モータージャーナリスト兼コラムニストの二階堂仁です。今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、「レクサスGXという最高にかっこいいSUVがあるけれど、自分の年収300万円では到底無理だろう…」と諦めかけているのではないでしょうか。私も実際にGXを所有し、その魅力と現実的な側面を日々体感しているので、その憧れと不安が入り混じる気持ちはよくわかります。
引用 : TOYOTA HP (https://lexus.jp/models/gx/)
しかし、正しい知識と戦略があれば、夢を実現できる可能性は十分にあります。この記事を読み終える頃には、年収300万円でレクサスGXのオーナーになるための具体的な道筋が見え、あなたの疑問が解決しているはずです。
記事のポイント
- 年収300万円での購入の現実性
- 狙い目は中古の初代・2代目モデル
- 購入資金とローンを攻略する具体的戦略
- 年間50万円以上かかる維持費の全貌

レクサスGXは年収300万円で購入できるのか?
結論:賢い戦略があれば購入は可能
いきなり結論から申し上げましょう。年収300万円でレクサスGXを所有することは、「賢い戦略と相応の覚悟があれば可能」です。

引用 : TOYOTA HP (https://lexus.jp/models/gx/)
もちろん、ディーラーで新型モデルを新車で、というわけにはいきません。しかし、中古車に視野を広げ、購入から維持までの全体像をしっかりと計画することで、レクサスオーナーになる道は拓けます。重要なのは、憧れだけで突っ走るのではなく、現実的な数字と向き合い、一つ一つのハードルをクリアしていくことです。このレビューでは、そのための具体的な戦略を一つずつ解説していきます。
自動車購入における年収のセオリー
一般的に、無理なく購入できる車の価格は「年収の半分程度」が目安とされています。年収300万円であれば、150万円がひとつの基準となります。この金額を超えると、ローンの返済や維持費が家計を圧迫し始め、車を持つことが楽しみではなく苦痛に変わってしまう可能性があります。
年収300万円の月々の手取り額は、ボーナスの有無や各種控除によって変動しますが、おおよそ18万円から22万円程度でしょう。この中から生活費、貯蓄などを差し引いて、車のローンや維持費にいくら充てられるのかを冷静に計算する必要があります。
新型レクサスGX(3代目・250系)は選択肢にならない理由
まず、2024年に日本でも発売が開始された新型のレクサスGX(3代目)についてです。こちらは結論として、年収300万円の場合は現実的な選択肢にはなりません。
車両本体価格は「GX550″OVERTRAIL+”」で1,235万円からと、レクサスブランドの中でもトップクラスの価格設定です。諸費用を含めると総額は1,300万円を超えるでしょう。この価格帯の車をローンで購入する場合、そもそも審査を通過することが極めて困難です。仮に審査に通ったとしても、月々の返済額は15万円以上になる計算となり、手取り収入のほとんどを車に捧げることになりかねません。
新型GXは非常に魅力的ですが、今回は潔く選択肢から外し、より現実的なプランを考えていきましょう。
狙い目は中古の初代(GX470)と2代目(GX460)
そこで現実的な選択肢として浮上するのが、中古のレクサスGXです。具体的には、初代モデル(GX470)と2代目モデル(GX460)がターゲットとなります。
初代 レクサスGX470(2002年~2009年)
ランドクルーザープラド(120系)をベースにした初代モデルです。日本では正規販売されていなかったため、流通しているのは逆輸入車のみとなります。最大の魅力は価格で、年式や走行距離、状態によっては100万円台から探すことも可能です。まさに年収300万円の目安である150万円前後で購入できる個体も存在します。ただし、年式が古いため、購入後のメンテナンス費用は覚悟しておく必要があります。
2代目 レクサスGX460(2009年~2023年)
ランドクルーザープラド(150系)がベースの2代目モデル。こちらも日本では正規販売されておらず、逆輸入車のみとなります。中古車市場での価格帯は幅広く、初期のモデルであれば200万円台後半から、後期モデルになると500万円以上するものまで様々です。年収300万円で狙うのであれば、総額300万円前後で購入できる2010年~2013年あたりの前期モデルが現実的なラインとなるでしょう。
なぜGXは「隠れた名車」なのか?兄弟車プラドとの比較
ここで一つ、皆さんに知っておいていただきたいGXならではの「旨味」があります。それは、兄弟車であるランドクルーザープラドとの比較です。
GXはプラドと基本骨格を共有しながらも、内外装の質感、静粛性、そして何より搭載されるエンジンが異なります。プラドが直列4気筒エンジン(ガソリン・ディーゼル)を主軸とするのに対し、GXはV型8気筒の大排気量ガソリンエンジンを搭載しています(初代は4.7L、2代目は4.6L)。このV8エンジンがもたらす滑らかでパワフルな走りは、プラドでは味わえないGXだけの魅力です。
中古車市場では、プラドは非常に高い人気を誇り、リセールバリューも高いため、同年式・同程度の走行距離でも価格が高止まりする傾向にあります。一方、GXは日本で正規販売されていなかったことから知名度が低く、一部の愛好家を除いては探す人が少ないため、プラドと比較して割安な価格で見つかることがあるのです。
つまり、「プラドよりも上質なV8エンジン搭載のレクサスSUVが、プラドと同等かそれ以下の価格で狙える可能性がある」というわけです。これこそが、私がGXを「隠れた名車」と呼び、皆さんにおすすめしたい最大の理由です。
年収300万円でレクサスGXを手に入れるための具体的な購入戦略
レクサスGXが中古車なら射程圏内に入ることが分かりました。しかし、油断は禁物です。ここからは、年収300万円という条件の中で、いかに賢く、そして無理なくGXのオーナーになるかの具体的な戦略を解説します。

戦略①:頭金を最大限用意し、総支払額を圧縮する
最も重要かつ基本的な戦略が「頭金」の用意です。頭金があればあるほど、ローンで借り入れる金額(元金)を減らすことができます。
頭金のメリット
- 月々の返済額を軽減できる:借入額が減れば、当然毎月の支払いは楽になります。
- 利息負担を減らせる:ローンは元金に対して利息がかかります。元金が少なければ、支払う利息の総額も少なくなります。
- ローン審査に通りやすくなる:自己資金を用意できるということは、計画性や返済能力の証明になり、金融機関からの信用度が上がります。
目標とすべき頭金の額は、車両本体価格の20%~30%です。例えば200万円のGX460を狙うのであれば、40万円~60万円の頭金を用意できると、その後のプランが非常に楽になります。まずは購入を焦らず、半年から1年かけてでも、頭金を貯める期間を設けることを強く推奨します。
戦略②:個体選びで将来の出費を徹底的に抑える
中古車購入は「安物買いの銭失い」になるリスクと常に隣り合わせです。特にGXのような年式の古い大排気量車は、購入時の個体の見極めが将来の維持費を大きく左右します。
初代GX470のチェックポイント
初代GX470は100万円台から狙える魅力がありますが、製造から15年以上が経過していることを念頭に置く必要があります。以下のポイントは必ず確認しましょう。
- V8(2UZ-FE)エンジン:非常に頑丈なエンジンですが、タイミングベルトの交換歴は必ず確認してください。一般的に10万kmごとが交換目安で、未交換の場合は購入後すぐに10万円以上の出費が発生します。
- エアサスペンション:乗り心地を向上させるエアサスですが、経年劣化で故障しやすい部品でもあります。修理には高額な費用がかかるため、乗り心地に違和感がないか、車高の調整がスムーズに行えるかなどを試乗で確認しましょう。
- 内装のコンディション:レクサスならではの上質な本革シートも、年数が経てば擦れやひび割れが目立ってきます。リペアも可能ですが、なるべく状態の良い個体を選びたいところです。
2代目GX460のチェックポイント
比較的新しい2代目でも油断はできません。特に前期モデルは製造から10年以上経過しています。
- 整備記録簿の有無:これまでのメンテナンス履歴が分かる整備記録簿は、個体の状態を知る上で最も重要な書類です。オイル交換などの基本的なメンテナンスが定期的に行われてきたかを確認しましょう。
- 走行距離:年式に対して極端に走行距離が少ない車は魅力的に見えますが、長期間動かしていなかった可能性もあり、逆にトラブルの原因となることもあります。年間1万km前後を目安に、定期的に乗られていた個体を選ぶのが無難です。
- 電装系の動作:ナビやエアコン、パワーシートなど、快適装備が正常に作動するかは一通り確認しておきましょう。
信頼できる販売店の見極め方
上記のチェックポイントを素人が完全に見抜くのは困難です。だからこそ、信頼できる販売店選びが重要になります。特にGXのような特殊な逆輸入車は、ランドクルーザーや逆輸入車を専門に扱っている販売店での購入が安心です。専門知識が豊富で、購入後のメンテナンスやパーツ供給についても相談に乗ってくれるでしょう。
戦略③:ローンを賢く組む
頭金を用意しても、多くの方はローンを利用することになるでしょう。ローンの組み方一つで、総支払額は数十万円単位で変わってきます。
低金利の銀行マイカーローンを活用する
中古車販売店で勧められる信販会社のローン(ディーラーローン)は、審査が比較的通りやすい反面、金利が5%~9%程度と高めに設定されていることが一般的です。
そこでおすすめしたいのが、銀行や信用金庫が提供している「マイカーローン」です。審査はやや厳しくなりますが、金利は2%~4%程度と低く設定されています。この数パーセントの金利差が、最終的な総支払額に大きな影響を与えます。
具体的なローンシミュレーション
仮に200万円のGXを頭金なし、ボーナス払いなしで購入した場合のシミュレーションを比較してみましょう。
金利 | 返済期間 | 月々の返済額 | 総支払額 |
---|---|---|---|
8% (信販系) | 5年 (60回) | 約40,600円 | 約2,433,000円 |
3% (銀行系) | 5年 (60回) | 約35,900円 | 約2,157,000円 |
このように、同じ200万円を借り入れたとしても、金利差によって総支払額に約27万円もの差が生まれます。月々の返済額も約5,000円変わってきます。この差は非常に大きいと言えるでしょう。
残価設定ローンは避けるべきか
月々の支払いを安く見せる「残価設定ローン」という選択肢もあります。しかし、これは最終回にまとまった金額の支払いや車両の返却が必要となる仕組みです。走行距離制限や傷に対するペナルティもあり、自由度が低いのがデメリットです。総支払額も通常のローンより割高になるケースがほとんどで、堅実な購入プランが求められる年収300万円のケースでは、あまり推奨できる方法ではありません。
レクサスGXの気になる年間維持費を徹底シミュレーション
車両を無事に購入できたとしても、それはスタートラインに立ったに過ぎません。本当の戦いはここから。レクサスGXを「維持」していくためのリアルなコストを、項目ごとに徹底解剖していきます。

引用 : TOYOTA HP (https://lexus.jp/models/gx/)
レクサスGXの維持費の内訳
GXを所有する上で年間にかかる主な費用は以下の通りです。
- 税金(自動車税・自動車重量税)
- 保険料(自賠責保険・任意保険)
- 車検費用
- 燃料費(ガソリン代)
- メンテナンス・消耗品費
- 駐車場代(必要な場合)
税金(自動車税・自動車重量税)
GXは4.6L~4.7Lという大排気量エンジンを搭載しているため、税金は高額になります。
- 自動車税(年1回)
- 排気量4.5L超~6.0L以下に該当するため、年額88,000円です。
- さらに、初代GX470などの新規登録から13年が経過したガソリン車は、約15%重課され年額約101,200円となります。
- 自動車重量税(車検ごと)
- 車両重量が2.0t超~2.5t以下に該当するため、2年で50,000円です。
- こちらも新規登録から13年経過で57,000円、18年経過で63,000円と段階的に重課されます。
保険料(自賠責保険・任意保険)
- 自賠責保険:車検時に支払う強制保険です。24ヶ月で17,650円(2024年4月時点)です。
- 任意保険:ここが大きな変動要因です。年齢、等級、車両保険の有無によって大きく変わります。年収300万円のペルソナ(例:30歳、新規契約、車両保険あり)を想定すると、年間120,000円~180,000円程度は見込んでおく必要があります。等級が進んでいたり、車両保険を限定的なものにしたりすることで、費用を抑えることは可能です。
車検費用
2年に1度、必ずやってくる大きな出費です。 法定費用(上記の重量税・自賠責保険料・印紙代)に加えて、点検・整備費用がかかります。GXの場合、特に交換が必要になりがちな部品と費用の目安は以下の通りです。
- エンジンオイル・フィルター交換:15,000円~
- ブレーキフルード交換:10,000円~
- ブレーキパッド交換(1箇所):15,000円~
- タイヤ交換(4本):100,000円~200,000円
何も交換部品がなければ10万円程度で収まる可能性もありますが、年式の古いGXでは何かしらの整備が必要になることが多く、1回の車検で15万円~25万円程度は見ておくと安心です。
燃料費(ガソリン代)
GXのオーナーが最も覚悟すべき項目かもしれません。V8大排気量エンジンの燃費は、決して良いとは言えません。
- 実燃費:街乗りでリッター5~6km、高速道路でようやく8km程度です。
- ガソリン:ハイオク仕様です。
年間10,000km走行、ハイオク単価を185円/L、平均燃費を5.5km/Lと仮定して計算すると…
(10,000km ÷ 5.5km/L) × 185円/L = 約336,000円
年間のガソリン代だけで30万円を超える計算になります。月々に換算すると約28,000円。これは家計に重くのしかかる、非常に大きなコストです。
メンテナンス・消耗品費
車検以外にも、定期的なメンテナンスは必要です。半年に1回のオイル交換(約10,000円)や、ワイパーゴム、エアコンフィルターなどの消耗品交換も発生します。また、突発的な故障に備えた修理費用も積み立てておくべきです。年間で50,000円~100,000円は、不測の事態に備える費用として考えておきましょう。

引用 : TOYOTA HP (https://lexus.jp/models/gx/)
【年間シミュレーション】合計費用はいくら?
それでは、これまでに出てきた項目を合計して、レクサスGXのリアルな年間維持費を算出してみましょう。(初代GX470・13年超、年間走行1万km、駐車場代なし、任意保険15万円で計算)
費用項目 | 年間費用 | 月額換算 |
---|---|---|
自動車税(重課) | 101,200円 | 約8,400円 |
自動車重量税(車検年換算) | 28,500円 | 約2,400円 |
自賠責保険(車検年換算) | 8,825円 | 約700円 |
任意保険料 | 150,000円 | 12,500円 |
車検費用(整備費・法定費用除く) | 50,000円 | 約4,200円 |
燃料費(ガソリン代) | 336,000円 | 28,000円 |
メンテナンス・修理積立費 | 70,000円 | 約5,800円 |
合計 | 744,525円 | 約62,000円 |
シミュレーションの結果、年間の維持費は約75万円、月々に換算すると約6.2万円という数字になりました。 ここに車両のローン返済(月々3~4万円)が加わると、車だけで毎月10万円近い出費となる計算です。
年収300万円、手取り18~22万円の中から毎月10万円を車に捻出するというのが、いかに大変なことかお分かりいただけると思います。
まとめ
今回のレビューでは、年収300万円でレクサスGXを所有するための現実的な方法と、その維持にかかるリアルなコストを解説してきました。
結論を改めてまとめると、 「中古の初代・2代目モデルをターゲットに、周到な資金計画と個体選びを行い、年間70万円以上の維持費を支払う覚悟があれば、年収300万円でもレクサスGXのオーナーになることは可能」 と言えます。
決して簡単な道のりではありません。むしろ、食費や交際費、趣味など、他の何かを犠牲にする覚悟が必要になるでしょう。しかし、V8エンジンならではの唯一無二の走行フィールと、レクサスブランドが持つ所有満足度は、何物にも代えがたい魅力があります。
大切なのは、購入がゴールではないということです。無理な計画で購入し、維持できずに手放すことになっては元も子もありません。購入後の豊かなカーライフまでを想像し、ご自身のライフプランと照らし合わせながら、じっくりと検討してみてください。
このレビューが、あなたの夢の実現に向けた、確かな一歩となれば幸いです。