モータージャーナリスト兼コラムニストの二階堂仁です。 今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、憧れのランボルギーニ カウンタックLP400を手に入れたいけれど、その燃費がいったいどれほどのものなのか、具体的な数値が気になっていることでしょう。 スーパーカーゆえに維持が大変、特にガソリン代がものすごい、という噂を耳にして不安に思う気持ち、私も実際にオーナーとして経験してきたのでよくわかります。

引用 : ランボルギーニHP
この記事を読み終える頃には、カウンタックLP400の燃費に関する具体的な疑問が解決し、あなたが夢のスーパーカーライフへの一歩を踏み出すための、リアルな知識が身についているはずです。
記事のポイント
- カウンタックLP400の驚くべき実燃費
- 街乗りと高速で豹変する燃費性能
- 年間のガソリン代具体的なシミュレーション
- 燃費を少しでも改善させるプロの技

カウンタックLP400の燃費|オーナーが語る衝撃のリアル
多くのスーパーカーファンが憧れる、ランボルギーニ カウンタック LP400。 その美しいウェッジシェイプのデザインとは裏腹に、燃費に関しては現代の車とは比較にならないほど厳しい現実があります。 私もオーナーとして、日々その現実と向き合っています。 ここでは、カタログスペックだけではわからない、リアルな燃費事情について、私の実体験を交えて詳しく解説していきます。

引用 : Lexury Motors Journal イマージ
街乗りでの実測燃費はリッター2〜4km/L
まず、最も過酷な条件である街乗りから見ていきましょう。 信号や渋滞が多い都心部での走行をイメージしてください。 ストップ&ゴーを繰り返すような状況では、カウンタックLP400の燃費はリッターあたり2〜4km/Lというのが現実的な数値です。 時には2km/Lを割り込むことも珍しくありません。
なぜこれほどまでに燃費が悪いのか。 その最大の理由は、心臓部である4.0リッターV型12気筒エンジンと、それに燃料を供給する6基のウェーバー製キャブレターにあります。 現代の車のような電子制御燃料噴射装置(インジェクション)とは異なり、キャブレターはアナログな機構で、特に低回転域での燃料効率が非常に悪いのです。 発進時には濃い混合気をエンジンに送り込む必要があり、そのたびに大量のガソリンを消費します。 巨大な12気筒エンジンを目覚めさせ、アイドリングを維持するだけでも、相当な燃料を必要とすることを覚えておいてください。
高速道路での実測燃費はリッター5〜7km/L
一方、高速道路を一定の速度で巡航する場合、燃費は驚くほど改善します。 私の経験では、リッターあたり5〜7km/Lまで伸びることもあります。 もちろん、現代のエコカーには遠く及びませんが、街乗りでの数値を考えれば、これは大きな違いです。
高速巡航ではエンジン回転数が安定し、キャブレターが最も効率の良い状態で燃料を供給できるようになります。 また、カウンタックLP400の空力的に優れたデザインも、高速走行時の燃費向上に貢献しています。 とはいえ、少しアクセルを踏み込めば、12個のスロットルが一斉に開き、再び燃料を猛烈な勢いで消費し始めることも忘れてはなりません。 官能的なエンジンサウンドとの引き換えに、燃料計の針がみるみる下がっていく様は、オーナーだけが味わえるスリルとも言えるでしょう。
なぜカウンタックLP400はこれほど燃費が悪いのか
カウンタックLP400が設計された1970年代は、現代ほど燃費性能が重視されていませんでした。 スーパーカーに求められたのは、何よりも圧倒的なパフォーマンスと、人々の度肝を抜くデザインでした。 カウンタックは、その時代の要求を完璧に満たした存在だったのです。

引用 : Lexury Motors Journal イマージ
V12エンジンと6連キャブレターの宿命
前述の通り、V12エンジンと6連キャブレターの組み合わせが燃費の悪さの主犯格です。 12個のシリンダーに効率よく燃料を供給するためには、どうしても燃料が濃い状態になりがちです。 特に、各キャブレターの同調が少しでも狂うと、燃費はさらに悪化します。 最高のパフォーマンスを維持するためには、定期的なキャブレターの調整が不可欠であり、これも維持費の一部となります。
車両重量と当時の技術
LP400の乾燥重量は1,065kgと公表されていますが、これはオイルや燃料を含まない数値です。 実際の走行状態では1,500kgを超えます。 この重量級のボディを動かすためには、当然ながら大きなエネルギーが必要となります。 また、現代の車に搭載されているような、アイドリングストップや可変バルブタイミングといった燃費向上技術は一切存在しません。 純粋にメカニカルな力で走る、その潔さがカウンタックの魅力でもありますが、燃費という側面では大きなハンデとなります。
他のクラシックスーパーカーとの燃費比較
カウンタックLP400の燃費が際立って悪いというわけではありません。 同時代のライバルたちも、似たような燃費性能でした。 具体的な数値を比較してみましょう。
車種 | エンジン | 燃費(街乗り目安) | 燃費(高速目安) |
---|---|---|---|
ランボルギーニ カウンタック LP400 | 4.0L V12 | 2〜4 km/L | 5〜7 km/L |
フェラーリ 512BB | 4.9L 水平対向12気筒 | 3〜5 km/L | 6〜8 km/L |
デ・トマソ パンテーラ GTS | 5.8L V8 | 4〜6 km/L | 7〜9 km/L |
マセラティ ボーラ | 4.7L V8 | 4〜6 km/L | 7〜9 km/L |
このように、12気筒エンジンを搭載するフェラーリ 512BBとはほぼ同等、V8エンジンを搭載するパンテーラやボーラと比較すると、やはりカウンタックの燃費は厳しい水準にあることがわかります。 この時代のスーパーカーを所有するということは、燃費性能を受け入れる覚悟が必要ということです。
年間ガソリン代はいくら?具体的なシミュレーション
では、実際にカウンタックLP400を所有した場合、年間のガソリン代はどのくらいになるのでしょうか。 具体的な条件を設定してシミュレーションしてみましょう。
【シミュレーション条件】
- 年間走行距離:3,000km
- 走行比率:街乗り 70% (2,100km) / 高速道路 30% (900km)
- 平均燃費:街乗り 3km/L / 高速道路 6km/L
- ガソリン価格:ハイオク 180円/L
【計算結果】
- 街乗りで消費するガソリン量 2,100km ÷ 3km/L = 700L
- 高速道路で消費するガソリン量 900km ÷ 6km/L = 150L
- 年間の総消費ガソリン量 700L + 150L = 850L
- 年間のガソリン代 850L × 180円/L = 153,000円
年間3,000km程度の走行でも、ガソリン代だけで15万円以上かかる計算になります。 もし走行距離がもっと増えたり、街乗りの比率が高くなったりすれば、この金額はさらに膨れ上がります。 これはあくまで最低限の目安として考えておくべきでしょう。
カウンタックLP400の燃費を改善するプロのテクニック
絶望的な燃費性能を持つカウンタックLP400ですが、オーナーの努力次第で、その数値を少しでも改善させることは可能です。 ここでは、私が実践している燃費向上のためのテクニックをいくつかご紹介します。 劇的な変化は期待できませんが、愛車を労わり、維持費を少しでも抑えるために、ぜひ試してみてください。

引用 : Lexury Motors Journal イマージ
運転技術で燃費を稼ぐ方法
カウンタックの燃費は、ドライバーの右足に大きく左右されます。 繊細なアクセルワークを心がけることが、燃費改善への第一歩です。
急発進・急加速は絶対に避ける
最も燃料を消費するのは発進時です。 V12エンジンを唸らせて急発進したくなる気持ちをぐっとこらえ、ゆっくりとアクセルを踏み込みましょう。 バスが発進するようなイメージで、じわっとトルクを路面に伝えていくのがコツです。 また、走行中も不要な急加速は避け、常にスムーズな運転を心がけてください。
エンジンブレーキの積極的な活用
信号が赤に変わるのが見えたら、早めにアクセルを離し、エンジンブレーキを積極的に使いましょう。 現代の車のように高度な燃料カット機能はありませんが、アクセルを閉じることで燃料の供給は最小限に抑えられます。 フットブレーキの負担を減らすことにも繋がり、メンテナンスコストの節約にもなります。
空ぶかしは厳禁
カウンタックのV12サウンドは麻薬的な魅力を持っていますが、意味もなくアクセルを煽る「空ぶかし」は、ただガソリンを無駄に捨てるだけの行為です。 暖気運転も、現代の車のように長時間行う必要はありません。 水温が安定するまで、ゆっくりと走行しながら暖めるのが理想的です。
メンテナンスで燃費性能を維持する
最高のコンディションを保つことが、結果的に燃費の悪化を防ぐことに繋がります。 旧い車だからこそ、日頃のメンテナンスが非常に重要です。
エンジンオイルの定期的な交換
エンジンオイルは、潤滑だけでなく冷却や洗浄など、多くの役割を担っています。 劣化したオイルはエンジンのフリクションロス(摩擦抵抗)を増大させ、燃費を悪化させる原因となります。 走行距離が短くても、半年から1年に一度は必ず交換しましょう。 オイルの粘度も重要ですが、まずはメーカー指定の粘度を守ることが基本です。
点火系のチェックとメンテナンス
スパークプラグやプラグコード、ディストリビューターといった点火系パーツの劣化は、不完全燃焼を引き起こし、パワーダウンと燃費悪化に直結します。 定期的に点検し、必要であれば交換しましょう。 力強い火花で混合気をしっかりと燃やし切ることが、V12エンジンの性能を引き出す鍵です。
タイヤの空気圧を適正に保つ
意外と見落としがちなのがタイヤの空気圧です。 空気圧が低いとタイヤの転がり抵抗が増え、燃費が悪化します。 月に一度は必ずチェックし、メーカーが指定する適正な空気圧を保つようにしましょう。 特にカウンタックのような幅広のタイヤは、空気圧の影響を受けやすいです。
燃費以外の維持費も考慮に入れる
カウンタックLP400を所有するということは、燃費、つまりガソリン代以外にも様々なコストがかかることを意味します。 購入を検討しているなら、以下の費用についても必ず把握しておきましょう。
税金(自動車税・重量税)
カウンタックLP400の排気量は3,929ccです。 自動車税は3.5リッター超4.0リッター以下の区分になります。 新規登録から13年以上経過した車は重課対象となるため、年間の自動車税は87,900円です(2025年現在)。 また、車検時に支払う自動車重量税も、車両重量と年式に応じて重課されます。
任意保険料
カウンタックのような希少価値の高いスーパーカーは、一般的な車両保険に加入することが非常に困難です。 加入できたとしても、保険料は年間数十万円から、場合によっては100万円を超えることもあります。 万が一の事故に備えるためには、相応のコストを覚悟する必要があります。
メンテナンス・修理費用
これが最も予測が難しく、かつ高額になりがちな項目です。 日常的なオイル交換だけでも数万円、タイヤ交換となれば4本で数十万円はかかります。 クラッチ交換は50万円以上、そしてエンジンのオーバーホールが必要になれば、数百万円単位の費用が発生します。 パーツは本国イタリアからの取り寄せになることが多く、時間も費用もかかります。 信頼できる専門のメカニックを見つけておくことが、カウンタックを維持する上で最も重要なことかもしれません。
まとめ
燃費は悪いが、それを超える魅力がある
今回は、ランボルギーニ カウンタックLP400の燃費という、非常に現実的なテーマについて深掘りしてきました。

引用 : Lexury Motors Journal イマージ
- 街乗りの実燃費は2〜4km/L、高速道路では5〜7km/Lが目安
- 燃費の悪さはV12エンジンと6連キャブレターという構造的な宿命
- 年間のガソリン代は、乗り方次第で15万円以上かかることを覚悟する
- 丁寧な運転と定期的なメンテナンスで、燃費の悪化は防げる
結論として、カウンタックLP400の燃費は、現代の基準では計れないほど悪いものです。 しかし、この車を本当に愛するオーナーたちは、燃費の数値を気にしてアクセルを緩めるようなことはしないでしょう。 ガソリンを撒き散らしながら走るかのような豪快さ、鼓膜を震わせるV12エンジンの咆哮、そして道行くすべての人の視線を釘付けにする圧倒的なスタイリング。 これらは、燃費の悪さというデメリットを補って余りある、唯一無二の魅力です。
カウンタックLP400を所有するということは、単に車を持つということではありません。 それは、一つの文化遺産を預かり、その輝きを未来に伝えていくという責任を負うことです。 燃費や維持費といった現実的な問題をすべて理解し、受け入れる覚悟ができた時、あなたにとって最高のカーライフが待っているはずです。 このレビューが、あなたの夢への一助となれば幸いです。