モータージャーナリスト兼コンサルタントの二階堂仁です。今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、中古で購入したアウディにリコールが出た場合、どこで修理を受ければいいのか、費用はかかるのか、といった点が気になっていると思います。私も実際に正規ディーラー以外で購入した車両のリコールを経験したので、その不安な気持ちはよくわかります。特に初めての輸入車となると、情報も少なく戸惑いますよね。

引用 : BMW HP (https://motoren-glanz.bmw.jp/ja)
ご安心ください。この記事を読み終える頃には、正規ディーラー以外で購入したアウディのリコールに関する疑問がすべて解決しているはずです。
記事のポイント
- 野良アウディのリコール修理は正規ディーラーで可能
- リコール修理の費用は完全に無料
- リコール情報の確認は国土交通省のサイトが確実
- 中古車購入時はリコール対応履歴の確認が必須

新しい車に乗り換える際、今乗っている愛車をどれだけ高く売却できるかは、次の車の選択肢にも大きく影響します。
私自身、一括見積もりサイトを活用したことで、ホンダヴェゼルからレクサスRXに乗り換えることができました。
アウディのリコール 基本知識と確認方法
まずは、リコール制度そのものについて正しく理解することから始めましょう。「リコール」と聞くとネガティブなイメージを持つかもしれませんが、これはメーカーが自社の製品に責任を持ち、ユーザーの安全を守るための非常に重要な制度です。

Lexury Motors Journal イメージ
そもそもリコールとは?制度の目的を解説
リコール(Recall)とは、設計・製造段階での問題が原因で、自動車が道路運送車両の保安基準に適合しなくなる、または適合しなくなるおそれがある場合に、メーカーがその旨を国土交通大臣に届け出て、対象となる車両を無料で修理する制度です。
簡単に言えば、「車の安全に関わる重要な部分に問題が見つかったので、メーカーの責任で直します」という約束事ですね。これは法律(道路運送車両法)で定められたメーカーの義務であり、ユーザーの安全を守るために不可欠なものです。
リコールとよく似た制度
リコール以外にも、メーカーが行う改善措置にはいくつか種類があります。
種類 | 内容 | 緊急性 |
---|---|---|
リコール | 保安基準に適合しない、またはそのおそれがある。安全性に関わる重大な問題。 | 高 |
改善対策 | 保安基準には適合しているが、安全上または公害防止上、放置できないと判断された場合。 | 中 |
サービスキャンペーン | リコールや改善対策には該当しないが、商品性の改善や品質向上のためにメーカーが自主的に行う修理や改善。 | 低 |
これらのうち、リコールと改善対策は国土交通省への届出が義務付けられており、ユーザーは無料で修理を受ける権利があります。サービスキャンペーンはメーカー独自の取り組みですが、多くの場合、無償で対応してもらえます。
アウディのリコール情報を確認する3つの方法
「自分の車がリコールの対象かどうか、どうやって調べればいいの?」という疑問にお答えします。確認方法は主に3つあり、どれも簡単に行えます。
1. 国土交通省のウェブサイトで確認
最も確実で公式な方法が、国土交通省の「自動車のリコール・不具合情報」というウェブサイトを利用することです。
トップページにある「リコール情報検索」から、お乗りのアウディの「車台番号」を入力するだけで、対象となるリコールや改善対策の情報を一覧で確認できます。車台番号は、車検証の「車台番号」欄に記載されている英数字の羅列です。この方法であれば、メーカーを問わず全ての車両のリコール情報を検索できるため、非常に便利です。
2. アウディジャパン公式サイトで確認
アウディジャパンの公式サイトにも、リコール情報を検索できるページが用意されています。こちらも同様に、車台番号を入力することで、ご自身の車両が対象かどうかをピンポイントで調べることが可能です。アウディに関するサービスキャンペーン情報なども掲載されている場合があるので、一度は確認しておくことをおすすめします。
3. 車検証のQRコードで確認(2023年1月以降の電子車検証)
比較的新しい情報ですが、2023年1月以降に発行された電子車検証には、QRコードが印刷されています。このQRコードをスマートフォンのカメラで読み込むと、「車検証閲覧アプリ」を通じてリコール情報を直接確認できるようになりました。手元に車検証があれば最も手軽な方法と言えるでしょう。
中古車購入前にリコール対応済みか確認する方法
これから中古のアウディを購入しようと考えている方にとって、最も重要なのが「過去のリコールにきちんと対応されているか」という点です。確認を怠ると、購入後に自分でディーラーに持ち込む手間が発生してしまいます。
販売店への確認
まずは、購入を検討している中古車販売店に、対象車両のリコール対応状況をストレートに質問しましょう。優良な販売店であれば、管理している車両のリコール情報を把握しており、対応済みかどうかを明確に答えてくれるはずです。もし曖昧な返答しか得られない場合は、その販売店での購入は慎重に考えた方が良いかもしれません。
整備記録簿(メンテナンスノート)のチェック
整備記録簿は、その車の「健康診断書」のようなものです。リコールや改善対策の作業を行った場合、その記録が記載されていることがほとんどです。特に正規ディーラーで作業が行われた場合は、ほぼ確実に記録が残っています。いつ、どこで、どのような作業が行われたかを確認することで、その車が大切に扱われてきたかを推し量ることもできます。
リコールステッカーの確認
リコール作業が完了した車両には、その証としてステッカーが貼付されることがあります。貼付場所は車種や作業内容によって異なりますが、一般的には運転席側のドアを開けたピラー部分や、エンジンルーム内、グローブボックスの裏側などが多いです。リコール作業の実施を示すステッカーがあれば、対応済みであることの一つの証明になります。
アウディの主なリコール事例【過去の事例から学ぶ】
アウディも過去にいくつかの大規模なリコールを届け出ています。中古車を選ぶ上で、特に注意しておきたい代表的な事例をいくつかご紹介します。これらの情報を知っておくことで、購入時のチェックポイントがより明確になります。
DSG(Sトロニック)関連
アウディの代名詞でもある、素早い変速が魅力のデュアルクラッチトランスミッション「Sトロニック」(フォルクスワーゲングループではDSGと呼ばれます)。このSトロニックのメカトロニクス(制御ユニット)やクラッチに不具合が発生するケースがあり、過去に複数回のリコールやサービスキャンペーンが実施されています。症状としては、変速ショックが大きくなる、警告灯が点灯する、最悪の場合は走行不能に陥ることも。中古車を試乗する際には、スムーズに変速が行われるかを重点的にチェックしましょう。
エンジンオイルの異常消費
一部のTFSIエンジン(直噴ターボエンジン)において、エンジンオイルが異常に早く減ってしまうという問題が報告され、サービスキャンペーンが実施されました。ピストンやピストンリングの設計に問題があったとされています。オイル消費が激しいと、エンジン内部の潤滑が不十分になり、焼き付きなどの重大なトラブルにつながる可能性があります。購入時には、オイルレベルゲージをチェックさせてもらう、排気ガスが白煙を吹いていないかなどを確認することが重要です。
タカタ製エアバッグ問題
これはアウディに限らず、多くの自動車メーカーを巻き込んだ世界的な大規模リコールです。タカタ社製のエアバッグインフレーター(膨張装置)が、異常破裂して金属片が飛散し、乗員が死傷するおそれがあるという非常に危険な不具合でした。対象となる年式は比較的古いモデルが多いですが、中古車市場にはまだ未対策の車両が残っている可能性もゼロではありません。命に関わる重要な部分ですので、購入前には必ずリコール対応済みかを確認してください。
野良アウディのリコール修理 どこで?費用は?
さて、ここからが本題です。正規ディーラー以外の中古車販売店や個人売買などで購入した、いわゆる「野良アウディ」。こういった車両のリコールは、一体どこで、どのように受ければ良いのでしょうか。

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結論:野良アウディでもリコールは正規ディーラーで受けられる
結論から申し上げます。正規ディーラー以外で購入したアウディであっても、リコールの修理は全国どこのアウディ正規ディーラーでも受けられます。
これは、先ほども触れたように、リコールが法律で定められたメーカーの義務だからです。「ディーラーで購入していないから」という理由で修理を断られることは絶対にありません。もし断られたとすれば、それは法律違反にあたります。
ディーラー側からしても、リコール作業はメーカーから工賃が支払われるため、断る理由がありません。むしろ、これをきっかけに新しいお客様との接点ができるため、歓迎こそされど拒否されることはまずないと考えて良いでしょう。安心して最寄りの正規ディーラーに連絡してください。
リコール修理の費用は完全無料!費用請求は一切なし
もう一つの大きな心配事が費用面だと思いますが、こちらもご安心ください。リコール修理にかかる費用(部品代、交換工賃など)は、すべてメーカーが負担します。ユーザーが費用を請求されることは一切ありません。
これは、リコールの原因がメーカーの設計・製造段階にあるためです。ユーザーに責任のない不具合を、ユーザー負担で修理させることは制度の趣旨に反します。交通費や代車費用に関してはケースバイケースですが、少なくともリコール作業そのものに対して費用が発生することはありません。
正規ディーラーへリコール修理を依頼する具体的な手順
では、実際にリコール修理を依頼する際の流れを具体的に見ていきましょう。手順は非常にシンプルです。
ステップ1:最寄りのアウディ正規ディーラーを探す
まずは、ご自宅や職場からアクセスの良いアウディ正規ディーラーを、アウディジャパンの公式サイトなどから探します。
ステップ2:電話で予約を入れる
ディーラーが見つかったら、サービスフロント(整備受付)に電話をかけ、リコール修理の予約を入れます。その際に、以下の情報を伝えるとスムーズです。
- 車台番号(車検証に記載)
- 対象のリコール内容(国土交通省のサイトなどで確認したもの)
- 氏名と連絡先
- 正規ディーラー以外で購入した車両であること(伝えておくと話が早い場合があります)
リコール作業には、専用の部品を取り寄せる必要がある場合がほとんどです。そのため、いきなり車両を持ち込んでもすぐに対応できないことが多いので、必ず事前に電話で予約をしましょう。
ステップ3:車両を持ち込む
予約した日時に、車両をディーラーに持ち込みます。その際、以下のものを持参すると万全です。
- 自動車検査証(車検証)
- 整備記録簿(メンテナンスノート)
- 認印(不要な場合も多いですが念のため)
サービスアドバイザーに車両を預け、作業内容や完了予定時刻などの説明を受けます。
ステップ4:修理完了、引き渡し
作業が完了したら、ディーラーから連絡が入ります。車両を引き取りに行き、作業内容の報告書を受け取って完了です。もちろん、支払いはありません。
ディーラーに断られた?そんな時の対処法
前述の通り、リコール修理を断られることはまずあり得ません。しかし、万が一、何らかの理由で対応を拒否されたり、不誠実な対応をされたりした場合は、以下の窓口に相談しましょう。
- アウディジャパン カスタマーセンター メーカーの公式窓口です。ディーラーでの対応に問題があった旨を伝えれば、適切な指導や別のディーラーの紹介など、何らかの対応をしてくれるはずです。
- 自動車不具合情報ホットライン(国土交通省) 国の機関であり、リコール制度を管轄しています。ディーラーが法的な義務を果たしていないとなれば、指導が入る可能性があります。最終手段として覚えておくと良いでしょう。
リコールついでに他の整備も頼める?注意点とメリット
リコールでディーラーに入庫する機会は、愛車の状態をプロの目で見てもらう絶好のチャンスです。
もちろん、リコールとは別の点検や整備(エンジンオイル交換など)を依頼することも可能です。その場合の費用は自己負担となりますが、以下のようなメリットがあります。
- 専門家による診断:アウディを知り尽くしたメカニックが、専用の診断機を使って車全体のコンディションをチェックしてくれます。
- 時間の節約:リコール作業と同時に行うことで、改めて整備のために車を持ち込む手間が省けます。
ただし、注意点もあります。ディーラーによっては、予防整備として様々な部品交換を推奨してくることがあります。もちろん、本当に必要な整備もありますが、すべてを鵜呑みにする必要はありません。必ず見積もりをもらい、内容をよく確認してから依頼するようにしましょう。不要だと感じた整備は、はっきりと断る勇気も大切です。
中古アウディ購入で後悔しないための追加アドバイス
最後に、自動車コンサルタントとして、そしてアウディのオーナーとして、皆さんが中古アウディ選びで後悔しないためのアドバイスをいくつか送ります。
「アウディは壊れやすい」は本当?中古車選びの現実
「輸入車、特にドイツ車は壊れやすい」という話をよく耳にすると思います。これは半分本当で、半分は誤解です。
確かに、国産車に比べると、電子制御の部品が多かったり、機構が複雑だったりするため、トラブルが発生する可能性は高いかもしれません。また、部品代も国産車より高価な傾向にあります。
しかし、「壊れやすい」と言われる最大の原因は、適切なメンテナンスを受けてこなかった個体が多いという点にあります。アウディのような高性能な車は、定期的なオイル交換や消耗品の交換といった基本的なメンテナンスが非常に重要です。これを怠ってきた車両が、中古車市場に流れてトラブルを起こし、「アウディは壊れる」というイメージを増幅させているのです。
逆に言えば、整備記録簿などで過去のメンテナンス履歴がしっかりと確認でき、大切に乗られてきたことがわかる車両を選べば、過度に恐れる必要はありません。 私自身も複数のアウディを所有してきましたが、適切なメンテナンスを施すことで、大きなトラブルなく快適なカーライフを楽しんでいます。
予算重視でも安心!信頼できる中古車販売店の見極め方
良い中古車に出会うためには、信頼できる販売店を選ぶことが何よりも重要です。以下のポイントを参考に、お店を見極めてください。
- 第三者機関の認定を受けているか:JAAA(日本自動車鑑定協会)などの第三者機関による車両状態の評価書が付いていると、修復歴の有無などを客観的に判断でき、安心感が高いです。
- 自社整備工場を完備しているか:販売だけでなく、購入後のメンテナンスや修理にも対応できる体制が整っているお店は信頼できます。
- 保証制度が充実しているか:後述しますが、手厚い保証を用意しているお店は、販売する車両の品質に自信がある証拠です。
- 口コミや評判が良いか:実際にそのお店で購入した人のレビューは、非常に参考になります。良い評価だけでなく、悪い評価の内容にも目を通し、お店の対応姿勢などを確認しましょう。
リコール以外も安心!中古車保証の重要性と選び方
中古車購入でリコールと同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが中古車保証です。どんなに状態の良い車を選んでも、機械である以上、故障のリスクはゼロではありません。特にアウディのような輸入車は、一度の修理で数十万円の出費になることも珍しくありません。
中古車保証に加入していれば、保証期間内に発生した対象部品の故障を無料で修理してもらえます。保証を選ぶ際は、以下の点を確認しましょう。
- 保証範囲:エンジン、トランスミッション、エアコン、パワーステアリングといった高額な修理になりがちな主要部品が保証対象に含まれているか。
- 保証期間と走行距離:保証が適用される期間(例:1年間)や走行距離(例:無制限)は、長ければ長いほど安心です。
- 免責事項:タイヤやバッテリーなどの消耗品は保証対象外となるのが一般的です。どこまでが保証され、どこからが自己負担になるのかを事前にしっかり確認しましょう。
購入後の維持費は?アウディライフのリアルなコスト
憧れのアウディを手に入れても、維持できなければ意味がありません。購入前に、年間の維持費がどのくらいかかるのかを把握しておくことが大切です。
項目 | 年間費用の目安(A4クラスの場合) | 備考 |
---|---|---|
自動車税 | 36,000円~ | 排気量によって変動 |
重量税 | 15,000円~ | 車検時に2年分を支払う |
自賠責保険 | 約10,000円 | 車検時に2年分を支払う |
任意保険 | 50,000円~150,000円 | 年齢、等級、車両保険の有無で大きく変動 |
車検費用 | 100,000円~200,000円 | 交換部品によって変動 |
ガソリン代 | 150,000円~ | 年間1万km走行、燃費10km/L、単価150円で計算 |
メンテナンス費用 | 50,000円~ | オイル交換、消耗品交換など |
合計 | 約40万円~ |
これはあくまで一例であり、車の状態や乗り方によって大きく変わります。特に、予期せぬ故障が発生した場合は、さらに修理費用が上乗せされる可能性があります。ある程度の余裕を持った資金計画を立てておくことを強くおすすめします。
まとめ
今回は、正規ディーラー以外で購入した「野良アウディ」のリコール対応について、詳しく解説してきました。
最後に、重要なポイントをもう一度おさらいします。
- 購入先に関わらず、アウディのリコール修理は全国の正規ディーラーで無料で受けられる。
- リコール情報は国土交通省のサイトで車台番号を入力すれば、誰でも簡単に確認できる。
- 中古車を購入する際は、リコール対応済みか、そして過去のメンテナンス履歴を必ず確認する。
- 「アウディは壊れやすい」というイメージに惑わされず、きちんと整備されてきた質の高い車両と、信頼できる販売店を選ぶことが重要。
中古車選びは、新車選びとはまた違った難しさがありますが、その分、良い個体に出会えた時の喜びは格別です。この記事で得た知識を武器に、ぜひ賢い中古アウディ選びを実践してください。
正しく情報を集め、適切なメンテナンスを心がければ、アウディはあなたのカーライフを間違いなく豊かにしてくれる素晴らしいパートナーになります。