モータージャーナリスト兼コラムニストの二階堂仁です。 今回も多く寄せられている質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、シボレーコルベットの購入を検討しつつも、「アメ車はリセールが悪い」「コルベットは資産価値が低い」といった噂を耳にして、一歩踏み出せないでいるのではないでしょうか。

引用 : シボレーHP
私も実際にC8コルベットを所有するオーナーとして、そしてこれまで数々のスーパーカーを乗り継いできたジャーナリストとして、その気になる気持ちはよくわかります。 特にフェラーリやランボルギーニといった同価格帯のライバルたちが高い資産価値を維持する中で、コルベットの実力はどうなのか、シビアに評価したいですよね。
この記事を読み終える頃には、シボレーコルベットの資産価値に関するあなたの疑問が、確信に変わっているはずです。
記事のポイント
- コルベットの資産価値は低いという定説の真偽
- 最新C8コルベットの驚異的なリセールバリューと残価率
- フェラーリやランボルギーニとの資産価値の徹底比較
- リセールを最大化するコルベットの選び方と所有のコツ

シボレーコルベットの資産価値は本当に低いのか?定説の真相とC8が起こした革命
「コルベットの購入を考えている」と友人に話すと、決まって「リセール、大丈夫?」という反応が返ってくる。 これは、スーパーカー好き、クルマ好きの間で半ば定説となっている一種の共通認識かもしれません。
しかし、結論から先に言いましょう。 最新のC8コルベットに限って言えば、その定説はもはや過去のものです。 むしろ、今最も「賢い選択」と言えるほどの高い資産価値を秘めています。

引用 : シボレーHP
まずは、なぜコルベットの資産価値が低いというイメージが定着したのか、そしてC8がどのようにしてその常識を覆したのかを、データを交えながら徹底的に解説します。
なぜ「コルベット=資産価値が低い」というイメージが定着したのか
長年、自動車業界に身を置く者として、このイメージが根強い理由はよく理解できます。 主に3つの要因が複雑に絡み合っていました。
要因①:アメ車全体に共通するイメージ
まず、「アメ車」と聞いて多くの人が抱くイメージが大きく影響しています。 大排気量エンジンによる燃費の悪さ、比較的おおらかな作り、そして「壊れやすい」という先入観。 これらは過去の一部のモデルには当てはまったかもしれませんが、現代のアメ車、特にコルベットのようなハイパフォーマンスカーにおいては、技術の進化により大きく改善されています。 しかし、一度定着したイメージは根強く、中古車市場での評価、つまりリセールバリューに影響を与えてきました。
要因②:伝統的な大量生産体制
フェラーリやランボルギーニが、その希少性をブランド価値の源泉とし、厳しい生産調整を行ってきたのとは対照的に、コルベットはアメリカを代表するマスプロダクション・スーパーカーでした。 良くも悪くも「頑張れば手が届くスーパーカー」という立ち位置であり、生産台数が多いために中古車市場でのタマ数も豊富。 結果として、希少価値が生まれにくく、年式や走行距離に応じた順当な値下がりをすることが一般的でした。 これが、投資対象にすらなる一部のヨーロッパ製スーパーカーと比較された際に、「資産価値が低い」と見られる最大の理由だったのです。
要因③:ヨーロッパ製スーパーカーとのブランドイメージの差
モータースポーツの最高峰であるF1での輝かしい歴史を持つフェラーリ。 そのライバルとして生まれ、常に過激なデザインと性能で人々を魅了するランボルギーニ。 これらのブランドが持つストーリーやステータス性は、唯一無二のものです。 一方で、コルベットは良くも悪くもGM(ゼネラルモーターズ)という巨大メーカーの一モデルであり、そのブランドイメージは常に大衆車と隣り合わせにありました。 性能面では決して劣っていなくとも、この「特別感」の差が資産価値に影響を与えていたことは否めません。
結論:C8コルベットの登場が全ての常識を覆した
前述したような「コルベット=資産価値が低い」という定説は、C7以前のフロントエンジンモデルまでは、ある程度当てはまっていたかもしれません。 しかし、2020年に登場したC8型、史上初のミッドシップエンジン・レイアウトを採用したコルベットは、文字通りゲームチェンジャーとなりました。
そのスタイリングは、もはや誰もが知るコルベットの伝統的なロングノーズ・ショートデッキではなく、ヨーロッパのミッドシップ・スーパーカーそのもの。 搭載される6.2リッターV8 OHVエンジンは、そのサウンド、パワー、信頼性において極めて高い評価を受け、運動性能は世界の第一線級と渡り合えるレベルにまで飛躍的に向上しました。
結果として、C8コルベットは登場以来、世界中でバックオーダーを抱える超人気モデルとなり、中古車市場では新車価格を上回る「プレミア価格」で取引されるという、これまでのコルベットの歴史では考えられなかった現象が起きているのです。
【データで見る】C8コルベットの驚異的なリセールバリューと残価率
百聞は一見に如かず。 実際のデータを見てみましょう。 ここでは、新車価格に対して、売却時の価格がどれくらいの割合を維持しているかを示す「残価率」に注目します。
シボレーコルベット C8 年式別リセールバリュー・残価率の目安
年式 | 経過年数 | グレード | 新車時価格(参考) | 中古車市場価格(参考) | 残価率(目安) |
---|---|---|---|---|---|
2023年 | 1年落ち | クーペ 2LT | 1,400万円 | 1,500万円~1,700万円 | 107%~121% |
2022年 | 2年落ち | クーペ 2LT | 1,400万円 | 1,450万円~1,650万円 | 103%~117% |
2021年 | 3年落ち | クーペ 2LT | 1,400万円 | 1,350万円~1,550万円 | 96%~110% |
※上記は走行距離や車両状態で変動するあくまで目安です。
いかがでしょうか。 3年落ちの車両ですら、いまだに新車価格とほぼ同等か、それ以上の価格で取引されていることがわかります。 これは異常事態と言っても過言ではありません。 一般的な乗用車であれば、3年後の残価率は50%~60%程度が平均的。 高級車やスポーツカーでも70%を維持できれば「リセールが良い」と言われる中で、C8コルベットの残価率は100%を超えることもあるのです。 「コルベットは資産価値が低い」という言葉が、いかに過去のものであるかがお分かりいただけるでしょう。
C8コルベットはなぜ高いリセールを維持しているのか?3つの本質的な理由
この驚異的なリセールバリューは、決して一過性のブームではありません。 そこには、C8コルベットが持つ本質的な価値に起因する、3つの明確な理由が存在します。
理由①:世界的な需要と供給の極端なアンバランス
最も大きな要因は、その人気に対して生産が全く追いついていないことです。 C8はデビュー直後から世界中で注文が殺到。 さらに、近年の半導体不足やサプライチェーンの混乱が追い討ちをかけ、生産遅延が常態化しています。 特に日本への割り当て台数は非常に少なく、正規ディーラーで新車を注文しても、納車まで1年以上、場合によっては2年近く待つことも珍しくありません。 この「今すぐ乗りたい」という強い需要と、「新車が手に入らない」という供給不足のギャップが、中古車価格を高騰させている最大の理由です。 つまり、中古車でありながら「即納できる新車以上の価値」が付加されているのです。
理由②:初のミッドシップ化がもたらした運動性能とデザインの革命
前述の通り、C8はコルベット70年近い歴史で初めてエンジンを車体中央に搭載しました。 これにより、前後の重量配分は理想的な40:60となり、トラクション性能、回頭性、安定性が劇的に向上。 その走りは、もはやアメ車的など豪快さだけでなく、ヨーロッパ製スーパーカーのような洗練さと鋭さを手に入れました。 同時に、このミッドシップレイアウトは、低く構えた戦闘機のようなエクステリアデザインを可能にしました。 誰が見ても「スーパーカー」とわかるその佇まいは、これまでのコルベットファンだけでなく、新たな顧客層を惹きつける強烈な魅力となっています。 この本質的なパフォーマンスとデザインの進化が、C8の価値を揺るぎないものにしています。
理由③:2,000万円以下で得られる圧倒的なスーパーカー体験
C8コルベットの新車価格は、クーペ2LTで1,400万円から。 コンバーチブルの3LTでも1,800万円です。 もちろん、絶対的な金額としては高価ですが、そのパフォーマンスを考えれば「破格」と言えます。 0-100km/h加速は約3秒。 最高速度は300km/hを超えます。 これは、3,000万円、4,000万円級のスーパーカーに匹敵する性能です。 この圧倒的なコストパフォーマンスの高さが、多くの人々にとって現実的な選択肢となり、結果として幅広い需要を生み出しています。 中古車市場においても、この「割安感」は大きなアドバンテージとなり、価格を下支えする強力な要因となっているのです。
【グレード・仕様別】リセールバリューを最大化する賢い選び方
私がC8コルベットを購入する際にもっとも意識したのが、このリセールバリューです。 どうせ乗るなら、手放すときのことも考えて賢く選びたい。 ここでは、私の経験と市場の動向から、リセールに有利な仕様をいくつかご紹介します。
クーペ vs コンバーチブルのリセール差
一般的に、この手のスポーツカーはクーペの方が剛性が高く、サーキット走行などを視野に入れる層からの需要が高いため、リセールも安定する傾向にあります。 しかし、C8コルベットに関しては、クーペとコンバーチブルの間に決定的なリセール差は今のところ見られません。 むしろ、電動ハードトップの開閉ギミックが非常にスタイリッシュで、開放感を気軽に楽しめるコンバーチブルは、独自の需要を確立しています。 どちらを選んでも大きな失敗はありませんが、より普遍的な人気を狙うならクーペ、個性を重視するならコンバーチブル、という選択で良いでしょう。 ちなみに私は、タルガトップとしても楽しめるクーペの汎用性を選びました。
人気グレード「2LT」「3LT」の価値
日本に正規輸入されるC8コルベットは、基本的に上級グレードの「2LT」と最上級グレードの「3LT」です。 この2つの主な違いは、インテリアのレザーの使い方やシートの種類など、内外装の豪華さです。 リセール市場では、より豪華な「3LT」の方が若干高く評価される傾向にありますが、その差は新車時の価格差ほどではありません。 どちらのグレードも人気が高いため、予算や好みに合わせて選ぶのが正解です。
リセールに有利なボディカラーとオプション
ボディカラーは、スーパーカーの王道であるホワイト、ブラック、レッドがやはり鉄板です。 特に白や黒は、流行り廃りがなく、幅広い層に受け入れられるため、査定額が安定します。 一方で、コルベットのイメージカラーであるイエローや、鮮やかなブルーなども人気があります。
そして、最も重要なのがオプションです。 特に以下の2つは、リセールバリューに大きく影響します。
- Z51パフォーマンスパッケージ: 大型ブレーキ、専用サスペンション、パフォーマンスエキゾースト、電子制御LSDなどがセットになった、走りを追求するなら必須のオプション。中古車市場でも「Z51付き」は明確なアピールポイントになります。
- フロントリフト: 車高の低いスーパーカーにとって、駐車場のスロープや段差は天敵です。スイッチ一つでフロントの車高を約4cm上げられるこの機能は、日本の道路事情では非常に重宝します。これも査定時にプラスに働く重要な装備です。
ライバル車種と徹底比較!コルベットの資産価値と所有する本当の意味
C8コルベットが非常に高い資産価値を持つことはご理解いただけたかと思います。 では、フェラーリやランボルギーニといった、伝統的に資産価値が高いとされるライバルたちと比較した場合、その立ち位置はどうなるのでしょうか。 ここでは、単なる数字の比較だけでなく、それぞれのクルマが持つ「価値」の本質にまで踏み込んで比較検証していきます。

引用 : シボレーHP
比較対象となる欧州のライバルたち
C8コルベットの価格帯とパフォーマンスを考慮すると、直接的なライバルとなるのは以下のモデルでしょう。
- フェラーリ・ローマ: 「La Nuova Dolce Vita(新しい甘い生活)」をコンセプトにした、優雅なFRクーペ。新車価格は約2,757万円から。流麗なデザインとFRフェラーリならではの官能的な走りが魅力です。
- ランボルギーニ・ウラカン EVO RWD: V10自然吸気エンジンをミッドシップに搭載するピュアスポーツ。新車価格は約2,654万円から。刺激的なサウンドとパフォーマンスで、非日常的なドライビング体験を提供します。
【完全比較表】コルベット vs フェラーリ vs ランボルギーニ|資産価値(リセール・残価率)の優劣
各車種の資産価値を客観的に比較してみましょう。
車種 | 新車時価格(参考) | 3年後 買取相場(参考) | 3年後 残価率(目安) |
---|---|---|---|
シボレー コルベット C8 | 1,400万円~ | 1,350万円~1,550万円 | 96%~110% |
フェラーリ ローマ | 2,757万円~ | 2,700万円~3,000万円 | 98%~108% |
ランボルギーニ ウラカン EVO RWD | 2,654万円~ | 2,800万円~3,200万円 | 105%~120% |
※上記は市場動向や車両状態で大きく変動するあくまで目安です。
データを見ると、驚くべきことに、C8コルベットは新車価格が半額近いにもかかわらず、フェラーリやランボルギーニと遜色ない、あるいはそれを上回るほどの残価率を叩き出していることがわかります。 もちろん、ランボルギーニのように120%を超えるような驚異的な個体も存在しますが、コルベットが「資産価値」という土俵で、これらの超一流ブランドと互角以上に渡り合っている事実は、特筆すべき点です。
なぜフェラーリやランボルギーニは「上がる資産」になり得るのか?
フェラーリやランボルギーニ、特に限定モデルや最終モデルが「上がる資産」として語られるのには、コルベットとはまた異なる理由があります。
- 徹底した生産管理と希少性: 彼らはブランド価値を維持するため、意図的に需要が供給を上回る状態を作り出します。年間生産台数も厳しく管理されており、その希少性が中古車市場での価値を保証します。
- 歴史とブランドストーリー: F1での伝説、創業者たちのドラマなど、彼らの歴史はクルマそのものに付加価値を与えます。所有することは、その輝かしい歴史の一部を共有することを意味します。
- 投資対象としての側面: これらの希少性とブランド価値は、世界中の富裕層にとって魅力的な投資対象となります。実物資産として、クラシックモデルを中心に価格が高騰し続けているのです。
コルベットは、こうした「芸術品」や「投資対象」としての側面は弱いかもしれませんが、純粋な「工業製品」として、そして「楽しむための道具」として、極めて高い価値と資産性を両立させている稀有な存在と言えるでしょう。
単なる数字では測れないコルベット独自の価値とは?
私自身がオーナーとして感じるコルベットの最大の魅力は、その圧倒的な「フレンドリーさ」にあります。
- デイリーユースもこなせる快適性と実用性: スーパーカーとは思えないほど乗り心地が良く、視界も良好です。フロントには機内持ち込みサイズのスーツケースが、リアにはゴルフバッグが2つ積めるほどのラゲッジスペースも確保されています。毎日の通勤にだって、気負いなく使える実用性を備えているのです。
- 良い意味での「気軽さ」と「運転する楽しさ」: 3,000万円を超えるスーパーカーを日常の足にするには、かなりの勇気が必要です。しかしコルベットには、どこか良い意味での「気軽さ」があります。それでいて、一度アクセルを踏み込めば、V8サウンドと共に異次元の加速を味わえる。このギャップこそが、コルベットを所有する最大の喜びかもしれません。
- カスタムパーツの豊富さと自分だけの1台を作る喜び: アメリカ車らしく、アフターパーツが非常に豊富です。ホイール、エアロパーツ、マフラーなど、自分好みにカスタムして「世界に一台だけのコルベット」を作り上げる楽しみも、ヨーロッパ車にはない大きな魅力です。
【現実的な話】維持費で比較するトータルコストパフォーマンス
最後に、所有する上での現実的なコスト、つまり維持費についても比較しておきましょう。 スーパーカーは購入費用だけでなく、維持費も高額になりがちです。

引用 : シボレーHP
年間維持費 比較シミュレーション(概算)
項目 | シボレー コルベット C8 | フェラーリ ローマ | ランボルギーニ ウラカン |
---|---|---|---|
自動車税 | 110,000円 (6.2L) | 65,500円 (3.9L) | 87,000円 (5.2L) |
任意保険料 | 約200,000円 | 約350,000円 | 約400,000円 |
メンテナンス費用 | 約150,000円~ | 約300,000円~ | 約350,000円~ |
年間合計(目安) | 約460,000円~ | 約715,500円~ | 約837,000円~ |
※車両保険の等級や走行距離、整備内容により大きく変動します。
ご覧の通り、維持費においてもコルベットのコストパフォーマンスの高さは際立っています。 特に正規ディーラーでのメンテナンス費用や部品代は、ヨーロッパのスーパーカーと比較してかなり良心的です。 高いリセールバリューと、比較的安価な維持費。 この2つを考え合わせると、C8コルベットを所有するための「トータルコスト」は、同クラスのスーパーカーの中で群を抜いて低いと言えるでしょう。
まとめ
今回のレビューでは、「シボレーコルベットは資産価値が低い」という定説が、もはや過去のものであることを、具体的なデータとライバル比較を通じて解説してきました。
結論として、最新のC8コルベットは、フェラーリやランボルギーニに匹敵する、あるいはそれを凌駕するほどの極めて高いリセールバリューと残価率を誇ります。 その背景には、世界的な供給不足、ミッドシップ化による革命的な性能とデザインの向上、そして圧倒的なコストパフォーマンスという、揺るぎない価値が存在します。
もちろん、フェラーリが持つ歴史や、ランボルギーニが放つオーラといった、数字では測れない価値も存在します。 しかし、「走る喜び」を最大限に享受しつつ、資産価値も妥協したくない、という現実的かつ賢明な選択をしたいのであれば、現在の市場においてC8コルベットは最高の選択肢の一つであると、私は断言します。
もしあなたがコルベットのステアリングを握るかどうか迷っているのなら、心配は無用です。 その一歩を踏み出した先には、想像をはるかに超える興奮と、そして驚くほどの満足感が待っているはずですから。