北欧デザインと高い安全性能で注目を集めるVOLVOのSUVシリーズ。
しかし近年は、中国企業による買収やEV戦略の迷走などで不安視する声も多く、購入を検討している方にとっては、リセールバリュー(残価率)の低下が気になるところです。
本レビューでは、ボルボの主要SUVであるXC40・XC60・XC90について、1年落ちから7年落ちまでのリセールバリューと買取相場を徹底調査。
購入後の価値低下がどれほどか、どのモデルが損しづらいか、詳細データをもとに解説します。
記事のポイント
- XC40・XC60・XC90の年式別リセールバリューを徹底分析
- XC90は車格の割にリセールが厳しい結果に
- XC40は比較的リセールが高く、コスパ重視層におすすめ
- モデルチェンジ時期がリセールに与える影響も解説

新しい車に乗り換える際、今乗っている愛車をどれだけ高く売却できるかは、次の車の選択肢にも大きく影響します。
私自身、一括見積もりサイトを活用したことで、ホンダヴェゼルからレクサスRXに乗り換えることができました。
ボルボXC40・XC60・XC90のリセールバリュー比較
7年落ちのリセールバリューと傾向
7年落ちではXC40はデータなし、XC60とXC90のみ。XC60は平均リセール19.8%、XC90は31.8%と大きな差。これはXC90が現行型であるのに対し、XC60は旧型であることが要因と考えられます。
XC60の7年落ち買取データ例
グレード | リセール率 |
---|---|
D4 Classic | 20.7% |
T6 AWD R-Design | 21.1% |
XC90の7年落ち買取データ例
グレード | リセール率 |
T5 AWD Momentum | 34.6% |
T6 AWD Inscription | 29.0% |
5年落ちモデルのリセール傾向
全3モデルのデータが揃う5年落ち。XC40が平均46.1%と健闘。一方XC60は40.5%、XC90は35.6%と徐々に下がっていく傾向に。
XC40
グレード | リセール率 |
T4 AWD Inscription | 51.1% |
T5 AWD R-Design | 43.2% |
XC60
グレード | リセール率 |
T5 AWD Inscription | 43.0% |
D4 AWD Momentum | 42.9% |
XC90
グレード | リセール率 |
T5 AWD Momentum | 39.7% |
T6 AWD Inscription | 32.8% |
3年落ちのリセールバリュー
3年落ちでもXC40が最も高リセール。平均52.0%。XC60は49.2%、XC90は47.6%。全体的に50%前後だが、国産SUVと比べるとやや物足りない数値。
XC40
グレード | リセール率 |
B4 Momentum | 52.4% |
T4 AWD Inscription | 53.1% |
XC60
グレード | リセール率 |
D4 AWD Momentum | 50.3% |
B5 AWD Momentum | 49.6% |
XC90
グレード | リセール率 |
B5 AWD | 48.4% |
B6 AWD Inscription(エアサス) | 47.8% |
1年落ちのリセールバリュー
新車価格からの下落率が最も注目される1年落ち。XC40:平均62.4%、XC60:55.0%、XC90:52.1%。
XC40
グレード | リセール率 |
B4 AWD Inscription | 62.8% |
Ultimate B4 AWD:リセール64.3% |
XC60
グレード | リセール率 |
B5 AWD Inscription | 56.4% |
B5 AWD Momentum:リセール53.5% |
XC90
グレード | リセール率 |
B5 AWD Momentum | 51.8% |
B6 AWD Inscription:リセール52.3% |
ボルボSUVのリセールに影響する要因とは?
モデルチェンジとリセールの関係
モデルチェンジの有無はリセールに極めて大きな影響を与えます。特にフルモデルチェンジを挟むと、旧型の価値は急落する傾向にあります。これは、新型の登場により旧型の見た目や装備が一気に時代遅れになるため、中古市場での需要が落ち込むためです。
モデルチェンジが与える価格インパクト
- フルモデルチェンジ直後の旧型車は、1〜2年でリセールが10〜20%以上落ち込むことがある。
- マイナーチェンジではそこまで影響は大きくないが、安全装備やインフォテインメント系の刷新を伴う場合は注意が必要。
XC60とXC90のリセール差に見る影響
- XC60旧型(7年落ち)は平均リセール19.8%と低水準。
- 同時期の現行型XC90は31.8%と約12ポイントの差。
この差は「モデルの鮮度」が中古市場でいかに重視されているかを表しています。
モデルチェンジ直前・直後の購入タイミングがカギ
モデルチェンジ前の値引きが大きいタイミングで購入する場合、購入価格が抑えられるため残価率の悪化を多少カバーできます。一方で、リセールを重視するなら、なるべくモデルチェンジ直後の初期モデルは避けるのが無難です。初期不良のリスクや過渡期の仕様変更もあり、長期的な資産価値としても安定性に欠ける傾向があります。
モデルサイクルの長さも影響要因
ボルボは比較的モデルライフが長く、1回のフルモデルチェンジで6〜8年のサイクルが一般的です。この点では、頻繁にモデルチェンジがある一部のドイツ車よりもリセールが読みやすい側面もありますが、それでも新型の登場は価格を大きく左右するため注意が必要です。
車格と残価率の逆転現象
車両本体価格が高いほどリセールバリューも高くなる――一見すると当然に思えるこの法則は、実際には必ずしも当てはまりません。ボルボSUVでは、むしろ下位モデルのほうがリセールの落ち幅が小さく、結果的に残価率が高いという逆転現象が見られます。
残価率で優秀なXC40
実際にデータを見てみると、XC40は5年落ちで平均46.1%という安定したリセールを維持しており、国産SUVと比べても見劣りしない水準です。一方、上級モデルのXC90は35.6%に留まっており、購入時の価格とリセールのギャップが大きくなりやすい傾向があります。
購入価格と再販価格のギャップが生む損失
高級モデルほど新車価格が高くなる分、再販時の絶対額では高く売れることもありますが、割合(残価率)で見ると損失額が大きくなりがちです。たとえば、新車時800万円のXC90が400万円で売却されても残価率は50%ですが、400万円のXC40が240万円で売れれば残価率は60%。この差は購入後の金銭的損失に直結します。
維持費の差も影響する
また、上位車種になるほど維持費もかさみがちで、車検や部品代・保険料などを含めたトータルコストを考慮すると、リセールが低めの高級モデルは経済的に不利になりやすいという現実もあります。
このように、車格=リセールの高さとは言えない現状が、ボルボSUV全体のデータからも明らかになっています。
- XC40は5年落ちで46.1%
- XC90は同年式で35.6%と低め
グレードごとの価格差と買取価格
高額グレードほど装備や仕上げが豪華になる分、新車価格も跳ね上がりますが、残念ながらそれがそのままリセールに反映されるとは限りません。実際、ボルボSUVでは最上級グレードのリセール率が中堅グレードに劣るケースも多く見られます。
XC90 Inscriptionの落ち幅が顕著
たとえばXC90のInscriptionグレードは、1年落ちでリセールが50%台にまで下がっています。車両本体価格が高い上に、オプション装備も盛り込まれる傾向があるため、初期費用が非常に高くなる一方、中古市場での評価はそこまで上がらず、価値下落幅が大きくなりやすいのが特徴です。
中間グレードがリセール的に有利
一方、モメンタムなどの中間グレードは、新車時の価格が抑えめでありながら、一定の装備とブランド価値を保っているため、中古車としての魅力が高くリセールも安定しています。このため、特にコストパフォーマンスを重視する購入者にとっては、最上級グレードより中間グレードの方が合理的な選択といえるでしょう。
新車時の価格差は中古で吸収しきれない
新車購入時にオプションや上級グレードで数十万円以上の差額を支払っても、中古車市場ではその差額がほとんど評価されず、結果的に残価率で見ると割高な出費となる場合が多いです。とくに高級装備やエアサスペンション、専用ホイールなどは、中古では好みが分かれやすいため査定額に反映されづらい傾向があります。
このように、”高級=リセールが良い”とは限らず、慎重なグレード選びが長期的な価値を左右する重要なポイントになります。
中古市場での人気と流通台数
中古市場において、流通台数と人気の高さはリセールバリューを大きく左右する重要な要素です。特定モデルの在庫が潤沢で、かつ需要が安定している場合は相場が下支えされやすくなります。
XC40は流通量・人気ともに安定
XC40は都市部を中心に支持されているコンパクトSUVであり、ボルボの中でも販売台数が多いため中古市場でも在庫が豊富です。そのため需給バランスが整いやすく、値崩れを起こしにくいという特徴があります。さらに、女性ドライバーや若年層にも人気が高く、リース返却車や残クレ返却車両が一定数流通することも相場の安定に寄与しています。
XC90は希少性が仇に
対してXC90は新車価格が高いため購入層が限られ、中古市場でも玉数が少なくなりがちです。台数が少ない分プレミア化するのではと思われがちですが、実際には動きが鈍く、売れ残りを避けるために値下げされやすい傾向があります。また、大型SUVは駐車スペースや維持費の関係で需要が限定され、都市部では敬遠されがちです。
中古車としての「選ばれやすさ」も鍵
中古車としての選びやすさ、すなわち手頃なサイズ感や燃費、安全装備などが整っているかどうかも影響します。XC40はこの点でバランスが良く、ファミリー層から単身者まで幅広く受け入れられやすいのに対し、XC90は一部の富裕層や輸入車マニアに限られる傾向が強く、需要が狭いことで相場が安定しづらい面があります。
ボルボSUVと他会社メーカーSUVを比較
他ブランドのリセールと比較
ボルボのリセールバリューを語るうえで、同価格帯・同カテゴリの他輸入SUVとの比較は欠かせません。特にリセールが高いとされるドイツ御三家(BMW、メルセデス・ベンツ、アウディ)と比較すると、ボルボの立ち位置がより明確になります。
ドイツ車との3年リセール率比較
メーカー | モデル | 3年落ち平均リセール率 |
BMW | X3 | 約55% |
Mercedes-Benz | GLC | 約50〜55% |
Audi | Q5 | 約52% |
Volvo | XC60 | 約49.2% |
数値で見ると、XC60のリセールは若干見劣りする印象です。装備やデザイン、安全性能では引けを取らないにもかかわらず、中古市場におけるブランドバリューの差が影響していると考えられます。
日本市場におけるブランド信頼度の違い
日本では、BMWやベンツは長年の実績と販売ネットワークの厚みがあり、リセールもその信頼に支えられています。一方、ボルボは近年こそ人気上昇中ですが、認知度やディーラー網の点ではドイツ車に一歩及ばず、流通や買い取り相場に差が出る要因となっています。
ボルボのリセールが今後改善する可能性も
とはいえ、近年のボルボは日本市場における販売台数も増加傾向であり、XC40などは若年層を中心に人気が広がっています。特に中古車市場でも需要が高まれば、ブランド価値が向上し、リセールバリューが改善していく余地も十分にあります。
- BMW X3:3年落ち平均リセール55%前後
- メルセデスGLC:3年落ち50〜55%
- ボルボXC60:3年落ち平均49.2%
国産車と比べれば低いとは言い切れないが、他のドイツ車と比べるとやや弱い。
中国企業傘下の影響と不安感
中国の自動車大手・吉利汽車(Geely)による買収以降、ボルボは経営基盤の強化とEV戦略の加速を目指してきました。しかし、日本市場においてはその背景が必ずしも好意的に受け取られているわけではありません。
“中国ブランド化”というイメージの固定化
一部のユーザー層では「ボルボはスウェーデンブランドではなく、もはや中国車」という認識が広がりつつあります。このイメージがブランド価値の低下につながり、結果としてリセールバリューにもマイナスに作用している可能性があります。特に年配層や保守的な消費者には、中国企業の傘下という点がネガティブに捉えられる傾向があります。
実質的な品質への影響は見られないが…
実際には、ボルボの設計・開発は引き続きスウェーデンが中心であり、中国資本の影響が製品品質に直接的な悪影響を及ぼしている事例は見られません。それにもかかわらず、心理的な抵抗感から購入を敬遠する層が存在し、中古市場における需要に影響を与えているという指摘があります。
中国資本とどう向き合うかが今後の課題
今後、ボルボがリセールバリューを安定させるには、Geely傘下であってもスカンジナビアブランドとしてのイメージをどう維持・発信していくかが鍵になります。たとえば、広告戦略やディーラー対応の中で「スウェーデンデザイン」「欧州品質」を強調する姿勢が、ブランド価値の維持には不可欠となるでしょう。
Geely傘下であることにより、一定層に”中国ブランド化”というイメージが定着し、リセールにマイナス要因として働いている可能性がある。
EV戦略の迷走と価格維持への影響
フルEVモデル(EX30やXC40 Rechargeなど)が戦略不透明な中で投入された結果、日本市場におけるインパクトは限定的にとどまっています。EVへのシフトは世界的な潮流ではあるものの、ボルボの取り組みはややちぐはぐな印象を与えており、それがリセール価値にもマイナスの影響を与えています。
EV戦略の方向性が定まらない
ボルボは2030年までに全車EV化を掲げていますが、日本市場では充電インフラの整備や価格帯の問題が依然として解決されておらず、販売面でも苦戦中です。こうした市場とのミスマッチが、EVモデルの流通や認知の低さにつながっています。
EV特有のリセール低下要因
EV車はバッテリーの劣化リスクや補修コストの高さが敬遠される要因となり、ガソリン車やハイブリッド車と比べてリセールが著しく低下しやすい傾向にあります。特に新技術に対する信頼性が確立していない段階では、中古市場における評価も安定しづらいのが実情です。
EX30やXC40 Rechargeの中古価値は?
たとえばEX30はコンパクトEVとして注目されたものの、納車待ちの長さや価格に対するバリュー感が市場に伝わりきっておらず、中古車としての評価もこれからという段階です。XC40 Rechargeも同様に、航続距離や価格面でライバル車に対して優位性を打ち出せていないため、リセールは伸び悩んでいます。
今後、ボルボのEVラインナップが明確な戦略と差別化を伴って展開されるかどうかが、中古市場での価値維持に大きく影響してくるでしょう。
まとめ
ボルボのSUVシリーズは、デザイン性や安全性においては高評価を受けているものの、リセールバリューに関してはやや厳しい現実があります。特にXC90のような高価格帯モデルは1年落ちでも半額以下となるケースが多く、損失が大きくなりがちです。
一方、XC40は比較的リセールが安定しており、国産車並みの残価率を維持しているため、コスパ重視層におすすめできます。モデルチェンジのタイミングやグレード選定も重要で、特にリセールを重視するなら、人気のあるAWDインスクリプショングレード、もしくはモメンタムなどの中間グレードを選ぶのが無難です。
購入を検討している方は、単純な価格ではなく「売るときにいくら戻ってくるか」まで含めて検討することが重要です。