて予約の柔軟性が高く、急なトラブルにも対応してもらいやすい傾向にあります。
- コストパフォーマンス: 純正部品だけでなく、OEM品(純正同等品)や優良な社外部品を使用することで、ディーラーよりも修理費用を抑えられる場合があります。
- 高い技術力: ベンツに特化しているため、ディーラー出身のメカニックが在籍していることも多く、車種特有の弱点やトラブルシューティングに精通しています。
専門整備工場の選び方
ただし、工場の質にはばらつきがあるため、選ぶ際には注意が必要です。以下の点をチェックしましょう。
- 診断機の有無: メルセデス・ベンツ専用の診断機「DAS」や「XENTRY」を完備しているか。これがなければ、正確な故障診断は困難です。
- 実績と評判: 長年の実績があるか、インターネット上の口コミや評判は良いかを確認します。
- コミュニケーション: 事前に修理内容や見積もりについて、丁寧に説明してくれるか。
信頼できる専門工場を見つけておけば、ディーラーが混雑している際の「駆け込み寺」として、また保証切れ後のメインのメンテナンス拠点として、心強い味方になってくれます。
ヤナセとシュテルンの違いは?地方での店舗選びのポイント
メルセデス・ベンツの正規ディーラーには、主に「ヤナセ」と「シュテルン」の2つの系統があります。地方でディーラーを選ぶ際、この違いを気にする方もいるかもしれません。
結論から言うと、現在では両者に提供されるサービスや技術レベル、取り扱い車種に本質的な差はほとんどありません。 かつてはヤナセが富裕層向け、シュテルンが若者向けといったイメージ戦略がありましたが、今はメルセデス・ベンツ日本の販売方針のもとで標準化されています。
したがって、地方でディーラーを選ぶ際に重要なのは、「ヤナセか、シュテルンか」ということよりも、
- 自宅からの物理的な距離
- 店舗の雰囲気や清潔感
- 担当者との相性
といった、より現実的で個人的な要素です。複数のディーラーが選択肢にある場合は、実際に両方を訪れてみて、自分が「気持ちよく付き合っていけそう」と感じる方を選ぶのが最善の策です。
【裏技】隣県のディーラーも選択肢に入れる
これは特に県境にお住まいの方に有効な方法ですが、自分が住んでいる県のディーラーに固執する必要はありません。メルセデス・ベンツの保証やサービスは全国共通なので、どの正規ディーラーでも同じように受けることができます。
場合によっては、隣県のディーラーの方が自宅から近かったり、規模が大きくて予約が取りやすかったりすることもあります。地図を広げてみて、自分の生活圏にあるディーラーをすべてリストアップし、比較検討してみることをお勧めします。
まとめ
今回のレビューでは、「地方のベンツ正規ディーラーは混みやすい」という噂の真相と、その対策について詳しく解説してきました。
結論として、地方のディーラーは店舗数が少ないために混雑しやすい傾向にあるのは事実です。希望通りに予約が取れなかったり、緊急時の対応に不安を感じたりする場面もあるかもしれません。
しかし、その一方で、
- 平日の利用や早めの予約といった工夫で、混雑は十分に回避可能であること。
- 担当者と密な関係を築くことで、都市部にはない手厚いサポートを受けられる可能性があること。
- 認定中古車センターや専門整備工場など、正規ディーラー以外の選択肢も視野に入れることで、より柔軟で賢いカーライフが送れること。
という点もご理解いただけたかと思います。
地方でのメルセデスライフは、少しの知識と工夫、そして人との繋がりを大切にすることで、都市部とはまた違った、豊かで満足度の高いものになります。デメリットを正しく理解し、それを乗り越える術を身につければ、何も恐れることはありません。
この記事が、あなたの素晴らしいメルセデスライフの第一歩となれば幸いです。