モータージャーナリスト兼コンサルタントの二階堂仁です。今回も多く寄せられている質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、新型アルファードの納車を心待ちにしている、あるいは購入を検討中で、「走行中にテレビやYouTubeが見られたら、同乗者も退屈しないのに…」という点が気になっているのではないでしょうか。私も実際に40系アルファードを所有しており、長距離移動の際に家族から同様の要望を受けた経験があるので、そのお気持ちはよくわかります。
引用 : TOYOTA HP (https://toyota.jp/alphard/)
純正の状態では叶わないこの願いですが、いくつかのアイテムを使えば、驚くほど簡単に、そして快適に実現可能です。この記事を読み終える頃には、新型アルファードで走行中にテレビや動画コンテンツを楽しむための具体的な方法と、そのための最適な製品についての疑問が、すべて解決しているはずです。
記事のポイント
- 走行中のテレビ視聴はテレビキャンセラーが必須
- YouTube視聴はAI Box(Otto Cast等)で実現
- 取り付けはDIY可能だが専門業者への依頼が安心
- 同乗者のための快適装備で移動時間を豊かに

新しい車に乗り換える際、今乗っている愛車をどれだけ高く売却できるかは、次の車の選択肢にも大きく影響します。
私自身、一括見積もりサイトを活用したことで、ホンダヴェゼルからレクサスRXに乗り換えることができました。
新型アルファードの走行中テレビ視聴を実現する方法
なぜ純正状態では走行中にテレビが見られないのか?
まず大前提として、新型アルファードに限らず、現在のほとんどの国産車は、純正のカーナビやディスプレイオーディオで、走行中にテレビ映像を映し出すことができません。これは、運転者が走行中に画面を注視することを防ぎ、安全運転を確保するためのメーカーによる安全措置です。
引用 : TOYOTA HP (https://toyota.jp/alphard/)
具体的には、車両が走行していること(車速信号)を検知すると、自動的に映像の表示を停止し、音声のみに切り替わる仕組みになっています。これは道路交通法で、運転者が走行中にナビ画面などを2秒以上注視することが禁止されている「ながら運転」の罰則強化を受けた対応でもあります。
あくまでも「運転者」の安全を守るための機能であるため、助手席や後部座席の同乗者がテレビを見ることもできなくなってしまっているのが現状です。特に、小さなお子様がいるご家庭や、長距離移動が多い方にとっては、この制限が悩みの種になることも少なくありません。
解決策は「テレビキャンセラー」の導入
この走行中の視聴制限を解除する唯一の方法が、「テレビキャンセラー(またはTVキット、TVナビキット)」と呼ばれるアフターパーツを取り付けることです。
テレビキャンセラーは、車両が走行中であるという信号を一時的にカットし、ディスプレイオーディオに「停車中である」と誤認させることで、走行中でもテレビ映像が映るようにする装置です。
この装置を取り付けることで、助手席や後部座席の同乗者は、走行中でも退屈することなくテレビ番組を楽しめるようになります。新型アルファードの大きな14インチディスプレイや後席モニターを最大限に活用するためには、必須のアイテムと言えるでしょう。
テレビキャンセラーの種類と特徴
テレビキャンセラーには、いくつかの種類があり、それぞれに特徴があります。ご自身の使い方や予算に合わせて最適なものを選ぶことが重要です。
カプラーオンタイプ(オートタイプ)
現在主流となっているのが、このカプラーオンタイプです。純正の配線を一切傷つけることなく、ディスプレイオーディオユニットの裏側にあるコネクターの間に、製品を割り込ませるだけで取り付けが完了します。
- メリット:
- 配線を加工しないため、車両売却時などに簡単に純正状態に戻せる。
- 取り付けが比較的簡単で、DIYに挑戦する人も多い。
- エンジンをかけるだけで自動的に機能がONになるため、特別な操作が不要。
- デメリット:
- 常時キャンセラー機能がONになるため、製品によってはナビの自車位置測位に若干の誤差が生じる可能性がある(最近の製品は対策されているものが多い)。
スイッチ切り替えタイプ
手元に設置した小さなスイッチで、テレビキャンセラー機能のON/OFFを手動で切り替えるタイプです。
- メリット:
- 機能をOFFにすれば完全に純正状態となるため、ナビの自車位置測位に影響を与える心配が全くない。
- ディーラーでの点検や車検の際に、機能をOFFにしておけば指摘されにくい。
- デメリット:
- テレビを見たい時に、毎回スイッチを操作する手間がかかる。
- スイッチを設置するための配線の引き回しや、内装への小加工が必要になる場合がある。
ビルトインタイプ
車両の空きスイッチパネルに、純正風のスイッチを埋め込んで取り付けるタイプです。スイッチ切り替えタイプの一種ですが、後付け感がなく、スマートな見た目が特徴です。
- メリット:
- 見た目が純正オプションのように美しく、インテリアの雰囲気を損なわない。
- 機能のON/OFFが手元で確実にできる。
- デメリット:
- 対応する空きスイッチパネルがあるか確認が必要。
- 取り付けの難易度がやや高くなる。
私のアルファードには、操作の手間がなく、最新のナビ測位技術に対応しているカプラーオンタイプを選択しました。今のところ、ナビのズレなどで困ったことは一度もありません。
おすすめのテレビキャンセラー製品比較
市場には多くのテレビキャンセラー製品が存在しますが、信頼性と実績で選ぶなら、以下の2大メーカーが鉄板と言えるでしょう。
メーカー | 製品シリーズ名 | タイプ | 特徴 | 参考価格(税込) |
---|---|---|---|---|
データシステム | TV-KITシリーズ | カプラーオン、ビルトイン、スイッチ | 業界のパイオニア。豊富なラインナップと高い信頼性。ナビ操作も可能になるモデルが多い。 | 20,000円~30,000円 |
ビートソニック | テレビコントローラーシリーズ | カプラーオン、スイッチ | 高精度なナビ測位を維持する技術に定評。ON/OFF時の画面のチラつきが少ない。 | 20,000円~28,000円 |
どちらのメーカーも新型アルファード(40系)に対応した製品をリリースしており、品質面での心配は少ないでしょう。購入の際は、ご自身の車両の年式、型式、ディスプレイオーディオの種類(14インチディスプレイオーディオPlusなど)に適合していることを必ず確認してください。
テレビキャンセラーの取り付け方法(DIY)
DIYでの取り付けに挑戦したい方向けに、大まかな手順を解説します。ただし、内装パネルの取り外しには傷がつくリスクや、配線接続を誤ると車両に不具合が生じる可能性もあるため、自信のない方は迷わず専門業者に依頼しましょう。
準備するもの
- 適合するテレビキャンセラー
- 内張りはがし(プラスチック製のヘラ)
- 養生テープ
- プラスドライバー
- (必要に応じて)ソケットレンチ
取り付け手順
- バッテリーのマイナス端子を外す: 安全のため、作業前に必ずバッテリーのマイナス端子を外しておきます。
- ディスプレイ周りの養生: 傷つき防止のため、ディスプレイオーディオやシフトノブ周りを養生テープで保護します。
- 内装パネルの取り外し: 内張りはがしを使い、ディスプレイオーディオ周りのパネルを慎重に取り外していきます。新型アルファードは複数のパネルが組み合わさっているため、どの順番で外すかを事前にネット動画などで確認しておくことを強く推奨します。
- ディスプレイオーディオユニットの取り外し: パネルを外すと、ユニットを固定しているネジやボルトが見えます。これらをドライバーやレンチで外し、ユニット本体を手前に引き出します。
- テレビキャンセラーの接続: ユニットの裏側には、複数のコネクターが接続されています。テレビキャンセラーの説明書で指定されたコネクターを抜き、キャンセラー本体を間に割り込ませるように接続します。カチッと音がするまで確実に差し込みます。
- 動作確認: バッテリー端子を元に戻し、エンジンをかけます。走行状態(Dレンジに入れてブレーキを離すなど、安全な場所で短時間)にしてテレビが映るか、ナビの自車位置が正常かなどを確認します。
- 復元: 動作に問題がなければ、外した逆の手順でユニットとパネルを元に戻して完了です。
業者に依頼する場合の費用と選び方
DIYに不安がある方は、カー用品店や自動車電装専門店、ディーラー(店舗による)に取り付けを依頼するのが賢明です。
- 費用の目安:
- カー用品店(オートバックスなど): 15,000円~25,000円程度(製品代別途)
- 電装専門店: 20,000円~30,000円程度(製品代別途)
- 業者の選び方:
- 実績の確認: 新型アルファードのような最新車種の作業実績が豊富かを確認しましょう。ウェブサイトの施工事例や口コミが参考になります。
- 保証の有無: 取り付け後の不具合に対する保証があるかを確認しておくと安心です。
- 丁寧な説明: 作業内容やリスクについて、事前にしっかりと説明してくれる業者を選びましょう。
テレビキャンセラー導入のメリット・デメリット
導入を最終決定する前に、メリットとデメリットを正確に理解しておくことが重要です。
メリット
- 同乗者の満足度向上: これが最大のメリットです。長距離ドライブでも、同乗者がテレビを見て過ごせるため、退屈しません。特に小さなお子様は、アニメや教育番組に集中してくれるため、運転に集中できます。
- 車両の価値向上: テレビが見られることは、中古車市場においてもプラスの評価ポイントになることがあります。
デメリット
- ディーラー保証の対象外になる可能性: これが最も注意すべき点です。テレビキャンセラーの取り付けが原因で車両に何らかの電装系トラブルが発生した場合、その部分に関してはディーラーのメーカー保証が受けられなくなる可能性があります。カプラーオンタイプであっても、万が一の際は「社外品が取り付けられている」という事実だけで保証を断られるケースもゼロではありません。
- 車検への影響: 基本的にテレビキャンセラー自体は違法なパーツではないため、装着しているだけで車検に通らないということはありません。しかし、検査官によっては安全運転を阻害する装置と見なされ、指摘を受ける可能性も考えられます。その際は、機能をOFFにするか、一時的に取り外すといった対応が必要になる場合があります。
- ナビの自車位置のズレ(製品による): 前述の通り、古い製品や安価な製品の中には、ナビの測位精度に影響を与えるものがあります。信頼できるメーカーの最新モデルを選ぶことで、このリスクは大幅に低減できます。
これらのデメリットを理解した上で、導入を検討することが大切です。私自身は、同乗者の快適性というメリットがデメリットを上回ると判断し、信頼できる製品を選んで取り付けました。
新型アルファードで走行中にYouTubeを見る方法
テレビキャンセラーだけではYouTubeは見られない
まず知っておくべき重要なことは、テレビキャンセラーを取り付けただけでは、YouTubeやNetflixといったインターネット動画を視聴することはできない、ということです。テレビキャンセラーは、あくまでも「地デジ放送」や「DVD/Blu-ray(再生機能がある場合)」の走行中視聴制限を解除する装置です。

引用 : TOYOTA HP (https://toyota.jp/vellfire/grade/)
新型アルファードのディスプレイオーディオには、標準ではYouTubeなどの動画アプリをインストールしたり、ブラウザでウェブサイトを見たりする機能は備わっていません。
解決策は「AI Box(オットキャストなど)」の活用
そこで登場するのが、「AI Box」や「CarPlay AI Box」と呼ばれるアイテムです。これは、純正ディスプレイオーディオのUSBポート(データ通信対応側)に接続するだけで、ディスプレイオーディオ上でAndroid OSを起動させ、まるでタブレットのように様々なアプリを使えるようにする魔法のような箱です。
このAI Boxを導入することで、初めて新型アルファードの大きな画面でYouTubeや各種動画配信サービスの視聴が可能になります。
AI Boxとは?その仕組みを徹底解説
AI Boxは、Apple CarPlayの通信プロトコルを利用しています。
- AI Boxを車両のUSBポートに接続すると、車両側はAI Boxを「Apple CarPlay対応のiPhone」として認識します。
- CarPlayとして接続が確立されると、AI Boxは自身の内部に搭載されているAndroid OSを起動し、その画面をCarPlayのインターフェースを通じて純正ディスプレイオーディオに映し出します。
つまり、純正ディスプレイオーディオを「モニター」として利用し、AI Boxという小型のAndroid端末を操作する、というイメージです。これにより、純正システムの機能を一切変更・改造することなく、安全にAndroidアプリの利用が可能になります。
なぜOtto Cast(オットキャスト)が人気なのか?その魅力に迫る

数あるAI Boxの中でも、特に人気と評価が高いのが「Otto Cast(オットキャスト)」シリーズです。私も様々な製品を試しましたが、最終的にオットキャストに落ち着きました。その理由は以下の通りです。
安定した動作と高い処理性能
オットキャストは、比較的高性能なCPUと大容量のメモリを搭載しているモデルが多く、アプリの起動や操作がスムーズです。安価な製品にありがちな、カクつきやフリーズが少なく、ストレスなく使用できます。
GPS内蔵による正確なナビゲーション
多くのモデルでGPSアンテナが本体に内蔵されています。これにより、AI Box上でGoogleマップやYahoo!カーナビといった地図アプリを使用する際に、正確な自車位置を測位できます。トンネル内などGPSが届かない場所でも、車両側からの車速信号を利用して位置を補正する機能もあり、ナビアプリとしての実用性も非常に高いです。
SIMカード対応モデルの存在
Wi-Fiによるスマホのテザリング接続だけでなく、データ通信用のSIMカードを直接挿入できるモデルもラインナップされています。SIMカードを挿しておけば、車に乗るたびにテザリングを設定する手間がなく、エンジンをかければ自動的にインターネットに接続されるため、非常に便利です。
充実したサポートとファームウェアアップデート
オットキャストは、定期的にファームウェアのアップデートを提供しており、動作の安定性向上や新機能の追加が行われます。また、日本語の公式サイトやサポート体制が整っているため、万が一のトラブルの際も安心感があります。
Otto Castの具体的な接続方法と初期設定
オットキャストの導入は、驚くほど簡単です。
- 製品の準備: オットキャスト本体と、付属のUSBケーブル(Type-C to Type-A と Type-C to Type-Cの2種類が付属していることが多い)を用意します。新型アルファードの場合は、コンソールボックス内のUSBポート(Type-A)に接続します。
- 車両への接続: エンジンをかけた状態で、USBケーブルを使ってオットキャストと車両のUSBポートを接続します。
- CarPlayの認識: 接続後、数十秒待つとディスプレイオーディオがオットキャストを認識し、CarPlayの接続許可を求める表示が出ます。「許可する」などを選択すると、オットキャストのホーム画面がディスプレイに表示されます。
- インターネット接続:
- テザリングの場合: スマホのテザリング機能をONにし、オットキャストのWi-Fi設定画面から自分のスマホのアクセスポイントを選択し、パスワードを入力して接続します。
- SIMカードの場合: 事前にSIMカードを本体に挿入しておけば、自動的に接続されます。
- アプリの利用: インターネットに接続されれば、プリインストールされているYouTubeやNetflixなどのアプリをすぐに利用できます。Google Playストアから、他の好きなアプリをダウンロードすることも可能です。
Otto Castでできること
オットキャストを導入すると、ドライブの可能性が大きく広がります。
- 動画ストリーミング: YouTube、Netflix、Amazon Prime Video、Hulu、U-NEXTなど、主要な動画配信サービスを車内で楽しめます。
- 高機能なナビアプリ: 最新の地図情報が使えるGoogleマップや、渋滞情報に強いYahoo!カーナビなどを大画面で利用できます。
- 音楽ストリーミング: Spotify、Apple Music、YouTube Musicなどで、膨大な楽曲ライブラリにアクセスできます。
- 2画面表示機能: 多くのモデルで画面を2分割して、左側でナビアプリ、右側で動画アプリを同時に表示させるといった使い方が可能です。これは同乗者にとって非常に便利な機能です。
- その他Androidアプリ: ゲームやニュースアプリ、SNSなど、Google Playストアにあるほとんどのアプリが利用可能です。
Otto Cast使用時の注意点
非常に便利なオットキャストですが、いくつか注意点もあります。
- データ通信量: 動画をストリーミング再生すると、多くのデータ通信量を消費します。スマホのテザリングで利用する場合は、契約しているプランのデータ容量に注意が必要です。長時間の利用が多い方は、データ無制限プランや、車専用のSIMカードを用意することをおすすめします。
- 操作性: 基本的にタッチパネルでの操作になりますが、走行中の細かい操作は危険です。音声アシスタント(OK, Google)を活用したり、別売りのエアマウスを用意したりすると、操作性が向上します。
- ファームウェアアップデート: 定期的に公式サイトをチェックし、最新のファームウェアがリリースされていないか確認しましょう。アップデートすることで、動作がより安定します。
他のAI Box製品との比較
オットキャスト以外にも、人気のAI Box製品があります。代表的なものとして「Carlinkit」が挙げられます。
メーカー | 製品名 | 特徴 |
---|---|---|
Otto Cast | Picasou 2 / P3 など | 動作の安定性、高性能、充実したサポート体制。初心者から上級者まで満足できる定番モデル。 |
Carlinkit | Tbox Plus / Tbox Ambient | コストパフォーマンスに優れるモデルが多い。機能はオットキャストとほぼ同等だが、動作の安定性でやや劣るというレビューも。 |
どちらも一長一短ありますが、初めてAI Boxを導入する方や、安定性を最優先したい方には、やはりOtto Castをおすすめします。私自身も、いくつかの製品を試した結果、最終的にオットキャストの安定性とサポート体制を評価しています。
まとめ
今回は、新型アルファードで走行中にテレビやYouTubeを視聴するための具体的な方法について、私の経験も交えながら詳しく解説しました。
要点をまとめると以下のようになります。
- 走行中に地デジなどのテレビ放送を見るためには、「テレビキャンセラー」の取り付けが必須。
- 走行中にYouTubeやNetflixなどのネット動画を見るためには、「AI Box(オットキャストなど)」の導入が必須。
- これら2つは役割が全く異なるため、両方を楽しみたい場合は両方の導入が必要。
これらのアイテムを導入することで、新型アルファードが持つ上質な移動空間は、さらに快適で楽しいエンターテイメント空間へと進化します。特に、長距離を移動する機会が多い方、ご家族や大切な方を乗せる機会が多い方にとっては、投資する価値が十分にあると言えるでしょう。
ただし、忘れてはならないのが安全運転の徹底です。これらの機能は、あくまでも運転者以外の同乗者のためにあります。運転者が走行中に画面を注視する行為は、法律で固く禁じられており、大変危険です。
正しい知識を持って適切な製品を選び、ルールを守って活用することで、新型アルファードとのカーライフをより一層豊かなものにしてください。